少し前から #1日1文庫 のハッシュタグで読んだ本の中から1日1作品紹介するようにしていますが、このまま流して終わりなのもあれなので、ここから10日ごとにまとめてきたものがようやく100冊目を迎えました。実際にやってみて1日2冊紹介は流石にハイペースだったので、いったんここで一区切りとして今後は #1日1ラノベと統合し、ここからは #1日1冊 ということで紹介していきたいと思います。よろしくお願いします。
【#1日1文庫91日目】
天使のどーなつ(メディアワークス文庫)
開発部に所属し、美味しいドーナツを作ることが生き甲斐の主人公留衣が、十周年企画に参加した二人を巻き込んで感化し、自分の足りないものを学びながら、会社の買収危機に立ち向かうために、主力商品を超えるキセキのドーナツを作るべく奮闘するお話。ストーリーや人物配置などは比較的オーソドックスな印象ですが、熱い思いが人を動かす話は大好物なので楽しく読めました。構成として下手に恋愛要素を取り入れず、三人の友情の話にして正解だったと思います。ドーナツの話ばかりしているので、食べたくなったのは言うまでもありません(笑)
【#1日1文庫92日目】
R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室(新潮文庫nex)
東京五輪後、災厄により中京に暫定首都が移転した世界。急速に治安が悪化する中、テロ計画を未然に鎮圧すべく総理直轄・女性 6 名の特殊捜査班R.E.D.が警察庁に設立される警察小説。いかにも著者さんが好きそうな世界観で、敵も多い傑物な女総理の下、ケチな神代を指揮官に個性豊かな異能を持つ少女たちを従え、副総理と警視総監が絡む難しい政官業巨大疑獄を追う展開。一風変わった彼女たちと上司たちの使い使われる関係も気になるところですが、破格な彼女たちの活躍は圧倒的でした。登場人物たちもいろいろありそうで続巻が楽しみです。3巻まで
【#1日1文庫93日目】
漫画家先生とメシスタント(富士見L文庫)
マンガ好きを周囲にひた隠す女子高生ときわが、学校帰りにアパートの前で行き倒れているのを発見した会社員・鈴木桂太。ご飯を食べさせてあげた彼が実は大好きなマンガ家の片割れだったと気づく物語。マンガ家のためのアパート・ヒット荘を舞台に、ほのかな恋心を抱く桂太や彼とコンビを組むレオ、新人漫画家の花や鬼の担当編集さん、マンガ家の桂太の妹たちも絡めながら、美味しそうなご飯やデザートを振る舞いつつのドタバタ劇や交流してゆく様子がなかなか楽しかったですね。ときわと桂太のその後も気になります。
【#1日1文庫94日目】
二宮ナズナの花嵐な事件簿 京の都で秘密探偵始めました(角川文庫)
望月 麻衣 KADOKAWA 2021年02月25日
海外に向かう父との同行を断って北海道から嵐山の高校に転入した女子高生・二宮ナズナ。京都での新生活に心躍らせる彼女がいろいろと騒動に巻き込まれてゆく学園ミステリ。新天地で雅で平穏な青春を謳歌したいナズナの希望を打ち砕くヤンキーだらけなクラスでの日々。いろいろ巻き込まれがちな彼女が、学園内で厄介事を起こす『昇龍』を調査する訳アリのクラスメイト・一夜に協力する構図でしたけど、彼女が一夜やイケメンの龍と協力し武闘派らしい大活躍をする姿がイキイキと描かれていて、著者さんの最近の作風とはまた違う魅力を感じました。
【#1日1文庫95日目】
鍵屋甘味処改 天才鍵師と野良猫少女の甘くない日常(集英社オレンジ文庫)
冬休みに自分の出生の秘密を知って衝動的に家出した女子高生こずえが、鍵師・淀川と知り合い、年齢を偽り助手として彼の家へ居候することになる物語。居付いてしまったこずえをまるで野良猫のようなものと思っている無愛想で職人気質の淀川と、掃除やカメラ撮影といった淀川の苦手な部分を巧みにフォローして居場所を確保していくこずえの、確かに甘いとは言えない非日常がなかなか興味深かったです。女子高生の家出娘が居候というリアリティは少し考えましたが、そういうものだと思えばなかなか楽しめる作品ですね。全5巻。
【#1日1文庫96日目】
サブマリンによろしく (宝島社文庫)
28年前に八百長疑惑で自殺した伝説のサブマリン投手K・M。行方不明だった1500奪三振の記念ボールが発見されたのをきっかけに再評価する動きが起き、野球嫌いの駆け出しの作家が謎に迫っていくミステリ。誤審、乱闘、転向、落球、そして八百長疑惑…彼にまつわるエピソードの謎を追うために取材した関係者を通じて浮き彫りになってゆくK・Mの人柄と明らかになってゆく真実。文章が若干冗長で誰視点なのかがイマイチ分かりづらい部分もありましたが、明らかになってゆく悪くない結末が積み重ねられてゆくその読後感はなかなか良かったです。
【#1日1文庫97日目】
あざみ野高校女子送球部!(ポプラ文庫ピュアフル)
中学時代バスケ部での苦い経験から、もう二度とチーム競技はやらないと心に誓っていた端野凛。つい本気で臨んだ体力測定の記録からハンドボール部顧問成瀬にスカウトされる青春スポーツ小説。典型的なストイックアスリートの凛と凄まじいポテンシャルを持ちながら運動素人の智里。どんなにやられても凹まない絶望しない凛には苦笑いでしたが、好対照な二人を軸として、勝つために自らを追い込んでゆくハンドボール部のメンバーたちそれぞれの想いや葛藤も熱くて、スポーツ小説としてなかなか読み応えがありました。
【#1日1文庫98日目】
スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫(集英社文庫)
友井 羊 集英社 2016年10月20日頃
「吃音」を抱える高校生菓奈が、密かに好意を寄せるスイーツ男子の真雪や「保健室の眠り姫」悠姫子と知り合い、スイーツ絡みの事件を解決する連作ミステリ。お喋りは苦手で自信はなくても難事件をひらめきで解決してゆく菓奈。時々加減が分からなくなる彼女にとってうまくフォローしてくれる真雪や悠姫子、事件を通じて理解を深めてゆく友人たちの存在はかけがえのないもので、彼女たちの繊細な心理描写や美味しそうなお菓子の数々を読むと続巻に期待したくなりますね。おまけ話で後輩からはそう見えるんだなーと少しだけ意外な気持ちになりました。
【#1日1文庫99日目】
雲神様の箱(角川文庫)
霊山を移り住む古の民・土雲の一族。長の家に生まれながら不吉な双子の妹ゆえ虐げられていた少女・セイレンが、本来求められた姉媛の身代わりに雄日子の守り人となる古代和風ファンタジー。類い稀な技を持ちながら孤独と怒りから里を飛び出した真っすぐな気性のセイレンと、大王への叛逆を目論む雄日子の邂逅。姉媛との因縁も絡めつつ、自分の居場所を提供してくれた雄日子への複雑な想いを抱えるセイレンが、その野心や彼のありようにどう向き合ってゆくのか、多くの人との関わってゆくなかでどう成長してゆくのか今後に期待したいシリーズですね。3巻まで。
【#1日1文庫100日目】
君と時計と嘘の塔(講談社タイガ)
幼いころに自分のつまらない意地で孤独に追いやった幼馴染・芹愛をいつまでも忘れられない綜士が、唯一の親友の消失した理由を探すうちに、自分が芹愛の死をきっかけにタイムリープしていたことに気づく物語。高校に留年し続ける千歳、自らも同様のタイムリープを繰り返していた雛美と共に芹愛を救うべく行動する展開は、改めて芹愛と自分の現在地を直視させるものでもあって、それぞれの思惑も絡む状況の中で遭遇したショッキングな結末と、突きつけられたもう取り戻せない現実が厳しいですね…。次巻でどんな展開を迎えるのか続きが気になります。全4巻。