読書する日々と備忘録

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独断と偏見で選ぶライトノベル2019

今月キャラ文芸企画とかほんと誰もやらないなーとか思って、ここまででキャラ文芸のセレクト記事を3つ作りましたが、考えてみたらこれ普通にライトノベル編作っても良かったんですよね(なんで思い至らなかったのか)。というわけでライトノベル編も作ることにしました。今回も「このライトノベルがすごい2019」と同様に2017/9/1-2018/8/31にライトノベルレーベルから刊行された作品ということで、最後のいくつかはどれを入れるのかかなり悩みましたが新作から独断と偏見で20点選んでいます。

 

ちなみにあまり読めてない単行本はともかく、シリーズ作品編はキャラ文芸編同様作ろうかとも思ったのですが、実際並べてみたらみんな「このライトノベルがすごい2019」のどこかには引っかかりそうな気がしたので今回はこれだけにします。こういうの作るとしたらこのラノの発表前に作るのがポイントですよね(これ大事)もちろん便乗した他のブログ持ってるラノベ読んでる方の発表にも結構期待しています(これも大事)。ということでよろしくお願いします。

 

独断と偏見で選ぶライトノベル2019セレクト作品

1位 彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

 

 嘘がわかる特異体質を持つ遠藤正樹。そんな彼が気になる決して嘘をつかない川端小百合と常に振りまく学校のアイドル佐倉成美、死んだ共通の友人を巡る願いと嘘と恋が交錯する青春ミステリ。「彼女は殺された」という川端と「彼女を追い詰めたのは私」とうそぶく佐倉。ともに過ごす時間が増えてゆく中で正樹にだけ見せる彼女たちの素顔と、正樹と父親の関係。新事実が明らかになってゆくたびにガラリと変わってゆく構図。彼女たちがついた嘘は切なくも優しくて、真実に向き合ったからこそ見えたその想いとはっとするような結末はとても印象的でした。

 

2位 三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

 

 過去の苦い経験から「偽りの自分」を演じてしまう高校生・矢野四季が、印象的な出会いを果たした物静かな転校生・水瀬秋玻に惹かれ、彼女ともうひとりの人格・春珂を支えるようになってゆく不思議な恋物語。しっかりものの秋玻と対照的な危なっかしい印象の春珂。状況的に春珂をフォローすることが多い四季と二人を見つめる秋玻の繊細な距離感がまた絶妙で、大切な存在なのにすれ違ってしまうやるせなさだったり、ごまかさずにきちんと想いをぶつけてゆく彼らの青春がとても良かったですね。終盤は挿絵の使い方も効いていて11月刊行予定の2巻目が今から楽しみです。

 

3位 ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団 (ファンタジア文庫)

 古の魔王が再臨する絶望の未来を変えるため「アレンヘムの聖女」セシリアと婚約し、傭兵団「狂嗤の団」団長となる道を選んだカレル。聖女の加護を受け死の未来を回避する英雄として奮闘するファンタジー戦記。二年後の魔王再臨を限られた人しか知らない中で、代替わりした王国や戦争を仕掛けてきた自治領相手にどう立ち回るのか。腕が立って商才があり現実的な手段を積み重ねるカレルだけでなく、ヒロインのセシリアや仲間たち、王国の登場人物たちもまた魅力的なキャラが多くて、ここから物語がどう動くのか楽しみな新シリーズですね。現在2巻まで刊行。

 

4位 6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)

6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)

6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。 (角川スニーカー文庫)

 

 人間関係に焦燥を募らせる優等生香衣。サッカー部のエースで香衣が気になる隆生。香衣に一目惚れした不良・龍輝。付かず離れずの距離で香衣の友人を演じるセリカ。それぞれの視点から綴られる出会いと別れの物語。中学時代一緒に勉強して同じ高校に合格したのに、いつの間にか距離ができてしまった香衣と隆生。その関係を起点に描かれてゆく読んでいる方がもどかしくなるような青春群像劇は、前作とはまたガラリと違う読みやすさと繊細さが感じられて、こういう作品も書けるのかとビックリしました。こういう王道の青春小説をまた読んでみたいです。

 

5位 天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)

 病床の国王に代わり摂政として弱小国家を背負うことになった若き王子ウェイン。文武に秀で臣下からの信頼も厚い彼が、絶望的な状況から密かに売国を志す弱小国家運営譚。状況を正しく認識して先を見通せるからこそ絶望を感じるウェイン。上手く終わらせるための手を打つのに、それがなぜか効果的な一手に繋がる皮肉な状況の変化や展開の連続でしたけど、ウェインが彼なりに最善へ真摯に取り組んだ結果だからこそ納得感がありました。補佐官のニニムに対する想いも気になる彼にいつか心境の変化はあるのか、どこまでやれるのか楽しみなシリーズ。現在2巻まで刊行。

 

6位 錆喰いビスコ (電撃文庫)

錆喰いビスコ (電撃文庫)

錆喰いビスコ (電撃文庫)

 

 全てを錆つかせる「錆び風」人類を死の脅威に陥れる世界。師匠を救うため霊薬キノコ「錆喰い」を求め旅をする「キノコ守り」赤星ビスコが少年医師・ミロを相棒に、波乱の冒険へ飛び出す冒険ファンタジー。最初世界観に馴染むのに少し時間が必要でしたが、ミロを相棒に旅に出る少年マンガっぽい展開にはワクワクさせるものがあって、黒革という分かりやすい悪役の存在だったり、師匠のジャビや、パウー、チロルといったキャラたちもよく効いていて、王道の最後まで諦めない痛快な物語は読んでいて楽しかったです。現在2巻まで刊行。

 

7位 ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

 

 5年片想いした上司の後藤さんにバッサリ振られたサラリーマンの吉田。ヤケ酒の帰り道に路上で家出女子高生・沙優を発見し、なし崩し的に同居生活が始まる日常ラブコメディ。自分を大切にしないことを叱る吉田の優しさに戸惑う沙優と、彼女の存在が自分の中で少しずつ大きくなってゆくことを自覚する吉田。そんな何事にも真摯に向き合う彼の変化が気になる後藤さんと後輩の三島柚葉。周囲に振り回されてはいても根幹はブレない、相手を大切にしようとする吉田のありようが素敵で、何とも複雑な関係ですが今後の展開がとても楽しみなシリーズですね。現在2巻まで刊行。

 

8位 ピンポンラバー (ガガガ文庫)

ピンポンラバー (ガガガ文庫)

ピンポンラバー (ガガガ文庫)

 

日本全国から集まった卓球エリートがひしめく私立卓越学園。そこにかつて天才卓球少年と呼ばれた飛鳥翔星が入学し、完敗した一年生最強の女子・白鳳院瑠璃と組んで、その姉で自らの因縁の相手でもある学園最強の女子・紅亜に挑む青春小説。膝の重症を乗り越えかつて対戦した少女を探していた翔星と、紅亜を負かすことに執念を燃やす瑠璃の共闘関係。衝突しつつも勝ちたい一心でのめり込んでいく、身を焦がすほどに卓球を愛する二人が挑む熱い勝負はこれまで積み重ねてきた想いもカタルシスに繋がっていて、そんな物語の結末もまた効いていました。10月に2巻目刊行予定。

 

9位 僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

 

 29歳で死んだ社畜が生まれ変わるたびに、18歳で漆黒の髪・赤い眼の帝国皇女に殺される運命。5回目の人生で傭兵暮らしをしていたロワが魔王の隠し子とされ、急転する運命に巻き込まれてゆく物語。容赦なく蹂躙し続ける帝国への対抗で送り込まれた先での王女との結婚と母国滅亡。またもや対峙することになるあの女に、醒めていたロワが大切の人たちを守るため泥臭く奔走するようになり、キーマンとなっていったロワと負けられない皇女・リンゼンカが再び対峙する濃厚な展開とその結末は著者さんらしさに溢れていて、ぐっと来るものがありました。

 

10位 君死にたもう流星群 (MF文庫J)

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

 

 ほぼ全ての人工衛星が落下した大流星群から三年。たった一人の犠牲者・天野河星乃を救うため、全てを諦めかけていた平野大地が希望を見出し運命に抗う物語。宇宙飛行士だった両親の夢を追いかけていた星乃。コスパ重視だった人生も彼女を失いやる気をなくしていた大地。希望を見出すものの思うようにうまく行かなくて、それでも大切なものを取り戻すという熱い決意を胸に、危機になりふり構わず奔走して、醒めていた大地自身もまた変わってゆく展開はテンポも良くて、変化したことがこれからどう影響していくのか、非常に楽しみな新シリーズですね。現在2巻目まで刊行。

 

11位 ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか? (GA文庫)

 電車で痴漢に遭っていた女子高生・織原姫を助け、そんな彼女に惹かれてゆく男子高校生・桃田薫。しかし好きになったJKの正体はアラサーのOLだったという年の差ラブコメディ。高校生と一回り近く年上のアラサーという組み合わせはいろいろ考えてしまいますが、懐かしいあるあるネタでたびたび世代間ギャップに凹みながらも、天然で素の反応が可愛くて破壊力抜群の姫と、その魅力にドキドキしながら真摯に向き合おうとする不器用なモモの距離感がとても良かったですね。いろいろ前途多難な二人がどうなってゆくのか注目のシリーズです。現在2巻目まで刊行。

 

12位 それでも異能兵器はラブコメがしたい (角川スニーカー文庫)

 「異能兵器」が趨勢を左右する世界。転校した初恋の女の子・市ヶ谷すずに再会した辰巳千樫が、引っ込み思案な夢見る彼女が抱える秘密に巻き込まれてゆくラブコメディ。テロに襲われすずの圧倒的な力を知る一方、瀕死の重傷から助けてもらった代償に交換条件を突きつけられた千樫。それでも中国やロシアの驚異的な異能兵器相手だろうが、すずは彼にとって守りたい女の子で、どこまでも献身的な奔走の先にあった噛みしめるような幕切れはあまりにも切なかったです。でもこれで終わりじゃないですよね?諦めない千樫たちの物語を最後まで読みたいです。

 

13位 常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

 

 大国ザルツボルクの侵攻を受けたヘイミナル王国が存亡の危機を救う切り札として起用された傭兵・『常敗将軍』のドゥ・ダーカス。王弟や王の娘など様々な思惑が入り乱れる中、圧倒的不利な状況に立ち向かうファンタジー戦記。全幅の信頼を得られず思うように動けない中、要所要所の危機で最悪の状況を回避すべく動くダーカスの奮闘ぶりと、彼が見出そうとした決着の落とし所とその結末。テンポ良い展開に彼を見極めようとするティナや姫将軍・シャルナといった魅力的なキャラクターたちもよく動いて、これは続巻が楽しみな期待の新シリーズです。11月に2巻目刊行予定。

 

14位 公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

 

 昔からの幼馴染、瀬川エリカと吾妻千里。そんな二人とその友人たちを中心とした公園でのやりとりや日常が描かれる青春小説。お隣さんな二人の家の近くの公園で繰り広げられる仲間とダベったり野球をしたり、走り回ったり少し喧嘩したりのありふれた日常。でもそんな中にも幼馴染の二人が積み重ねてきた様々なことや、傍から見たら何で付き合っていないの?とついちょっかいを出したくなる二人の確かな絆があって、それでいて相手の知らないことに遭遇すると思わず動揺してしまう関係が微笑ましくて、何かじわじわとこみ上げてくるものがありました。

 

15位 ハル遠カラジ (ガガガ文庫)

ハル遠カラジ (ガガガ文庫)

ハル遠カラジ (ガガガ文庫)

 

 人がほとんどいなくなってしまった近未来。人工知能の機能障害を発症した軍事用ロボットのテスタと、彼女の障害を治すために共に旅する少女・ハルの旅先での様々な出会いを描く機械と人と命の物語。医工師を探し求める旅で出会ったイリアたち、少しずつ変わってゆくハルとの関係をどうすべきか葛藤し続けるテスタと、目的地で明かされる障害の真実。ハルを拾って試行錯誤しながら育ててきた二人の関係と、彼女たちを支えたロボットたちの存在があって、二人がこれまで育んできた絆に向き合い危機を乗り越える展開にはぐっと来るものがありました。

 

16位 空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)

空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)

空飛ぶ卵の右舷砲 (ガガガ文庫)

 

人造豊穣神の大崩壊で跋扈するようになった異形の怪物により人類が地上から追放された世界。小型ヘリ<静かなる女王号>を操り樹竜を狩るモズと相棒ヤブサメが、その腕を買われ旧都市新宿での大規模探索作戦に参加する近未来ファンタジー。豪快なモズと彼女に振り回されながちなヤブサメのコンビを中心に、立場の違う空団の面々と時にはいがみ合いながらも、強大な敵を相手にギリギリの戦いを繰り広げてゆく中で認め合うようになってゆく熱い展開に、その物語を締めくくる意外なオチもまた効いていました。続編あるようならまた読んでみたいですね。

 

17位 スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

 

 同級生の八坂幸喜真に触発された女装男子の天野翔が、彼のプロデュースで女装に目覚めたメアリーと共に女装アイドルを目指す青春小説。病院にいる「あの子」のために女装アイドルを目指すことになった天野翔視点と、丸井宴花との出会いから人生が変わってゆく広瀬怜視点の二つの物語が交錯する展開はぐいぐい読ませるだけの勢いがあって、物語を牽引する目をそらせない八坂の圧倒的な存在感と、「あの子」への献身的で不器用な熱い思いがその心を揺さぶって、伏線を回収して収束してゆく物語が見せてくれたその結末にはぐっと来るものがありました。

 

18位 優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

 

 怪我でサッカーを辞めて灰色の高校生活を送る隼人と、歌姫として学校で注目される瑠子。近寄り難い存在だったはずなのに、ふとした繋がりからお互い意識するようになってゆくボーイミーツガール。周囲に上手く溶け込めない瑠子をさりげなくフォローする隼人と、そんな彼への評価が変わってゆく瑠子。お互い消化しきれない葛藤を抱えていて、強気なのに不器用で繊細な瑠子との出会いから隼人も少しずつ変化して、もがきながらも一緒に乗り越えようとする二人の関係と、強く心に訴えかけてくる熱い想いはとても真っ直ぐでぐっと来るものがありました。

 

19位 オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

 

 無表情・無感情で人と関わろうとせず、そこかしこに絵を書き散らす芸術科の天才・小海澤有紗。変人扱いの彼女を気にかける雪斗が関わってゆくうちに、彼女が抱える秘密に巻き込まれてゆく青春小説。コミュ障なオミサワさんと些細なやり取りを重ね交流を深めてゆく地道な努力が微笑ましくて、文字通り次元が違う秘密を知っても彼女を理解し共にあろうとする雪斗。大切だからこそ苦悩するオミサワさんでしたけど、彼女の想いを垣間見た雪斗と相変わらず難しい境遇でも確実に変わりつつある彼女が迎えた素敵な結末には、ついニヤニヤしてしまいました。

 

20位 こんな僕が荒川さんに告白ろうなんて、おこがましくてできません。 (講談社ラノベ文庫)

こんな僕が荒川さんに告白ろうなんて、おこがましくてできません。 (講談社ラノベ文庫)

こんな僕が荒川さんに告白ろうなんて、おこがましくてできません。 (講談社ラノベ文庫)

 

 成績優秀だがクズを自認する浅井悠馬が偶然クラス演劇主役を演じることになり、幼馴染の明日香とともにクラスの中心に君臨する荒川唯のグループに巻き込まれてゆく青春ラブコメディ。行動をともにする機会が増えてゆく唯の見た目とは全然違う純真さとひたむきさ。少しずつ惹かれてゆく悠馬が知ってしまった唯のらしくない秘密。何ともほろ苦い気持ちを抱えながら、それでも彼女のために奮闘する悠馬の姿は心に響きましたが、だからといって頑張れば報われるとは限らないのが現実で、そんな迷える彼らの行く末を続巻でまた読んでみたいと思いました。現在2巻目まで刊行。

 

以上です。反応悪くなかったら来年もまた開催予定です。

気になった本があったら是非手にとって読んでみて下さい。