読書する日々と備忘録

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ラノベ読みにオススメしたい一般文庫編15選

今回は普段ライトノベルレーベルの作品を中心に読んでいる人にもオススメしたい一般文庫レーベルの作品を15点紹介したいと思います。最近はもともとライトノベルで書いていた作家さんも、一般文庫レーベルやライト文芸レーベルなどで書く機会が増えてきていて、それぞれの境界線も曖昧になってきていると感じます。そこでライトノベルでも書いている作家さん、また違和感なく読めそうなタイトルを選んでみました。探してみたらちょうど同じくらい点数あったので、ライト文芸レーベルものは次回紹介します。気になる本があったら是非手に取ってみてください。

 

1.ホーンテッド・キャンパス (角川ホラー文庫)

ホーンテッド・キャンパス 秋の猫は緋の色 (角川ホラー文庫)

ホーンテッド・キャンパス 秋の猫は緋の色 (角川ホラー文庫)

 

幽霊が視えてしまう体質の森司が、心配で見守っていた高校時代の後輩こよみと大学で再会。一緒に入ったオカルト研究会での日々は、ホラーというよりはライトなオカルトミステリー。森司視点で語られるヘタレぶりがなかなか容易に進展しないことを伺わせますが「いずれその日が来るのを待ってます」「そういう人だって知っています、ずっと前から」等々、淡々と話が進む中での会話の端々に、感情があまり表に出ないこよみの森司をよく知ってます感が織り交ぜられていて、読んでいる方が付き合っちゃえよとなるジレジレ感を楽しむシリーズです。現在15巻まで刊行。

2.霊感検定 (講談社文庫)

霊感検定 春にして君を離れ (講談社文庫)

霊感検定 春にして君を離れ (講談社文庫)

 

バイト帰りに同級生の羽鳥空と印象的な出会いを果たした転校生の修司。彼女と再会した図書室で風変わりな司書・馬渡の心霊現象研究会の活動に巻き込まれてゆく青春ホラー。霊の想いに寄り添うちょっと変わった女の子・空と彼女を見守る幼馴染・晴臣。彼ににらまれながらも空とのやりとりを貴重に思う修司。仲間と解決する霊絡みのトラブルは切なかったり重かったりもしましたが、それ以上に彼らの優しい想いがつまった甘酸っぱい青春している雰囲気をたっぷりと味わえました。登場人物も魅力的でページのわりにはとても読みやすいです。現在3巻まで刊行。

3.君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

 
君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)

 

勉強合宿の夜に困っていた同級生の北岡恵麻を助けた地味で冴えない飯島靖貴。それをきっかけに密かな交流が生まれてゆく地味系眼鏡男子と人気者ギャルのすれ違いラブストーリー。入学直後の出来事で恵麻に苦手意識を持っていた靖貴と、助けてくれた靖貴が気になってゆく恵麻。学校では知らんぷりだけれど予備校帰りのわずかな時間で育まれてゆく二人の交流。少しずつ想いが積み重なってゆくのに、繊細で不器用な二人が距離を詰め切れないうちに起きる様々なすれ違いと、ギリギリでの巡り合わせの妙がなかなかいい感じの作品ですね。

4.君に恋をしただけじゃ、何も変わらないはずだった (宝島社文庫)

君に恋をしただけじゃ、何も変わらないはずだった (宝島社文庫)

君に恋をしただけじゃ、何も変わらないはずだった (宝島社文庫)

 

異様に運の悪い大学生・柏原玲二が元カノの部屋へ大切な物を取りに行き、そこに住む見知らぬ女子・磯貝久美子に不審者扱いされる最悪の出会いを果たすもう一つの物語。玲二の後輩・奈央矢と幼馴染で偶然の出会いを果たした久美子。期せずして久美子を取り巻く恋愛模様に巻き込まれてゆく玲二。誤解から始まって結果的に他人の恋の邪魔をしてしまう間の悪さが、巡り巡って容易には変わらないはずの気持ちを少しずつ動かしてゆく展開が面白いですね。久美子が自分らしさを出せる相手は誰なのか、前作とも繋がるもう一つの物語を十分に堪能できました。

5.君を愛したひとりの僕へ/僕が愛したすべての君へ (ハヤカワ文庫)

君を愛したひとりの僕へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-2)

君を愛したひとりの僕へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-2)

 

並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て父親と暮らす少年・日高暦が、父の勤務する虚質科学研究所で佐藤栞という少女に出会う物語。親同士が離婚した研究者という共通点から、共に過ごすうちにほのかな恋心を育んできた暦と栞。全てを一変させるきっかけとなった親同士の再婚話と二人を襲った悲劇。諦めきれずに彼女を取り戻すために生きることを決意した暦の執念は凄まじいと感じましたが、そんな彼に寄り添うように支え続けた同僚の研究者・和音の献身ぶりにも思うところが多かったです。同時刊行のどちらを先に読むのかは悩ましいですね。

僕が愛したすべての君へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-1)

僕が愛したすべての君へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-1)

 

並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦が、地元の進学校で85番目の世界から移動してきたというクラスメイト・瀧川和音と出会う物語。入学時の因縁をきっかけに運命的な出会いを果たした、暦と和音の一見腐れ縁のようにも思える関係。同時刊行作品の出来事との関連性を織り交ぜつつ、並行世界が実在する世界ならではの問題に悩まされながらも、それを力を合わせて乗り越えてゆく二人はとても幸せだったんだろうなと思わせるものがありました。二つ読んで比べてみるといろいろ思うところが出てきてとても面白かったです。

6.言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)

言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)

言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA)

 

全土は砂漠化し、人々は神である「言鯨」の遺骸周辺に鯨骨街を造って暮らす世界。街々を渡る骨摘みとして働く旗魚は、旅の途中で裏の運び屋・鯱と憧れの歴史学者・浅蜊に出会い物語が動き出すファンタジー。内密に十五番鯨骨街へ奇病の調査に行った浅蜊が引き起こした言鯨の覚醒と仲間の消失。もたらされた旗魚の劇的な変化と、鯱や蟲使いの珊瑚との逃亡劇、そして言鯨と世界の核心に迫ってゆく展開で、明らかになってゆくこの世界の哀しい真実と登場人物たちそれぞれの熱い想い、そしてそれらに向き合ってゆく旗魚の姿がとても印象的な物語でした。

7.黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

 

黒豚の悪神伝説が言い伝えられている宇嘉見島。その古臭い慣習も閉鎖的な環境も大嫌いな中学生ヨナのクラスに、東京から美少女・波多野清子が転校してくるひと夏の異世界譚。清子の美声を聞いて彼女を主演に『オズの魔法使い』の映画を取りたいとアプローチするヨナ。そんな彼だけでなくクラスの皆からも距離を置く清子が隠す秘密。ヨナたちのお陰で本来の姿を見せるようになった清子はとてもいい子で、だからこそ明かされた真相には切ない気持ちにもなりましたけど、彼女が笑って過ごせるようになった結末にはとても心温かい気持ちになりました。

8.ノノノ・ワールドエンド (ハヤカワ文庫JA)

ノノノ・ワールドエンド (ハヤカワ文庫JA)

ノノノ・ワールドエンド (ハヤカワ文庫JA)

 

暴力を振るう義父と受け入れるだけの母、いいことのない毎日が続き絶望する中学生ノノ。しかし突如白い霧に包まれた街から人々は消え、逃げ出した先で白衣の少女・加連と出会うガール・ミーツ・ガール。義父から逃げ出したノノと、現象に関わりながらとある目的のために組織から逃げ出してきた飛び級の天才少女・加連。偶然から出会った不器用な二人でしたけど、近づく終末を前にきちんと心残りを解決したい加連と行動を共にするうちに深まる絆と、お互いのためにという想いが感じられる切なく優しい物語でした。こういう作品もまた期待しています。

9.隣の席の佐藤さん (一二三文庫)

隣の席の佐藤さん (一二三文庫)

隣の席の佐藤さん (一二三文庫)

 

地味でパッとしない佐藤さんと隣の席になった山口くん。隣の席で交流を積み重ねながら、二人の心境が少しずつ変化してゆく青春小説。始めは鈍くさいけど素直な佐藤さんに調子が狂いイライラしていたのに、いつの間にか彼女が気になってゆく山口くん。だからといってすんなり上手くいくわけでもなくて、ままならない状況でどう接するのがいいのか懸命に考える山口くんが微笑ましいですね。いろいろ遅れがちな彼女を気にかけて寄り添う山口くんの姿勢はカッコよくて、周囲にもバレバレで生温かく見守る二人のその後がまた読んでみたいと思いました。

10.時給三〇〇円の死神 (双葉文庫)

時給三〇〇円の死神 (双葉文庫)

時給三〇〇円の死神 (双葉文庫)

 

同級生・花森雪希から突然「死神」のアルバイトに誘われた高校生の佐倉真司。成仏できずにこの世に残る「死者」の未練をはらす「死神」の仕事を通じて、自身の思いやありようもまた少しずつ変化してゆく物語。半信半疑のまま始めた死神のアルバイトで様々な死者に花森とともに向き合う日々。もっとできることはなかったのかたびたび後悔に直面する一方で、このアルバイトで共に過ごした時間があったからこそ気づけたことや乗り越えられたこともまたたくさんあって、著者さんらしい泣き笑いの切ない想いがたくさんつまった、とても素敵な物語でした。

11.マツリカ・マジョルカ (角川文庫)

マツリカ・マジョルカ (角川文庫)

マツリカ・マジョルカ (角川文庫)

 

冴えない高校生柴山が雑居ビルで一日中望遠鏡で観察している謎の女子高生マツリカと出会い、徐々に変わっていく物語。マツリカの理不尽な無茶ぶりに振り回されながらも、クールでミステリアスな彼女が気になって仕方ない柴山は、交流を通じて快活な同級生小西さんと絡むようになったり、目を背けていた辛い事実に向きあうようになったり、彼女が不器用なだけで一種のリハビリだったんですよね。上手く話せないのに太腿注視し過ぎとか、妙にリアルな描写は好み分かれそうですが、安楽椅子探偵的な謎解きも楽しめるシリーズです。

【続編】「マツリカ・マハリタ」 (角川文庫)

12.鉢町あかねは壁がある カメラ小僧と暗室探偵 (角川文庫)

鉢町あかねは壁がある  カメラ小僧と暗室探偵 (角川文庫)

鉢町あかねは壁がある カメラ小僧と暗室探偵 (角川文庫)

 

幼馴染ながら今は微妙な関係の写真部・有我遼平と占い女子・鉢町あかね。たびたび事件に遭遇する遼平を、推理を伝える謎の「壁越し探偵」となって救う青春ミステリー。あかねが密かに営む占い師の依頼者と事件がリンクしていたりで、距離を置きながらも意識する遼平を正体を明かさないままたびたび救う展開。凄まじい洞察力を発揮するのに、不器用過ぎて遼平に気づいてもらえないこじれ具合が切なかったですが、それでも二人のすれ違いのきっかけとなった過去の事件と今がようやく繋がって、これからの変化を期待させるラストはとても良かったです。

13.僕は小説が書けない (角川文庫)

僕は小説が書けない (角川文庫)

僕は小説が書けない (角川文庫)

 

不幸体質や家族関係に悩む高校1年生の光太郎。先輩・七瀬の強引な勧誘で廃部寸前の文芸部に入部した彼が、部の存続をかけて部誌に小説を書くことになる青春小説。物語を書けなくなっていた光太郎が出会った七瀬先輩の容赦ない批評。プレッシャーが掛かる部誌作成という状況で、振り回すOBふたりの存在と自覚してゆく七瀬先輩への想い。知りたくもない現実を突きつけられてきた光太郎が、それでも苦悩を乗り越えてきちんと向き合ったからこそ見えた光明があって、相変わらず不器用な彼のこれからを予感させるエピローグがとても素敵な物語でした。

14.八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)

八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)

八月のリピート 僕は何度でもあの曲を弾く (宝島社文庫)

 

「最後のチャンス」と位置づけたピアノコンクール予選で落選した高校三年生の北沢鳴海。諦められない彼が時間を巻き戻すため、トリガーとなる音楽の神に愛された少女・神崎杏子と久しぶりに再会する青春小説。かつて才能の差を見せつけられたのに彼女にときめいてしまう鳴海が、そのたびに何度もやり直して距離を置いた過去と、再びピアノと彼女への想いに葛藤し続けたリピートの思わぬ結末。そして明かされてゆくもう一つの物語。託された真実を知った鳴海が大切な人のために、そして自らの想いや夢を取り戻すべく奔走するとても素敵な物語でした。

15.僕たちの小指は数式でつながっている (宝島社文庫)

僕たちの小指は数式でつながっている (宝島社文庫)

僕たちの小指は数式でつながっている (宝島社文庫)

 

友達を作らないと決めていた僕に唐突に話しかけてきた、数学が好きで天才で孤独な少女・秋山明日菜。不本意ながら始まった彼女との交流が僕を変えてゆく青春小説。心臓移植の影響で前向性健忘症となり一ヶ月しか記憶を保てない明日菜。彼女の日記を頼りに二人の思い出を積み重ねてゆく僕と、少しずつ変わってゆく明日菜との関係。そして僕の暗い過去と意外な形で繋がる彼女の秘密。あれほど望んでいたはずの治癒がもたらした皮肉な転機でしたが、ゼロではない可能性を信じ続けた二人の真摯な想いが引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。