2023年9月改訂の最新版はこちらになります。↓
この該当記事の作成から一年以上が経過し、この時点では読んでいなかった作品もあり、新シリーズが刊行されていたり、巻数を重ねていたりでいろいろ当時とは変わってきています。そこで作品・刊行情報などを更新した改訂版を作ろうと思いました。今回は前回記事から入れ替えをしつつ、再び自分が読んだ作品のうち比較的最近に刊行されている18作品を紹介しています。
ちなみに中華風ファンタジーというと当然「十二国記」は?というツッコミが入りそうですが、あの作品は特に紹介しなくても爆発的に売れているので、まあいいだろうということで今回あえてスルーしました(おい 十二国記以外に何かないかな?読んでみたいと思った方向けに紹介する記事ということでよろしくお願いします。
1.後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)
後宮奥深くにいる夜伽をしない不思議な力を持つ特別な妃「烏妃」。翡翠の耳飾りに取り憑いた女の幽霊の正体を探るべく訪れた皇帝・高峻が、その不思議な力を目の当たりにする中華風ファンタジー。辛い過去を抱え烏妃として孤独に生きようとする寿雪と、少年時代に生母を皇太后に殺され辛酸を舐めた高峻。後宮で起きる幽鬼絡みの事件を解き明かす過程で二人が関わる機会は増えていって、不器用な彼らの距離感や周囲との関係の変化はとても微笑ましくて、秘密を共有した二人がこれからどう変わってゆくのか、この続きを是非読んでみたいと思いました。現在3巻まで刊行。
2.茉莉花官吏伝 (ビーズログ文庫)
『物覚えがいい』という特技がある後宮の女官・茉莉花が、名家の子息のお見合い練習を引き受けたら相手はなんと皇帝・珀陽で、彼女の特技を知った縁から科挙に合格して官吏を目指すよう言われる中華ファンタジー。明らかに興味津々の皇帝に、そこまでの意気込みもなく戸惑い気味の茉莉花。そんな状況から太学に編集した彼女には様々な出会いや転機があって、覚悟を決めて危機を乗り切った彼女自身にも思いの変化があって。そんな茉莉花が官吏としてヒロインとしてこれから皇帝と今後どのような関係を築いていくのか楽しみなシリーズ。現在7巻まで刊行。
関連作品:「十三歳の誕生日、皇后になりました。」(ビーズログ文庫)
3.金椛国春秋シリーズ (角川文庫)
金椛帝国の皇帝崩御に伴い、「皇帝に外戚なし」の法のもとに皇后に選ばれた星皇后の一族は全て殉死を命じられ、胡娘の助けにより御曹司の遊圭がひとり生き延びる中華ファンタジー。追われる身だった遊圭が、以前助けた縁で匿ってくれた町娘の明々と一緒に密かに男の身で後宮に出仕するまさかの展開。病弱で世間知らずゆえか義憤に駆られて自らの身を危うくするような状況にはハラハラしましたが、宦官・玄月に正体を疑われながらも知恵を駆使して何とか乗り切った展開はなかなか面白かったです。後宮からの脱出を目指す遊圭たちの今後に期待ですね。現在7巻まで刊行。
4.薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)
花街の薬師だったのをさらわれて後宮で下働き中の娘・猫猫が、薬師としての能力を美形の宦官・壬氏に見込まれ、後宮の事件や噂を解決する物語。中華風の後宮にいるものの特に出世を目指すわけでもない猫猫はわりとさっぱりとした性格で、周囲が色めき立つ美貌の壬氏にも醒めた視線を向けるわけですが、そんな猫猫を壬氏が何となく気にかけている構図が面白いですね。陰謀渦巻く狭い世界で繰り広げられる事件に、薬と毒には並々ならぬ執着とこだわりを見せて謎解きに挑む猫猫、彼女を取り巻く登場人物たちも魅力的で、テンポの良いやりとりを楽しめるシリーズです。現在8巻まで刊行。
5.紅霞後宮物語 (富士見L文庫)
女性ながら不世出の軍人と評される将軍・関小玉33歳が、かつての相棒にして今は皇帝である文林の懇願を受けある日突然皇后となり、嫉妬と欲望が渦巻く後宮「紅霞宮」に入る物語。軍人らしいきっぱりさっぱりな性格の小玉と、皇帝として公人としての意識も持たざるをえなくなった文林。絆こそ感じられるもののお互い立場も変わり、変わってしまったところと変わらないところに戸惑い葛藤する展開でしたが、ついに覚悟を決めた小玉と、そんな彼女に複雑な想いを抱いたままに見える文林がどんな夫婦になっていくのかいろいろ気になるシリーズです。現在本編10巻+前日譚3巻刊行。
6.一華後宮料理帖 (角川ビーンズ文庫)
大帝国・崑国へ小国の和国から貢物として後宮入りした皇女・理美。他国の姫という理由で後宮の妃嬪たちから嫌がらせを受ける彼女が、皇帝不敬罪の窮地に食物博士の朱西に救われる物語。和国では姉皇女においしいものを捧げる役割を担っていた理美が、朱西の協力も得つつその料理の腕前と持ち前の明るさを活かして、ピンチを乗り越えるべく奮闘する展開はなかなか良かったですね。朱西とのコンビで料理研究もなかなか面白そうですけど、皇帝もまた理美が気になるようで、そんな三角関係の行方が混沌としてゆくシリーズです。19年11月に10巻刊行予定。
関連作品:「双花斎宮料理帖」(角川ビーンズ文庫)
7.榮国物語 春華とりかえ抄 (富士見L文庫)
榮の貧乏官僚の家に生まれた双子、金勘定にシビアな姉・春蘭と刺繍を得意とする立派な淑女に育った弟の春雷。誤った噂は皇帝の耳にも届き春蘭の後宮入りと春雷も科挙受験が決まり、追い詰められた二人が入れ替わることを決意する中華ファンタジー。双子を利用しようとする野心家・天海宝が出世を目論む理由。妃嬪を避けるため双子が近づいた公主が知ってしまった陰謀。春蘭と口が悪い海宝の毎度いがみ合う関係からの変化や、そんな彼の意外な一面と窮地に双子たちも協力しての大逆転劇はなかなか面白かったです。現在5巻まで刊行。
8.華仙公主夜話 (富士見L文庫)
華仙公主夜話 その麗人、後宮の闇を討つ
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喜咲冬子/上條ロロ KADOKAWA 2018年07月14日頃
仙人の力を借りて建国した伝説を持つ基照国。先帝の落とし胤と噂の酒楼の女主・明花のもとに、滅亡寸前の国と幼い次期皇帝・紫旗を守るため次期宰相の李伯慶が訪ねてくる中華ファンタジー。紫旗を取り巻く不穏な状況とそれを打開するために動く伯慶、可愛い紫旗を助けたいという思いからその誘いに乗る明花。テンポの良いストーリーに紫旗のためという利害の一致で相棒となった腕力頼み公主とケチな伯慶が、言い争いながらも相手のことを認め合うようになってゆくサッパリした関係もなかなか良かったですね。全3巻。
9.威風堂々惡女 (集英社オレンジ文庫)
その出自から瑞燕国で虐げられる尹族の少女・玉瑛。皇帝が発した「尹族国外追放」の勅命により屋敷を追われ命を失った彼女が、謀反を起こして虐げられる原因となった皇帝の愛妾・柳雪媛として目覚める中華幻想復讐譚。未来を変えるため柳雪媛として過去をやり直すことになった玉瑛と、その護衛役に任命された生真面目な若き武人・王青嘉の因縁の出会い。お互いの真意を知らずに反発し合っていたはずの二人がいつの間にか奇妙な縁で紡がれていって、二人だけにしか分からない何とも複雑な感情を育んでゆくこの主従の絆に期待したい新シリーズですね。現在2巻まで刊行。
10.後宮の花は偽りをまとう (双葉文庫)
大陸西方の相国で部署を渡り歩いて勤続十年の三十路手前の女官吏・陶蓮珠。新皇帝の双子の弟・郭翔央から声を掛けられて、新皇帝が娶る予定だった威国の妃の身代わりとなる中華後宮ファンタジー。威妃を迎えに行くと新皇帝が姿をくらませ、双子の弟・翔央と共に威国語を話せる蓮珠がその身代わりを務める展開。官吏としては有能で、自ら抱えてきた想いや翔央から聞いた志から、新皇帝即位を巡る陰謀を何とかしようとして空回りする蓮珠がやや危なっかしかったですが、そんな中でお互い惹かれつつある翔央との今後がなかなか楽しみなシリーズですね。現在2巻まで刊行。
11.紫微国妖夜話 (小学館文庫キャラブン!)
幼少時から驚くほど不運なのに奇跡的に科挙に登第して進士となった青年・梁脩徳。しかし赴任先の侶州は鬼怪が跋扈する妖しい西方の僻地で、日々勃発する怪異事件に巻き込まれてゆく中華風怪異譚。基本的にいろいろな意味で残念な脩徳は怪異の引き寄せ体質で、それを辛辣な部下たちに利用される日々。様々な怪異に脅かされて、辛過ぎる料理に辟易し、素敵な女性との出会いがあったら中身はあれで、災難続きでしたけど転任願いを出そうにも採用された理由が理由と、選択肢を考えるとこれはもう諦めるしかないですね(苦笑)現在2巻目まで刊行。
12.後宮妃の管理人 ~寵臣夫婦は試される~ (富士見L文庫)
後宮妃の管理人 〜寵臣夫婦は試される〜
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しきみ 彰/Izumi KADOKAWA 2019年05月15日頃
右丞相の珀皓月と結婚し、妃嬪の健康管理と美容を維持して後宮を管理することを帝より命ぜられた大手商家の娘・優蘭。女装して後宮にたびたび出入りする夫とともに夫婦で後宮の闇に挑む物語。背景に政治的対立もあったりで、妨害工作の末に身の危険を感じたりしながらも、損得勘定を計算しつつも、要所を抑えて妃嬪たちに向き合っていく優蘭がいいですね。高級貴族で美丈夫の皓月もワケありでいろいろ大変なんだなあと思いつつも、不器用なりに妻となった優蘭を大切にしようという思いが感じられてよかったです。12月に2巻目が刊行予定。
13.後宮香妃物語 (角川ビーンズ文庫)
後宮香妃物語 龍の皇太子とめぐる恋
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伊藤 たつき/カスカベ アキラ KADOKAWA 2017年04月28日頃
香を作る香士が貴ばれる神瑞国。調香の腕を買われた下町に住む凛莉が、亡き父の汚名をそそぐため太子・煌翔の後宮に入り伝説の秘宝香調合を目指す物語。香士として秘宝香の調合に失敗し、事故死したとされる父の死後生活に苦労した凛莉と母。彼女に調合を教え生活を支えた木蓮の推挙で後宮に入る凛莉。人に優しく正義感も強い一方、うっかりな言動も多い凛莉はトラブルに巻き込まれがちな一面もありましたが、彼女の失われた記憶には意外な縁や陰謀にも繋がっていて、すれ違ったいくつかの想いがどのような結末を迎えるのか気になるシリーズです。現在4巻まで刊行。
14.後宮シリーズ(コバルト文庫)
継母から冷遇され亡き母に教えられた能書の才さえも継母に奪われてしまった李淑葉に、皇帝の兄・夕遼との結婚の勅命が下る物語。実は夕遼が望んでいたのは淑葉の妹・香蝶との結婚で、いきなりしばらくしたら離婚と突きつけられる展開でしたが、真っ直ぐだけれど笑顔も能書の才能も奪われ、悲惨な境遇に自信を無くしていた淑葉が、書を好き過ぎという共通点から夕遼とも徐々に交流を深め、様々なものを取り戻していく展開は良かったです。繋がりのある登場人物を主人公に据え、シリーズとして複雑な気持ちになる後日談も語られたりしながら10巻まで刊行。
15.天下四国シリーズ(講談社文庫)
徐の王太子・寿白は革命の混乱のさなかに王の証・王玉を得たが庚に取って代わられ、十年後に飛牙と名乗って再び国を訪れる中華風ファンタジー。飛牙から玉を取り戻すべく現れた天令の那兪とともに訪れたかつての王都。天から見放され荒れる庚の治政と、寿白時代の飛牙を知る宦官・裏雲や王太后が抱えていた秘密。明かされた事情と混乱の最中で上手く立ち回り、どうにかこうにかうまく取りまとめてみせた飛牙が、裏雲を追って天下四国を旅しながら行く先々で活躍するシリーズです。現在4巻まで刊行。
16.後宮天后物語 (ビーズログ文庫)
後宮天后物語 〜簒奪帝の寵愛はご勘弁!〜
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夕鷺 かのう/凪 かすみ KADOKAWA 2018年01月15日頃
幼馴染の武将軍・志紅に淡い恋心を抱き、彼のために特別な神の力を授かることができる天后を目指す公主の雛花。ところがその志紅が、雛花の異母兄で皇帝の黒煉を弑して帝位を簒奪し雛花を後宮に拘束してしまう物語。志紅のまさかの豹変に戸惑いを隠せない雛花。シリアスな状況ですがマイペースな侍女の存在がうまく中和していて、密かに明かされてゆく志紅の真意を知れば知るほど、思いがすれ違う不器用過ぎる構図がもどかしくなる二人の紆余曲折が描かれたシリーズです。全4巻。
17.とりかえ花嫁の冥婚 偽りの公主(講談社X文庫)
商家の娘・汪黎禾は弟が作った借金を返すため、藩王・武州王の息子と「冥婚」することに。その道中に意に反して小間使いの橙莉と入れ替わり、襲われた先で皇太子・隆翔に助けられ行方不明だった妹公主と間違われてしまう中華ファンタジー。男嫌いの気の強い黎禾と女性が信用できない隆翔の二人が、始めて出会えた信じられる人としていい関係を築きつつも、公主でないことを隠していることに葛藤する展開で、反乱に巻き込まれた混乱の中でヒロインたちが見せた強い意志がとても印象的でした。もうひとりのヒロイン・橙莉の物語にも注目。全2巻。
18.珠華杏林医治伝 (コバルト文庫)
珠華杏林医治伝 〜乙女の大志は未来を癒す〜
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小田 菜摘/雲屋 ゆきお 集英社 2017年12月01日頃
医師の父親亡きあと女性は医師免許がとれず、診療することができなかった珠里。そんな彼女のもとに皇帝の使者が現れ、皇太后の体調不良の原因を見つけるよう命じられる中華後宮物語。ヤブ医者の妻にと請われ進退窮まっていた珠里に訪れた転機。皇帝を育てるのに専念するため実の娘・公主を手放した皇太后の病の原因。公主と皇太后、そして育ての親を敬愛する皇帝の何とも複雑な関係でしたけど、それをドタバタしながらもいい感じに修復してみせた珠里の奮闘ぶりが光っていました。現在2巻まで刊行。
以上です。気になる作品があったら是非手にとって読んでみて下さい。正直なところをいうと、中華風ファンタジーは思っている以上にたくさん刊行されていて、カバーして切れていない面白い作品もまだあるかもしれません(苦笑)これからもこのジャンルの面白い作品がたくさん出てきてくれることを期待します。