ここ数ヶ月いろいろ読んできた中で面白い作品がわりとストックされてきたので、今回はその中から面白かった作品を15点紹介したいと思います。
面白そうだと思ったらわりといろいろ手を出しているので、こういうのを作ろうと思ったとき、どこまで入れるのかどこで区切るのかいつも迷います。適度なタイミングとか点数がいつも難しいです(苦笑)
読みたい本が多すぎて、ラノベ以外はあまりリアルタイムで読めていなかったりもしますが、どれも面白い作品なので気になる本があったらぜひ読んでみてください。
1.コーチ! はげまし屋・立花ことりのクライアントファイル (講談社文庫)
コーチ! はげまし屋・立花ことりのクライアントファイル
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青木 祐子 講談社 2021年03月12日
流されるままに25年生きてきたことりの転職先「はげまし屋」。おんぼろマンションの一室にあるオンライン専門の人生相談所での奮闘記。身近には打ち明けられないひそかな悩みを抱える、いいね探しの派遣社員、白雪姫に恋したカサノバさん、小説家志望の実家住まいのアラサー女子、行動力あるちょっと変わったネットビジネス志望など、顧客との距離感が難しそうだなあと思いながら読んでましたけど、偶然見つけたこの仕事にいつの間にかのめり込んで、ひとつひとつに真摯に向き合っていくことりの姿に、読んでる自分も応援されている気がしました。
2.廃墟の片隅で春の詩を歌え(集英社オレンジ文庫)
革命により王政が倒れた国・イルバス。最北の辺境に建つ『廃墟の塔』に幽閉されていた前国王三姉妹の末王女アデールが、姉王女ジルダの命を受けたエタンに手引され脱出を図るファンタジー。アデールを救い出したジルダの打算。そんな彼女と関係があり指導役となったエタンと、女王として凱旋したジルダと共に国に戻ったアデールにもたらされるグレンとの結婚。ジルダと戻ってきた次王女ミリアムが対立する不穏な構図の中で、不器用なグレンとの関係に向き合い、本来の姿を少しずつ取り戻してゆくアデールのこれからがとても楽しみなシリーズですね。21年3月3巻目刊行予定。
3.Y田A子に世界は難しい (光文社文庫)
訳アリで自我を宿したAI内蔵人型ロボットとして生まれ、和久井秋彦に救われて彼の家に居候することになった瑛子。そんな彼女が家族の勧めで高校に入学する青春AI家族小説。作った人の趣味もあって見た目は人間らしくても、描かれるティテールに彼女はロボットなんだなと感じさせられましたが、最初友達を作ろうとして空回りする姿がヤバいなと思った瑛子が、アルバイトや部活動に挑戦したり、友人の家族問題に巻き込まれていく中で、大切な友人や家族たちに認めれられ、将来に希望を見出すようになってゆく結末にはぐっと来るものがありました。
4.王女の遺言 1 ガーランド王国秘話 (集英社オレンジ文庫)
政略結婚で異国に嫁ぐことが定められた王女アレクシアと、驚くほどそっくりな顔をした少女ディアナとの一度きりの邂逅。身分も境遇も正反対の二人が、運命のいたずらに翻弄されてゆく物語。隣国の王太子との政略結婚に向かう道中の船上で襲われ、苦難続きでも決して諦めないアレクシア。いざという時の王女の身代わりとして乗船していたディアナの決意。次期王位を巡る複雑な思惑も絡めながら物語が動き出して、二人がどうなってしまうのか気になる結末でしたけど、アレクシアの方は献身的な護衛官ガイウスの頑張りがポイントになってきそうですね。
5.監獄に生きる君たちへ (メディアワークス文庫)
無視できない手紙で呼び出され、廃屋に閉じ込められた六人の高校生たち。彼らは脱出のため、七年前の花火の夜にここで死んだ恩人・真鶴茜の死の真相を暴けという命題に、あの夜の証言を重ねていく青春ミステリ。児童福祉司だった茜に救われた過去、みんなと見た花火への想い、誰かの不審な行動、そして見え隠れする嘘と秘密。誰もが秘密を抱えていて、他の人が知らなかった茜の新たな一面も見えてきて、その結末は何ともやりきれない感じもしましたけど、何とかしようと懸命に足掻く人たちの思いが報われてほしい、と思わずにはいられませんでした。
6.附子の弁舌 (富士見L文庫)
美容師の貝谷が同窓会で弁護士になった因縁ある異常に口の悪い馬場添泉と再会し、貝谷の周囲で起こるトラブルを彼女が毒舌と法律知識を武器に理不尽をぶったぎる痛快劇。再会してから、なぜか不倫された同級生、結婚相手に実は子供がいた友人、離婚したいオーナー、既婚者に騙された後輩、キャバクラを辞めたい後輩の妹など、貝谷の周囲に次々と問題が発生して、そのたびに馬場添に頼らざるをえない状況に陥るのには苦笑いでしたけど、口は悪くても垣間見える依頼者のために奔走する馬場添たちの奮闘ぶりや、腐れ縁な二人の応酬も面白かったですね。
7.俺たちはそれを奇跡と呼ぶのかもしれない (光文社文庫)
「俺」はいったい誰なんだ?目覚めるたびに別人に成り代わる。そんな状況で目にした「カップル連続惨殺犯」の文字に強い衝撃を受けるミステリ。年齢も性別もバラバラで、脈絡があるのかどうかもわからないまま、別人の視点から体験してゆく様々な出来事。そして不可解な現象が続く中で見えてくる連続惨殺事件との関わり。自分は一体何者なのか、そしてこの状況で何をすべきなのか。試行錯誤を繰り返す中で問い続けた主人公が、見逃してはいけなかった大切なことを見出し、きちんと向き合おうとする姿がとても印象的な物語でしたね。面白かったです。
8.あくまでも探偵は (講談社タイガ)
同級生の行方不明になった飼い犬探しを手伝っていた高校生・平優介が、その過程で知り合った頭脳明晰、眉目秀麗な森巣良。タイプの違う二人で動物の不審死事件を追いかけるうちに、彼の裏の顔を知ってゆく青春ミステリ。連続動物クビキリ事件の真相、ネット配信された強盗と暗号、弾き語りする僕に投げ銭された百万円と不審なゾンビ、それら背後にいる狡猾な黒幕。独特な価値観で動く探偵・森巣とそれに振り回される平がコンビで事件を解決する展開で、事件を通して育まれてゆく二人の不器用な友情が印象的な物語でした。シリーズ化期待しています。
9.今夜、もし僕が死ななければ (新潮文庫)
十歳で交通事故に遭い両親と妹を失ったことで、死の近づいている人がわかってしまう新山遥。見て見ぬふりのできない彼が、死の近い人々に声をかけ寄り添ってゆく物語。かつて愛した妻への悔恨を抱えながら死期を待つ男、入院中のお母さんの死期を教えてほしいという女子高生、バイト先の先輩の連れ合い、そして生まれてくる我が子。切ないエピソードも多いですが、迷いを抱えながらも死に向き合ってきた遥だからこそ、彼を大切に思ってくれる人、かけがえのない存在が周囲に増えていって、その力の意味を知る結末にはぐっと来るものがありましたね。
10.庶務省総務局KISS室 政策白書 (ハヤカワ文庫JA)
2020年、世界を襲ったSARSインパクトで激変した国際社会。庶務省総務局、経済インテグレート・サステナブル・ソリューション室、通称KISS室の島崎室長と部下の中村君がエレガントな政策提言を手掛けていくショートショート15篇。地球温暖化問題や働き方改革など、他省庁からたらい回しにされてくる近年の重要課題に対して、ぐうたらなダメ上司に丸投げされ地味にハイスペックな中村君が次々と繰り出す政策提言が斜め上だけど鋭くて、二人のぐだぐだな会話のじわじわ来る感じが効いていて、いつもと違う感じでしたけど面白かったです。
11.サクラオト (集英社文庫)
「桜の音が聞こえる人は、魔に魅入られた人なんだって」 五感をテーマに描かれる謎と闇五編とExtra stage「第六感」からなるミステリ連作短編集。朝人が詩織を連れ出した満開の夜桜の下で語られる、少女が起こしたクラスメイトの毒殺、恋人同士の扼殺、中学教師による教え子殺し。母を亡くした姉弟の関係、再会した先輩の死、甘いケーキが食べられない理由、囚われていたもの、そしてそれらの伏線を絡めながら最後に語られるエピソードもまたなかなか興味深くて、振り返ってみると違った意味合いも見えてくるとても印象的な物語でした。
12.お電話かわりました名探偵です (角川文庫)
Z県警本部の通信指令室。異様に奇妙な電話を引き寄せてしまうイケボイスの早乙女廉を、隣席の万里眼こと君野いぶきが助け、電話の情報のみで事件を解決に導いていく警察ミステリ。早乙女が次々と引き当てるイエが盗まれた、大根が食べられた、マンションに幽霊がいる、家の壁に落書きがされている、女の人が刺されたといった不審な通報を、電話で話しているだけで真相に辿り着いてしまういぶきの洞察力が凄まじいですが、彼女の指名で隣の席にいるのにたびたび甘酸っぱい距離感を台無しにする鈍感な早乙女のヘタレっぷりがもどかしいですね(苦笑)
13.死にたがりな少女の自殺を邪魔して、遊びにつれていく話。 (宝島社文庫)
死にたがりな少女の自殺を邪魔して、遊びにつれていく話。
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星火 燎原 宝島社 2021年03月04日
死神と取り引きをし、寿命が3年になる代わりに時間を24時間巻き戻せる時計を手に入れた相葉純。そんな彼が時計の力で自殺願望の強い少女一之瀬月美の自殺を邪魔し続けるうちにその関係が変わってゆく小さな恋の物語。月美の自殺を知るたびに、時間を巻き戻してその自殺を阻止することで始まった二人の奇妙な交流。お互い閉塞した日常と生きづらい日々を共に過ごしていくうちに積み重ねられてゆく想い。自覚してしまえばそう簡単に忘れられるわけもなくて、どこまでも諦めの悪い二人に死神も呆れた苦笑いの結末にはぐっと来るものがありましたね。
14.ひまりの一打 (集英社文庫)
クビ寸前の暴走女性プロゴルファー中原ひまりが、酒浸りの元賞金王・三浦真人と運命の再会を果たし、窮地を脱すべく二人三脚で奮闘するゴルフ小説。プロにはなったものの二年目にしてその無謀なプレーで成績不調に陥り、スポンサー契約継続の危機に陥っていたひまり。事故で一線から退いていた真人との思ってもみなかった再会から、真人のアドバイスで気づいたこと、宿命のライバルとの邂逅、そして焦燥からの衝突と、繰り広げられるストーリーはド王道で、だからこそ最後まで諦めない分かりやすくて熱く燃える展開にはぐっと来るものがありました。
15.輝け! 浪華女子大駅伝部 (光文社文庫)
マラソンの世界陸上の出場権を逃した後、女子大の親切駅伝部の監督オファーを受けて引退することになった千吉良朱里。五人の部員と三年目の全国大会出場を目標に奮闘する青春小説。部活新設で文字通りゼロからのスタートで、選手集めから苦労したり、始めたばかりの指導者生活がなかなか思うようにいかない中で、周囲の助けを得たりして、地道な積み重ねが選手たちの成長に繋がってゆくのを実感できる展開はいいですよね。何が起こるかわからないレース当日もまたなかなかグッと来る展開で、朱里と教え子たちのその後をまた読んでみたくなりました。
以上です。気になる本があったらぜひ読んでみてください。