読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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4~5月刊行のオススメライト文芸/一般文庫15選

とりあえずアーカイブとして作っておこうと思い作成した以下の記事。 

とりあえず作っておけば多少は参考にはなろうかと思うので、ライト文芸/一般文庫編も作っておこうと思います。どうしてもこういう状況だと遡るのも限界ありますし、どこまで追いかけるのかという現実的な問題もありますが、それでも良かったと思う本は紹介したいですし、これが読みたい本を見つける一助になれば幸いです。

 

1.プリズン・ドクター (幻冬舎文庫)

プリズン・ドクター (幻冬舎文庫)

プリズン・ドクター (幻冬舎文庫)

  • 作者:岩井 圭也
  • 発売日: 2020/04/08
  • メディア: 文庫
 

奨学金免除のため刑務所の矯正医官になり、患者にナメられ助手に怒られ憂鬱な日々を送る是永史郎。そんなある日の夜、自殺を予告した受刑者が変死する医療ミステリ。矯正医官としての鬱屈に要介護状態の母の世話もあってどうすべきか失いかけていた史郎が、CTで発見されなかった病の解明、獄中で起きた突然死や不審死の真相、仮釈放受刑者の拒否問題などに挑む展開で、大学時代の友人たちや恋人の助けも借りながら公私の問題を解決していく中で、徐々に今ここで働いている意味を見出してゆくほろ苦さ混じりの結末にはぐっと来るものがありました。

 

2.仙文閣の稀書目録 (角川文庫)

仙文閣の稀書目録 (角川文庫)

仙文閣の稀書目録 (角川文庫)

  • 作者:三川 みり
  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: 文庫
 

そこに干渉した王朝は程なく滅びるという伝説の巨大書庫・仙文閣。帝国春の少女・文杏が、危険思想の持主として粛清された恩師が遺した唯一の書物を届けるべく訪れ、仙文閣の典書・徐麗考と出会う中華ファンタジー。麗考に救われたものの、無事蔵書される心配で住み込むことになった文杏が知る壮大な仙文閣の威容。文杏を持ち込んだ書物を巡って、権力に屈しない図書館めいた仙文閣で必要とされる資質が問われる展開でしたけど、知識云々よりももっと大切なことがあるんですよね。文杏がこれからどう成長してゆくのかまた読んでみたいと思いました。

 

3.処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな (新潮文庫 nex)

留年して二回目の高校三年生となった佐藤晃に話しかけてきた同級生・白波瀬巳緒。それをきっかけに居場所がないと思っていた学校で周囲に輪ができて、かけがえのないものを取り戻してゆく喪失と再生の青春小説。留年の経緯で明らかになってゆく深い愛には驚かされましたが、あっけらかんとしたギャルの白波瀬巳緒、綺麗な声が耳に残る少女・御堂楓、そしてアニメ好きな和久井と出会い、大切な友人・藤田たちにも支えられながら、みんなで結成したバンドを通して熱い想いをぶつけ合い、未来に希望を見出してゆく結末にはぐっと来るものがありました。

 

4.小説の神様 わたしたちの物語 小説の神様アンソロジー (講談社タイガ)

降田天さんの小説を書けずに悩む作家、櫻いいよさんの本が読めなくなった読者の葛藤、芹澤正信さんの作家にあこがれる投稿者、手名町紗名さんのマンガ、野村美月さんの文学少女と千谷一也の邂逅、斜線堂有紀さんの水浦しずを応援する二人、相沢紗呼さんの編集者河埜さんのエピソード、紅玉いづきさんのAとのエピソードなど、小説の神様を絡めてそれぞれが思い思いのアプローチでらしさを発揮していましたが、久しぶりの野村美月さんも堪能できましたし、最後に配置されていた紅玉いづきさんの書いた文章がまたいい感じに締めていて良かったですね。

 

5.死んでもいい (ハヤカワ文庫JA)

死んでもいい (ハヤカワ文庫JA)

死んでもいい (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:櫛木理宇
  • 発売日: 2020/04/16
  • メディア: 文庫
 

同級生が刺殺された事件の取り調べで「ぼくが殺しておけばよかった」と告白した少年の真意、幼稚園で起きたママ友の災厄の真相、数十年ぶりに再会した義姉、夫のストーカーに殺された妻の想い、三十年ぶりに訪れた街で明かされる事件の真相、そしに著者自身が登場人物となって描かれる書下ろしの「タイトル未定」を含めた連作短編集で、うまくやったと思ったら終わらない恐怖にぞっとさせられたり、意外なところで繋がっていたり、著者さんらしい作品が多かったですが、最後の「タイトル未定」はこれまでとはまた違ったアプローチで面白かったです。

 

6.読書嫌いのための図書室案内 (ハヤカワ文庫JA)

読書嫌いのための図書室案内 (ハヤカワ文庫JA)

読書嫌いのための図書室案内 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:青谷 真未
  • 発売日: 2020/04/16
  • メディア: 文庫
 

読書嫌いな高校二年生の荒坂浩二は、図書委員会で廃刊久しい図書新聞の再刊を任され、本好き女子の藤生蛍とともに本も絡めた数々の謎に挑む学園ミステリ。本が絡むと人が変わる藤生と一緒に挑む「舞姫」を絡めた留学生との関係、美術部の先輩から託されたタイトル不明の感想文の意味、生物の樋崎先生が広めた生物室の怪談の真相。感想文回収のために不器用な二人が真相に挑む展開でしたが、クールでやる気がないように見えるのにいざという時にはビシッと決める主人公の不思議な秘密への伏線は鮮やかで、彼らの物語をまた読んでみたいと思いました。

 

7.父親を名乗るおっさん2人と私が暮らした3ヶ月について (メディアワークス文庫)

たった一人の家族だった母親を病気で亡くした高校二年生の新田由奈。葬式の当日、由奈の前に金髪でチンピラ風の竜二と、眼鏡でエリート官僚風の秋生、父親を名乗るおっさん2人が現れる物語。今の家に住み続けたいという由奈に願いに、同じアパートへと引っ越してきた二人。最初はタイプも違う二人にイライラしっぱなしだった由奈も、いい加減にしか思えなかった母の真意を彼らの中に見出すうちに少しずつ変わっていって、状況が二転三転する中で彼らの優しさに気づき、育まれていったかけがえのない絆を見出してゆくとても素敵な家族の物語でした。

 

8.さよなら世界の終わり (新潮文庫nex)

さよなら世界の終わり (新潮文庫nex)

さよなら世界の終わり (新潮文庫nex)

  • 作者:佐野 徹夜
  • 発売日: 2020/05/28
  • メディア: 文庫
 

ふとしたきっかけから死にかけるたびに未来が見えるようになった高校生・真中。屋上のドアノブで首を吊ってナンバーズの数字を見ようとした昼休み、親友の天ヶ瀬が世界を壊す未来を見てしまう青春小説。彼と同じように死にかけるたびに幽霊が見えるようになる少女・青木、周囲を洗脳できる天ヶ瀬とのゆるく繋がった関係。彼らが抱える辛い過去や、現状や未来に希望を持てない諦めに似た苦悩にはなかなか来るものがありましたが、大切な友を取り戻すため、絶望の未来を覆すために奔走し、勇気を持ってぶつかろうとする結末はなかなか良かったですね。

 

9.1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)

1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)

1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫)

 

由井が好きになったのは、背が高く喉仏の美しい桐原。ひりひりと肌を刺す恋の記憶。出口の見えない家族関係。人生の切実なひと筋の光を描く恋愛連作短編集。母子家庭で絶望的な日々を送る由井と桐原の恋。彼女の親友ミカが再会した高山に抱く複雑な想い、家族関係に鬱屈を抱える泉と高山の関係と別れ。それぞれが絶望の中に見出した鮮烈な想いとすれ違いが描かれる中で、少しずつ明らかになってゆく由井が紆余曲折の末に得た未来はわりと幸せそうで、だからこそ最後に描かれたエピソードと桐原の手紙が意味することをいろいろと考えてしまいました。

 

10.鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫 (角川文庫)

鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫 (角川文庫)

鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫 (角川文庫)

  • 作者:沙川 りさ
  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: 文庫
 

青山領の民が突然変異し鬼となり、小寺領の民を襲い血を吸って殺すようになって30年。故郷から逃げ出し身を潜めて暮らす小寺の民の若き領主・菊が、勇敢な少年・元信に窮地を救われ、運命の出会いを果たす和風ファンタジー。民を救うために強くなりたいと願う菊に剣術を教える元信と、お互い惹かれ合ってゆく禁断の恋の行方。そして旅する薬師の文梧とその助手・主水が出会った少女・竜胆の決意。長らく続いた小寺と青山による因縁の真相と結末はほろ苦くやるせなかったですが、それでも二人で見事本懐を遂げてみせた結末はなかなか印象的でした。

 

11.有閑貴族エリオットの幽雅な事件簿 (集英社オレンジ文庫)

ヴィクトリア朝の英国を舞台に、社交界で浮名を流し風雅と博物学を愛する有閑貴族エリオットが、オカルト事件に目がない幽霊男爵として美貌の助手コニーを従え、持ち込まれる幽霊絡みの依頼に挑む物語。沈黙の交霊会、ミイラの呪い、天井桟敷の天使といった事件に、周囲を振り回しながら喜々として挑むエリオット主従はなかなか楽しいキャラたちで、けれど向き合った事件の真相にはどこまで真摯で、そんな彼らがあるのも二人に壮絶な過去があったからなんですよね。でもいつかその過去を乗り越えて欲しいですし、また彼らの活躍を読んでみたいです。

 

12.さようなら、君の贖罪 (集英社オレンジ文庫)

佐久の部屋に突如現れたパジャマ姿の少女とアザラシ。意味が分からないまま目を覚ました少女たちが消えてしまい、そんな彼女・卯月が同じ高校の生徒だと知る青春小説。精神が不安定になるとテレポート能力で勝手に飛んでしまい、いろいろなものを持ってきてしまう卯月と、一度見たら忘れない記憶力を持つ佐久。佐久の友人蓮野との関係も絡めつつ、特別と過ちを抱えた不器用な二人が、一緒に持ってきたものを返してゆく過程で育まれてゆく想いとすれ違い、ぶつかり合って過去を乗り越えた先で再構築されてゆく新たな関係がなかなか素敵な物語でした。

 

13.山神よろず相談所 (角川文庫)

山神よろず相談所 (角川文庫)

山神よろず相談所 (角川文庫)

  • 作者:梨沙
  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: 文庫
 

よろず屋を営む3人の兄たちに溺愛される高校一年生の山神結。天然で素直な彼女が不思議で個性的な父や兄たちと持ち込まれた依頼を解決してゆくハートフルストーリー。秋祭りで女装させられていたクラスメイトの佐藤千を巡る人探し、引きこもりの息子と家出娘の捜索、姉と自らの元婚約者の結婚を阻止したい妹といった依頼を調査するストーリーには不穏な展開もありましたけど、期せずして結と兄妹となってしまった千の複雑な想いや、苦境に陥りがちな悩める彼女のために奔走し、温かく見守る家族の想いがとても微笑ましくて素敵な家族の物語でした。

 

14.神招きの庭 (集英社オレンジ文庫)

神招きの庭 (集英社オレンジ文庫)

神招きの庭 (集英社オレンジ文庫)

 

豊穣と繁栄を招く反面、ひとたび荒ぶれば恐ろしい災厄を国にもたらす神々を招きもたらす兜坂国の斎庭。親友の謎の死を探るため、地方の郡領の娘・綾芽が上京する和風ファンタジー。偶然、荒ぶる女神を鎮めてみせ、王弟の二藍に斎庭の女官として取り立てられる綾芽。少しずつ育まれてゆく二藍との信頼関係と、明らかになってゆく親友・那緒の死の真相、そして国の存亡を揺るがす危機。誰を信じればいいのかどうすべきか、ギリギリの駆け引きの先にあった関係は何とも複雑でしたけど、あの二人ならきっと乗り越えて幸せを掴んでくれると信じています。

 

15.紅い糸のその先で、 (角川文庫)

紅い糸のその先で、 (角川文庫)

紅い糸のその先で、 (角川文庫)

  • 作者:優衣羽
  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: 文庫
 

子供の頃から「運命の紅い糸」が見えてしまうゆえに辛い思いをしてきた高校生つむぎ。入学式でぶつかった架間先輩と風紀委員会で印象的な再会を果たす青春小説。先輩の小指に紅い糸が無いことに気づくつむぎ。最初はケンカばかりしていたのが共に過ごすうちに少しずつ変わり、お互いの友人の恋を応援する作戦を立てるようになる二人。そこからの苦い過去を繰り返すかのような急展開は、彼女にとってなかなか厳しい状況でしたけど、紅い糸を巡るひとつのエピソード、先輩からの告白も絡めて意外なところから覆ってゆく結末はなかなか良かったですね。

 

以上です。気になる本があったら是非手に取って読んでみて下さい。