またもや思いつきで始めてしまった連休に読みたい本企画。
今回は第二弾ということでライトノベル編です。ライトノベルの方は昨日時点ではほんと全くのノープランだったので、いざ実際に選ぼうとしてみると1冊で読める単巻もので、これまであまり紹介していない面白い本…という前提だと思っていた以上にハードルが高くて正直頭を抱えましたが、いろいろ試行錯誤の末に選んだ10点を紹介したいと思います。
1.読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)
※「三角の距離は限りないゼロ」にも登場する細野と柊時子メインの物語。
期待もない新学年のホームルーム。高校生・細野亮の前に愛してやまない物語の中にいた「トキコ」そのままの少女・柊時子が現れる出会うはずがなかった読者と主人公の物語。見れば見るほどそのままの時子との出会い。一緒に過ごしてゆくうちに想いが少しずつ積もってゆく一方で、自分の中で湧き上がってくる違和感。主人公の周辺を切り取ったようなクローズな世界観で、あまりにも不器用な二人の距離感にもどかしくもなりましたが、物語をきっかけに知り合った二人が物語で心を通わせて、これからの二人の世界の広がりを予感させる素敵な物語でした。
2.さびしがりやのロリフェラトゥ (ガガガ文庫)
ぼくらの学校には吸血姫がいる。書くことを止めた高校生作家・常盤桃香、学校に住む風変わりな吸血鬼、正義のために戦う風吹、いじめっ子を装いつつ風吹を気にかける真光寺、それぞれの視点から紡がれる物語。最初は切ない雰囲気のストーリーと感じていましたが、視点が切り替わるたびに登場人物たちの印象や行動の意味合いもどんどん変わっていってビックリしました(苦笑)著者さんらしいテイストで描かれる不器用な彼女たちの交流はとても暖かいのに、それらが噛み合わずすれ違う哀しい展開。どこかやるせなさを感じずにはいられない物語でした。
3.親友の彼女を好きになった向井弘凪の、罪と罰 (ダッシュエックス文庫)
親友に彼女が出来たと紹介されたのは、自分が電車でずっと気になっていて声を掛けようと思っていたあの女の子だった。過去一人の女の子との関係で親友の遥平を傷つけた負い目を感じている弘凪。遥平が口説き落とした古都を彼の彼女と認めないといけないと感じながら、なぜか彼女とあちこちで遭遇してしまい、趣味が近いことを知り、一緒にいろいろな経験を重ねて、惹かれ合わずにはいられなくなっていく二人。でも裏切れずどうすべきか苦悩する姿は苦しいけれど切なくて、でも最後はほろ苦いながらも良かったなと思える著者さんらしい作品でした。
4.1/2―デュアル― 死にすら値しない紅 (角川スニーカー文庫)
1/2-デュアルー 死にすら値しない紅
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カスカベ アキラ/森バジル KADOKAWA 2018年12月29日頃
殺されヒトとしての一部分を失い、引き替えに特殊能力を得て生き返る偽生者。偽生者を殺し直すために生きる限夏が、不老不死な偽生者の少女・伴を相棒とする近未来SF。ぎこちない距離感から始まった二人が挑む、偽生者による国家統一を掲げたテロ事件発生と、首謀者と伴を巡る凄惨な因縁。そんな彼女に限夏がいかにして並び立つ存在になりうるのかが問われる展開でしたけど、絶妙のタイミングで複雑な過去や葛藤も絡めつつ、絶望する彼女が直面する最悪の状況にも最後まで諦めずに挑み、見事に伴の相棒たることを証明してみせた結末は見事でした。
5.青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中 (電撃文庫)
ARの技術が進化したアキバ特区でオタクの歩夢が偶然出くわしたスクールカースト最上位の同級生衣更着アマタ。歩夢がアマタに近づいた時、特区のAR空間に重篤な異変が発生してしまう青春小説。特区のバグ解消のためもあってオタショップバイト仲間の腹黒ロリっ子瑠璃や金髪コスプレ女ノエルの悩みに一緒に向き合ってゆく歩夢に突きつけられた、アマタの意外な正体と自身の過去の苦い思い出。失敗を悔いていたからこそ今があって、特区や歩夢に救われた人たちがいて、悩める不器用な登場人物たちの成長とほのかな想いを応援したくなる物語でした。
6.夜明けのヴィラン 聖邪たちの行進 (ダッシュエックス文庫)
ヒーローと悪人であるヴィランの存在が科学的に証明された世界。最凶最悪のヴィランの息子として生まれた高校生のユウマが、Dr.デブリードマンが巻き起こしたヒーロとヴィランの境を超えた壮大な戦いに巻き込まれてゆく物語。分かりやすいヒーローとヴィランの構図がどこかアメコミっぽい雰囲気でしたが、ヒーローを次々と殺しテロを仕掛けるDr.デブリードマンと超人協会の因縁もあり、立ち位置の難しい主人公や正義とは何かというテーマをテンポの良い読みやすい文章で上手く描いていたと思いました。
7.理系な彼女の誘惑がポンコツかわいい (角川スニーカー文庫)
セレブの子息令嬢が通う私立瑛銘学院。外部編入ながら学院首席の久遠寺梓と、名家のお嬢様で数学の天才・弥勒院由槻が学院の特権を賭け相手に告白させる恋愛ゲームに挑む学園ラブコメディ。容姿端麗で数学の天才だけど生活力皆無で本末転倒な理論に陥るポンコツかわいい由槻。ちゃっかりした由槻の付き人・彩霞や常識人の楓音もゲームに巻き込まれて、真面目にやればやるほどどんどんズレていって、でも素直になれない由槻が時々見せるハッとするような破壊力が凄い(苦笑)いやもう二人のバカバカしい攻防をいつまでも眺めていたいと思いました。
8.先生とそのお布団 (ガガガ文庫)
売れない中年ライトノベル作家・石川布団と人語を解す「先生」と呼ばれる不思議な猫とがつむぎ合う苦悩の日々が描かれる私小説的執筆譚。これはどこまでが実話なのか妄想なのかいろいろと想像してしまうくらいにはリアリティを感じる展開でしたけど、遥か年下の女の子がどんどん飛躍していく一方で、他社への持ち込みや企画がボツになったり何度も打ち切りを食らったり、こうもうまくいかない事が続くとなかなかしんどいですよね...。今の時代に自分の書きたいことを書く作家であり続けることは、つまりこういうことなのかとも思ったりしました。
9.いつかのクリスマスの日、きみは時の果てに消えて (ファミ通文庫)
いつかのクリスマスの日、きみは時の果てに消えて
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瀬尾 つかさ/椎名 優 KADOKAWA 2017年11月30日頃
五年前の大災害をきっかけに、不思議生物ニムエが体内に棲んでいる悠太。同じようにニムエを飼っていた同級生恵と出会い、二人で過去の大災厄回避と亡くなった恵の幼馴染・玖瑠美の救出を目指す物語。ニムエをきっかけに急速に距離を縮める二人の微笑ましい関係。ニムエを使い過去に戻る方法を発見して始まった計画の成果と思ってもみなかった大きな代償。それまでの展開を考えると悠太に突きつけられた運命の選択肢はあまりにも絶望的なものでしたけど、それでも諦めなかった彼らの機転と覚悟で乗り越え再構築されてゆく結末はとても良かったです。
10.世界は愛を救わない (講談社ラノベ文庫)
幼馴染で文芸部に所属し、ささやかな特殊な力を持つ壇上貫地と石野美香、阿久津吾郎。その力を使って世界征服を目指す彼らが、目的を叶えるために求めていた能力を持つ後輩・開田環子と出会う青春小説。それぞれが抱える人に言えない密かな想いを叶えるため世界征服を目指していた三人と、その危うくも均衡していた彼らの関係に波紋を投げかけた環子の能力。当初の世界征服目標はやや消化不良な感もありましたけど、葛藤しながらも決着をつけてゆく三者三様の決断はどこまでも自らの想いに真摯で、彼らのその後が描かれたエピローグがとても印象的な物語でした。
以上です。気になる本があったらぜひ読んでみて下さい。