読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2020年5月に読んだ新作おすすめ本

5月はここ数ヶ月の遅れ気味な状況があったりで紹介する新作本がわりと多めです。面白かった作品が多かったので、ここからさらに選ぶのは悩ましいですが、その中からあえて選ぶと、

 

ライトノベルの注目は杉井光さんらしいボーイ・ミーツ・ガールズを描いた「楽園ノイズ」 (電撃文庫)、玩具堂さん2年ぶりの新刊「探偵くんと鋭い山田さん」(MF文庫J)、続きが気になる「傷心公爵令嬢レイラの逃避行」(DENGEKI)、甘やかしお姉ちゃん吸血鬼もの(だけどファンタジー風の)「吸血鬼は僕のために姉になる 」(ダッシュエックス文庫)同時刊行だった岬鷺宮さんの「日和ちゃんのお願いは絶対」 (電撃文庫)、社会人ものとして今後が楽しみな「社畜男はB人お姉さんに助けられて」 (モンスター文庫)あたりですか。

 

ライト文芸ほか文庫では「処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな」「さよなら世界の終わり」の新潮文庫nex勢、 富士見L文庫の「王妃ベルタの肖像」、集英社オレンジ文庫さようなら、君の贖罪」、 小学館文庫の「彼女の知らない空創元推理文庫水使いの森」単行本では額賀澪さんの「できない男」、町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」を挙げておきます。

 

楽園ノイズ (電撃文庫)

楽園ノイズ (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2020/05/09
  • メディア: 文庫
 

女装して演奏動画をネットにアップし(男だけど)謎の女子高生ネットミュージシャンとして一躍有名になってしまった村瀬真琴。音楽教師・華園先生に正体を知られ、その弱みからこき使われる羽目に陥った彼が、三人の少女と巡り合うボーイ・ミーツ・ガールズ。不真面目な教師・華園を通じて巡り逢うひねた天才ピアニストの凛子、華道お姫様ドラマーの詩月、不登校座敷童ヴォーカリストの朱音。いかにも著者さんらしい主人公にヒロインたちがいて、そのテンポの良いやり取りは癖になって、熱く盛り上がってゆくストーリーは控えめに言って最高でした。

親の仕事が探偵だと自己紹介したせいで、クラスメイトから相談が持ち込まれるようになった戸村。彼が両隣の席にいる双子の山田姉妹とともに依頼解決に挑む学園ミステリラブコメ。彼氏の浮気相手の正体、絶版小説の犯人当て、美術部で振るわれたナイフの謎といった身近な事件に、対照的な気まぐれで天才肌な雨恵、ミステリ好きな優等生・雪音の二人と一緒に事件解決に挑むストーリーで、意外なアプローチからの事件解決や、お互いに刺激しあうことで少しずつ変わっていった三人の関係がなかなか面白かったですね。彼らの物語をまた読んでみたいです。

傷心公爵令嬢レイラの逃避行 上

傷心公爵令嬢レイラの逃避行 上

 

不慮の事故で2年間眠りについていた公爵令嬢レイラ。目覚めると婚約者であったはずの王太子ルイスが懐妊した妹ローゼと婚約を結び直していて、限界を迎え家を飛び出した彼女が伝説の魔術師リーンハルトに求婚されるファンタジー。いきなりこれまでの人生全否定な展開に絶望する不憫なレイラでしたけど、リーンハルトやその妹たちに支えられ癒されてゆく幻の王都での生活は微笑ましかっただけに、何とも複雑な運命を知ってしまい、彼女に執着するルイスとの再会もあって、周囲に病んだ人しかいない悲惨な状況ですけど、幸せを見出して欲しいですね。

唯一の肉親だった祖父を喪った波野日向が、丘の上の屋敷に住んでいる盲目の吸血鬼霧雨セナに引き取られ、未知の世界で新しい家族や人外の存在たちと絆を深めてゆくファンタジー。彼を大切に思うあまり甘やかしお姉ちゃんと化すセナには苦笑いでしたけど、共に過ごすうちに出会った一つ目の怪物や、犬の郵便屋といった人外の存在、疎遠だった幼馴染・心音、気の置けない親友・佐伯たちとのエピソードがあって、明らかになってゆく一族が果たしていた役割にきちんと向き合うようになった日向と、周囲の関係がこれからどうなるのか楽しみな作品ですね。

二年目教師の小野寺達也が預かる生徒・椿屋ひなたは生まれる前から知っている昔からのお隣さん。とびぬけて発育がよく容姿にも恵まれ、生徒も教師も注目せずにはいられない彼女との関係が描かれるラブコメ。何かと噂のタネになりがちで、時折大人びた表情を見せるものの、見た目よりずっと幼い彼女の素顔を知る達也。だからこそ彼女に対して保護者然とした態度を取るわけですが、テンポ良く進む展開の中で起こる事象が様々な視点から語られ、明言されずともおそらくそうなんだろうな…と思わせる描写が上手いですね。中学生とはいえども侮れません。

日和ちゃんのお願いは絶対 (電撃文庫)

日和ちゃんのお願いは絶対 (電撃文庫)

  • 作者:岬 鷺宮
  • 発売日: 2020/05/09
  • メディア: 文庫
 

どんな「お願い」でも叶えられる葉群日和。始まるはずじゃなかった彼女との恋が、頃橋深春の人生や世界全てを決定的に変えていく、終われないセカイの、もしかして最後の恋物語。告白を断るはずだったのに、うっかり知ってしまった日和の秘密。そんな彼女との過ごしてゆく初々しい日々は楽しくて、けれど垣間見える複雑な想いをたくさん抱えた彼女の日常は想像以上に過酷で、幸せを諦めてしまった少女との思い出を忘れても、改めて想いを育んでゆく彼らが取り戻してみせた未来にはぐっと来るものがありました。幼馴染の存在もまた効いていましたね。

ブラック企業に勤める柳大樹が、終電間際の駅で階段で足を踏み外し落下してきた美人なお姉さん・如月玲華を助け、高級マンションの前で鞄の中身をバラけた彼女に再会したことから始まる社会人ラブコメ。過労で倒れた大樹を助けてくれたお礼として、玲華に料理を振る舞う元洋食屋の息子で社畜の大樹。会社ではできる女社長なのに、私生活ではポンコツな玲華のギャップが光っていましたが、作っている描写からして美味しそうな料理で胃袋を掴まれてしまった大樹とのお互い初々しい関係がまた微笑ましくて、これからの展開が楽しみな新シリーズですね。

家族なら、いっしょに住んでも問題ないよね? (GA文庫)
 

祖父を亡くし天涯孤独となった高校生・黒川真が、遠縁の四姉妹の元に引き取られ、そこで中学の卒業式に告白をお断りした後輩が三女・姫芽と再会し、誘惑も多い同居生活が始まるラブコメディ。小説家の長女・宙子、クールな高校生の次女・波月、しっかりものの三女・姫芽、元気いっぱいの四女・美星との暖かくドタバタな共同生活で彼女たちに振り回されながら、少しずつ不器用なりに向き合おうとするようになってゆく孤独だった真の変化は微笑ましくて、そんな彼と四姉妹の関係がこれからどうなってゆくのか、今後がとても楽しみな新シリーズですね。

夢見る男子は現実主義者 1 (HJ文庫)

夢見る男子は現実主義者 1 (HJ文庫)

  • 作者:おけまる
  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: 文庫
 

同じクラスの美少女・夏川愛華との両想いを夢見て、めげずにアプローチを続けていた佐城渉。しかしある日突然、現実を見て適切な距離を取ろうとする彼の急変に、愛華も逆に気になり始める青春ラブコメディ。周囲もカップルなのではと誤解するくらいの距離感だったのに、一転渉が邪魔をしないよう遠くから見守るようにしたことで、ウザかったはずが逆にその不在が落ち着かなくなってゆく愛華。とはいえ現時点では彼女も違和感にモヤモヤしているくらいで、想いを自覚するのはこれからなんですかね。そんな二人のこれからに期待したい新シリーズです。

FPSゲーム世界一位の雨川真太郎。そんな彼と相性抜群なフレンド「2N」の正体が、喧嘩別れした幼馴染・奈月だったことに気づく青春小説。辛い時に拒絶したのに、意外な形で真太郎を支え続けてくれた奈月。鈍い彼と素直になれない奈月の最強ケンカップルに、ゲームの全国大会優勝を目指すために真太郎に惚れた美青年・ジルと美少女配信者・ベル子を加え結成されたチームは、ちょっとベクトルが一極集中しすぎて苦笑いですが、それぞれのエピソードにえげつない合宿中のゲームプレイもあったりで、絆も深めた彼らの全国大会での活躍が楽しみです。

『ラブコメ文芸部』と美少女問題児たちとボッチな俺 (講談社ラノベ文庫)

『ラブコメ文芸部』と美少女問題児たちとボッチな俺 (講談社ラノベ文庫)

  • 作者:秋月 一歩
  • 発売日: 2020/06/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

密かに投稿サイトに自作の小説をアップする読書好きでボッチな少年・青枝春人。彼が投稿する作品の熱烈なファンである学園一の美少女・夏陽向美夏と出会い、彼女と一緒に『ラブコメ文芸部』を立ち上げる青春ラブコメディ。二人で立ち上げた部に加入してくる春人のストーカーな後輩・秋待月咲月、生徒会長を務めるお嬢様・冬橋空悠香先輩など、登場人物たちや設定はわりとベタでしたけど、彼女たちとの甘いデートごっこや、陥った窮地に彼らが協力して乗り越えて育まれる絆、そしてお互いに刺激し合える関係になってゆく結末はなかなか良かったです。

 

留年して二回目の高校三年生となった佐藤晃に話しかけてきた同級生・白波瀬巳緒。それをきっかけに居場所がないと思っていた学校で周囲に輪ができて、かけがえのないものを取り戻してゆく喪失と再生の青春小説。留年の経緯で明らかになってゆく深い愛には驚かされましたが、あっけらかんとしたギャルの白波瀬巳緒、綺麗な声が耳に残る少女・御堂楓、そしてアニメ好きな和久井と出会い、大切な友人・藤田たちにも支えられながら、みんなで結成したバンドを通して熱い想いをぶつけ合い、未来に希望を見出してゆく結末にはぐっと来るものがありました。

さよなら世界の終わり (新潮文庫 さ 92-1 nex)

さよなら世界の終わり (新潮文庫 さ 92-1 nex)

  • 作者:佐野 徹夜
  • 発売日: 2020/05/28
  • メディア: 文庫
 

ふとしたきっかけから死にかけるたびに未来が見えるようになった高校生・真中。屋上のドアノブで首を吊ってナンバーズの数字を見ようとした昼休み、親友の天ヶ瀬が世界を壊す未来を見てしまう青春小説。彼と同じように死にかけるたびに幽霊が見えるようになる少女・青木、周囲を洗脳できる天ヶ瀬とのゆるく繋がった関係。彼らが抱える辛い過去や、現状や未来に希望を持てない諦めに似た苦悩にはなかなか来るものがありましたが、大切な友を取り戻すため、絶望の未来を覆すために奔走し、勇気を持ってぶつかろうとする結末はなかなか良かったですね。

王妃ベルタの肖像 (富士見L文庫)

王妃ベルタの肖像 (富士見L文庫)

 

王妃と仲睦まじいと評判の国王のもとに、巡り合わせで第二妃として嫁いだ南部領主の娘ベルタ。王宮で無難に過ごそうと思っていたベルタが予想外の妊娠をしたことで、状況が変わってゆくファンタジー。数年したら実家に帰るつもりで後宮入りしたのに、まさかの懐妊がもたらしたベルタを巡る心境の変化。最初からボタンの掛け違えで始まった国王との関係はお互い掴み切れずにおっかなびっくりで、もっとお互いを知ろうと努力する必要を感じましたけど、ほろ苦い事件を乗り越えた二人が何だかんだでいい夫婦になりそうだなと思えた結末が印象的でした。

佐久の部屋に突如現れたパジャマ姿の少女とアザラシ。意味が分からないまま目を覚ました少女たちが消えてしまい、そんな彼女・卯月が同じ高校の生徒だと知る青春小説。精神が不安定になるとテレポート能力で勝手に飛んでしまい、いろいろなものを持ってきてしまう卯月と、一度見たら忘れない記憶力を持つ佐久。佐久の友人蓮野との関係も絡めつつ、特別と過ちを抱えた不器用な二人が、一緒に持ってきたものを返してゆく過程で育まれてゆく想いとすれ違い、ぶつかり合って過去を乗り越えた先で再構築されてゆく新たな関係がなかなか素敵な物語でした。

神招きの庭 (集英社オレンジ文庫)

神招きの庭 (集英社オレンジ文庫)

 

豊穣と繁栄を招く反面、ひとたび荒ぶれば恐ろしい災厄を国にもたらす神々を招きもたらす兜坂国の斎庭。親友の謎の死を探るため、地方の郡領の娘・綾芽が上京する和風ファンタジー。偶然、荒ぶる女神を鎮めてみせ、王弟の二藍に斎庭の女官として取り立てられる綾芽。少しずつ育まれてゆく二藍との信頼関係と、明らかになってゆく親友・那緒の死の真相、そして国の存亡を揺るがす危機。誰を信じればいいのかどうすべきか、ギリギリの駆け引きの先にあった関係は何とも複雑でしたけど、あの二人ならきっと乗り越えて幸せを掴んでくれると信じています。

うちの中学二年の弟が (集英社オレンジ文庫)

うちの中学二年の弟が (集英社オレンジ文庫)

  • 作者:我鳥 彩子
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 文庫
 

中等科二年生で女装が趣味の弟・六区に振り回される日々を送る私立鷺ノ院学園高等科一年生・鷺沼湖子。常識的で良識派を自負する湖子の日常が、奇想天外な弟の行動にかき乱されるドタバタコメディ。エキストラで参加したドラマ撮影の女優失踪騒動、チョコレートアンソロジーと先生の恋、姉弟によるハチャメチャ異世界騒動、コバルト編集部も巻き込んだなんて素敵にジャパネスクの演劇と先輩の恋には懐かしさもあったりで、湖子を振り回す六区が繰り広げられた騒動の真相を妄想で見事に解き明かし、それぞれの恋を実らせてゆく展開は面白かったです。

ヴィクトリア朝の英国を舞台に、社交界で浮名を流し風雅と博物学を愛する有閑貴族エリオットが、オカルト事件に目がない幽霊男爵として美貌の助手コニーを従え、持ち込まれる幽霊絡みの依頼に挑む物語。沈黙の交霊会、ミイラの呪い、天井桟敷の天使といった事件に、周囲を振り回しながら喜々として挑むエリオット主従はなかなか楽しいキャラたちで、けれど向き合った事件の真相にはどこまで真摯で、そんな彼らがあるのも二人に壮絶な過去があったからなんですよね。でもいつかその過去を乗り越えて欲しいですし、また彼らの活躍を読んでみたいです。

たった一人の家族だった母親を病気で亡くした高校二年生の新田由奈。葬式の当日、由奈の前に金髪でチンピラ風の竜二と、眼鏡でエリート官僚風の秋生、父親を名乗るおっさん2人が現れる物語。今の家に住み続けたいという由奈に願いに、同じアパートへと引っ越してきた二人。最初はタイプも違う二人にイライラしっぱなしだった由奈も、いい加減にしか思えなかった母の真意を彼らの中に見出すうちに少しずつ変わっていって、状況が二転三転する中で彼らの優しさに気づき、育まれていったかけがえのない絆を見出してゆくとても素敵な家族の物語でした。

就業規則に書いてあります! (メディアワークス文庫)
 

大手企業の労務管理にやりがいを感じていた平河東子。だが業績悪化でリストラされ、叔父の伝で下請けのアニメ制作会社に再就職するお仕事小説。問題だらけの会社で労務管理者になった東子が、「アニメの鬼」と呼ばれる演出担当・堂島蕎太たちと時には衝突しながら、退職希望者との面談、セクハラ相談、そして元請けからの過酷な取引要求との対峙など、試行錯誤しながら取り組んでいく展開で、過酷な環境と熱い想いに最初は戸惑いながらも、真摯に取り組む彼女が姿勢が少しずつ周囲を感化していって、認められてゆく結末はなかなか良かったですね。

その一秒先を信じて シロの篇 (講談社タイガ)

その一秒先を信じて シロの篇 (講談社タイガ)

  • 作者:秀島 迅
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 文庫
 

小学校の頃、シロと仲違いしたまま引っ越してしまった親友のアカ。数年後、天才ボクサーとなった彼の姿を動画で目にしたシロが、その強さに憧れ自分もボクシングを始める青春小説。家庭崩壊、学校でのいじめで追い詰められていたシロと、ボクシングの基礎を教えたレンの邂逅。力を出し切れないシロを変えた元いじめの主犯・守屋の想い、そして圧倒的な強さを見せるアカとの対戦という目標があって、何度も挫折してくじけそうになりながらも、周囲に支えられそのたびに這い上がって立ち向かったシロが迎えたその結末にはぐっと来るものがありました。

その一秒先を信じて アカの篇 (講談社タイガ)

その一秒先を信じて アカの篇 (講談社タイガ)

  • 作者:秀島 迅
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 文庫
 

難病に冒された弟の治療費を稼ぐため、ボクシングで勝つことを宿命づけられたアカこと暁。勝利を重ねるごとに孤独が苛む天才ボクサーとなっていった彼の前に、幼馴染の心優しかった少年・シロがライバルとして立ちはだかる青春小説。レンにその才能を見出され、天才少年ボクサーとして注目を集めるアカ。けれど彼には病弱の弟と一人で二人を養う母親の存在があって、大切な存在であるがゆえの葛藤もありましたけど、周囲に支えられるシロを羨む彼にも信じてくれる人たちがいて、苦難を乗り越えてて対戦したシロとの激闘とその結末は印象的でしたね。

白髪に赤い瞳の容姿で親に捨てられ、街のまじない屋で見習いとして働いていた李珠華。そんな彼女の腕を見込んだ皇帝・白焔に、後宮で起こる怪異事件と女性に触ると蕁麻疹が出る呪いの解決を依頼される中華風ファンタジー。最高の待遇と報酬を約束され偽の妃として後宮入りを果たし式神を使って調査を始めた彼女と、新たなライバル登場に反応が対照的な白焔の妃たち。分かりやすい構図に思えた事件の真相は何となく予想した通りでしたけど、少しずつ変わっていった白焔との関係と、自ら道を切り開こうとする珠華の心意気がなかなか良かったですね。

花街の用心棒 花は凛と後宮を守り (富士見L文庫)

花街の用心棒 花は凛と後宮を守り (富士見L文庫)

  • 作者:深海 亮
  • 発売日: 2020/05/15
  • メディア: 文庫
 

養父の借金のカタに花街に売られてしまい、完済を目標に腕利きの女用心棒として働く玄雪花。彼女に興味をもった美貌の若き皇帝の側近・紅志輝と出会い、運命が激変してゆく中華風ファンタジー。借金を勝手に清算する代わりとして、後宮で暗殺者に狙われる貴妃の護衛を依頼する志輝。養父との放浪や花街での生活で醒めている雪花と、そんな彼女に興味を持つようになってゆく志輝とのやりとりには苦笑いでしたけど、養父や雪花の過去はどうもワケありそうで、自身もまた秘密を抱える志輝との関係がどうなってゆくのか、今後が楽しみな新シリーズです。

#チャンネル登録してください (新潮文庫 ふ 55-3 nex)
 

いつも失敗を恐れて自信が持てない七沢希紘をユーチューバーの仲間に誘ってくれた大学の同級生・環花。等身大の悩める大学生たちの恋と成長を描いた青春小説。ふとしたきっかけから交流が始まった環花との関係。彼女のグループに加わって始めた活動と、明らかになってゆく希紘の秘密と苦い過去、そして環花の意外なコンプレックス。知り合ったことでいい感じに化学反応を起こし、変わっていった二人には何とも皮肉な構図が待っていましたけど、それでもきちんと向き合うことから逃げなかった二人ならきっと乗り越えてくれると信じられる結末でした。

 

1ミリの後悔もない、はずがない (新潮文庫 い 136-1)
 

由井が好きになったのは、背が高く喉仏の美しい桐原。ひりひりと肌を刺す恋の記憶。出口の見えない家族関係。人生の切実なひと筋の光を描く恋愛連作短編集。母子家庭で絶望的な日々を送る由井と桐原の恋。彼女の親友ミカが再会した高山に抱く複雑な想い、家族関係に鬱屈を抱える泉と高山の関係と別れ。それぞれが絶望の中に見出した鮮烈な想いとすれ違いが描かれる中で、少しずつ明らかになってゆく由井が紆余曲折の末に得た未来はわりと幸せそうで、だからこそ最後に描かれたエピソードと桐原の手紙が意味することをいろいろと考えてしまいました。

彼女の知らない空 (小学館文庫)

彼女の知らない空 (小学館文庫)

  • 作者:耕, 早瀬
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 文庫
 

化粧品会社の新素材軍事転用を巡る社員夫婦の葛藤、自衛官の妻が知らない空で起こる無人軍用機の戦争、スキャンダルで潰れたプロジェクトを巡るあれこれ、過重労働で心身を蝕まれる会社員と老人の邂逅、徴兵制を巡る身もふたもない現実、大連のホテルを介して繋がる今と昔、宇宙飛行士を夢見た男が通した正義など、淡々と綴られてゆく組織の中で何かあった時に自らはどうあるべきか、家族との折り合いをどうつけるかというそれぞれの葛藤とその結末には心に響くものがありました。深田課長は格好良かったですし、最後の葉書がまた印象的でしたね。

水使いの森 (創元推理文庫)

水使いの森 (創元推理文庫)

 

それはこの世の全ての力を統べる水使い。水荒れ狂う森深くに棲む水蜘蛛族の女タータが、砂漠で少女・ミイアを拾い自らの弟子とするファンタジー。跡継ぎである妹を差し置き水の力を示し、国を乱すことを危惧された王女ミイア、その力を認められながら自覚が足りないと言われるタータ、そして家に馴染めず旅をする式要らずの風丹術士・ハマーヌ。三者三様の理由でどこか燻っていた状況で、運命に導かれるように出会った彼女たちが、危機に直面して自らが何をすべきかを自覚し、乗り越える中でそれぞれ成長していく展開はぐっと来るものがありました。

鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫 (角川文庫)

鬼恋綺譚 流浪の鬼と宿命の姫 (角川文庫)

  • 作者:沙川 りさ
  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: 文庫
 

青山領の民が突然変異し鬼となり、小寺領の民を襲い血を吸って殺すようになって30年。故郷から逃げ出し身を潜めて暮らす小寺の民の若き領主・菊が、勇敢な少年・元信に窮地を救われ、運命の出会いを果たす和風ファンタジー。民を救うために強くなりたいと願う菊に剣術を教える元信と、お互い惹かれ合ってゆく禁断の恋の行方。そして旅する薬師の文梧とその助手・主水が出会った少女・竜胆の決意。長らく続いた小寺と青山による因縁の真相と結末はほろ苦くやるせなかったですが、それでも二人で見事本懐を遂げてみせた結末はなかなか印象的でした。

山神よろず相談所 (角川文庫)

山神よろず相談所 (角川文庫)

  • 作者:梨沙
  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: 文庫
 

よろず屋を営む3人の兄たちに溺愛される高校一年生の山神結。天然で素直な彼女が不思議で個性的な父や兄たちと持ち込まれた依頼を解決してゆくハートフルストーリー。秋祭りで女装させられていたクラスメイトの佐藤千を巡る人探し、引きこもりの息子と家出娘の捜索、姉と自らの元婚約者の結婚を阻止したい妹といった依頼を調査するストーリーには不穏な展開もありましたけど、期せずして結と兄妹となってしまった千の複雑な想いや、苦境に陥りがちな悩める彼女のために奔走し、温かく見守る家族の想いがとても微笑ましくて素敵な家族の物語でした。

龍探 特命探偵事務所ドラゴン・リサーチ (角川文庫)
 

川崎で探偵事務所「ドラゴン・リサーチ」を営むバツ3の元刑事・遊佐龍太。日々警察の手に余る事件や、訳アリの危険な依頼が持ち込まれる探偵ミステリ。借金でヤクザに追われる美人AV監督の護衛、かつての極左過激派の女神をつけ狙うストーカーの正体、拳銃盗難事件に絡む警察官夫婦の苦悩。警察時代の人脈を駆使したり、有能な3人の元妻などにサポートされながら依頼を解決してゆく展開で、できた周囲との対比で主人公のダメっぷりが際立っていましたが、なぜかそういう人はモテるんですよね(苦笑)関連作品を読んでいるとより楽しめそうです。

紅い糸のその先で、 (角川文庫)

紅い糸のその先で、 (角川文庫)

  • 作者:優衣羽
  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: 文庫
 

子供の頃から「運命の紅い糸」が見えてしまうゆえに辛い思いをしてきた高校生つむぎ。入学式でぶつかった架間先輩と風紀委員会で印象的な再会を果たす青春小説。先輩の小指に紅い糸が無いことに気づくつむぎ。最初はケンカばかりしていたのが共に過ごすうちに少しずつ変わり、お互いの友人の恋を応援する作戦を立てるようになる二人。そこからの苦い過去を繰り返すかのような急展開は、彼女にとってなかなか厳しい状況でしたけど、紅い糸を巡るひとつのエピソード、先輩からの告白も絡めて意外なところから覆ってゆく結末はなかなか良かったですね。

後宮妖幻想奇譚-鳳凰の巫女は時を舞う (双葉文庫)
 

鳳凰の力で国を護る巫女に選ばれた、貧民街に住む少女・小鈴。巫女として勤勉…ではなく怠惰な生活を送る彼女のもとに、国を揺るがす事件の解決依頼が舞い込んでくる中華風ファンタジー。先代巫女・環雲に託された小鈴のもとに、宦官・申栄や皇太子・天暘から持ち込まれる国を滅ぼすかもしれない妖の事件。小鈴が依頼をさぼろうとしたり失敗すると何度でも時間が巻き戻る状況の中、たびたび巻き込まれる天暘と共に解決してゆくストーリーはどこかほのぼのとしていて、何だかんだでお互いに大切な存在となってゆく二人の関係がなかなか良かったです。

 

できない男

できない男

  • 作者:額賀 澪
  • 発売日: 2020/03/26
  • メディア: 単行本
 

地方広告制作会社のデザイナー芳野荘介28歳。年齢=恋人いない歴で仕事も中途半端な自分に行き詰まる「できない男」が、憧れの超一流クリエイターのブランディングチームに地元デザイナー枠として突然放り込まれ、少しずつ変わってゆく青春小説。初っ端からやる気を見せてみても簡単には変わらない現実を突き付けられるキツイ展開から、覚悟出来ない男・河合や様々な人たちと出会い、感化されながら成長してゆく姿やそれぞれの選択は印象的でしたが、最後のあれは痛快だけれど、もう地元に帰れなくなるのでは…とちょっと心配になりました(苦笑)

52ヘルツのクジラたち (単行本)

52ヘルツのクジラたち (単行本)

 

ワケありで大分にあった祖母の家に引っ越してきた貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた二人が出会う新たな魂の物語。引っ越し後も周辺住民に馴染めずにいた貴瑚を助けてくれた少年の事情。貴瑚が小さい頃から置かれていた環境や、抜け出せた後に辿った人生もなかなか過酷でしたが、少年を何とか助けたいという思いだけではどうしようもなくて、そんな彼女たちを支えて力になってくれた一度は自ら手放した貴瑚の親友だったり、距離を感じていた周囲の人の優しさ、温かさがとても心に響く物語でした。

坂下あたると、しじょうの宇宙

坂下あたると、しじょうの宇宙

  • 作者:町屋 良平
  • 発売日: 2020/02/05
  • メディア: 単行本
 

書く小説に多くのファンがいて、新人賞の最終候補にも残っている親友・あたるに感化され、詩を書き始めた高校生の毅。あたるに劣等感でいっぱいの関係が少しずつ変わってゆく青春小説。ある日、小説投稿サイトに作られたあたるの偽アカウント。偽アカウントの主はちょっと意外な正体でしたけど、模倣するように更新されてゆく作品をきっかけに少しずつあたるがらしさを失っていって、強烈な性格なあたるの彼女・さとかや、その友人・蕾に振り回されながら、それでもあたるのために想いを込めて詩を綴ってゆく姿と結末はまさに青春だなと思えました。

永遠の夏をあとに

永遠の夏をあとに

  • 作者:雪乃 紗衣
  • 発売日: 2020/04/21
  • メディア: 単行本
 

田舎町に住む小学六年生の拓人は、幼い頃に神隠しに遭い、その間の記憶を失っている。そんな拓人の前に、以前拓人の母と三人で暮らしていたことがあるという弓月小夜子と名乗る年上の少女が現れるひと夏の物語。母親が入院して小学生最後の夏休みを小夜子と二人で過ごすことになった拓人。親友の彰や会えば喧嘩する数馬も交えて過ごす夏休みの日々と、なかなか思い出せないサヤと過ごした日々の記憶。時系列的に入り組んでいてやや状況が把握しづらいところもありましたけど、思い出した過去と、とても優しくてやるせない結末が印象的な物語でした。