先週刊行された本から気になった本をピックアップする今週注目おすすめ15冊です。
今回は文芸作品では朝井リョウさんの多様性をテーマとした衝撃の一冊『正欲』、宮部 みゆきさんの江戸怪談もの『魂手形 三島屋変調百物語七之続』、湊かなえさんの青春小説『ドキュメント』、スティーヴン・キングの新作『アウトサイダー 上・下』などが刊行になっています。
また子どもが算数を考える時に頭の中で何が起きたのかを推理する『子どもの算数、なんでそうなる?』、竹宮惠子さんの決定版自伝『扉はひらく いくたびも-時代の証言者』、サブスクリプションの出現により、人類史上もっとも自在に音楽を聴くことができる現代にあえてメタルをオススメする『「メタルの基本」がこの100枚でわかる!』も挙げておきたいと思います。
『正欲』
朝井 リョウ 新潮社 1,870円(税込)
あってはならない感情なんて、この世にない。それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づいた女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。しかしその繋がりは、"多様性を尊重する時代"にとって、ひどく不都合なものだった――。
『魂手形 三島屋変調百物語七之続』
宮部 みゆき KADOKAWA 1,760円(税込)
江戸は神田の三島屋で行われている変わり百物語。美丈夫の勤番武士は国元の不思議な〈火消し〉の話を、団子屋の屋台を営む娘は母親の念を、そして鯔背な老人は木賃宿に泊まったお化けについて、富次郎に語り捨てる。
『ドキュメント』
湊 かなえ KADOKAWA 1,650円(税込)
中学時代に陸上で全国大会を目指していた町田圭祐は、交通事故に遭い高校では放送部に入ることに。圭祐を誘った正也、久米さんたちと放送コンテストのラジオドラマ部門で全国大会準決勝まで進むも、惜しくも決勝には行けなかった。三年生引退後、圭祐らは新たにテレビドキュメント部門の題材としてドローンを駆使して陸上部を撮影していく。やがて映像の中に、煙草を持って陸上部の部室から出てくる同級生の良太の姿が発見された。圭祐が真実を探っていくと、計画を企てた意外な人物が明らかになって……。
『半逆光』
谷村 志穂 KADOKAWA 1,870円(税込)
息子が就職して家を出たことを機に部屋を片付けていた香菜子。クローゼットの奥にしまわれたPCを開き、夫のメールを見つけてしまう。そこには、夫と女が親密に名前で呼び合い、2人が子供のように育てていた猫が死んでしまったなど、21年以上にわたるやりとりが書かれていた。おかしい。21年前といえば、香菜子が必死に幼い息子を育てていた頃なのに。夫と女の間に何があったのか。その後、彼女は「不倫小説の傑作」とも評価された1冊の小説を出版していることが分かって――。
『花下に舞う』
あさの あつこ 光文社 1,760円(税込)
口入屋の隠居と若女房が殺された。北定町廻り同心、木暮信次郎は、二人の驚愕の死に顔から、昔、亡き母が呟いた「死の間際、何を見たのであろうか」という言葉を思い出す。岡っ引、伊佐治、商いの途に生きようと覚悟する遠野屋清之介とともに、江戸に蔓延る闇を暴く。待望の「弥勒」シリーズ最新作!
『なごり雪』
新堂 冬樹 KADOKAWA 1,760円(税込)
「なごり雪に願い事をすれば叶うって、小学生の頃に読んだ本に書いてあったの」 トップモデルの海斗の密着取材をするため、スイスを訪れたファッションライターの小野寺古都。季節外れのなごり雪が舞うチューリヒ湖畔で、古都はわざと露悪的に振る舞う海斗の真の姿を探ろうとする。やがて似た者同士の二人は惹かれあうが、幸せも束の間、海斗が交通事故で半身不随となってしまった。死を望む海斗と、生を望む古都。究極の選択を迫られた二人の愛の行方は?
『本日も晴天なり 鉄砲同心つつじ暦』
梶 よう子 集英社 1,925円(税込)
時は幕末。江戸城下、大久保の地。長く泰平の世が続き、代々この地を守ってきた鉄砲同心たちは火薬の原料を転用したつつじ栽培の内職に励み、時季には美しい花々を求めて多くの人が集まる江戸名所となっていた。礫(つぶて)家はつつじ作りに類まれな才を発揮する丈一郎、頑固者の父・徳右衛門、物忘れが多くなってきた祖母・登代乃、温和な母・広江、勝気な嫁・みどり、生真面目な息子・市松の六人暮らし。喧嘩も笑いも絶えない一家が大小様々な事件に巻き込まれて――。温かな〈お江戸家族小説〉。
『千里をゆけ くじ引き将軍と隻腕女』
武川 佑 文藝春秋 1,980円(税込)
峠で茶屋の給仕をする娘・小鼓は、ある日すべてを失うことになる。都から来た高僧・青蓮院義圓(のちの義教)が、故郷坂本の町を焼き払ったのだ。なぜ私が腕を失わなければならなかったのか? 父親は何者なのか? この腕でどうやって生きていけばいいのか。小鼓は、突如としてこの世の理不尽の渦に巻き込まれた小鼓は自らの力で戦場を渡り歩きながら父の謎を追い、そしてその謎の解明が、義圓への復讐心を育てていく……。
『アウトサイダー 上 下』
スティーヴン・キング,白石 朗 文藝春秋 各2,420円(税込)
惨殺事件の日、彼は旅行に出ていたはずだった。無実の男を陥れた〈アウトサイダー〉。悪意に満ちた「それ」を倒すことはできるのか。
『断絶 (エクス・リブリス)』
リン・マー,藤井 光 白水社 3,740円(税込)
中国が発生源の未知の病「シェン熱」が世界を襲い、感染者はゾンビ化し、死に至る。無人のニューヨークから最後に脱出した中国移民のキャンディスは、生存者のグループに拾われる……生存をかけたその旅路の果ては? 中国系米国作家が放つ、震撼のパンデミック小説!
『漂泊者』
ジム・トンプスン,牧眞司,土屋晃 文遊社 2,750円(税込)
恐慌後のアメリカで、職を転々としながら出会った風変わりな人々、巻き起こる騒動――流浪のなかで書き続けた日々を描く自伝的小説。
『子どもの算数、なんでそうなる?』(岩波科学ライブラリー)
谷口 隆著 岩波書店 1,540円(税込)
その突拍子もない発想や間違いの奥には何があるのだろう。子どもの言動は、一見意味不明でも、よく聞き出すと、子どもなりに一貫した考えや理由をもっていることが多い。数学者である父親が、わが子と算数を考えることを楽しみながら、子どもの頭の中で何が起きたのかを推理する。学びとは何かを深く問いかけるエッセイ。
『謎解き 鳥獣戯画』 (とんぼの本)
芸術新潮編集部 新潮社 2,200円(税込)
あのウサギやカエルたちの絵巻は、謎の多さでもピカ一の国宝。知られざる見どころを伝えます。全巻全場面一気見できる特別折込付き。
『扉はひらく いくたびも-時代の証言者』
竹宮 惠子,知野 恵子 中央公論新社 1,650円(税込)
生い立ち、葛藤に直面した青春時代、名作『風と木の詩』『地球へ…』創作秘話、学問としてマンガを教えるという試み…時代と共に駆け抜けた、その半生を語りおろす。読売新聞連載時から大反響! 未知の表現に挑み続ける漫画家、竹宮惠子の決定版自伝。
『「メタルの基本」がこの100枚でわかる!』 (星海社新書)
伊藤 政則ほか,増田 勇一,荒金 良介,奥村 裕司,川嶋 未来(SIGH),後藤 寛子,鈴木 喜之,高橋 祐希,武田 砂鉄,行川 和彦,西廣 智一,長谷川 幸信,山﨑 智之,梅沢 直幸(『ヘドバン』編集長) 星海社 1,155円(税込)