恒例の2021年下半期注目のオススメ新作企画、今回も「ライト文芸」「ライトノベル」「文芸単行本」「一般文庫」で作ろうと思っています。今回は第二弾ということでライトノベル30選。上半期に続いて、自分が下半期に読んだものの中からオススメしたい30作品を紹介しています。
最近は気になるラブコメ作品の新作が多くて、結果的に自分もラブコメとファンタジーとの読んでいる比率が3：1くらいになってしまっています。半期だとファンタジー一本で作れるくらいのボリュームで作れるか怪しかったので今回は一本で作ってしまいましたが、どこかでファンタジー作品を別立てでひとつ記事を作りたいですね。
※各作品タイトルのリンクはBookWalkerページに飛びます。
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1.嘘と詐欺と異能学園 (電撃文庫)
エリート異能力者が日々熾烈な競争を繰り広げるハイベルク国立特異能力者養成学校。無能力者なのに入学試験を突破した天才詐欺師のジンが、〈災禍の女王〉と恐れられる少女・ニーナと出会う学園ファンタジー。学園の頂点を目指すジンと大きな秘密を抱えるニーナの運命的な邂逅と共犯関係。綿密な準備をして、相手の手の内を調べ上げる彼らの共闘は虚実が入り混じって、どこまでが本当なのか信じていいのか、予想外の展開なのか計算通りなのかヒリヒリする展開の連続で、そんな彼らが二人でどこまで駆け上がれるのか、今後に期待のシリーズですね。現在2巻まで刊行。
2.王様のプロポーズ 極彩の魔女 (ファンタジア文庫)
三○○時間に一度、滅亡の危機を迎える世界を救ってきた最強の魔女で魔術師が通う学園の長・久遠崎彩禍。殺された初恋の少女を救うため、玖珂無色が学園に編入するファンタジー。死に間際の彩禍に一目惚れして、彼女の身体と力を引き継いだ無色。彼女の従者・黒衣の指示で彩禍として誰にもバレないよう学園に通うことを指示され魔術を学ぶ展開でしたけど、一体化した彩禍への想い至上主義の無色と黒衣のやりとりが楽しくて、妹ちゃんは兄が大好きなツンデレで、明らかになってゆく世界の構図もなかなか面白くて、これは続巻に期待しかありませんね。
3.霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない（ガガガ文庫）
幽世のものに触れる異能をもつ藤咲藤花が、かつて従者だった青年・藤咲朔とともにもたらされた事件解決に挑む物語。「かみさま」になり損なった結果ニートと化して霊能探偵の看板を掲げる藤花と、彼女に寄り添いお世話する朔。そんな二人が挑む内蔵落下連続殺人事件、誰かが殺されると予告する少女の真意、見えない友達の真実、人魚姫の自殺の悲しい真相、元「かみさま」候補たちが次々と殺される理由。二人のゆるいやりとりとシリアスな事件のギャップがなかなかいいアクセントとして効いていましたけど、過去に向き合って乗り越えてみせた二人の絆がとても印象的な物語でした。
4.ミモザの告白 (ガガガ文庫)
とある地方都市に暮らす冴えない高校生・紙木咲馬の完璧な幼馴染・槻ノ木汐。高校に進学してからは疎遠な関係な関係になっていた二人が、とある夜の公園で再会して世界が激変する青春小説。クラスの星原夏希に淡い恋心を抱く咲馬。そんな彼が劣等感を募らせる存在だった汐の抱える秘密。周囲が困惑するのも無理ないなと思う急展開に、良くも悪くも抱く思いあればこそ過剰な反応にもなるわけで、強烈なアリサや掴みどころのない世良の存在が効いていましたが、咲馬が振り回されながらも汐に懸命に向き合おうとした末の困惑の結末は…波乱必至ですね。22年1月に2巻目刊行予定。
5.迷探偵の条件 (MF文庫J)
十八歳までに運命の女性に出会わないと十八歳で必ず死ぬ呪いを抱える真丘家の男子。そんな家系に生まれて十七回目の誕生日を迎えた厄介な体質を持つ真丘陸が、次々と周囲で起こる事件に巻き込まれてゆく学園ミステリ。ヤンデレばかり引き寄せる女難体質で、ちょっと出かけると事件に巻き込まれる探偵体質の陸が、幼馴染の男装女子・ユキたちと一緒に次々と巻き込まれる新入生歓迎会、ビル転落死、副担任自殺未遂、学園祭の事件。陸の卓越した推理力は警察にも認知されて、ミステリとして読んでもなかなか面白いですが、それ以上に傾向と対策を立てて女子を警戒しているのに、それでも女難に巻き込まれずにいられない陸の呪いがあれな感じで、最後まで読むとこれは本格的にヤバいんだなと嫌でも分かりました（苦笑）運命の人は見つかるのか、これからどんな事件に巻き込まれるのか続巻に期待せずにはいられません。
6.負けヒロインが多すぎる! (ガガガ文庫)
第15回小学館ライトノベル大賞＜ガガガ賞＞
クラスの人気女子・八奈見杏菜が幼馴染に振られるのを目撃してしまった存在感のない温水和彦。そんな彼が負けヒロイン―マケインたちの恋路に巻き込まれ、絡まれる日々を描く青春ラブコメディ。杏菜に陸上部の焼塩檸檬、文芸部の小鞠知花といった劣勢必至なヒロインたちの迷走、そんな彼女たちと振り回される和彦のやりとりが加速して、ヒロインたちそれぞれの見事な負けっぷりが何とも残念な感じでしたけど、それもまたひとつの青春と思える甘酸っぱい展開はなかなか良かったですね。最後の最後で締まらないそのオチには思わず笑ってしまいました。現在2巻まで刊行。
7.ルーン帝国中興記(GA文庫)
あわむら赤光/Noy SBクリエイティブ 2021年12月15日頃
お忍びの一つの酒席で運命の出会いを果たした斜陽の帝国に不満を抱える皇帝、将軍、商人。その場の売り言葉に買い言葉で帝室秘伝の魔法を使い、立場を入れ替えて適材適所に響き合うシャッフル戦記ファンタジー。商人セイは皇帝となって民のための善政を目指し、皇帝ユーリは将軍として膠着する北部戦線の打開、戦場に飽いた将軍グレンは平穏な日々を求めて一年間その立場を替える展開でしたけど、それぞれがままならない状況に直面しながらも、三者三様の才幹で局面を打破してみせるストーリーはなかなか痛快で、それぞれの持ち味が存分に発揮されてとても魅力的に描かれていました。激動の展開はまだまだ続きそうで、ここからどんな展開が待っているのか続巻に期待の新シリーズですね。
8.変人のサラダボウル (ガガガ文庫)
異世界で追い詰められて転移してきた魔術を操る皇女サラと、尾行中に出会った貧乏探偵・鏑矢惣助。なし崩し的に惣助の事務所兼住居で同居生活を始めたサラが、彼の仕事に興味を覚えて探偵業を手伝い始める物語。あっという間に現代日本に馴染んでゆくサラと、サラを追いかけて転移してきて、まさかのホームレス生活を送る女騎士リヴィア。幼女風鬼畜弁護士だったり、別れさせ工作員など、惣助の周囲には油断ならない関係者がいる一方で、順応性の高い異世界人二人が思わぬ形で波紋を投げかけてゆく展開はなかなか楽しかったですね。現段階ではややとりとめのない群像劇といった印象で、物語の方向性としては現時点でカオスですが、ポテンシャルの高い続巻に期待したくなる新シリーズです。
9.幼なじみが妹だった景山北斗の、哀と愛。 (ガガガ文庫)
相思相愛の幼馴染・三ツ泉春がいるのに、美人で変わり者の上級生佐伯冴音子とつきあい始めた高校生の景山北斗。それでもなかなか諦めきれない様子の春に、冴音子が相羽遥平を紹介する青春小説。小学生の頃出会いかけがえのない時間を一緒に重ねてきた幼馴染が、実の妹だったという事実を隠したまま、気持ちを押し殺して春を遠ざけようとする北斗。察しのいい聡明な冴音子や、どこまでも優しい遥平も二人の関係を彩るキャラとしていい感じに効いてましたけど、北斗が好きで好きで仕方ない春のいじらしさがなかなかエモくて、もうこういうのは理屈でどうこうじゃないんですよね…大切なもののためだったらどんな苦難でも乗り越えて、一人でも強くなって掴み取ってみせたあの結末はお見事でした。
10.ある魔女が死ぬまで (電撃の新文芸)
坂/コレフジ KADOKAWA 2021年12月17日頃
十七歳の誕生日。師匠から呪いで一年の余命宣告を受けた見習い魔女メグ。呪いを解く方法は人の嬉し涙を千粒集めて『命の種』を生み出すことだけ。メグは閉じていた自分の世界を広げ、たくさんの人と関わっていく物語。親友フィーネの大切な時計、死神に魅入られてしまったおばあちゃん、メグにかけがえのないものを感じてくれた英知の魔女や祝福の魔女との出会い、そして嬉し涙を集めようとするあまりに忘れかけていた大切なこと。ポジティブで優しくて、時には迷いながらもそれでも人のために頑張ってしまう、だからこそ周囲の人たちに愛されているメグが、これからどんな人たちと出会って成長してゆくのか、彼女が頑張る温かい物語をまた読んでみたいと思いました。
11.君は僕の後悔 (ダッシュエックス文庫)
浅田結弦の中学生時代の恋人・水野藍衣。後悔を抱えながらもゆるやかに過去となり、思い出になってゆくはずだった高校一年の夏、藍衣が再び結弦の前に姿を現す青春小説。自由奔放なな彼女に惹かれ、振り回されることに苦しんだ苦い過去。以前と変わらない真っ直ぐな想いをぶつけてくる藍衣に戸惑い、どうしようもなく惹かれているのを自覚する結弦。周囲も否応なく巻き込んでゆく藍衣は台風のような強烈な存在でしたけど、覚悟を決めた結弦は意外と冷静で、そんな二人だからこそ周囲も呆れるお似合いの二人なのかなと微笑ましい気持ちになりました。現在2巻まで刊行。
12.私のほうが先に好きだったので。 (GA文庫)
佐野しなの/あるみっく SBクリエイティブ 2021年12月15日頃
別れてから思いを自覚し、幼馴染で元カノの加二釜小麦を意識して引きずりまくっていた安芸玄。そんな小麦から玄を好きだという小麦の親友・鳩尾桜子を紹介されてショックを受ける青春泥沼三角関係物語。両片思いなのに拗らせて桜子に意識を向けようとする玄、親友を紹介してしまう小麦、さらに人気者で元カノを忘れさせる存在として自分をぐいぐいと玄に売り込む桜子。足掻けば足掻くほど自らの想いを自覚して、それではいけないと三者三様にドツボにハマってゆく展開はなかなかカオスで、タイミングの悪さや思い込みによる勘違いでますます迷走しそうなところに、さらなる火種になりそうな事実も明らかになって、これからどうなるのか今後が楽しみな新シリーズです。
13.わたし、二番目の彼女でいいから。 (電撃文庫)
互いに一番好きな人がいるのに、二番目同士で付き合っている桐島と早坂さん。一緒に帰ってこっそり逢い、人には言えないことをしていた彼らが、一番目を意識するあまり深みにハマってゆく青春小説。二番目同士なのに恋人のような距離感の二人に急接近し、挑発したり次々と波紋を投げかけてゆくどこか掴みどころのない桐島の想い人・橘の存在。彼女を意識し過ぎて壊れてゆく早坂さんを見ていられなくて、カオスな状況を加速させる急展開もあって、それぞれがあるべき形を突き詰めていった先に待っていたあまりにも壮絶な結末に言葉が出ませんでした。22年1月に2巻目刊行。
14.灰原くんの強くて青春ニューゲーム (HJ文庫)
HJ小説大賞2020前期＜受賞＞
高校デビューに失敗して、灰色の高校時代を経て大学４年となった灰原夏希。社会人目前だった彼はある日突然、７年前の高校入学直前まで時を遡ってしまい、二度目の高校生活をやり直す学園ラブコメ。過去の経験を活かして春休み中に努力した結果、上手くクラスカースト最上位６人のグループの一員となった夏希。かつて片思いしていた美少女・陽花里ともなかなかいい感じで、協力関係を結んだ幼馴染・美織の助力もあって一回目にはなかった充実した日々は、逆に上手く行き過ぎて思わぬ展開にも繋がりましたけど、ここで本音を見せられたことで本当の意味でのスタートラインに立てましたかね。これからの展開が楽しみな新シリーズです。
15.嘘つき少女と硝煙の死霊術師 (ガガガ文庫)
第15回小学館ライトノベル大賞＜審査員特別賞＞
死者を蘇らせ使役する死霊術が国家の陰なる基盤となったヴェルサリウス。死霊術師ウィリアムは、相棒ライニーとともに盗賊の粛清を行うなか、国や死霊術師たちそのものを揺るがす第二の革命の存在を知るファンタジー。革命派の襲撃によってライニーを失いかける絶望の底で、彼女との再会を願った最初の夜の記憶を思い出していくウィリアム。ライニーを救うため、革命を阻止するため、仲間の死霊術師・リアと無謀な突撃をするウィリアムの覚悟はなかなかに壮絶で、不可能を乗り越えてみせる彼女に対する複雑で深い絆にはぐっと来るものがありました。
16.貘: -獣の夢と眠り姫- (ガガガ文庫)
第15回小学館ライトノベル大賞＜優秀賞＞
共有された夢の中でも生活できる夢信空間が発展した世界。そんな夢に侵入し精神を破壊する悪夢を狩るチーム「貘」の少年・瑠岬トウヤが、車椅子に乗った魔女・呀苑メイアと出会うSFファンタジー。過去の因縁から悪夢を狩り続ける少年と、何一つ自由にならない身体を持つメイアの運命的な邂逅。そこからトウヤも関わる隠蔽された過去の大事件、夢信技術を巡る闇、そして関わった人たちの忘れられない因縁や思いが繋がって、目を覚ました災害級の悪夢〈獣の夢〉相手のギリギリの激闘、それを乗り越えた先にある結末にはぐっと来るものがありました。
17.宅録ぼっちのおれが、あの天才美少女のゴーストライターになるなんて。 (角川スニーカー文庫)
石田 灯葉/葛坊 煽 KADOKAWA 2021年10月01日
宅録ぼっちの小沼拓人はクラスの天才美少女シンガーソングライターの市川天音と出会い、歌えなくなった彼女の再起をかけ、楽曲制作の日々が始まる青春小説。歌えなくなってしまった天音との秘密の関係。拓人が天音に触発されて作り始めた作曲、天音を信奉する吾妻の作詞、そして音楽で仲違いして距離ができていた拓人の幼馴染・沙子が集まって、明らかになってゆくそれぞれの事情もあったりして、時には苦しみ傷つきながらも、ひとつの音楽を作り上げてゆく展開とその結末にはぐっと来るものがありましたね。彼らがこれからどうなるのか、続きがあるならまた読んでみたいです。22年2月に2巻刊行予定。
18.こんな小説、書かなければよかった。 (ガガガ文庫)
幼い頃に交わした永遠の約束。しおりとつむぎは何をするにも一緒で、変わらない関係のはずだった。しかししおりの昔馴染みの男の子との疑似恋愛を小説に書くようつむぎからお願いされる青春小説。身体が弱くて入退院を繰り返すつむぎからの突然のお願い。彼女との苦い過去から止めていたはずの小説執筆。なかなかつむぎの真意が見えてこない中で、嫉妬したり困惑したり彼女に振り回されるしおりでしたけど、つむぎには望む永遠の形があって、これまで抱えてきた後悔があって、複雑な彼女の想いをしっかりと受け止めたしおりの決意、そして彼女たちが迎える結末がなかなか印象的な物語でした。
19.クールな月城さんは俺にだけデレ可愛い (ファンタジア文庫)
無愛想だけれど涼しげな美貌で一目置かれる幼馴染・月城碧。離れ離れになっていて高校で久しぶりに再会したものの、遠い存在だったはずの末久根悠と、親の都合で彼女と同居が始まる青春小説。トラウマで女子が苦手になっていた悠と、学校ではクールな碧のお友達から再開した関係。湯田とお近づきになりたい赤彫に巻き込まれて、たびたび四人で過ごす様々な夏休みイベント。あくまでお友達だから気のおけない関係だったはずの二人が、いつの間にか周囲も付き合っていると誤解するほど仲良くなっていて、周囲に惑わされずに、彼女たちらしいやり方で育んできたかけがえのない絆にはぐっと来るものがありましたね。
20.弥生ちゃんは秘密を隠せない (ガガガ文庫)
美人だと学内で評判だけれど、いつも一人で無愛想な木之下弥生。密かにサイコメトリー能力を持つ同級生の深瀬皐月は、ある日彼女の意外な心の声を聞いてしまう青春ラブコメディ。彼女の想いと正反対な態度のギャップに、どう接したらいいのか戸惑う皐月がうっかり聞いてしまう、弥生が抱えるもっと大きな秘密。いろいろと悩める弥生と縁が生まれて、思い切って彼女に声を掛けてゆく皐月に、不器用でなかなか素直になれない弥生が可愛かったですね。そんな彼女にしっかりと向き合った皐月の頑張りで、ようやく一歩前進した感もあった二人の関係でしたけど、どうも一波乱ありそうな続巻に期待の新シリーズですね。
21.カーストクラッシャー月村くん (オーバーラップ文庫)
高野小鹿/magako オーバーラップ 2021年07月25日頃
飛び抜けた存在の友人達がいつも側にいるカーストトップの超絶リア充高校生・月村響。そんな彼がカーストにまつわる問題を解決するため、クラスのオタク女子をプロデュースする青春小説。彼女の牧田奏、友人の静玖やココと協力して、桐谷羽鳥のファッションをレクチャーし、意識を変えてゆく響の目的。彼女の劇的な変化によってクラス内のカースト内に投げかけられた波紋、好転しかけていた矢先の些細で決定的な齟齬。そこからの急展開はベタで王道ではありましたけど、それだけで終わらせない意外な結末には驚かされました。これは続巻に期待です。
22.恋は夜空をわたって (電撃文庫)
ある晩、高校生の長谷川壮一が適当に選んだ配信から流れてきた聞き覚えのある声。小柄なのに大人びたお洒落な美人で、つれない態度のクール系後輩・御簾納咲の本音をうっかり知ってしまう配信青春ラブコメディ。リスナーからの相談に乗って自分の片思いの話までしてしまう、ラジオから流れてきたいつも塩対応なあの子の思わぬ本音。そんな彼女の気持ちに動揺しながらも、一方で図書委員として接する彼女には容易にそれと悟らせないギャップがあって、お互い意識しながらもその先へなかなか踏み込めない距離感がもどかしかったですけど、上手く行かなかったら…とつい怖がってしまう独りよがりな気持ちを乗り越えて、勇気を持って前に踏み出した二人の結末はなかなか良かったですね。巻末に載っていたyoutubeの動画もなかなかいい感じでした。
23.好きな人がバレたら死ぬラブコメ 俺を好きじゃないはずの彼女が全力で惚れさせようとしてくる (ファンタジア文庫)
玖城 ナギ/みすみ KADOKAWA 2021年12月18日
幼い頃の忘れられない大切な想いを胸に秘めて、天才の養成機関・覇王学園で再会した青山夏海と桜雨春香。そんな彼らの前に学園の必須項目となった＜恋愛学＞が立ちはだかる学園ラブコメディ。恋愛学で一位になれば好きな異性と付き合えるが、好きな人がバレたら即退学。実は両片思いなのになぜか自分以外の好きな人がいると勘違いした二人に、夏海と中学時代を共に過ごしてきた八矢、財閥令嬢の冬坂といったヒロインたち、そして恋愛学のルールを絡めた駆け引きはなかなか面白くて、追い詰められながらもルールを見極めた逆転劇は見事で、けれど彼らしいとても不器用で優しい結末にはぐっと来るものがありました。夏海もヒロインの春香もなかなかいい感じに拗らせていて、今後に期待したい新シリーズです。
24.美少女とぶらり旅 (ファンタジア文庫)
窮屈な日常に嫌気がさして旅に出ることを決意した東京に住む高校生・高橋翔。駅のホームで思い詰めた様子の同級生・七瀬涼帆を見つけて、彼女を心配して一緒に旅に出ようと提案する旅青春小説。最初は不信感たっぷりだった七瀬と向かう熱海での出会い、浜松からまさかの現実逃避行、そして何でもできる一見完璧クーデレな美少女が思い詰めていた理由。足湯にほっこりしたり、さわやかに行ったり、まさかの水着回もあったりとゆく先々で積み重ねられてゆく二人の思いがあって、彼女のために精一杯向き合おうとした翔の奔走が、涼帆の心を揺さぶったのも何か納得してしまうそんな素敵な物語でした。
25.君のせいで今日も死ねない。 (ファンタジア文庫)
陰キャでも陽キャでもない、カーストもそこそこの自称Ａくんが、屋上でばったりと「神に愛された完璧な美少女」三峰彩葉が飛び降りようとしているところに遭遇し、その自殺を阻止したことで始まる二人の青春小説。彼女の自殺を阻止するために放課後に一緒にいる時間を作り、先の予定を埋めてゆくＡくん。孤独を抱え他人の視線に怯えつつも、ただひとり懸命に向き合ってくれる彼にそっと心を開いてゆく三峰。心を満たしてくれる彼の存在が、彼女にとってかけがえのないものになって、お似合いの二人になってゆく結末にはぐっと来るものがありました。
26.妹の親友? もう俺の女友達? なら、その次は――? (ファンタジア文庫)
エパンテリアス/椎名 くろ KADOKAWA 2021年11月20日
恋愛に興味がない。線引きをした人間関係が心地良いと感じていた高校生・糸原斗真。しかし妹の親友で、よく家に遊びに来る間宮凛との出会いによって変わってゆく青春小説。最初は帰るのが遅い妹を待つ間の交流、一緒の高校に通うようになって、放課後の勉強会を通じて育まれてゆく二人の関係。別の学校に通っている何だかんだでわりと仲が良い妹には何となく内緒にしている、これまでしっかりと積み上げてきた二人の距離感があって、ふとしたきっかけから委員長もいい感じに斗真と絡んではきてはいますけど、ここからどんな展開が待っているのか今後に期待したい新シリーズですね。
27.グッバイ宣言 (MF文庫J)
学校に行くのは最低限で単位さえ落とさなければいい。家に籠ってゴロゴロしながらありきたりな未来を思い描いていた高校生・桐谷翔が、破天荒で天真爛漫で誰よりも夢に向かって真っすぐな七瀬レナと出会う青春小説。トップカーストたちにも言いたいことを言うレナを見て、面倒だなと思っていた翔が目の当たりにする夢に向かって頑張り続けるレナの姿。上手く行かないことがあっても前向きで、本当に大切なことを見失わない彼女に感化されて、翔もまた自分の夢を見出して頑張るようになってゆく、分かりやすい王道でベタな展開ではあるんですが、でもそれがいいと思えるちょっぴり切ないけれどとても素敵な物語でした。
28.百合の間に挟まれたわたしが、勢いで二股してしまった話 (オーバーラップ文庫)
としぞう/椎名くろ オーバーラップ 2021年11月25日頃
平凡な女子高生・間四葉が、学園の尊き百合・百瀬由那と合羽凜花の間に挟まるだけでなく、両方に告白され、柔不断が災いして二人と同時に付き合うガールズラブコメ。お姫様みたいに可憐な百瀬由那と、王子様と見紛うほどに凜々しい合羽凜花。二人と共に過ごすうちに仲良くなった四葉がそれぞれに告白されてしまい、それが嬉しくて二人とも好きすぎて、幸せにしたいがゆえにこっそり両方と付き合ってしまう展開には苦笑いでしたけど、ちょっと天然入っている素直で彼女たちを特別扱いしない四葉だからこそ、由那と凜花も惹かれたんですよね。ドタバタする四葉と彼女たちの関係がほのぼのした雰囲気でなかなか良かったです。
29.彼女が先輩にNTRれたので、先輩の彼女をNTRます（角川スニーカー文庫）
震電 みひろ/加川 壱互 KADOKAWA 2021年12月01日
彼女の浮気を知ってしまい、ショックからNTR男の彼女で憧れの先輩でもあった桜島燈子に浮気を持ちかける一色優。恋人に裏切られた二人が聖夜に仕返しを狙うリベンジラブコメ。外と冷静で浮気が事実と見極めた上で、計画的で強烈な仕返しを優に提案する燈子。そのために優を女子ウケの良い男に仕立て上げ始めて、彼女を優が意識してゆく展開でしたけど、グズっぷりが際立っていた浮気コンビの胸糞感は抜群で、期待させた浮気コンビを突き落とすその決着はなかなか壮絶で、性的な燈子先輩が上手く流れをコントロールしていた分、タイトルから受ける印象とはやや違う感もありましたけど、彼女は彼女でなかなか手強そうですね（苦笑）落とし前をつけた二人のこれからに期待したいと思います。
30.見知らぬ女子高生に監禁された漫画家の話 (角川スニーカー文庫)
穂積 潜/きただ りょうま KADOKAWA 2021年12月01日
目を覚ますと見知らぬ天井、あたりに一切の明かりはなく首には首輪と鎖。ふいに灯る部屋の電灯。そこにいたのは包丁を携えた女子高生。女子高生に監禁された漫画家の日々を描いた物語。スランプに陥ってマンガを書けなくなっていた漫画家が女子高生にいつの間にか監禁されてしまい、生活を管理されて強制的に絵を書かされ続ける展開で、優しさを垣間見せたり、手作り料理を振る舞ってみせたりする描写や、積み重ねられてゆく二人の不器用な交流を読んでいるとつい誤魔化されかけますが、いやでもよくよく考えると彼女やっぱりヤバイよね…ということを鮮烈に思い出させてくれるそのラストシーンがとても印象的でした。続巻出せるようなら二人の気になるその後がまた読みたくなる作品でした。
