というわけで4月の新作おすすめですが、 こちらではライトノベルの新作11点を紹介しています。文庫・単行本編はこちら↓
まず一番のおすすめはアニメにもなった「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の暁佳奈さんによる読み応えも十分な「春夏秋冬代行者 春の舞」ですね。そして「アサシンズプライド」の天城ケイさんによる二人の少女の物語「蒼と壊羽の楽園少女」、やや出遅れてしまいましたが電撃文庫の「インフルエンス・インシデント」、あとHJ文庫のお嬢様と拾われ執事の甘い学園生活を描く「才女のお世話」、講談社ラノベ文庫の青春ラブコメ「俺がピエロでなにが悪い!」、三田奈央さんのガガガ文庫「夢にみるのは、きみの夢」、そして今慈ムジナさんの新作「時をかけてきた娘、増えました。」あたりは押さえておきたい注目作品ですね。
春夏秋冬代行者 春の舞 (電撃文庫)
春夏秋冬の季節の巡り変わりを担うことになった現人神「四季の代行者」。その代行者を担う四人の現人神たちと、それを支える護衛官たちの物語。十年前の誘拐事件に苦しみながらも、苦難を乗り越え現人神として復帰した春の雛菊。十年前の事件は苦しんだ春の主従にも、目の前で攫われた冬の主従にも暗い影を落としていて、複雑な想いを抱く双子が主従の夏の代行者、そして秋の主従は新たな危機に直面して、それぞれの主従のありかたがとても印象的でしたけど、この危機に様々な思いを抱きながら立ち上がる主従の物語にはぐっと来るものがありますね。
代行者を狙う「賊」に攫われた「秋」の代行者・撫子。十年前の悲劇を繰り返さないため、彼女を救うために、春・夏・冬の代行者たちも集結して、撫子を取り戻すために動き出す下巻。変わってしまったもの、それでも変わらなかった想いがあって、もう悲劇は繰り返さないという強い決意があって、文字通り総力戦で奪還に動いた代行者主従たちの戦いは思わぬ裏切りもあって、狡猾な因縁の相手に苦闘の連続でしたけど、それでも過去と向き合って乗り越えてみせた彼らが迎えた結末には確かな希望があって、これまでを思うと本当に良かったなと思えました。
蒼と壊羽の楽園少女 (GA文庫)
ほとんどの陸地が水に沈んでしまった蒼の世界。海上にたたずむ巨大人工島《駅》で働いていた少女・イスカが、自らを「魔女」だと名乗る少女・アメリと運命の出会いを果たすファンタジー。世界を混乱に陥れる陰謀に巻き込まれていく渦中で巡り合った、消えたはずの魔女と魔女が遺した人形。魔女のささやかな願いを叶えようと決意するイスカと、明かされてゆくそれぞれの背景。逃亡中にイスカとアメリが育んでいった絆があって、そんな彼女たちが世界の危機に立ち向かい、一緒に乗り越えてみせた二人が紡いでゆく物語をまた読んでみたいと思いました。
インフルエンス・インシデント Case:01 男の娘配信者・神村まゆの場合 (電撃文庫)
インフルエンス・インシデント Case:01 男の娘配信者・神村まゆの場合(1)
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駿馬 京/竹花ノート KADOKAWA 2021年03月10日
SNSを悪用したストーカー被害に遭ってしまった人気女装配信者「神村まゆ」として活動する男子高校生・中村真雪。そんな彼にSNSを研究する大学教授・白鷺玲華と助手の女子大生・姉崎ひまりが手を差し伸べる物語。ズボラだけど鋭い洞察を見せる玲華と、甘やかしお姉ちゃん気質で実は強いひまりが、不安を抱える真雪をサポートするストーリーで、ネット炎上で一度失敗したら取り返しがつかない本質に向き合ってゆく展開、複雑な想いを抱えていた彼らの繊細な想いもなかなか良かったですね。因縁も明らかになってきて続巻にも期待のシリーズです。
才女のお世話 1 (HJ文庫)
ホビージャパン 2021年05月01日
両親に見捨てられた高校生・友成伊月が、日本随一の財閥のお嬢様・此花雛子誘拐に巻き込まれたことを切っ掛けに、彼女のお世話係をすることになる青春ラブコメディ。表向きは才色兼備を装いつつも、実は生活能力皆無のぐうたら娘だった雛子。そしてメイド長にハードな修行を課されつつ、甲斐甲斐しく雛子の世話を焼く伊月。編入した学園で友人ができたり、ヒロインたちと印象的な出会いを果たしながらめきめきと成長してゆく伊月に、すっかり懐いて彼の前では甘えたり、他のヒロインとの様子に独占欲を見せたりする雛子がなかなか可愛かったですね。
俺がピエロでなにが悪い! (講談社ラノベ文庫)
ストリートパフォーマーという将来の夢のため、密かに病院でホスピタル・クラウンとして芸を披露する高校生・宮守樹。なかなか笑わない入院中の少女・茉莉を笑わせようと奮闘する彼が、病院でクラスメイトのギャル・市川愛莉と出会う青春小説。高校ではボッチでも成績優秀な樹、そして読者モデルで遅刻常習犯でもある愛莉が抱える事情。アンタッチャブルだった愛莉に意見する樹と出会った転機、彼のことを知って変わろうとする彼女の思いがあって、樹が披露する真摯な芸が試練を抱える茉莉にも勇気をもたらす展開にはぐっと来るものがありましたね。
夢にみるのは、きみの夢(ガガガ文庫)
乙女ゲームが趣味のオタクOL・二橋美琴。25歳の誕生日の深夜に一人公園でお花見をしていた恋愛経験ゼロの美琴が、研究所から逃げてきたAIロボット・ナオを拾う青春小説。転んで怪我した美琴の手当をしてくれた、金色の髪を持つ美しい青年ナオ。しばらく匿ってほしいというナオとの同居生活は徐々に美琴に潤いを与えて、憧れの先輩との縁ができたからこそ気づいた自らの思いがあって。そこから明かされてゆく思ってもみなかった事実に、構図はガラリと様相を変えていきましたけど、そんな彼らが迎える一つの結末がなかなか印象的な物語でした。
時をかけてきた娘、増えました。(ガガガ文庫)
クラスの安達藍が気になっても、話しかけられない日々を送る高校生の清水大地。そんなある日自室に発生したワームホールから、未来から来た藍と自分の娘・安達七彩が現れるラブコメディ。未来のお父さん・大地と藍をくっつけるために奔走する七彩。そこからさらに突如現れたワームホールから同様にもうひとりの娘が現れた展開には苦笑いでしたけど、今回はとりあえず藍がメインだったようで、変わりうる未来を踏まえてどうあるべきか、彼女のために奔走する大地の姿がなかなか印象的でした。これからもどんどん娘は増えていくんでしょうか?(苦笑)
あなたを救いに未来から来たと言うヒロインは三人目ですけど? (ファンタジア文庫)
あなたを救いに未来から来たと言うヒロインは三人目ですけど?(1)
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氷純/うらたあさお KADOKAWA 2021年04月20日
高校生の白杉巴が出会った三人の自称・未来の彼女。全員が未来の恋人だと主張して、巴の死を回避するため、運命を変えるためにアピール合戦を始める彼女たちとの青春ラブコメディ。挨拶を交わす程度の仲だったはずの隣の席の美少女・笹篠、バイト仲間にして学校の後輩・迅堂、そして又従姉で本家の現当主・海空。それぞれのやり方でぐいぐい来る彼女たちは、一方で巴の死を回避するために一生懸命で、彼女たちとその死を回避する方法を探り、その原因を突き止めるべく真相に迫る展開はなかなか面白かったです。ヒロインたちとの今後にも期待ですね。
通勤電車で会う女子高生に、なぜかなつかれて困っている (ファンタジア文庫)
通勤電車で会う女子高生に、なぜかなつかれて困っている(1)
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甘粕 冬夏/はくり KADOKAWA 2021年04月20日
通勤電車で女子高生・結衣花と話をするようになった、無愛想で人付き合いが苦手な27歳の会社員・笹宮和人。彼女の出会いから仕事や人間関係が好転し始める青春ラブコメディ。結衣花からアドバイスを受けて、後輩との関係から少しずつ変わってゆく笹宮。どうも人間関係では残念な笹宮の電車での相談相手として、やや一歩引いた立ち位置から彼との関わりが増えてゆく結衣花との距離感が絶妙で、慕ってくる後輩や掴みどころのない女子大生Vtuberとの関係を交えながら、これからどんな展開が繰り広げられるのか、今後が楽しみなシリーズですね。
少女と血と勇者先生と (ファンタジア文庫)
世界を救い死んだ筈だった勇者・クロム。だが生ける屍として現世に呼び戻された彼が、勇者になりたいと願うかつての仲間シオンの妹のライラを鍛え、一緒に勇者を目指すファンタジー。再会したクロムに師事して、悲壮感すら漂わせながら勇者を目指すライラ。勇者になれるのは一人だけで、同じ勇者候補のゼシアやリーリアと試練で競う中で、明らかにされてゆく候補者たちが目指した背景。クロムもまた失われた記憶を取り戻していきましたけど、それぞれが抱える過去の悔恨にしっかりと向き合い、残り超えてみせた結末にはぐっと来るものがありました。