読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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2018年上半期注目のオススメ新作ライトノベル恋愛・青春小説26選

というわけで上半期企画第二弾、オススメ新作ライトノベル恋愛・青春小説編です。なお並びはレーベルごとに固めています。自分がよく読むジャンルとしてざっくりと2つにまとめているので、厳密にはそれちょっと違うんじゃないの?はあるかもしれません。ただそんなカテゴリーに収まらないからという理由で外すのもあれなので、だいたいそんなものくらいの認識で見てもらえれば幸いです。

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

 

 過去の苦い経験から「偽りの自分」を演じてしまう高校生・矢野四季が、印象的な出会いを果たした物静かな転校生・水瀬秋玻に惹かれ、彼女ともうひとりの人格・春珂を支えるようになってゆく不思議な恋物語。しっかりものの秋玻と対照的な危なっかしい印象の春珂。状況的に春珂をフォローすることが多い四季と二人を見つめる秋玻の繊細な距離感がまた絶妙で、大切な存在なのにすれ違ってしまうやるせなさだったり、ごまかさずにきちんと想いをぶつけてゆく彼らの青春がとても良かったですね。終盤は挿絵の使い方も効いていて続巻が今から楽しみです。

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

 

 同級生の八坂幸喜真に触発された女装男子の天野翔が、彼のプロデュースで女装に目覚めたメアリーと共に女装アイドルを目指す青春小説。病院にいる「あの子」のために女装アイドルを目指すことになった天野翔視点と、丸井宴花との出会いから人生が変わってゆく広瀬怜視点の二つの物語が交錯する展開はぐいぐい読ませるだけの勢いがあって、物語を牽引する目をそらせない八坂の圧倒的な存在感と、「あの子」への献身的で不器用な熱い思いがその心を揺さぶって、伏線を回収して収束してゆく物語が見せてくれたその結末にはぐっと来るものがありました。

優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

 

 怪我でサッカーを辞めて灰色の高校生活を送る隼人と、歌姫として学校で注目される瑠子。近寄り難い存在だったはずなのに、ふとした繋がりからお互い意識するようになってゆくボーイミーツガール。周囲に上手く溶け込めない瑠子をさりげなくフォローする隼人と、そんな彼への評価が変わってゆく瑠子。お互い消化しきれない葛藤を抱えていて、強気なのに不器用で繊細な瑠子との出会いから隼人も少しずつ変化して、もがきながらも一緒に乗り越えようとする二人の関係と、強く心に訴えかけてくる熱い想いはとても真っ直ぐでぐっと来るものがありました。

恋してるひまがあるならガチャ回せ! (電撃文庫)

恋してるひまがあるならガチャ回せ! (電撃文庫)

 

 バイト代を全てスマホゲーに突っ込んでしまうガチャだけが生き甲斐の留年寸前大学生・遠野が、旧華族出身のガチお嬢様で廃課金ゲーマーの薗村紗雪と邂逅する廃課金ラブコメ。拗らせ過ぎて言動がキモい遠野と、そこまで突き抜けてないだけで負けず嫌いの廃課金ゲーマーな紗雪。一見まともに見える友人の樋沢も違う意味で残念なお人で、ラブコメよりもひたすらスマホゲーとガチャに突っ走る彼らの呆れ果てたやり取りには苦笑いでしたけど、だからこそ覚悟した遠野が見せた矜持とそのブレない熱い想いは良かったです。現在二巻まで刊行。

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

 

 5年片想いした上司の後藤さんにバッサリ振られたサラリーマンの吉田。ヤケ酒の帰り道に路上で家出女子高生・沙優を発見し、なし崩し的に同居生活が始まる日常ラブコメディ。自分を大切にしないことを叱る吉田の優しさに戸惑う沙優と、彼女の存在が自分の中で少しずつ大きくなってゆくことを自覚する吉田。そんな何事にも真摯に向き合う彼の変化が気になる後藤さんと後輩の三島柚葉。周囲に振り回されてはいても根幹はブレない、相手を大切にしようとする吉田のありようが素敵で、何とも複雑な関係ですが今後の展開がとても楽しみなシリーズですね。現在二巻まで刊行。

それでも異能兵器はラブコメがしたい (角川スニーカー文庫)

それでも異能兵器はラブコメがしたい (角川スニーカー文庫)

 

 「異能兵器」が趨勢を左右する世界。転校した初恋の女の子・市ヶ谷すずに再会した辰巳千樫が、引っ込み思案な夢見る彼女が抱える秘密に巻き込まれてゆくラブコメディ。テロに襲われすずの圧倒的な力を知る一方、瀕死の重傷から助けてもらった代償に交換条件を突きつけられた千樫。それでも中国やロシアの驚異的な異能兵器相手だろうが、すずは彼にとって守りたい女の子で、どこまでも献身的な奔走の先にあった噛みしめるような幕切れはあまりにも切なかったです。でもこれで終わりじゃないですよね?諦めない千樫たちの物語を最後まで読みたいです。

裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。 (角川スニーカー文庫)

裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。 (角川スニーカー文庫)

 

 担当がついたもののなかなかデビューできない高校生作家の青木。そんな彼を恋愛マスターと勘違いした演劇部所属の憧れの綾瀬マイから、劇の脚本執筆を依頼される青春ラブコメディ。魅力的な彼女にどんどん惹かれてゆくのに、自信がなくて一歩を踏み出せずドツボにハマってゆくジレンマ。理解者の親友や彼女にお似合いのイケメン主人公キャラ、二人を振り回す女友達を配する王道な展開でしたけど、行き詰まっていた状況を打破する疾走感には勢いがあって、なのに何となく締まらない残念な結末に主人公らしさを感じてしまうなかなか面白い一冊でした。

 妹・映のラノベを理解したいという相談を受けて、文芸部に所属する兄の荒巻天太がちょっと変わった彼女・帆影歩たちと一緒にラノベを考えてゆくラブコメディ。なんだか二人の恋人らしくない雰囲気に本当に付き合っているのか疑問に思うブラコン気味の映と、ラノベの話をしているはずなのになぜか斜め上の生物学的小ネタをぶっこんでくる不思議少女・歩。噛み合っていなくても自分なりに頑張ろうとする歩はどこか可愛くて、そんな真意が見えてこなかった彼女がエピローグで淡々と語った天太への想いにはついニヤニヤしてしまいました。続巻に期待。

如月さんカミングアウト (角川スニーカー文庫)

如月さんカミングアウト (角川スニーカー文庫)

 

 「絶対零度の女帝」として君臨する生徒会長・如月キサキ。偶然彼女が隠れオタクだったことを知った日向和也が副会長として生徒会に引き込まれ、秘密のオタ友として一緒にオタク生活を満喫する青春小説。厳しい家の事情で放課後をオタクライフに費やす意外と積極的なキサキとの楽しい日々。訳あって集まった曲者揃いな生徒会メンバーの思惑は、なぜか(?)ことごとくキサキとの甘いハプニングに繋がっていて、つまるところ何もかもがキサキと和也のラブコメへ集約されてゆく展開にあまり意外性はなかったですが、これはこれで楽しめた一冊でした。

お助けキャラに彼女がいるわけないじゃないですか (富士見ファンタジア文庫)

お助けキャラに彼女がいるわけないじゃないですか (富士見ファンタジア文庫)

 

【第30回ファンタジア大賞<金賞>】 

街を守っている魔光少女が隣の席の庄川さんであることを知ってしまった平地くん。熱烈ファンの彼が超絶うっかりさんの彼女の正体がバレないよう奮闘することを決意するラブコメ。不器用なコミュ障な二人がお互い勘違いしたことから、なぜか始まってしまった二人のお付き合い(?)周囲も勘違いをこじらせながら二人のラブコメ展開を加速させていて、純情一途な庄川さんをフォローすべく奔走する平地くんの奮闘ぶりはカッコ良かったですが、劇的なのに決定的に噛み合っていない二人の関係がどうやって本物になっていくのか期待のシリーズです。現在二巻まで刊行。

青春失格男と、ビタースイートキャット。 (ファンタジア文庫)

青春失格男と、ビタースイートキャット。 (ファンタジア文庫)

 

【第30回ファンタジア大賞<審査員特別賞>】 

桜の木から落ちてきた宮村花恋と運命的な出会いを果たした野田進。なのにそんな幸せを実感できない彼の前に、エキセントリックな孤高の天才児・西條理々が現れる青春小説。進を青春不感症と指摘し、楽園追放計画に誘う西條との恋心とは呼べない背徳的な関係。一方で真っ直ぐないい子だとは思うものの、なぜか心動かない花恋との関係。不器用にしか生きられない彼らの最低の選択が皮肉にもその心境に変化をもたらしたりで、これから三人の関係がどのように変わってゆくのか、読む人を選びそうな作品ですが自分はその結末を読んでみたいと思いました。

忘却のカナタ 探偵は忘れた頃にやってくる (ファンタジア文庫)

忘却のカナタ 探偵は忘れた頃にやってくる (ファンタジア文庫)

 

 本当に助けを求める依頼者だけがたどり着けると噂の探偵事務所・忘却社。社長代行を名乗る記憶を殺す探偵・岬翼と、友人のストーカー被害の調査依頼するため迷い込んだ女子高生・三倉咲夜が出会う物語。相手の固有世界に入り込んで特定の人物の記憶を消し去れる翼と、同じように固有世界に入り込める咲夜が出会うエピソード。序盤は人間関係がやや把握しづらかったですが、明かされてゆく翼の過去にはいくつもの因縁が複雑に絡み合っていて、危険な状況に巻き込まれても彼に関わっていこうとする咲夜とどんな物語を紡ぐのか続巻に期待ということで。

ピンポンラバー (ガガガ文庫)

ピンポンラバー (ガガガ文庫)

 

【第12回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>】 

日本全国から集まった卓球エリートがひしめく私立卓越学園。そこにかつて天才卓球少年と呼ばれた飛鳥翔星が入学し、完敗した一年生最強の女子・白鳳院瑠璃と組んで、その姉で自らの因縁の相手でもある学園最強の女子・紅亜に挑む青春小説。膝の重症を乗り越えかつて対戦した少女を探していた翔星と、紅亜を負かすことに執念を燃やす瑠璃の共闘関係。衝突しつつも勝ちたい一心でのめり込んでいく、身を焦がすほどに卓球を愛する二人が挑む熱い勝負はこれまで積み重ねてきた想いもカタルシスに繋がっていて、そんな物語の結末もまた効いていました。

《このラブコメがすごい!!》堂々の三位! (ガガガ文庫)

《このラブコメがすごい!!》堂々の三位! (ガガガ文庫)

 

【第12回小学館ライトノベル大賞<ガガガ賞>】 

大手ラノベ系まとめサイト管理人の高校生・姫宮新。高校では浮いた存在の彼が、とある記事作りから《このラブコメがすごい!!》三位の作者が意中のクラスメイト・京月陽文だと知ってしまう青春ラブコメディ。マーケティングに精通し面白いことは重要ではないとすら考える新と、彼にラブコメの書き方を教わろうとする陽文。陽文への想いを自覚する不器用な新の困惑と迷走には頭を抱えましたが、そんな閉塞しかけた状況を見事ぶち壊してみせた陽文の真っ直ぐな想いが眩しくて、二人が取り戻した彼ららしいかけがえのない日常が印象に残る物語でした。

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

 

 ほぼ全ての人工衛星が落下した大流星群から三年。たった一人の犠牲者・天野河星乃を救うため、全てを諦めかけていた平野大地が希望を見出し運命に抗う物語。宇宙飛行士だった両親の夢を追いかけていた星乃。コスパ重視だった人生も彼女を失いやる気をなくしていた大地。希望を見出すものの思うようにうまく行かなくて、それでも大切なものを取り戻すという熱い決意を胸に、危機になりふり構わず奔走して、醒めていた大地自身もまた変わってゆく展開はテンポも良くて、変化したことがこれからどう影響していくのか、非常に楽しみな新シリーズですね。

俺もおまえもちょろすぎないか (MF文庫J)

俺もおまえもちょろすぎないか (MF文庫J)

 

 少しでもいいと思ったらすぐに告白してしまう高校生星井出功成。そんな彼がどんなことでも真正面から受け止めてしまう真面目な中学生初鹿野つぶらと出会い、お付き合いすることになるラブコメ。いちいちきちんと向き合ってくれるつぶらにどんどん惚れてゆく功成と、彼の想いに戸惑いながらも応えようとするつぶら。それぞれの行動原理には理由があって、惹かれてゆくがゆえに向き合わざるをえない本質的な問題もあって、少し引っかかるところもありましたが、誠実に向き合う不器用な二人の甘い物語として見るとなかなかぐっと来るものがありました。

15歳でも俺の嫁! 交際0日結婚から始める書店戦争 (MF文庫J)

15歳でも俺の嫁! 交際0日結婚から始める書店戦争 (MF文庫J)

 

 突然初対面の少女・君坂アリサに求婚され、うっかり承諾した大手出版取次に勤める火野坂賢一。実は中学生だったアリサとその実家を巡る騒動に巻き込まれてゆくラブコメディ。物語としてはやや構図を単純化し過ぎた感はありましたが、彼女と実家の書店をものにするためには手段を選ばない大手通販のゲスと対峙し、嫌がらせや中学生との婚約暴露という逆風に悩みながらも、これまで頑張ってきた仲間たちともに彼女や彼女が好きな書店を守ろうと奮闘し、愛の共同作戦wで劣勢を見事ひっくり返してみせた逆転劇はスカッとさせてくれるものがありました。

ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?~好きになったJKは27でした~ (GA文庫)

ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?~好きになったJKは27でした~ (GA文庫)

 

 電車で痴漢に遭っていた女子高生・織原姫を助け、そんな彼女に惹かれてゆく男子高校生・桃田薫。しかし好きになったJKの正体はアラサーのOLだったという年の差ラブコメディ。高校生と一回り近く年上のアラサーという組み合わせはいろいろ考えてしまいますが、懐かしいあるあるネタでたびたび世代間ギャップに凹みながらも、天然で素の反応が可愛くて破壊力抜群の姫と、その魅力にドキドキしながら真摯に向き合おうとする不器用なモモの距離感がとても良かったですね。いろいろ前途多難な二人がどうなってゆくのか、続巻に期待したいと思います。 

可愛い女の子に攻略されるのは好きですか? (GA文庫)

可愛い女の子に攻略されるのは好きですか? (GA文庫)

 

 日本の裏社会を牛耳る南条家の娘・姫沙の罠に嵌り、弱みを握られた日本の将来を担う政治家の卵・北御門帝が、姫沙から相手を好きになったと認めたら負けの「惚れさせゲーム」を提案される恋愛ゲームラブコメ。お互いの将来を賭けたゲームで、ポンコツでツンデレな姫沙の策略に振り回され続ける帝。内心デレデレな姫沙の無茶なアプローチに理性崩壊寸前の帝という分かりやすい構図には苦笑いでしたけど、帝が気になる姫沙妹や親が決めた帝の婚約者も絡めた展開は安心して読めました。諦めの悪いライバルたちがどんな手を打ってくるのか期待のシリーズですね。現在二巻まで刊行。

死神少女と最期の初恋 (ファミ通文庫)

死神少女と最期の初恋 (ファミ通文庫)

 

 死神を名乗る美しい少女・供花に七日後通り魔に刺されて死ぬと予告された大学生の波多野景。それまで生きる意味も目標もなかった彼が、彼女との出会いから徐々に変わってゆく物語。後輩からの告白にも心動かされず、思い残すこともあまりない景が供花に抱いた、最期を迎えるまで共に過ごして欲しいというささやかな願い。そして感情に乏しかった供花が景と共に過ごしていくうちに少しずつ積み重ねてゆく想いと心境の変化。運命が二人の出会いによって大きく変わる中、難しい立ち位置にあった彼ら二人に提示される落とし所は絶妙だったと思いました。

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

 

 無表情・無感情で人と関わろうとせず、そこかしこに絵を書き散らす芸術科の天才・小海澤有紗。変人扱いの彼女を気にかける雪斗が関わってゆくうちに、彼女が抱える秘密に巻き込まれてゆく青春小説。コミュ障なオミサワさんと些細なやり取りを重ね交流を深めてゆく地道な努力が微笑ましくて、文字通り次元が違う秘密を知っても彼女を理解し共にあろうとする雪斗。大切だからこそ苦悩するオミサワさんでしたけど、彼女の想いを垣間見た雪斗と相変わらず難しい境遇でも確実に変わりつつある彼女が迎えた素敵な結末には、ついニヤニヤしてしまいました。

銀月の夜、さよならを言う (ファミ通文庫)

銀月の夜、さよならを言う (ファミ通文庫)

 

 交通事故に遭うところを「高木茜」と名乗る女性に助けられた水原透流。七年前に思いを伝えられないまま亡くなった女の子とよく似た茜に、どうしようもないほど惹かれてゆく青春小説。意気投合し交際を積み重ねていきながらも、相変わらず謎の多い茜相手に距離を詰めきれない透流。そして少しずつ明らかになってゆく茜の複雑な想いとその真実。幼さゆえのほんの少しのすれ違いから変わってしまった世界と、気づいていなかった過去の思いがあって。停滞していた二人がこの出会いで新たな一歩を踏み出すその結末は切なくもぐっと来るものがありました。

廻る学園と、先輩と僕 Simple Life (ファミ通文庫)

廻る学園と、先輩と僕 Simple Life (ファミ通文庫)

 

 学園一の美少女と噂される片瀬先輩。そんな彼女をとある事件から救った歳下の千秋那智が急接近してゆく学園ラブコメディ。真っ直ぐで可愛くて女の子たちから人気があるのに自覚がない年下の那智と、そんな彼の言動が気になって何とも複雑な気持ちになってゆく人気者・片瀬先輩の繊細でもどかしい距離感。彼らを取り巻くキャラたちもよく動いて二人にちょっかいを出したり応援しながら、少しずつ二人が自分の気持ちを自覚して向き合うようになってゆく展開で、先輩はちょっと気が早いかなとも感じましたけど(苦笑)、とても素敵な結末に思えました。

春は冬の夢を見る (ファミ通文庫)

春は冬の夢を見る (ファミ通文庫)

 

 一日先を夢で体験できる能力を持ち、危機を回避しながら一人で生きてきた春先孝太郎。そんな彼が同級生・冬芽木実につきまとわれるようになり、回避できない彼女との距離がどんんどん縮まってゆく青春小説。頑なだった孝太郎の傍にいるのが当たり前になっていった木実と共有された秘密。それから不穏な状況に巻き込まれてゆく二人と明らかになってゆく過去の因縁、見えてくる悪意。大切な人と共にあるため、過去の呪縛を解消するために決然と立ち向かう姿はカッコ良かったのに、肝心なところでどこか締まらない二人の関係がとても素敵な物語でした。

→ぱすてるぴんく。 (講談社ラノベ文庫)

→ぱすてるぴんく。 (講談社ラノベ文庫)

 

【第7回講談社ラノベ文庫新人賞<佳作>】 

他人との関わりを避け、ぼっち高校生活を送っていた軒嶺緋色のネット恋愛の恋人スモモ。引きこもりだったはずの彼女が突如緋色の高校に入学してきて、リアルの彼女になってしまう青春小説。緋色の高校生活を一変させたスモモの存在と思い描くほど上手くいかないリアルな日常、そしてふとしたきっかけから対応を誤り炎上してしまう二人の関係。不用意な面もあったとはいえコミュ障には厳しい展開でしたが、ここで黒歴史だったはずの元カノの存在がなかなか効いてます。現在二巻まで刊行。

星空の下、君の声だけを抱きしめる (講談社ラノベ文庫)

星空の下、君の声だけを抱きしめる (講談社ラノベ文庫)

 

 小説が書けない文芸部員・シュウのスマホに、詠名という少女から届いた謎のメッセージ。絶望を感じていた詠名と交流を重ね、親しくなっていった彼女が実は五年前を生きる人だったという衝撃の事実に直面する恋愛小説。閉塞感しかない環境にいる詠名が書き上げた脚本で、文芸部を目の敵にする生徒会長と一緒に劇を演じることになったシュウ。ややボリューム不足な感はあって物語の構図自体はとてもわかりやすかったですが、交わらないはずの五年の歳月を乗り越える彼らのやりとりはぐっと来るものもあって、危機的状況でも諦めなかった彼らが引き寄せた結末に救われる思いでした。

 

 ↓オススメ企画第一弾はこちら。