読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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6月に読んだ本 #読書メーターより

6月は地味に忙しくて序盤あまり読めなかったですが、終盤上半期のまとめも意識しつつまだ読めていなかった気になる積読本を消化したりで、最終的にはそれなりの冊数になりました。とはいえ最近地味に積む本>読む本になっている状態が続いていて、積読がじわじわ増えてきているのが悩みのタネではあります…。

 

6月の読書メーター
読んだ本の数:94
読んだページ数:24647
ナイス数:5285

君と僕との世界再変 (角川スニーカー文庫)君と僕との世界再変 (角川スニーカー文庫)感想
人の価値が数値化された2184年のディストピア的な世界。働かずとも衣食住が保障された「庭国」で私掠官として働く数値が0の少年・アオが、負傷していた謎の少女・モアと出会い日常が激変していく近未来SF。数値化された価値が全ての世界で特殊な立ち位置にいるアオと、庭国崩壊阻止のために20年後の未来からやってきたモア。二人が出会い共闘することで加速していく展開の中、始まってしまう庭国崩壊とその鍵を握るアオの秘密。自称恋人のレイを加えた三角関係もあったりで、ここからどうなるのか楽しみな続巻に期待の新シリーズですね。 
読了日:06月30日 著者:音無白野
僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)感想
29歳で死んだ社畜が生まれ変わるたびに、18歳で漆黒の髪・赤い眼の帝国皇女に殺される運命。5回目の人生で傭兵暮らしをしていたロワが魔王の隠し子とされ、急転する運命に巻き込まれてゆく物語。容赦なく蹂躙し続ける帝国への対抗で送り込まれた先での王女との結婚と母国滅亡。またもや対峙することになるあの女に、醒めていたロワが大切の人たちを守るため泥臭く奔走するようになり、キーマンとなっていったロワと負けられない皇女・リンゼンカが再び対峙する濃厚な展開とその結末は著者さんらしさに溢れていて、ぐっと来るものがありました。
読了日:06月30日 著者:十文字 青
→ぱすてるぴんく。2 (講談社ラノベ文庫)→ぱすてるぴんく。2 (講談社ラノベ文庫)感想
炎上事件もどうにか収束を迎えて穏やかな日常を送り始めた緋色とスモモ。連休前に緋色のクラスでは遠足に向けた班決めが行われ 成り行きで緋色はなぜか渚たちのグループに加えられてしまう第二弾。今回は元カノの渚と鎌倉への遠足で同じ班となり、さらに他メンバーとはぐれ2人きりの行動に。緋色は相変わらずいろいろ考えすぎて空回りしてましたけど、スモモの前向きな気持ちと、渚のさっぱりとした性格が後押しして彼らの関係を好転させてくれましたね。なにかいい感じにすっきりとまとまってしまいましたが、続きあるならまた読んでみたいです。
読了日:06月29日 著者:悠寐 ナギ
新潮文庫の100冊2018新潮文庫の100冊2018感想
既読49冊。ざっと眺めた感じでは新規掲載はそれほど多くないのかなという印象ですね。表紙がだいぶ変わっていたりするのは隔世の感もありますが…。
読了日:06月29日 著者: 
異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術10 (講談社ラノベ文庫)異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術10 (講談社ラノベ文庫)感想
国王陛下から召喚命令が届き、代理で王都に向かったレムとシエラ。さらにレムに渡した結婚指輪が実はシェラの指輪と対になっていることが判明し、バレる前に正式なものを用意すべく奔走する第十弾。相変わらずコミュ障をこじらせてばかりのディアヴロでしたけど、魔術学園の女生徒行方不明事件ではディアブロ自身の成長も感じましたね。わりと状況に流されるままに行き当たりばったり続きな感じですけど、実は名門の出だったらしいレムと、王女っぽくない振る舞いのシェラも待つ王都で王との謁見がどんな展開に繋がるのか続巻に期待ということで。 
読了日:06月29日 著者:むらさき ゆきや
未来のミライ (角川文庫)未来のミライ (角川文庫)感想
生まれたばかりの妹に両親の愛を奪われて戸惑う幼いくんちゃん。気持ちを持て余す彼がある日、未来から来た妹・ミライちゃんと出会い、彼女に導かれて時をこえた冒険に旅立つ映画の原作小説。復職を目指すお母さんといまいちうまく育児に関われていなかったお父さんの関係に、これ映画を家族で見たらどう思うか気になりましたが、妹のミライに意識が向きがちな両親への複雑な想いが様々な出会いに繋がって、そんな経験の積み重ねでくんちゃんが成長し、両親もまた少しずつ変わってゆく展開は、映画で見るとまた印象変わってくるかもしれないですね。
読了日:06月29日 著者:細田 守
ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?~好きになったJKは27でした~ (GA文庫)ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?~好きになったJKは27でした~ (GA文庫)感想
電車で痴漢に遭っていた女子高生・織原姫を助け、そんな彼女に惹かれてゆく男子高校生・桃田薫。しかし好きになったJKの正体はアラサーのOLだったという年の差ラブコメディ。高校生と一回り近く年上のアラサーという組み合わせはいろいろ考えてしまいますが、懐かしいあるあるネタでたびたび世代間ギャップに凹みながらも、天然で素の反応が可愛くて破壊力抜群の姫と、その魅力にドキドキしながら真摯に向き合おうとする不器用なモモの距離感がとても良かったですね。いろいろ前途多難な二人がどうなってゆくのか、続巻に期待したいと思います。
読了日:06月28日 著者:望 公太
百錬の覇王と聖約の戦乙女 16 (HJ文庫)百錬の覇王と聖約の戦乙女 16 (HJ文庫)感想
スカーヴィズの死という手痛い損失を被りながらも、信長率いる《炎》を撤退させることに成功した勇斗。急襲した炎の族都から撤退を進めるとともに一転、東の美しき女帝ウートガルド率いる《絹》へと軍を進める第十六弾。撤退戦で相まみえたジークルーネと炎の勇将・シバの激突と脱出劇。ジークルーネは勇斗大好きっぷりのギャップが可愛くて、ウートガルドは目の付け所が鋭いなかなかの強敵でしたけど、さすがに信長ほどの脅威にはなりえなかったというか、ちょっと相手が悪過ぎましたかね(苦笑)また炎との再戦はあるのか続巻に期待ということで。
読了日:06月28日 著者:鷹山誠一
銀月の夜、さよならを言う (ファミ通文庫)銀月の夜、さよならを言う (ファミ通文庫)感想
交通事故に遭うところを「高木茜」と名乗る女性に助けられた水原透流。七年前に思いを伝えられないまま亡くなった女の子とよく似た茜に、どうしようもないほど惹かれてゆく青春小説。意気投合し交際を積み重ねていきながらも、相変わらず謎の多い茜相手に距離を詰めきれない透流。そして少しずつ明らかになってゆく茜の複雑な想いとその真実。幼さゆえのほんの少しのすれ違いから変わってしまった世界と、気づいていなかった過去の思いがあって。停滞していた二人がこの出会いで新たな一歩を踏み出すその結末は切なくもぐっと来るものがありました。
読了日:06月28日 著者:樫田 レオ
後宮瑞華伝 戦戦恐恐たる花嫁の謎まとう吉祥文様 (コバルト文庫)後宮瑞華伝 戦戦恐恐たる花嫁の謎まとう吉祥文様 (コバルト文庫)感想
母のせいで冷遇されようやく悲願の皇帝になった皇子・高垂峰。実際には太上皇の傀儡で、名ばかり皇帝に甘んじる日々を送る彼が、吉祥文様を愛する風変わりな妃嬪・危夕麗に出会う第九弾。いろいろドロドロな展開でゆるく繋がっているこのシリーズですが、今回は前巻から五年後の世界。最悪の出会いから急速に惹かれ合い、後宮の陰惨な争いに巻き込まれてゆく展開はもはやお約束ですが、どんなにお互い想い合っていても、皇帝と側室扱いの妃嬪という距離感だとままならないことも多いんですね。みんな皇帝になりたがらないのもよく分かります(苦笑)
読了日:06月28日 著者:はるおか りの
契約結婚ってありですか 利害一致から始まる恋? (富士見L文庫)契約結婚ってありですか 利害一致から始まる恋? (富士見L文庫)感想
美容師を辞めて福岡に戻ってこいという両親を振り切るため、結婚相談所に駆け込んだ西依咲。切実な状況を訴えた目の前の相談員・成嶋玲司から利害一致の契約結婚を提案される新婚生活物語。良くも悪くもざっくばらんで素直な性格の咲と、人の機微に疎く神経質だという自覚はある玲司がルールを決めながら、職場の人招待だったり、義妹や幼馴染・両親の突然の襲来だったり、二人で生活していく中で一緒にいろんなことをこなしていくうちに、それぞれ心境だったり距離感も変わってゆく展開は良かったですね。続きがあるようならまた読んでみたいです。
読了日:06月27日 著者:紅原 香
錆喰いビスコ (電撃文庫)錆喰いビスコ (電撃文庫)感想
全てを錆つかせる「錆び風」人類を死の脅威に陥れる世界。師匠を救うため霊薬キノコ「錆喰い」を求め旅をする「キノコ守り」赤星ビスコが少年医師・ミロを相棒に、波乱の冒険へ飛び出す冒険ファンタジー。最初世界観に馴染むのに少し時間が必要でしたが、ミロを相棒に旅に出る少年マンガっぽい展開にはワクワクさせるものがあって、黒革という分かりやすい悪役の存在だったり、師匠のジャビや、パウー、チロルといったキャラたちもよく効いていて、王道の最後まで諦めない痛快な物語は読んでいて楽しかったです。続巻出るようなので期待しています。
読了日:06月27日 著者:瘤久保 慎司,mocha
木崎夫婦ものがたり 旦那さんのつくる毎日ご飯とお祝いのご馳走 (富士見L文庫)木崎夫婦ものがたり 旦那さんのつくる毎日ご飯とお祝いのご馳走 (富士見L文庫)感想
著名な作家を父に持つ文筆家の島田ゆすらと、偶然出会った木崎修吾の電撃結婚。父の残した家で共同生活を始めた新米夫婦の日々が綴られてゆく物語。不安定だったゆすらと優しい木崎の美味しいものを食べたり、のんびりと寄り添うような夫婦生活。一方で作家としての自分のありように苦悩するゆすらのこと、作家だった父やふらりと家を出た弟の存在だったり、複雑な想いを抱く幼馴染・崇の存在もあったり、もしかしたらの可能性に切なくなりつつも、夫婦として作家として生きてゆくことにきちんと前向きになれた結末にはぐっとくるものがありました。
読了日:06月27日 著者:古池 ねじ
文豪Aの時代錯誤な推理 (富士見L文庫)文豪Aの時代錯誤な推理 (富士見L文庫)感想
自死を遂げたはずの芥川龍之介羅生門の下で見せられたのは、未来の地獄絵の如き事件とある女性の死。「羅生門現象」と呼ばれる事件を食い止めるため、時代錯誤な文豪探偵・龍之介が現代の東京に蘇る物語。いきなり現代に転生してそのギャップに戸惑いながらも、芥川オタクで教師を辞めた弥生を家政婦として雇いつつ、彼女を救うべく問題解決の方法を模索する時代錯誤な龍之介。正直事件の解決そのものよりも、平野レミ先生の番組で料理を習ったり現代文明に感化されてゆく姿や、何だかんだで惹かれ合う弥生との不器用なやりとりが楽しかったです。
読了日:06月26日 著者:森 晶麿
笑う書店員の多忙な日々 (メディアワークス文庫)笑う書店員の多忙な日々 (メディアワークス文庫)感想
東京の小さな書店で新人バイトの紗和が直面する現実。そんな彼女に仕事を教える文庫文芸担当の楠奈津が、某出版社から持ち込まれた新人デビュー作のゲラに衝撃を受けて全店フェアを提案するお仕事小説。都内の書店でもこれくらい過酷な職場環境なのかと感じつつ読みましたが、書店が大好きで仕事に取り組む書店員たちがいきいきと描かれていて、初心者の紗和と経験を積んだ奈津の両視点から書店を描こうとして視点の切り替わりが多かったのはやや気になったものの、周囲も巻き込んで一丸となって本を売りに行く展開にはぐっと来るものがありました。
読了日:06月25日 著者:石黒 敦久
カドフェス 発見!角川文庫2018カドフェス 発見!角川文庫2018感想
もともとKADOKAWA系はいつもわりと読んでるので、今年のカドフェスは既読は49冊。メディアミックス系がやや多めな印象。この中からあと何冊か読むことになりそうです。
読了日:06月25日 著者:株式会社KADOKAWA
ナツイチ 2018【本をひらけば、夏びらき。】ナツイチ 2018【本をひらけば、夏びらき。】感想
今年はだいぶ入れ替わってますかね?ざっと確認してみましたが既読は26冊。今回は思ったよりも読んでなかったです。一部読書メーターの感想が採用されていて、新刊発売時にも同月発売だった「これは経費で落ちません」と「それは経費で落とそう」が並んでいて笑いました。
読了日:06月25日 著者:集英社
探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫nex)探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫nex)感想
密室で謎の死を遂げた人工知能研究者の父。その死に疑問を持った高校生の息子・輔が、探偵AI・相以とともに父を殺した真犯人を追う過程で、犯人AI・以相を奪い悪用するテロリスト集団「オクタコア」の陰謀を知るミステリ。対となる存在の探偵と犯人という双子AI。明らかになる人工知能による世界統治を目指すオタクコアの存在。分かりやすい解説を加えながら語られる発展途上の存在から深層学習で成長する人工知能たちを軸とする展開は、やや強引かなと感じられる部分もありましたがなかなか興味深くて楽しめました。シリーズ化に期待ですね。
読了日:06月25日 著者:早坂 吝
仕事は2番仕事は2番感想
吉丸事務機を舞台に、仕事や職場の人間関係、家庭に悩みを抱える登場人物たちが、悩みながらも次への一歩を踏み出すお仕事連作短編集。総務課の人間関係に向き合い奔走する優紀、職場でも家庭でも居場所がない中年課長・内野、仕事では優秀だが家庭は崩壊した岸、周囲の仕事のやり方に納得いかない沙也、小さい頃から輪になじめず仕事も休職したかおり、引きこもりだった栄太と向き合う幸雄。頑張っているのに上手くいかない彼らの姿にはどこか共感するものがあって、相手を理解しようとした彼らに光明がもたらされる結末はなかなか良かったですね。
読了日:06月24日 著者:こざわ たまこ
いまは、空しか見えないいまは、空しか見えない感想
抑圧する父親に反発して日帰り旅行を決行したホラー映画好きの優等生・智佳。偶然長距離バスで乗り合わせた同級生のギャル・優亜と出会い、人生が変わってゆく連作短編集。父親に縛られていた智佳、祖母の呪縛を看取った母、辛い過去に苦しめられる優亜、そして彼女の背中を押してくれた翔馬との出会い。外の世界を知って飛び出してもそうそう現実は甘くなくて、それでも多くの人と出会い、過去は断ち切れなくてもきちんと向き合えるようになってゆく結末には心に響くものがありましたね。デビュー作ということで次回作にも期待したい作家さんです。
読了日:06月23日 著者:白尾 悠
永遠の庭で、終わらない恋をする (メディアワークス文庫)永遠の庭で、終わらない恋をする (メディアワークス文庫)感想
疲れ果てたアラサーOL香実の会社にやってきた新人は、彼女の初恋の相手で当時のまま姿が変わらない不思議な青年・樹々。十三年ぶりに訪れた奇跡の再会から彼女が転機を迎えてゆく物語。唯一の肉親・祖母が亡くなった上に会社も業績不振で、尊敬する先輩が去り自身も契約社員に降格されたりと散々な状況で再会した樹々。その存在に癒やされ惹かれてゆく一方で、突きつけられる樹々が何者なのかという疑問。それでもかけがえのない存在だからこそ向き合い、真実を知っても自分なりのやり方を模索し共にあろうとする姿は心に響くものがありました。
読了日:06月23日 著者:マサト 真希
あまのじゃくな氷室さん3 好感度100%から始める毒舌女子の落としかた (MF文庫J)あまのじゃくな氷室さん3 好感度100%から始める毒舌女子の落としかた (MF文庫J)感想
涼葉が勇気を出して愛斗を誘った恋来祭り。しかし愛斗はナンナに「絶縁したくなければ涼葉と祭りに来るな」と言われてしまい、上手く断る方法を探ろうとする第三弾。今回は夏休み編で買い物や生徒会、勉強会、バイト、下見旅行と女の子たちとの絡みが多く、神の加護を得た雅に対し、拗らせて愛斗母にまで交際を反対される散々な涼葉という構図でしたけど、でもそこで愛斗が頑張るからこそ逆境を乗り越えて二人の関係も前に進むのがいいですよね。とはいえまだまだ前途多難で、未だ涼葉の真意を誤解したままの雅の動向が気になるところではあります。
読了日:06月22日 著者:広ノ祥人
あやかし図書館で待ってます ―新入り司書と不思議な仲間たち― (メディアワークス文庫)あやかし図書館で待ってます ―新入り司書と不思議な仲間たち― (メディアワークス文庫)感想
司書の仕事を探していた結衣が見つけた求人は、豪邸の書庫を活用したあやかしのための図書館の仕事。躊躇しながらも昔出会ったあやかしの少年ナギのことを思い出し、思い切って働くことを決意する物語。様々な理由で本を探しに来るあやかしたちのために、オーナーの宗司やあやかしの風花に助けられながら司書として奮闘する結衣。主人公にあまり恋愛要素を絡めなかったり、登場するのも人間好きなあやかしが多かったりで、物語としてはわりと読みやすい方でしたが、気になる結末は少しばかり消化不良気味な感もあったので続編出ることを期待します。
読了日:06月22日 著者:安東 あや
ペンギンは空を見上げる (ミステリ・フロンティア)ペンギンは空を見上げる (ミステリ・フロンティア)感想
将来NASAのエンジニアを目指し風船宇宙撮影に取り組む小学六年生の佐倉ハル。意地っ張りでクラスでは孤立し、家に帰っても両親とぎくしゃくする彼が、金髪の転校生の女の子・イリスと出会い少しずつ変わってゆく青春小説。夢を追い真剣に取り組むハルの姿に共感し、自らは宇宙飛行士を目指そうとするイリス。そんな彼女の想いを突っぱねてしまうハルは複雑な事情を抱えていて、終盤明かされるひとつの真実には驚かされましたが、すれ違ったままで終わらせないために葛藤を乗り越えて頑張った二人のこれからを応援したくなる素敵な物語でした。 
読了日:06月22日 著者:八重野 統摩
現実主義勇者の王国再建記VII (オーバーラップ文庫)現実主義勇者の王国再建記VII (オーバーラップ文庫)感想
星竜連峰より帰還して、次なる外遊の地・隣国ながら交流のないトルギス共和国へ向かったソーマたち。現地の鍛冶職人の高い技術に目を付け、ある計画実現に向けて動き出す第七弾。現地で出会った元首の息子・クーと、見えてきた計画実現に向けて首脳会談を画策するソーマ。真摯に向き合った今回の首脳会談は、物語としても次の段階に向けた足がかりになる大きな成果がありましたかね。帰還後のソーマと各妃候補たちそれぞれとのエピソードも(たくさんいると大変w)良かったですが、一方で不穏な動きもあったりで、続巻の新展開に期待ということで。
読了日:06月21日 著者:どぜう丸
灰と幻想のグリムガル level.13 心、ひらけ、新たなる扉 (オーバーラップ文庫)灰と幻想のグリムガル level.13 心、ひらけ、新たなる扉 (オーバーラップ文庫)感想
パーティを離れる決意をしたユメを残し、海賊の島を去ったハルヒロたちは自由都市ヴェーレへ。そこで出会った怪しげな貿易商人ケジマンの隊商を護衛しがてら、未だ遠いオルタナを目指す第十三弾。ユメ不在を痛感する中で出会ったケジマンに振り回されるハルヒロたち。伝説の「レスリーキャンプ」を探るうちに飛ばされた「他界パラノ」でハルヒロが出会った謎の人物・アリス。さりげなく挿入されたシーンが意味深でそれが何を意味するのか気になりますが、謎めいた異界も仲間たちの動向も分からないことだらけで、続巻で説明が欲しいところですね。 
読了日:06月21日 著者:十文字青
瑕疵借り (講談社文庫)瑕疵借り (講談社文庫)感想
原発関連死、賃借人失踪、謎の自殺、家族の不審死…瑕疵物件とされたワケあり物件に住み込む藤崎が、関係者とともにその真実を突き止めてゆく連作短編集。住人の死だったり行方不明だったりでワケありとされた物件に住み込む瑕疵借りの藤崎。心情的には大家や不動産屋寄りというより、賃借人に対して未練を残す関係者の思いに寄り添うようにその真実に迫り、結果的にその事故物件扱いも解消してゆく展開で、もう一度やり直すことはできない残された人たちへの切なるメッセージの数々は心に響くものがありました。続編あるならまた読んでみたいです。
読了日:06月21日 著者:松岡 圭祐
さよならクリームソーダ (文春文庫)さよならクリームソーダ (文春文庫)感想
再婚した両親から逃げるように美大入学で一人暮らしを始めた友親。知り合った先輩の若菜と親交を深めるうちに、その過去と秘密を知ってゆく青春小説。両親に向き合えない後ろめたさを抱える友親と義姉・涼の複雑な関係。友親の前に現れた若菜を気にかける少女・恭子と、明らかになってゆく若菜が抱える絶望と秘密。登場人物たちのどうにもならない葛藤と生々しい感情のぶつかり合いが繊細に描かれていて、絶望に直面し何かが確実に壊れてしまった彼らが、それでも何とか生きていこうとする姿にはほろ苦くも未来があって、心に響くものがありました。
読了日:06月21日 著者:額賀 澪
これは経費で落ちません! 4 ~経理部の森若さん~ (集英社オレンジ文庫)これは経費で落ちません! 4 ~経理部の森若さん~ (集英社オレンジ文庫)感想
外資系から転職してきた経理部の新入社員・美華。率直な彼女に振り回され、付き合い始めた太陽にもペースを乱されて気苦労が絶えない沙名子が、さらなる面倒事に巻き込まれてゆく第四弾。正しくあろうと周囲と衝突も辞さない美華みたいな存在は大変だなと思いましたけど、それが事なかれ主義だった沙名子に跳ね返ってきたり、太陽への想いも変わってきたりで、ままならない状況で少しずつ変わってゆく彼女が興味深かったですね。ただ、落ち着くところに落ち着いたように見えるエピローグではあちこち火種が垣間見えて、一波乱ありそうな次巻に期待。
読了日:06月20日 著者:青木 祐子
契約結婚はじめました。 3 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)契約結婚はじめました。 3 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)感想
最近、偽装とも言い切れない感情がお互い芽生えつつある香澄と柊一。そんな中、香澄の義兄で元許嫁の晶紀が、椿屋敷の裏にあるアパート〈すみれ荘〉に引っ越してくる第三弾。晶紀の思い切った決断には驚かされましたけど、それが無意識だった柊一自身の想いに向き合わせることに繋がってゆくのがなかなか面白いところで、始まりが始まりゆえに難しい二人の関係もまた少しずつ変わってゆきそうですね。後半のすみれ荘の住人たちが描かれるエピソードもこれからの物語の広がりに繋がっていきそうで、これはこれでますます続巻が楽しみになりました。 
読了日:06月20日 著者:白川 紺子
忘却のカナタ 探偵は忘れた頃にやってくる (ファンタジア文庫)忘却のカナタ 探偵は忘れた頃にやってくる (ファンタジア文庫)感想
本当に助けを求める依頼者だけがたどり着けると噂の探偵事務所・忘却社。社長代行を名乗る記憶を殺す探偵・岬翼と、友人のストーカー被害の調査依頼するため迷い込んだ女子高生・三倉咲夜が出会う物語。相手の固有世界に入り込んで特定の人物の記憶を消し去れる翼と、同じように固有世界に入り込める咲夜が出会うエピソード。序盤は人間関係がやや把握しづらかったですが、明かされてゆく翼の過去にはいくつもの因縁が複雑に絡み合っていて、危険な状況に巻き込まれても彼に関わっていこうとする咲夜とどんな物語を紡ぐのか続巻に期待ということで。
読了日:06月20日 著者:新井 輝
SF飯2 辺境デルタ星域の食べ物紀行 (ハヤカワ文庫JA)SF飯2 辺境デルタ星域の食べ物紀行 (ハヤカワ文庫JA)感想
辺境の宇宙港デルタ3を起点として、辺境星域の食文化に革命を起こそうと一念発起した若旦那が、周囲を巻き込みながら小惑星鉱山跡を調味料工場に改造する計画を実現すべく動き出す第二弾。太母誕生のアレなエピソードがさらっとプロローグで語られたりもしましたが、計画実現に向けて周囲の人材をうまく適材適所で任せつつ、要所要所で相手をよく見て柔軟に対応してゆく若旦那に存在感がありましたが、宇宙鰻から始まってだんだん話が大きくなっちゃいましたね(苦笑)最後に出てきた元婚約者も訳ありそうで、またひと騒動起こりそうな続巻に期待。
読了日:06月19日 著者:銅 大
七星のスバル 0 (0) (ガガガ文庫)七星のスバル 0 (0) (ガガガ文庫)感想
謎めいた少女・エリシアがスバルの仲間たちと出会うまでが描かれた過去と未来を繋ぐスバルの始まりの物語。センスの有無・力の強弱によって管理され、人が明確に区分されるようなった世界で、センスレスと診断され施設に送られた少女・エリシア。彼女が区分最下層、日の光も届かぬフェーズⅣの実験場で果たした、人類の未来をも変える運命の出会い。物語が終盤に向かいつつある状況で描かれたこの世界に関する重要なエピソードでしたけど、繋がった過去と未来の様々な想いを胸にここからどう劣勢の状況を覆すのか、本編の続きが楽しみになりました。
読了日:06月19日 著者:田尾 典丈
ピンポンラバー (ガガガ文庫 た)ピンポンラバー (ガガガ文庫 た)感想
日本全国から集まった卓球エリートがひしめく私立卓越学園。そこにかつて天才卓球少年と呼ばれた飛鳥翔星が入学し、完敗した一年生最強の女子・白鳳院瑠璃と組んで、その姉で自らの因縁の相手でもある学園最強の女子・紅亜に挑む青春小説。膝の重症を乗り越えかつて対戦した少女を探していた翔星と、紅亜を負かすことに執念を燃やす瑠璃の共闘関係。衝突しつつも勝ちたい一心でのめり込んでいく、身を焦がすほどに卓球を愛する二人が挑む熱い勝負はこれまで積み重ねてきた想いもカタルシスに繋がっていて、そんな物語の結末もまた効いていました。
読了日:06月18日 著者:谷山 走太
ハル遠カラジ (ガガガ文庫 あ)ハル遠カラジ (ガガガ文庫 あ)感想
人がほとんどいなくなってしまった近未来。人工知能の機能障害を発症した軍事用ロボットのテスタと、彼女の障害を治すために共に旅する少女・ハルの旅先での様々な出会いを描く機械と人と命の物語。医工師を探し求める旅で出会ったイリアたち、少しずつ変わってゆくハルとの関係をどうすべきか葛藤し続けるテスタと、目的地で明かされる障害の真実。ハルを拾って試行錯誤しながら育ててきた二人の関係と、彼女たちを支えたロボットたちの存在があって、二人がこれまで育んできた絆に向き合い危機を乗り越える展開にはぐっと来るものがありました。 
読了日:06月18日 著者:遍 柳一
咲見庵三姉妹の失恋 (新潮文庫)咲見庵三姉妹の失恋 (新潮文庫)感想
父を亡くし、川越の和カフェを営む高咲三姉妹の家に居候することになった高校生・薫。不本意ながら三姉妹と暮らすことになった傷心な薫の変化と、姉妹たちの切ない恋愛模様、そして成長の物語。咲見庵を営む長女・花緒、ボーイッシュで夢見がちな次女・六花、そして二人とは母親の違う十六歳の三女・若葉。三姉妹それぞれの複雑で繊細な恋模様とその失恋は切なかったですが、それは彼女たちの停滞した状況からの前進でもあって、三姉妹とかけがえのない日々を過ごした薫もまた成長して新たな一歩を踏み出してゆく、とても優しくて温かい物語でした。
読了日:06月18日 著者:成田 名璃子
さくら花店: 毒物図鑑 (小学館文庫 み 7-1 キャラブン!)さくら花店: 毒物図鑑 (小学館文庫 み 7-1 キャラブン!)感想
植物の声を聞くことができる雪乃が店主の「さくら花店」を訪れるのは心に深い悩みを抱える客ばかり。そんな彼女を支える樹木医の夫・将吾郎との夫婦の日々と植物にまつわる事件を描く物語。不穏な雰囲気の男と不思議な色をつける紫陽花、雪乃と同じ植物の声が聞こえる少年・ヒロ、一見仲よさげな母娘が抱える苦悩。歪んだ家族の切ないエピソードは必ずしも残念な結末ばかりでもなくて、雪乃と将吾郎の率直で不器用なお互いの存在が不可欠に思える夫婦関係と、そこに居場所を見出したヒロたちが今後どうなってゆくのかまた読んでみたいと思いました。
読了日:06月17日 著者:宮野美嘉
若旦那のひざまくら若旦那のひざまくら感想
百貨店で働くアラフォーバリバリキャリアウーマン・長谷川芹が、一回り近く歳下の西陣の老舗織物屋の若旦那・充と出会い結婚を意識するも、京都での考え方の違いや反対する両親、美しい充の幼馴染など次々と障害が立ちはだかる物語。仕事を辞めて京都に乗り込んだ芹が選んだ問題解決方法が、西陣界隈の業界立て直しだったりするあたりがらしいなと苦笑いでしたけど、苦難にもめげず奔走する姿だったり、そんな彼女を支えてくれる存在もいたりで、きちんと向き合って状況をいい方向に変えようとする物語が迎えた結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:06月16日 著者:坂井 希久子
農業男子とマドモアゼル 新たな出逢いはスイカと共に (富士見L文庫)農業男子とマドモアゼル 新たな出逢いはスイカと共に (富士見L文庫)感想
農業生活にも慣れ気になる年下の師匠・優真に認められるため日々頑張る恵里菜。直売所で販売も始めた彼女が、同じく東京から移住してきた年上イケメンシェフと出会う第二弾。お互い最悪だった第一印象からだいぶ変わったものの、なかなか進展しない優真との関係。そんな状況で起きた優真の祖母・由紀子入院と、思わぬ伏兵出現に動揺する優真。農業で生きていくのはなかなか大変だなあと今回もしみじみ感じましたけど、心配りできてひたむきに頑張る恵里菜の好感度はうなぎのぼりで、優真はもっと頑張れと尻を叩きたくなりました(苦笑)続巻に期待。
読了日:06月15日 著者:甘沢 林檎
八雲京語り 宮廷に鈴の音ひびく (富士見L文庫)八雲京語り 宮廷に鈴の音ひびく (富士見L文庫)感想
対立を続けてきた公家との和睦を目指すため、武士最強の娘・雲雀に持ち上がった縁談。しかしそれは時間稼ぎでしかなくて、父に騙されて十も年下の一年限りのお飾り東宮・鈴鳴に嫁がされてしまう物語。このままでは終われない彼女が鈴鳴と組んで逆転を目指す展開で、そんな彼女たちの前に立ちはだかる親王・暮明と妻・鎬雨、そして暗躍する陰陽師・雅親。だいぶ分の悪い状況からのスタートでしたが、暮明に引け目を感じながらも姉さん女房・雲雀の期待に応えるべく鈴鳴がかなり頑張ったりで、ここからどう逆転していくのか面白くなっていきそうです。
読了日:06月15日 著者:羽根川 牧人
紅霞後宮物語 第八幕 (富士見L文庫)紅霞後宮物語 第八幕 (富士見L文庫)感想
怪我に倒れた小玉に代わり軍を率いることになった賢恭。宸にも小玉負傷と樹華の訃報が届いて後宮が動揺し、文林の命により自身の失態の原因を突き止めようとした梅花がさらなる闇を見つけてしまう第八弾。不幸な偶然が重なった結果として起きた小玉の負傷と、賢恭が決着をつけた戦場の後始末、思わぬ形に繋がっていった事件の真相。失われたものも大きくてほろ苦さが残る結末でしたけど、だからこそ悲壮な覚悟を固めた小玉とそんな彼女以外眼中にない文林の絆がより揺るぎないものになっていくあたりに、二人の複雑な関係を垣間見る思いがしました。
読了日:06月14日 著者:雪村花菜
弁当屋さんのおもてなし ほっこり肉じゃがと母の味 (角川文庫)弁当屋さんのおもてなし ほっこり肉じゃがと母の味 (角川文庫)感想
願いを叶える魔法のお弁当の作り手・ユウと念願の恋人同士になったもののお互い忙しくすれ違いの日々な千春。そんな二人のお弁当ものがたり第三弾。二人の関係に厳しいツッコミを入れる黒川の娘・茜の優しい心遣い、毎週変わった注文を入れる常連客の秘密、そして北海道旅行にやってきた姉弟に、北海道にやってきた千春の母と今回もお弁当を絡めた人情味溢れるエピソードで、周囲の方がやきもきしてしまうくらいなかなか進展しない二人でしたけど、お互いの想いも再確認できたし、お母さんにきちんとご挨拶できて良かったですね。また続巻に期待。 
読了日:06月14日 著者:喜多 みどり
魔力の胎動魔力の胎動感想
自然現象を見事に言い当てる不思議な力を持つ羽原円華。ふとした縁で彼女と出会った鍼灸師の工藤ナユタが、一緒に悩める人たちを救ってゆく『ラプラスの魔女』前日譚連作短編集。引退を覚悟したベテランスキージャンパーやナックルボールを受けられなくなった捕手、息子が川に落ちて植物状態になった夫婦、天才作曲家のパートナーの死の真相など、二人で悩める人たちを救いながらテンポよく進む展開の先にナユタが抱えていた過去の苦い因縁と、そしてその後の「ラプラスの魔女」に繋がるエピソードがあって、ここでそう繋がるのかと唸らされました。
読了日:06月14日 著者:東野 圭吾
百神百年大戦 (GA文庫)百神百年大戦 (GA文庫)感想
数多の神々が互いの覇を争い《龍脈》を巡って果てなき大戦を続ける世界・タイクーン。そんな中自堕落に暮らしていた最古の剣神・リクドーが雌伏の時に別れを告げるバトルファンジー。龍脈の力を引き出すのに必要な巫女に去られ、代わりの巫女として王女・ミリアに白羽の矢を立てたリクドー。最初は自堕落なリクドーに否定的だったミリアが目にしてゆくリクドーの真摯な一面。突きつけられた容赦のない現実に、真の力と想いを秘めるリクドーとツンデレなミリアが立ち向かう展開は流石の安定感で、覚悟を決めた二人の今後が楽しみなシリーズですね。
読了日:06月13日 著者:あわむら 赤光
彗星乙女後宮伝 (双葉文庫)彗星乙女後宮伝 (双葉文庫)感想
外交使節として華烈を訪れたルヴィエ国王子メリクルの護衛騎士コーラル。男装の麗人で伯爵令嬢でもある彼女が問題を起こした王子の代わりに刑罰「宮刑」を受け後宮で働くことになる物語。皇帝・皇族不在という特殊な状況下でとある思惑から後宮に送り込まれたコーラル。男と勘違いされたまま珠珊瑚と呼ばれる彼女と、事情あって後宮にいる男・紘宇や妃、女官たちの間で繰り広げれる壮大な勘違い劇。複雑な事情に勘違いが積み重なってややこしい感はありましたが、そんな状況で育まれていった彼女の想いがどういった結末を迎えるのか続巻に期待です。
読了日:06月13日 著者:江本 マシメサ
幸腹な百貨店 催事場で蕎麦屋呑み幸腹な百貨店 催事場で蕎麦屋呑み感想
郊外店の影響で頼みの綱である催事場の売上も落ち込み、再び売上が低迷する堀内百貨店。そんな状況で事業部長の伝治が酒売場の後藤里美が接客の不安から退社を検討していると耳にする第三弾。催事場についての現状に頷きつつ、今回も催事企画として里美が提出した「蕎麦の食べ比べ」を軸に美味しいもので立て直しを図る展開でしたけど、いかに若手が何に悩んでいるかを見極めやる気を引き出していくか、引っ張るだけでなくいかに上手くサポートしていくか、これからのマネジメントという観点でもなかなか面白かったですね。また続巻期待しています。
読了日:06月13日 著者:秋川 滝美
青の誓約 市条高校サッカー部青の誓約 市条高校サッカー部感想
稀代の名将と、絶対的エースの貴希に導かれ、全国の舞台に青の軌跡を描いた青森市高校サッカー部。当時の部員たちそれぞれのその後を絡めて描かれる青春群像劇。冒頭でいきなり異世界転生モノ展開になったのには驚きましたが、全体としては貴重な体験を共有した部員たちの複雑で繊細な心境が描かれてゆく連作短編集で、誰とも真摯に向き合って皆に好かれているのに、報われない片想いを続けていた真樹那に希望が見えた結末には救われた気分になりました。それにしても聖夏の話はその後がありそうな雰囲気で、機会があるならまた読んでみたいです。
読了日:06月12日 著者:綾崎 隼
一生に一度のこの恋にタネも仕掛けもございません。 (新潮文庫nex)一生に一度のこの恋にタネも仕掛けもございません。 (新潮文庫nex)感想
信用金庫に勤める彼氏いない歴=年齢の三十歳OL・印子が一目惚れしたのは、イケメンマジシャンのユウト。友人の恋と対抗するかのようにユウトが気になってゆく恋愛小説。マジックに興味を持ってゆく中で出会ったユウトへの想い。少しずつ距離を縮めていたのに誰かに愛されたことがなかったために不安に駆られ、彼の前から逃げ出した印子。そこからの斜め上の展開と意外な繋がりには驚かされましたが、芸の道についての語りはとても興味深くて、なかなか素直になれずに少しばかり遠回りした二人でしたけど、これはこれで悪くない結末に思えました。
読了日:06月12日 著者:神田 茜
明日、君が花と散っても (角川文庫)明日、君が花と散っても (角川文庫)感想
戦争末期にばらまかれたウイルスのせいで、ほとんどの人類が死に絶えた世界。とある集落に拾われ育てられた少年・マサキが「死花症候群」により散ってゆく大切な仲間たちを救うため「この世界」の調査を始める物語。どこか違和感を感じる気のいい仲間たちとの集落での自給自足生活と、幼馴染で大切な少女・カエデの存在。集落の人々が少しずつ減ってゆく終わりの予感に何とか抗おうとするマサキ。この世界の真実と大切な人が失われてゆく喪失感には胸が締め付けられましたが、それでも最後まで向き合い続けた二人の結末は儚くも美しいと思えました。
読了日:06月12日 著者:柳瀬 みちる
時は止まったふりをして (新潮文庫nex)時は止まったふりをして (新潮文庫nex)感想
小牧が高校時代に付き合っていた凌馬。同窓会で再会した彼のもとに十二年の歳月を経て届くはずのないフイルムが届いて、そこから忘れていた過去と感情が蘇ってゆく青春恋愛ミステリ。十年前友人だった小牧や知葉たちの視点で描かれる甘酸っぱくてほろ苦い青春の日々と、三十路を前にした社会人としてのそれぞれの現在地。当時は明かされなかった密かないくつもの想いがあって、一方で今大切にしたいと思っている関係があって。清算されてゆく心残りだった過去が現在に繋がって、迷える背中をそっと押してくれる展開にはぐっとくるものがありました。
読了日:06月11日 著者:藤石 波矢
閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 (講談社タイガ)閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 (講談社タイガ)感想
解決したとされる事件の結末に疑問をいだいた刑事、仲間を殺して貯金を独り占めしようとした小悪党、かつて共に戦った仲間たちの誰かに撲殺された元甲子園投手といった現世に未練を抱く死者たちが、生き返りを賭けて霊界の裁判官・閻魔沙羅の推理ゲームに挑む第二弾。前巻では謎解きに至る過程にある程度パターンがあった感もありましたが、今回はそんな流れに少し変化をつけてきましたか。今回の死者たちはいろいろな意味で濃い人たちでしたけど、因果応報というか誠実に向き合おうとしないクズに相応の報いもあるのは当然ですね。また続巻に期待。
読了日:06月11日 著者:木元 哉多
マージナル・オペレーション改 04 (星海社FICTIONS)マージナル・オペレーション改 04 (星海社FICTIONS)感想
朝鮮半島動乱の影響が世界に波及するなか、イトウさんの手引きでようやくミャンマー東北部・シャン州の密林に帰還を果たしたアラタ。しかしキャンプ・ハキムは失陥し、ミャンマー政府・中国・ワ族に囲まれ完全に孤立する新章第四弾。どうにもイトウさんが有能過ぎて欲しい人材感ありましたけど、その影響でホリーさんまでちょっとアグレッシブでしたね。アラタがどうにも朴念仁過ぎてどっちも不発に終わってましたけど(苦笑)しかしこんな流動的過ぎる情勢の中でも的確に判断できるアラタが凄まじい。まあ子供たちのことしか考えてないですけどね。
読了日:06月10日 著者:芝村 裕吏,しずま よしのり
賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)賭博師は祈らない(4) (電撃文庫)感想
バースでの長逗留を終えて、ようやくロンドンに帰還したラザルス。大切なものを得たが故に賭博師としての冷徹さに確実に鈍りが生ていた彼のもとに、かつての恋人である賭博師・フランセスが再び現れる第四弾。名声を得たラザラスに接触してくる裏世界のジョナサンと警察的存在のルロイ。対立する構図に巻き込まれフランセスによって叩き潰されたラザラスが、そこから再び立ち上がって挑んでいく展開と因縁の再戦、それまでの展開で伏線を積み重ねた先に繰り出される鮮やかな逆転劇は今回もお見事でした。次で最終巻とのことですがとても楽しみです。
読了日:06月10日 著者:周藤 蓮
恋してるひまがあるならガチャ回せ!2 (電撃文庫)恋してるひまがあるならガチャ回せ!2 (電撃文庫)感想
紗雪の窮地を救ったものの相変わらず廃課金な生活を送る啓太が、モバイルゲーム研究会のサークルに所属する笹倉美森と出会う第二弾。もう半同棲してみたいな生活してるのに何その関係な二人には苦笑いですが、今回は新キャラ美森発案のサークルの沖縄夏合宿回。啓太はどこまでもダメ人間なのに、スマホゲーが絡むとテンパった末にカッコいいこと言っちゃうし、困った人を見捨てられずしっかり救ってみせたりしてカッコよく見える不思議。どうしようもないくだらないエピソードの連続なのに面白いから悔しくなりました(苦笑)続巻も期待しています。
読了日:06月09日 著者:杉井 光
片想い探偵 追掛日菜子 (幻冬舎文庫)片想い探偵 追掛日菜子 (幻冬舎文庫)感想
好きになった推しの対象を徹底的に調べ上げて見守るストーキング体質な女子高生・追掛日菜子。しかしなぜか好きになった相手は次々と事件に巻き込まれ、彼女が事件解決の糸口を見つけ出すミステリ。舞台俳優、若手力士、天才子役、覆面漫画家から総理大臣まで、惚れっぽく法律ギリギリアウトな手法で見守る日菜子が推しのために奔走する探偵劇。彼女の好意が事件を引き寄せてるのでは?と思わなくもないですが、コミカルでテンポのいい展開は楽しくて、振り回されるお兄ちゃんは大変でしたが、それでも懲りない彼女の活躍をまた読んでみたいです。 
読了日:06月08日 著者:辻堂 ゆめ
浅草和裁工房 花色衣: 着物の問題承ります (小学館文庫キャラブン!)浅草和裁工房 花色衣: 着物の問題承ります (小学館文庫キャラブン!)感想
ファッション雑誌から着物専門誌の編集部へ突然異動になった体力だけが自慢の新米編集者・陽菜子が、さっそく取材を任されて向かった浅草で美形の和裁士・八月一日桐彦に出会う浅草着物ミステリー。飄々とした態度で陽菜子をからかってくる八月一日と、そんな彼に素直になれない陽菜子という組み合わせでしたけど、仕事には真摯に取り組む陽菜子の姿勢だったり、友人の結婚相手の問題や陽菜子の祖母と母の着物を巡る長年の確執をうまくフォローしてくれる八月一日に、不器用なりに少しずつ惹かれていく様子がとても可愛くてなかなか良かったですね。
読了日:06月08日 著者:江本 マシメサ
西陣あんてぃく着物取引帖 (富士見L文庫)西陣あんてぃく着物取引帖 (富士見L文庫)感想
母親の羽織を持って京都・西陣のアンティークショップを訪れた薬剤師の純花が、金髪碧眼の店主・アレックスと出会い、因縁の羽織の真相究明のため二人で出処を調べることになる物語。アレックスの祖母と同じ柄の着物、そして男を作って家を出た純花の母を巡る因縁。紳士的で着物に対する造詣が深いアレックスと会い様々なことを知るうちに、少しずつ変わってゆく純花の心境。着物に関する興味深いエピソードや意外な繋がりもあったりで、今回の謎は明らかになりましたけど、アレックスたちとの今後も気になるのでもう少し続きを読んでみたいですね。
読了日:06月07日 著者:小田 菜摘
華鬼4 (講談社文庫)華鬼4 (講談社文庫)感想
神無の思いが通じ隠れ家の別荘から鬼ヶ里に戻ったものの、お互い相手への感情を整理できない二人。そこに鬼と花嫁の結婚決定権を持つ選定委員が現れ、華鬼への闘争心を燃やす響は神無の白肌に求愛の印を刻み込む第四弾。何とか無事収まったのかなという結末でしたけど、自信なさげな神無は発想が自己犠牲的で、それ以上に華鬼が自分の気持ちを自覚するまでに時間が掛かり過ぎて、無駄に神無を振り回して危険に晒していましたし、周囲も結構大変でした(苦笑)でも巻末の番外編読むと大分変わったみたいですね。子供たち世代の続編も期待しています。
読了日:06月07日 著者:梨沙
この度、公爵家の令嬢の婚約者となりました。しかし、噂では性格が悪く、十歳も年上です。 (ダッシュエックス文庫)この度、公爵家の令嬢の婚約者となりました。しかし、噂では性格が悪く、十歳も年上です。 (ダッシュエックス文庫)感想
男爵家の長男だが家督が継げないため、冒険者になろうとしていたジャレッドのもとに舞い込んだ公爵家の令嬢・オリヴィエとの婚約話。その婚約を機に権謀術数の渦に巻き込まれてゆく物語。希少な宮廷魔術師候補として周囲からのやっかみも多いジャレッドと、十歳年上で悪い噂が絶えないオリヴィエという組み合わせでしたが、訳ありな彼女を色眼鏡で見ないできちんと向き合おうとするジャレッドの姿勢と奮闘があるからこそ、不器用なジャレッドの良さが生きていてお似合いな二人に思えました。すっきりまとまっていましたけど続刊に期待ということで。
読了日:06月06日 著者:市村 鉄之助
静かの海 その切ない恋心を、月だけが見ていた 下 (宝島社文庫)静かの海 その切ない恋心を、月だけが見ていた 下 (宝島社文庫)感想
自分が女の子だということを言えないまま、近所の大学生・行成との友情を育むマサキ。そんなマサキに中学受験という現実と、就職する行成との別離の日が近づいてくる下巻。友人関係や母親との関係に悩みながら進むべき道を模索するマサキと、彼女の窮地を救いながらもその秘密を知り動揺してしまう行成。丁寧に綴られる周辺事情なども交えながら思わぬ展開もあったりで、そのまま二人の淡い思い出として昇華させてゆくのかなと思わせつつ、それでも二人のためにかすかな希望をきちんと提示してくれるあたりに、著者さんの優しさを感じたりしました。
読了日:06月06日 著者:筏田 かつら
静かの海 その切ない恋心を、月だけが見ていた 上 (宝島社文庫)静かの海 その切ない恋心を、月だけが見ていた 上 (宝島社文庫)感想
内定を取り消され将来の不安に苛まれる大学生・行成と、引っ越してきたばかりで周りに馴染めずにいる小学生・マサキ。それぞれ悩みを抱える二人が歳の離れた友人として徐々に親交を深めてゆく物語。行成が「可愛らしい男の子」だとばかり思い込んでいた真咲。誤解が解く機会がないまま共に過ごし積み重ねてゆく二人の思い出と、それを転機に新たに築かれてゆくそれぞれの人間関係。マサキが女の子だと微塵も気づかない行成と、自らの想いを自覚してゆく真咲という危うくて繊細な距離感がそのままでいられるはずもなくて、何とも切ない展開ですね…。
読了日:06月06日 著者:筏田 かつら
君が死ぬ未来がくるなら、何度でも (集英社オレンジ文庫)君が死ぬ未来がくるなら、何度でも (集英社オレンジ文庫)感想
とある日の朝、幼馴染の高遠原櫂から急に呼び出され、おメダイを渡された時計紡。櫂の妹で親友でもある暖の死を目の当たりにした紡が、その死を回避すべく運命の朝を繰り返してゆく物語。繰り返し条件を変えていってもなかなか回避できない友人たちの死。回避の鍵を握る幼馴染の櫂と暖を巡る複雑な三角関係と、運命線を分岐させる死亡フラグと恋愛フラグの存在。大切な人たちを誰も失いたくない一心で葛藤し続けた紡の悲壮な決意には切なくなりましたが、遠回りこそしたものの彼らがたどり着いたその結末には、本当に良かったと胸が熱くなりました。
読了日:06月05日 著者:茅野 実柚
下鴨アンティーク アリスの宝箱 (集英社オレンジ文庫)下鴨アンティーク アリスの宝箱 (集英社オレンジ文庫)感想
初夏を迎えた京都・下鴨で、エピソードを交えつつ鹿乃たちのその後が描かれてゆく連作短編集。求婚の返事が聞けないまま婚約者を亡くした老人が探していたもの、春野の元に現れた香水瓶の返却を求める着物姿の女性、白無垢の花嫁の幽霊といったお話の中で、鹿乃と慧のその後だったり、幸と良鷹の関係だったりも描写されていて、個人的には鹿乃たちの高祖父母の出会いが切ないですけど野宮家らしさがあって好みでしたけど、どのエピソードもこの物語らしい雰囲気があって良かったですね。最終巻ということでこれで終わってしまうのがとても残念です。
読了日:06月05日 著者:白川 紺子
地獄くらやみ花もなき (角川文庫)地獄くらやみ花もなき (角川文庫)感想
わけあって借金を抱えネットカフェを泊まり歩く放浪生活を送る青年・遠野青児。罪人が化け物に見える彼が迷い込んだ洋館で、白牡丹の着物をまとった謎の美少年・西條皓に住みこみの助手として屋敷で働くよう誘われる物語。鬼の代わりに罪人を地獄に届ける「地獄代行業」を営む皓を訪れる顧客たちが抱える事情とおぞましい真実、そして彼らにふさわしい結末。騙されて何度も怖い目に遭わされるのに、皓に確実に手なづけられてゆく青児の小市民っぷりが物語のいいアクセントになっていて、ライバル探偵・凜堂棘も登場したりな今後の展開が楽しみです。
読了日:06月04日 著者:路生 よる
宮廷神官物語 二 (角川文庫)宮廷神官物語 二 (角川文庫)感想
麗虎国の宮廷で神官書生として学ぶことになった慧眼児の天青。彼を待っていたのは神官書生たちのイジメで、学校の課題で山へ出かけた天青が天真爛漫な少年・櫻嵐と出会う第二弾。貴族の子息たちが学ぶ中に常民が紛れ込んで、異分子は弾かれるというよくある展開でしたけど、自身の経験もあってか鶏冠も冷静に状況を見ていましたね。そこから山での課題という転機からの櫻嵐との出会いとその意外な正体だったり、慧眼児としての力を見せて事態を解決していく中で天青の理解者も少しずつ増えていって、彼が置かれている状況も変わってくるんですかね。
読了日:06月04日 著者:榎田 ユウリ
サイメシスの迷宮 逃亡の代償 (講談社タイガ)サイメシスの迷宮 逃亡の代償 (講談社タイガ)感想
東京都下で起きた女児殺害事件。遺棄状況から8年前の和光市女児連続殺害事件の模倣に気づいた超記憶症候群のプロファイラー・羽吹允は、相棒の神尾文孝とともに調べてゆくうちに事件の差異に違和感を覚える第二弾。ふた月前に獄中で病死していた和光事件の弟の周辺を探るうちに起きた第2の事件。構図としては分かりやすかった事件の結末は何ともあれでしたが、羽吹の周辺事情も明らかになる中で、神尾の存在はいい意味で彼に変化をもたらしていますね。しかし過去の因縁がこういう形で繋がってきますか...どういう決着になるのか気になります。
読了日:06月04日 著者:アイダ サキ
相棒は小学生 図書館の少女は新米刑事と謎を解く (集英社オレンジ文庫)相棒は小学生 図書館の少女は新米刑事と謎を解く (集英社オレンジ文庫)感想
大ざっぱな性格で失敗ばかりの新米刑事・新明寺克平が、複雑な事情で図書館に引きこもる小学生・結愛と出会い、彼女の助けを得て事件解決に繋げてゆく物語。一度見たものや耳にしたことは絶対に忘れないために周囲とうまく付き合えなかった結愛。たまたま出会った二人でしたけど、結愛の記憶が行き詰まった事件のヒントや、悲しい過去だった克平の妹の事件解決に繋がったり、一方で克平の存在が結愛に新しい世界へ一歩を踏み出す勇気をくれたりと、交流を深めてゆくうちに案外いいコンビになっていった二人の続編があるならまた読んでみたいですね。
読了日:06月03日 著者:ひずき 優
すずらん通り ベルサイユ書房 リターンズ! (光文社文庫)すずらん通り ベルサイユ書房 リターンズ! (光文社文庫)感想
事件が起こると有名になってしまった神田神保町にあるベルサイユ書房。テレビで有名なイケメン写真家・ジョージ久保田のサイン会が脅迫され、刊行中止に追い込まれる事態に、剣崎店長の司令で店員たちが写真集の中に写る都合の悪い何かを追う第二弾。名物のおじいちゃん、隠し子の謎、覆面作家の正体など、謎の解決は空振りの結果で冒頭の事件の解決に繋がるわけでもないせいかやや冗長にも感じてしまいましたが、ひとつひとつのネタ自体は著者さんらしさがよく出ていて面白かったです。これはシリーズ化や殺人鬼ノブエ再登場もあるんでしょうかね。
読了日:06月02日 著者:七尾 与史
星空の下、君の声だけを抱きしめる (講談社ラノベ文庫)星空の下、君の声だけを抱きしめる (講談社ラノベ文庫)感想
小説が書けない文芸部員・シュウのスマホに、詠名という少女から届いた謎のメッセージ。絶望を感じていた詠名と交流を重ね、親しくなっていった彼女が実は五年前を生きる人だったという衝撃の事実に直面する恋愛小説。閉塞感しかない環境にいる詠名が書き上げた脚本で、文芸部を目の敵にする生徒会長と一緒に劇を演じることになったシュウ。物語の構図自体はとてもわかりやすかったですが、交わらないはずの五年の歳月を乗り越える彼らのやりとりはぐっと来るものもあって、危機的状況でも諦めなかった彼らが引き寄せた結末に救われる思いでした。 
読了日:06月01日 著者:高橋 びすい
終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#06 (角川スニーカー文庫)終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#06 (角川スニーカー文庫)感想
フェオドールが借りた鏡の向こうで笑みを浮かべる黒髪の青年の力。絶望を鎖ぎ希望を結ぶ遺跡兵装モウルネンを手に、みんなが幸せになれる唯一の方法のために最後の嘘をつく第六弾。妖精兵の彼女たちを守るために覚悟を決めたフェオドールが、真意を隠したまま始めた終わらせるための戦い。彼女たちの傍にいる資格がないと思ってしまうフェオドールも、マルゴ、ティアット、そしてラキシュたちそれぞれの想いも何とも切ないですが、こうするしかなかったのか?と思ってしまう結末もこれで終わりではなさそうですね。続巻に救いがあるといいんですが。
読了日:06月01日 著者:枯野 瑛

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