GWは何だかんだで毎日ブログ更新していましたが、その締めくくりとして今回は印象的な作品が多い講談社ラノベ文庫の作品を紹介したいと思います。以前から少し変わった作品を送り出してきたレーベルですが、つい気になってしまう作品、忘れられない作品がとても多いですね。これからもインパクトのある作品を期待しています。
1.クロックワーク・プラネット (講談社ラノベ文庫)
いったん現代の地球が死に絶えて全てが時計・歯車で再構成された世界で、偶然出会った眠り姫のような毒舌ツンデレオートマタ・リューズと、凄まじい聴力の良さを活かして200年ぶりに彼女を復活させたナオト、そしてもう一人の天才技師マリーたちとの、2人の天才の出会いから始まるお話です。地球をまるごとオーバーホールして世界を救うという、テロリストにしては壮大過ぎる目標を掲げた彼らのいちいち可愛い言動と、スッキリとした世界観が自然な感じで溶け込んでいて、躍動感あるとてもいい感じの物語に仕上がっていました。現在4巻まで刊行。
2.白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)
人々が陸地のほとんどを失い、いくつかの巨大な船に都市国家を作ってわずかな資源を争う世界。船国を行き来して荷物を運ぶスワローの少年・シエルが、無人島に流れ着いた謎の少女・ステラと巡り合うボーイミーツガール。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせないシエル。理由を明かさないまま自分を荷物として運んで欲しいと依頼するステラ。その飛行は息苦しかった彼らにとって新鮮だけれど危険の連続でもあって、たびたび衝突しすれ違った彼らが力を合わせて乗り越えようと挑んだそのとても爽やかな結末は、次回作も期待したくなるものでした。
3.友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)
妙なこだわりで高校で友達ができない新藤大輔に、存在感のないクラスメイト澄田が持ちかけてきた困ったときに助け合う「友達いらない同盟」そんな同盟から始まる二人の物語。それぞれが複雑な家庭事情を抱えてはいるけれど、一見同じようでいてまるで対照的な新藤と澄田。グループから浮いた城ヶ崎も加わって三人で楽しそうに見えたのに、なぜか澄田が距離を置くようになってゆく危機的状況でしたが、本音で引き留めようとする新藤の提案はかなり無茶苦茶でしたね(苦笑)このレーベルでたまに出てくる不思議な魅力のある物語ですね。全2巻。
4.公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)
昔からの幼馴染、瀬川エリカと吾妻千里。そんな二人とその友人たちを中心とした公園でのやりとりや日常が描かれる青春小説。お隣さんな二人の家の近くの公園で繰り広げられる仲間とダベったり野球をしたり、走り回ったり少し喧嘩したりのありふれた日常。でもそんな中にも幼馴染の二人が積み重ねてきた様々なことや、傍から見たら何で付き合っていないの?とついちょっかいを出したくなる二人の確かな絆があって、それでいて相手の知らないことに遭遇すると思わず動揺してしまう関係が微笑ましくて、何かじわじわとこみ上げてくるものがありました。
5.遥かなる月と僕たち人類のダイアログ (講談社ラノベ文庫)
援助交際をしているという噂の炭風凌香にクラスで自分にその真偽を尋ねるよう依頼された涼間鈴樹。不可解な言動の凌香に疑問を覚えた後を追った涼間が彼女の秘密知ってしまう青春小説。凌香によって明かされる彼女に性欲を抱いた人間は死んでしまう『月』の呪い。月の呪いを掛けられた凌香の背景はシリアスですが、表情に乏しそうな凌香なのに涼間に対する態度や言動はどこかじわじわくる感じで、呪いの原因である月もなかなかお茶目で、そんな彼女たちの素顔を引き出してみせた涼間の真摯に向き合おうとする姿勢が何かとてもいいなと思えましたね。
6.こんな僕が荒川さんに告白ろうなんて、おこがましくてできません。 (講談社ラノベ文庫)
清水 苺/シソ 講談社 2017年09月01日頃
成績優秀だがクズを自認する浅井悠馬が偶然クラス演劇主役を演じることになり、幼馴染の明日香とともにクラスの中心に君臨する荒川唯のグループに巻き込まれてゆく青春ラブコメディ。行動をともにする機会が増えてゆく唯の見た目とは全然違う純真さとひたむきさ。少しずつ惹かれてゆく悠馬が知ってしまった唯のらしくない秘密。何ともほろ苦い気持ちを抱えながら、それでも彼女のために奮闘する悠馬の姿は心に響きましたが、だからといって頑張れば報われるとは限らないのが現実で、そんな迷える彼らの行く末を続巻でまた読んでみたいと思いました。全2巻。
7.雪の名前はカレンシリーズ (講談社ラノベ文庫)
冬時間から転生生物が襲来するオリガ戦没記念都市。過去に失敗し底辺を彷徨う四季オリガミが、心を代償にして迎撃する人工天使の赤朽葉カレンと運命的な出会う終末ファンタジー。心を取り戻したいカレンと付き合うことになったオリガミと、カレンと同じく人工天使としていずれ死ぬ定めにある幼馴染や義妹たちとの関係。彼女たちの想いと覚悟が垣間見えるからこそ、ネガティブなオリガミには共感するのが難しかったですが、絶望な状況でも希望を見出そうとした彼女たちの奮闘がもたらしたもうひとつの結末には、どこか救われた気持ちになりましたね。
8.あなたのことを、嫌いになるから。 (講談社ラノベ文庫)
感情が昂ぶると最悪死に至る病『感情性自己免疫疾患』。そう診断されて以来、感情を無価値なものだと思い生きてきた四東愛都が、笑顔を絶やさない元気なクラスメイト奈々川恵実と出会う青春小説。事情を知らないまま一緒に過ごす時間を増やしていく積極的な恵実、愛都を見守ってきたいとこの春乃と主治医の橙香。命を落とすかもしれないと知りつつも育まれてゆく感情と、大切な存在だからこそ分からなくなってゆく複雑な想いがあって、手放したくない共にありたいと葛藤し続けた二人の選択がとても印象的な物語でした。
9.異世界誕生 2006 (講談社ラノベ文庫)
2006年、春。トラックにはねられて死んだ息子・タカシの遺したプロットを元にファンタジー小説を書きだした母・フミエ。そんな状況にうんざりするタカシの妹・チカが、タカシをはねた運転手・片山に相談する物語。片山が提案し、タカシの死から止まったままの時間を少しずつ動かし始めたウェブ小説の連載。ウェブ小説の扱いや公開したことで直面した悪意の数々や当時の時代感を懐かしいなと感じましたけど、一方でそれをきっかけに様々な思惑を持った人たちとの関わりが生まれて、それが停滞していた状況を変えてゆく展開が印象的な物語でした。現在2巻まで刊行。
10.中古(?)の水守さんと付き合ってみたら、やけに俺に構ってくる (講談社ラノベ文庫)
弥生 志郎/吉田 ばな 講談社 2020年04月30日頃
女性不信で恋愛に消極的な高校生十神里久が、放課後に探し物をしていた水守結衣を助けたことをきっかけに、学校で有名なビッチとして噂されて孤立する彼女と付き合い始める青春ラブコメディ。水守の告白に恋愛感情はないけれど、彼女にもっと自分を大切にしてほしいからと付き合い始めた十神。二人の交際は十神の評判を気遣って学校では秘密で、そんな二人を応援する風紀委員長のような人もいて、そんな彼女の素顔を知っていった十神が、水守の窮地を救うために立ち上がる王道展開にはぐっと来るものがありました。全2巻。
11.わんでいりぴーと! (講談社ラノベ文庫)
憧れの同級生小夜原さんに告白したものの「顔面がジャガイモみたいな人とは付き合えません」と振られた紙白九炉。しかし彼女とうまくやらないと同じ日を繰り返すループに巻き込まれる青春小説。秘密を抱えた面倒くさい残念美少女・小夜原さんと仲良くなってゆく日々に突如現れた、もう一人の繰り返す要因・繊月仄火の存在。違う意味で面倒な仄火にも振り回されるようになってからの急展開にはびっくりしましたが、大切なものを自覚した九炉の決意と何度失敗しても諦めずにチャレンジし続けてようやく引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。
12.→ぱすてるぴんく。 (講談社ラノベ文庫)
他人との関わりを避け、ぼっち高校生活を送っていた軒嶺緋色のネット恋愛の恋人スモモ。引きこもりだったはずの彼女が突如緋色の高校に入学してきて、リアルの彼女になってしまう青春小説。緋色の高校生活を一変させたスモモの存在と思い描くほど上手くいかないリアルな日常、そしてふとしたきっかけから対応を誤り炎上してしまう二人の関係。不用意な面もあったとはいえコミュ障には厳しい展開でしたが、ここで黒歴史だったはずの元カノの存在がなかなか効いてましたね。全2巻。
13.スーサイド少女 (講談社ラノベ文庫)
立入禁止の屋上が主な生息地の高校生・因幡が、そこで出会った先輩の鈴鹿涼子。飛び降り自殺を止めた鈴鹿に興味を覚えた因幡が、いじめられっ子の後輩・小刑部智世とともに鈴鹿のストーキングを始める青春小説。死のうとしては無感動にやめる鈴鹿の背中を押したいと感じ、小刑部のストーキング技術を使って鈴鹿の心情に迫ってゆく因幡。それぞれが抱えるどうにも屈折した想いは複雑で、執着ゆえにその行動もどんどんエスカレートしていって、育まれてゆく奇妙な連帯感をぶち壊し本音でぶつかり合ってしまう不器用な彼らの結末は悪くなかったですね。
14.それでも、好きだと言えない (講談社ラノベ文庫)
夏の終わりに事故に遭いかけた有馬悠人を救ってくれた記憶喪失の幽霊の少女・レイナ。彼女に取り憑かれた悠人が、成仏させるために記憶を取り戻す手助けをする青春小説。人付き合いが苦手な悠人が手がかりを探す過程で得た憧れの白浜美波との繋がり。レイナに支えられながら少しずつ自分を出せるようなって、周囲との関わりも変わってゆく悠人。意外なところから明らかになった過去でしたけど、レイナのために奔走する悠人の言葉にできない、彼女と積み重ねてきた想いが切なくて、残してくれた大切なものを胸に生きる悠人の姿が印象的な物語でした。
15.星空の下、君の声だけを抱きしめる (講談社ラノベ文庫)
小説が書けない文芸部員・シュウのスマホに、詠名という少女から届いた謎のメッセージ。絶望を感じていた詠名と交流を重ね、親しくなっていった彼女が実は五年前を生きる人だったという衝撃の事実に直面する恋愛小説。閉塞感しかない環境にいる詠名が書き上げた脚本で、文芸部を目の敵にする生徒会長と一緒に劇を演じることになったシュウ。物語の構図自体はとてもわかりやすかったですが、交わらないはずの五年の歳月を乗り越える彼らのやりとりはぐっと来るものもあって、危機的状況でも諦めなかった彼らが引き寄せた結末に救われる思いでした。
16.真面目系クズくんと、真面目にクズやってるクズちゃん #クズ活 (講談社ラノベ文庫)
持崎 湯葉/いたち 講談社 2017年09月29日頃
クラスの立ち位置を気にする真面目系クズの八卜が、性格の悪い黒内に絶対見られたくない場面を見られ、それをネタに八卜の潜在的クズを開花させるべく一緒にクズ活することを強要される青春小説。二人がクズ活を続ける過程で関わってゆく聖人君子のような白庭さんと、幼馴染なのに学校では交流が断絶しているトップカーストの鈴堂。黒内によって次々と本性が暴かれてゆく一方、相反する複雑な想いや距離感に戸惑う心理描写は繊細で、らしさを自覚してゆく八卜と彼女たちの関係が描かれた今回も期待を裏切らない著者さんらしい怪作でした(褒め言葉)
17.ヤンキーやめろ。メイドにしてやる (講談社ラノベ文庫)
代々執事の家系で日本有数の名家・鶴ヶ島家の次女麻白に仕える久世太一郎。麻白お嬢様から新たな専属メイドを探すよう申しつけを受けた彼が、買い出しに出かけた先で出会ったヤンキー少女ハナをメイドとして勧誘する物語。仕事をスマホで動画を撮って覚えるあたりがハナらしいですが、事あるごとに衝突するヤンキー気質のハナとお嬢様麻白の相性は最悪でも、テンポよく進むドタバタ展開の中でお互いいろいろ見えてくるものがあって、そんな二人が育んでゆく不器用な主従関係の結末には、またこの物語の続きを読んでみたいと思えるものがありました。
18.自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)
ある朝、同級生の雨宮翼が列車へ飛び込み自殺を図るのに関与してしまった永瀬。その自殺が忘れられない彼が友人の深井から過去に戻れるカプセルを手渡され、やり直すために過去へ遡る物語。最初は彼女に関わらないと決意したはずなのに、逆に雨宮に関わる機会が増えてしまう永瀬。そんな彼に改めて突きつけられる「蝶は羽ばたかない」という事実。それでも当事者の変えようとする意志によって変わることもあって、多くの人にとってはさほど変わらない、けれど確実に変わったその結末に、一抹のほろ苦さを感じながらもどこか救われる思いがしました。
19.ハロー・ワールド ――Hello World―― (講談社ラノベ文庫)
仙波 ユウスケ/ふゆの 春秋 講談社 2014年05月02日頃
一人暮らしの高校生・朋生が、クリスマスイブのバイト帰りに、行き倒れの銀髪少女と出逢うお話。民間軍事企業の施設から逃げてきた、世間知らずな天才少女麗奈との拙いながらも微笑ましい生活。そして組織を裏切った麗奈の姉・純と三人で、「家族旅行」という名の思い出作りの逃避行。冬休みを舞台とした物語は、設定の斬新さこそなかったものの、それぞれの思いがうまく描写されていてとても印象的な物語でした。全2巻。
20.リア充になれない俺は革命家の同志になりました (講談社ラノベ文庫)
仙波 ユウスケ/有坂 あこ 講談社 2016年03月02日頃
入学した高校でスクールカースト最下層に身を置く白根与一が、担任から廃部にハンストで抵抗する美少女・黒羽瑞穂の監視役として図書部に入るよう命じられる物語。序盤は既視感を感じる設定やキャラ造形ですが、そこから明らかになってゆく少し学べば何でも人並み以上にこなしてしまう天才少女・瑞穂の境遇や、幼馴染である中禅寺さくらとの複雑な関係。一見こじらせた言動ばかりに思える瑞穂のありようは、それでいて白根も目をそらせないほど真っ直ぐでとても印象的でした。わりとスッキリとした結末ですが、続巻あるなら是非読んでみたいですね。全2巻。
以上です。気になる本があったらぜひ読んでみて下さい。