前回作った以下の記事が思った以上に好評だったようなので、第二弾として今年刊行されて読んだキャラ文芸の中から、単巻もの、あるいは今後のシリーズが期待される第一巻目を25作品を紹介したいと思います。正直なところ該当する面白い作品が多すぎて、30作品に拡充することもちらりと頭をよぎりましたが、最終的には25作品に揃えました。読む本を選ぶときの参考にしていただければ幸いです。
1.恋に至る病 (メディアワークス文庫)
善良だったはずの幼馴染の少女がいかにして化物へと姿を変えたのか。150人以上の被害者を出した自殺教唆ゲームを作り上げた誰からも好かれる女子高生・寄河景と宮嶺の複雑な関係が描かれるミステリ。宮嶺への壮絶ないじめをきっかけに始まった景の変貌…自殺教唆ゲームはどんどんエスカレートして、彼女とともにあろうとする宮嶺はどんどん景のことが分からなくなっていって、そんな危うい状況の先にあった結末と、洗脳だったのか歪んだ純愛だったのか最後に気づいてしまう可能性、それでも変わらない彼女への想いが鮮烈で印象に残る物語でした。
2.流転の貴妃 或いは塞外の女王 (集英社オレンジ文庫)
流転の貴妃 或いは塞外の女王
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喜咲 冬子/巖本 英利 集英社 2020年01月17日
商人の娘として生まれ、後宮の貴妃になった柴紅玉。それが勢力を拡大しつつある北方の遊牧民族の盟主へと嫁がされることになり、さらにその途上で嫁ぎ先の敵対部族による襲撃で攫われてしまう中華風浪漫譚。帝の寵愛はなくとも後宮で謳歌していた生活から、二転三転する運命に翻弄され激変する紅玉の人生は大変だなあと思わずにいられませんでしたが、族長の末子アマルの妻となった彼女があるべき姿を見定めて覚悟を決め、遊牧民族の妻としては型破りな、けれど自分らしいやり方でアマルを支えるようになってゆく姿にはぐっと来るものがありました。
3.処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな (新潮文庫)
処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな
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葵 遼太 新潮社 2020年05月28日頃
留年して二回目の高校三年生となった佐藤晃に話しかけてきた同級生・白波瀬巳緒。それをきっかけに居場所がないと思っていた学校で周囲に輪ができて、かけがえのないものを取り戻してゆく喪失と再生の青春小説。留年の経緯で明らかになってゆく深い愛には驚かされましたが、あっけらかんとしたギャルの白波瀬巳緒、綺麗な声が耳に残る少女・御堂楓、そしてアニメ好きな和久井と出会い、大切な友人・藤田たちにも支えられながら、みんなで結成したバンドを通して熱い想いをぶつけ合い、未来に希望を見出してゆく結末にはぐっと来るものがありました。
4.仙文閣の稀書目録 (角川文庫)
そこに干渉した王朝は程なく滅びるという伝説の巨大書庫・仙文閣。帝国春の少女・文杏が、危険思想の持主として粛清された恩師が遺した唯一の書物を届けるべく訪れ、仙文閣の典書・徐麗考と出会う中華ファンタジー。麗考に救われたものの、無事蔵書される心配で住み込むことになった文杏が知る壮大な仙文閣の威容。文杏を持ち込んだ書物を巡って、権力に屈しない図書館めいた仙文閣で必要とされる資質が問われる展開でしたけど、知識云々よりももっと大切なことがあるんですよね。文杏がこれからどう成長してゆくのかまた読んでみたいと思いました。
後宮染華伝 黒の罪妃と紫の寵妃
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はるおか りの/Say HANa 集英社 2020年06月19日
諍いの絶えない後宮を治めるため、凱帝国皇帝・高隆青の皇貴妃となった共紫蓮。聡明さを買われて入宮した紫蓮が、職務上の信頼関係で結ばれた隆青を巡る妃たちの野心と嫉妬に巻き込まれてゆく中華風ファンタジー。皇太后・李飛燕の後ろ盾の下で蔡貴妃と許麗妃の派閥がぶつかり合う後宮を統率する紫蓮、そしてかつて隆青が寵愛した冷宮にいる元皇貴妃・黛玉の存在。より重厚な雰囲気にシフトする中で対比するように様々な愛が描かれましたが、重責に苦悩する隆青と彼を支える覚悟を決めた紫蓮がぶつかり合いながら育んでいく絆がとても印象的でした。
廃妃は再び玉座に昇る 耀帝後宮異史
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はるおか りの 小学館 2020年07月07日
残虐非道な凶后の姪として政変で断罪され、天下万民の怨敵として刑場に引っ立てられた先帝の廃妃・劉美凰。死ねずに幽閉された血染めの廃妃が、十年ぶりに後宮に帰還する中華風ファンタジー。彼女の身に宿る奇しき力を必要とし、皇太后とした現皇帝・天凱。表向きは白き喪服をまとった皇太后として、裏では天凱と一緒に都で猛威をふるう鬼病の原因を突き止めるため、未だ怨憎が煮えたつ禁城に舞い戻った美凰の苦悩がまた壮絶で、二人の愛憎が入り交じる複雑な因縁があまりにも切なくて、そんな二人の行く末がとても気になる注目の新シリーズですね。
7.香港シェヘラザード 上・下 (富士見L文庫)
香港シェヘラザード 上・蕾の義
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三角 くるみ/猫将軍 KADOKAWA 2020年02月15日頃
誘拐された邦人家族から相談を受けた香港赴任中の新人女性外交官・秋穂。黒幕は香港最大の黒道組織・七海幇と判明したものの、証拠が足りず踏み込めない中、幹部の男・立花と出会う絶望と再生のラブサスペンス。商社マン・笹森が一瞬目を離した隙に誘拐された妻・蓮子の絶望。犯人は明らかなのに安易には手を出せないもどかしさと、危険な匂いのする立花との出会いがあって、急展開後も続く過酷な環境でもかすかな希望を諦めない蓮子と彼女を支える女医の梨令、そして秋穂と立花の因縁がどんな結末を迎えるのか、緊迫感のある展開が面白かったです。
香港シェヘラザード 下・花の奸(2)
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三角 くるみ/猫将軍 KADOKAWA 2020年02月15日頃
同僚の木内たちと協力して、誘拐された蓮子の行方を追う 新人外交官の秋穂。そんななか、七海幇当主の三男である月龍の屋敷が突然襲撃される下巻。捜査過程で蓮子に繋がる手がかりを得たものの、救出を目前にして彼女を保護しそこなってしまう秋穂たち。事態が急展開を迎える中で、秋穂が立花に会いに行く決断をしたことが事件としても物語としても大きな転機に繋がりましたかね。彼女を取り戻せるのか緊迫した状況での劇的な救出劇でしたけど、救われたから万事解決ではないのがまたほろ苦かったですね…。立花と秋穂の関係も気になるところです。
8.青ノ果テ :花巻農芸高校地学部の夏 (新潮文庫nex)
東京からの転校生・深澤がやってきてから、壮多も幼馴染の七夏もおかしくなった。彼女が姿を消す前に託された約束を胸に、壮多は深澤と先輩の三人で宮沢賢治ゆかりの地を巡る巡検の旅に出る青春小説。将来の展望もないまま鹿踊りにのめり込んでいた壮多が、転校生・深澤と七夏の急接近で突き付けられた焦燥と動揺。彼女不在で複雑な想いを抱えたまま臨んだ男三人の旅で、それぞれの抱く想いに触れて、宮沢賢治ゆかりの地やそのゆたかな情景に魅せられて、過去に向き合い乗り越えようとする彼らの成長とその結末にはぐっと来るものがありましたね。
9.父親を名乗るおっさん2人と私が暮らした3ヶ月について (メディアワークス文庫)
父親を名乗るおっさん2人と私が暮らした3ヶ月について
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瀬那 和章 KADOKAWA 2020年04月25日
たった一人の家族だった母親を病気で亡くした高校二年生の新田由奈。葬式の当日、由奈の前に金髪でチンピラ風の竜二と、眼鏡でエリート官僚風の秋生、父親を名乗るおっさん2人が現れる物語。今の家に住み続けたいという由奈に願いに、同じアパートへと引っ越してきた二人。最初はタイプも違う二人にイライラしっぱなしだった由奈も、いい加減にしか思えなかった母の真意を彼らの中に見出すうちに少しずつ変わっていって、状況が二転三転する中で彼らの優しさに気づき、育まれていったかけがえのない絆を見出してゆくとても素敵な家族の物語でした。
10.有閑貴族エリオットの幽雅な事件簿 (集英社オレンジ文庫)
有閑貴族エリオットの幽雅な事件簿
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ヴィクトリア朝の英国を舞台に、社交界で浮名を流し風雅と博物学を愛する有閑貴族エリオットが、オカルト事件に目がない幽霊男爵として美貌の助手コニーを従え、持ち込まれる幽霊絡みの依頼に挑む物語。沈黙の交霊会、ミイラの呪い、天井桟敷の天使といった事件に、周囲を振り回しながら喜々として挑むエリオット主従はなかなか楽しいキャラたちで、けれど向き合った事件の真相にはどこまで真摯で、そんな彼らがあるのも二人に壮絶な過去があったからなんですよね。でもいつかその過去を乗り越えて欲しいですし、また彼らの活躍を読んでみたいです。
11.さようなら、君の贖罪 (集英社オレンジ文庫)
佐久の部屋に突如現れたパジャマ姿の少女とアザラシ。意味が分からないまま目を覚ました少女たちが消えてしまい、そんな彼女・卯月が同じ高校の生徒だと知る青春小説。精神が不安定になるとテレポート能力で勝手に飛んでしまい、いろいろなものを持ってきてしまう卯月と、一度見たら忘れない記憶力を持つ佐久。佐久の友人蓮野との関係も絡めつつ、特別と過ちを抱えた不器用な二人が、一緒に持ってきたものを返してゆく過程で育まれてゆく想いとすれ違い、ぶつかり合って過去を乗り越えた先で再構築されてゆく新たな関係がなかなか素敵な物語でした。
12.明けない夜のフラグメンツ (メディアワークス文庫)
明けない夜のフラグメンツ あの日言えなかったさよならを、君に
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青海野 灰 KADOKAWA 2020年06月25日
高校入学の直前、恋人を目の前の事故で失った燈。心の傷が癒えないまま高校生となった彼女が、唯一の居場所となった図書室にあった共用の「読書ノート」で顔も知らない生徒と文章を介した交流を始める物語。保健室登校を続ける燈に心境の変化をもたらした読書ノートでの交流。不思議に気が合う相手とのやりとりから再び時が動き出して、事故から険悪な関係に陥っていた友人とも向き合えて、新たな一歩を踏み出すきっかけに繋がってゆく二人のやりとりは切なかったですけれど、お互いを大切に想う気持ちが感じられた結末がとても印象的な物語でした。
13.水曜日が消えた (講談社タイガ)
周期性人格障害を抱え、曜日ごとに人格が切り替わる僕。これまで一週間のうち火曜日しか生きてこなかった七人のうちの一人が、初めて水曜日を経験し世界が広がってゆく物語。いつもは定休日の飲食店、入ったことのない図書館、そして初めて出会った恋。過ごす曜日が違うと世界もまた違って見える感覚がなかなか興味深かったですが、裏を返せば自分が他の曜日を過ごせている理由にも気づいてしまうわけで、迎えた転機に自分がどうあるべきか、自分にとって大切なものは何か、知ってしまったがゆえの葛藤の末に出した結論がなかなか素敵な物語でした。
世界に七人しかいない錬金術師。その一人アスタルト王国のテレサ大佐が、お目付け役エミリア少尉と赴いた蒸気都市トリスメギストスで錬金術師フェルディナント三世の殺人件に遭遇するファンタジーミステリ。フェルディナント三世が成し遂げたという魂の解明。三重密室で起きた殺人事件の容疑を晴らすため、破天荒なテレサと振り回されるエミリアのコンビで事件解決に挑む展開でしたが、事態が二転三転する中で見えた意外な真相と、因縁に導かれるように出会った真逆の似た者同士の結末には唸らされました。これは続巻に期待せずにはいられませんね。
15.満月珈琲店の星詠み (文春文庫)
満月の夜にだけ開く不思議な珈琲店。優しい猫店主が招いた悩める人々を、極上のコーヒーとスイーツ、そして占星術で運命を読む「星詠み」で癒し導いてゆく連作短編集。時代の変化に取り残されたシナリオライター、心に傷を抱えたプロデューサーとスキャンダルに直面した女優、エンジニアが遭遇した初恋の人。どこかうまく行かない状況で巡り合う珈琲店との出会いでは、猫店主の美味しいおもてなしと占星術による導きが転機に繋がっていて、苦境に向き合って充実した日々を送るようになってゆく登場人物たちのその後がなかなか印象的な物語でしたね。
16.あなたが心置きなく死ぬための簡単なお仕事。 (角川文庫)
あなたが心置きなく死ぬための簡単なお仕事。(1)
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才羽 楽 KADOKAWA 2020年06月12日
不況によりなんでも屋から「やり残し請け合い屋」に転身した日賀テルが、押しかけWEBコンサル女子・木崎すずを助手に、もたらされた依頼を解決してゆく物語。かつての想い人が育てていた花、余命僅かのためうまく別れたいと願う夫婦、記憶喪失状態な友人の持っていた日記の真実、そして幽霊からの電話の招待、そしてテルに届く差出人不明の依頼。テルとすずの二人で時には衝突し、助け合いながら依頼を解決してゆくコンビっぷりがなかなかいい感じで、だからこそ最後の急展開は切なかったですけど、とても優しくて素敵な物語だったと思いました。
17.今夜、世界からこの恋が消えても (メディアワークス文庫)
今夜、世界からこの恋が消えても(1)
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一条 岬 KADOKAWA 2020年02月22日
無色透明な人生を送っていた高校生の透が、何となく流されるまま日野真織に嘘の告白をしたことで始まった偽りの恋と愛の物語。真織が提示した彼女になるための三つの条件。彼女の友人・綿矢も交えつつ共に過ごす中で変わってゆく真織への想い、そして真織が告げる彼女が隠していた秘密。一日一日大切に積み重ねてゆく日々は彼らにとってかけがえのないもので、真織への透の提案は変化のきっかけとなって、思いもよらない急展開でしたけど、彼女を精いっぱい愛し続けた透と、そんな想いに真摯に向き合おうとする真織の姿がとても印象的な物語でした。
18.神招きの庭 (集英社オレンジ文庫)
豊穣と繁栄を招く反面、ひとたび荒ぶれば恐ろしい災厄を国にもたらす神々を招きもたらす兜坂国の斎庭。親友の謎の死を探るため、地方の郡領の娘・綾芽が上京する和風ファンタジー。偶然、荒ぶる女神を鎮めてみせ、王弟の二藍に斎庭の女官として取り立てられる綾芽。少しずつ育まれてゆく二藍との信頼関係と、明らかになってゆく親友・那緒の死の真相、そして国の存亡を揺るがす危機。誰を信じればいいのかどうすべきか、ギリギリの駆け引きの先にあった関係は何とも複雑でしたけど、あの二人ならきっと乗り越えて幸せを掴んでくれると信じています。
19.呪殺島の殺人 (新潮文庫)
呪術者として穢れを背負った赤江一族が暮らした呪殺島。伯母・赤江神楽に招待され、友人の古陶里とともに島を訪れた秋津真白が、記憶を失い神楽の遺体の前で目を覚ます密室ミステリ。ミステリ作家の神楽に招かれた8人が密室状態の殺人事件に遭遇し、連絡も絶たれた孤立状態で発生する連続殺人という典型的な展開でしたが、お互い疑心暗鬼な状況で肝心の真白が記憶を失っていることも効いていて、前提を覆される意外な事実と人物配置の妙、これこそ呪いだったのかと唸らされた結末がなかなか印象的でした。続編があるようならまた読んでみたいです。
20.モノノケ踊りて、絵師が狩る。 ―月下鴨川奇譚― (集英社オレンジ文庫)
モノノケ踊りて、絵師が狩る。 -月下鴨川奇譚ー
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美大の日本画科に通う大学生詩子と、幼い頃から知る青年・七森が、二人で散逸した詩子の先祖で江戸末期の妖怪絵師・月舟の百枚連作の妖怪画を探すファンタジー。本物が封じ込められているという月舟の妖怪画を巡る因縁が描かれる展開で、月舟の絵に執着する画商・九十九の暗躍と、複雑な事情を抱える詩子と七森の関係。憑きもの落としや絵を巡る過去の因縁の清算がメインでしたけど、お互い相手をかけがえのない存在と自覚しながらも、なかなか上手く向き合えない詩子と七森の何とも不器用な距離感にはついもどかしい気持ちになってしまいました。
21.海棠弁護士の事件記録 消えた絵画と死者の声 (角川文庫)
海棠弁護士の事件記録 消えた絵画と死者の声(1)
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雨宮 周 KADOKAWA 2020年03月24日
しがない法律事務所を営み、小さな依頼に振り回されてばかり海棠忍。自らが後見人をつとめ事務所に入り浸るようになってしまった15歳の聡明な少女・黒澤瑞葉と事件解決に挑むミステリ。小学6年生の杉浦涼太によってもたらされた、3年前に事故死した祖父から譲り受けるはずだった絵画が何者かの手によって奪われた事件。暴走気味の瑞葉に振り回されながら、事なかれ主義になりきれない忍が事件の真相に迫る展開で、テンポよく散りばめられてゆく一見関係なさそうな小ネタの数々が、後々いろいろ効いてくるのは上手かったです。
22.時は黙して語らない 古文書解読師・綱手正陽の考察 (メディアワークス文庫)
時は黙して語らない 古文書解読師・綱手正陽の考察
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江中 みのり KADOKAWA 2019年12月25日
古文書に傾倒し、周囲から《解読師》と呼ばれる歴史学専修の院生・綱手。研究室で見つかった古文書の返却を任じられた綱手は、友人の相馬とともに瀬戸内海の小さな島を訪れる古文書ミステリ。相馬に振り回されつつ返却を済ませた綱手が遭遇する島に伝わる『白妙姫伝説』を模した連続殺人事件。白妙姫の生まれ変わりと信奉される少女、内容が欠けた謎の手記。専門的な内容になると途端に饒舌になるあたりには苦笑いでしたけど、相馬と二人で古文書から謎を解き明かしてゆく展開はなかなか良かったですね。
23.山神よろず相談所 (角川文庫)
よろず屋を営む3人の兄たちに溺愛される高校一年生の山神結。天然で素直な彼女が不思議で個性的な父や兄たちと持ち込まれた依頼を解決してゆくハートフルストーリー。秋祭りで女装させられていたクラスメイトの佐藤千を巡る人探し、引きこもりの息子と家出娘の捜索、姉と自らの元婚約者の結婚を阻止したい妹といった依頼を調査するストーリーには不穏な展開もありましたけど、期せずして結と兄妹となってしまった千の複雑な想いや、苦境に陥りがちな悩める彼女のために奔走し、温かく見守る家族の想いがとても微笑ましくて素敵な家族の物語でした。
24.鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫 (角川文庫)
鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫
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沙川 りさ KADOKAWA 2020年05月22日
青山領の民が突然変異し鬼となり、小寺領の民を襲い血を吸って殺すようになって30年。故郷から逃げ出し身を潜めて暮らす小寺の民の若き領主・菊が、勇敢な少年・元信に窮地を救われ、運命の出会いを果たす和風ファンタジー。民を救うために強くなりたいと願う菊に剣術を教える元信と、お互い惹かれ合ってゆく禁断の恋の行方。そして旅する薬師の文梧とその助手・主水が出会った少女・竜胆の決意。長らく続いた小寺と青山による因縁の真相と結末はほろ苦くやるせなかったですが、それでも二人で見事本懐を遂げてみせた結末はなかなか印象的でした。
25.鬼恋語リ (集英社オレンジ文庫)
戦いの最前線だった椿ノ郷の若き郷長・雪疾の死を以て一時休戦となった鬼と人間の対立。郷長の妹・冬霞は和平の証として雪疾を討った鬼の頭領・緋天へ嫁ぐ恋と陰謀の和風幻想譚。わずか十二歳で都での人質生活から鬼へ嫁ぐことになった冬霞が知る、緋天の意外な素顔と一枚岩ではない鬼の事情。彼女が探る兄の死の真相と暗躍する人側の事情。幼くて緋天に妹扱いされてしまう冬霞でしたけど、そんな境遇に甘んじない積極性もあって、不安要素も多かった和平交渉のキーマンとなって、鬼たちにも認められてゆく存在に成長してゆく展開は良かったですね。
以上です。気になる本があったらぜひ読んでみて下さい。