読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

今注目の中華風ファンタジー15選

※最新情報を反映した改訂版記事作成しました(19/10/24)

 

 

もともと個人的に期待の高かった白川紺子さんの「後宮の烏」(オレンジ文庫)は順調に重版を重ねているようで、中華風ファンタジー(特に後宮もの)人気を改めて実感しました。最近は富士見L文庫少女小説を中心にそのジャンルの作品はたくさん刊行されていて、もともと好きなジャンルということもあって自分もわりとチェックしている方だと思いますが、その中からオススメのタイトルを紹介したいと思います。 

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

 

 後宮奥深くにいる夜伽をしない不思議な力を持つ特別な妃「烏妃」。翡翠の耳飾りに取り憑いた女の幽霊の正体を探るべく訪れた皇帝・高峻が、その不思議な力を目の当たりにする中華風ファンタジー。辛い過去を抱え烏妃として孤独に生きようとする寿雪と、少年時代に生母を皇太后に殺され辛酸を舐めた高峻。後宮で起きる幽鬼絡みの事件を解き明かす過程で二人が関わる機会は増えていって、不器用な彼らの距離感や周囲との関係の変化はとても微笑ましくて、秘密を共有した二人がこれからどう変わってゆくのか、この続きを是非読んでみたいと思いました。

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

 

 金椛帝国の皇帝崩御に伴い、「皇帝に外戚なし」の法のもとに皇后に選ばれた星皇后の一族は全て殉死を命じられ、胡娘の助けにより御曹司の遊圭がひとり生き延びる中華ファンタジー。追われる身だった遊圭が、以前助けた縁で匿ってくれた町娘の明々と一緒に密かに男の身で後宮に出仕するまさかの展開。病弱で世間知らずゆえか義憤に駆られて自らの身を危うくするような状況にはハラハラしましたが、宦官・玄月に正体を疑われながらも知恵を駆使して何とか乗り切った展開はなかなか面白かったです。後宮からの脱出を目指す遊圭たちの今後に期待ですね。現在4巻まで刊行。

天空の翼 地上の星 (講談社X文庫)

天空の翼 地上の星 (講談社X文庫)

 

 徐の王太子・寿白は革命の混乱のさなかに王の証・王玉を得たが庚に取って代わられ、十年後に飛牙と名乗って再び国を訪れる中華風ファンタジー。飛牙から玉を取り戻すべく現れた天令の那兪とともに訪れたかつての王都。天から見放され荒れる庚の治政と、寿白時代の飛牙を知る宦官・裏雲や王太后が抱えていた秘密。明かされた事情と混乱の最中で上手く立ち回り、どうにかこうにかうまく取りまとめてみせた飛牙が、裏雲を追って天下四国を旅しながら行く先々で活躍するシリーズです。全4巻。

紅霞後宮物語 (富士見L文庫)

紅霞後宮物語 (富士見L文庫)

 

 女性ながら不世出の軍人と評される将軍・関小玉33歳が、かつての相棒にして今は皇帝である文林の懇願を受けある日突然皇后となり、嫉妬と欲望が渦巻く後宮「紅霞宮」に入る物語。軍人らしいきっぱりさっぱりな性格の小玉と、皇帝として公人としての意識も持たざるをえなくなった文林。絆こそ感じられるもののお互い立場も変わり、変わってしまったところと変わらないところに戸惑い葛藤する展開でしたが、ついに覚悟を決めた小玉と、そんな彼女に複雑な想いを抱いたままに見える文林がどんな夫婦になっていくのかいろいろ気になるシリーズです。現在7巻+前日譚2巻刊行。

 花街の薬師だったのをさらわれて後宮で下働き中の娘・猫猫が、薬師としての能力を美形の宦官・壬氏に見込まれ、後宮の事件や噂を解決する物語。中華風の後宮にいるものの特に出世を目指すわけでもない猫猫はわりとさっぱりとした性格で、周囲が色めき立つ美貌の壬氏にも醒めた視線を向けるわけですが、そんな猫猫を壬氏が何となく気にかけている構図が面白いですね。陰謀渦巻く狭い世界で繰り広げられる事件に、薬と毒には並々ならぬ執着とこだわりを見せて謎解きに挑む猫猫、彼女を取り巻く登場人物たちも魅力的で、テンポの良いやりとりを楽しめるシリーズです。現在7巻まで刊行。

後宮詞華伝 笑わぬ花嫁の筆は謎を語りき (コバルト文庫)

後宮詞華伝 笑わぬ花嫁の筆は謎を語りき (コバルト文庫)

 

 継母から冷遇され亡き母に教えられた能書の才さえも継母に奪われてしまった李淑葉に、皇帝の兄・夕遼との結婚の勅命が下る物語。実は夕遼が望んでいたのは淑葉の妹・香蝶との結婚で、いきなりしばらくしたら離婚と突きつけられる展開でしたが、真っ直ぐだけれど笑顔も能書の才能も奪われ、悲惨な境遇に自信を無くしていた淑葉が、書を好き過ぎという共通点から夕遼とも徐々に交流を深め、様々なものを取り戻していく展開は良かったです。繋がりのある登場人物を主人公に据え、シリーズとして複雑な気持ちになる後日談も語られたりしながら現在8巻まで刊行。

一華後宮料理帖 (角川ビーンズ文庫)

一華後宮料理帖 (角川ビーンズ文庫)

 

 大帝国・崑国へ小国の和国から貢物として後宮入りした皇女・理美。他国の姫という理由で後宮の妃嬪たちから嫌がらせを受ける彼女が、皇帝不敬罪の窮地に食物博士の朱西に救われる物語。和国では姉皇女においしいものを捧げる役割を担っていた理美が、朱西の協力も得つつその料理の腕前と持ち前の明るさを活かして、ピンチを乗り越えるべく奮闘する展開はなかなか良かったですね。朱西とのコンビで料理研究もなかなか面白そうですけど、皇帝もまた理美が気になるようで、そんな三角関係の行方が混沌としてゆくシリーズです、現在6巻まで刊行。

皇華走狗伝 星無き少年と宿命の覇王 (宝島社文庫)

皇華走狗伝 星無き少年と宿命の覇王 (宝島社文庫)

 

 中華平原に名を馳せる強国・禍国。十八年前、「覇王」の宿星を持って生まれた皇子・戰と、人扱いされず書庫に引き篭もる少年・真が出会ったことで運命が変わってゆく中華ファンタジー。兵部尚書である父の側室腹として生まれたがゆえに戸籍を持たなかった真が、皇子・戰と出会ったことで得た転機。生い立ちが影響してか多くを望まず怠惰になりがちな真が、それでも戰のため、訳ありの幼き妻・薔姫のために智謀を活かして自らの奔走し窮地を打開していく展開は、登場人物たちもよく動いてテンポも良くなかなか面白かったです。続巻も期待しています。

榮国物語 春華とりかえ抄 (富士見L文庫)

榮国物語 春華とりかえ抄 (富士見L文庫)

 

 榮の貧乏官僚の家に生まれた双子、金勘定にシビアな姉・春蘭と刺繍を得意とする立派な淑女に育った弟の春雷。誤った噂は皇帝の耳にも届き春蘭の後宮入りと春雷も科挙受験が決まり、追い詰められた二人が入れ替わることを決意する中華ファンタジー。双子を利用しようとする野心家・天海宝が出世を目論む理由。妃嬪を避けるため双子が近づいた公主が知ってしまった陰謀。春蘭と口が悪い海宝の毎度いがみ合う関係からの変化や、そんな彼の意外な一面と窮地に双子たちも協力しての大逆転劇はなかなか面白かったです。6月に3巻目が刊行予定。

桜花妃料理帖 (富士見L文庫)

桜花妃料理帖 (富士見L文庫)

 

 偶然、迷子の国王・紫苑に料理を振る舞った宮廷料理人見習いの玉葉がお礼に差し出された桜の枝を受け取ってしまい、陰謀蠢く宮廷で期間限定の妃を務めることになる中華風ファンタジー。王から王妃に渡され一年間枯れぬことで絆が試される桜花国に伝わる桜・玲紀桜の枝。それを知らぬまま受け取った玉葉の料理バカっぷりと、男心が分からない鈍感さは突き抜けていましたが、でもそんな前向きな彼女のひたむきさが周囲を感化して流れを変えてゆく展開はなかなか良かったです。いい感じにまとまってはいましたが、続巻あるならまた読んでみたいですね。

翠玉姫演義 ―宝珠の海の花嫁― (富士見L文庫)

翠玉姫演義 ―宝珠の海の花嫁― (富士見L文庫)

 

 商才を秘めながらも豪商の事件を起こした側室の娘と疎まれ、取引先の当主(80歳)に売られたも同然の政略結婚を決められた香月が、輿入れの最中に海賊に攫われてそこに居場所を見出してゆく物語。人生をすっかり諦めていた香月と訳ありの海賊業をしていた烈英らとの運命の出会い。海賊のアバウトな運営を見逃せずにうっかり口を出してしまい、才能を発揮できる居場所を与えられ烈英の目標を実現することに生きがいを見出していく展開はなかなか面白いですね。現在2巻まで刊行。

 香を作る香士が貴ばれる神瑞国。調香の腕を買われた下町に住む凛莉が、亡き父の汚名をそそぐため太子・煌翔の後宮に入り伝説の秘宝香調合を目指す物語。香士として秘宝香の調合に失敗し、事故死したとされる父の死後生活に苦労した凛莉と母。彼女に調合を教え生活を支えた木蓮の推挙で後宮に入る凛莉。人に優しく正義感も強い一方、うっかりな言動も多い凛莉はトラブルに巻き込まれがちな一面もありましたが、彼女の失われた記憶には意外な縁や陰謀にも繋がっていて、すれ違ったいくつかの想いがどのような結末を迎えるのか気になるシリーズです。6月に3巻目が刊行予定。

珠華杏林医治伝 ~乙女の大志は未来を癒す~ (コバルト文庫)

珠華杏林医治伝 ~乙女の大志は未来を癒す~ (コバルト文庫)

 

 医師の父親亡きあと女性は医師免許がとれず、診療することができなかった珠里。そんな彼女のもとに皇帝の使者が現れ、皇太后の体調不良の原因を見つけるよう命じられる中華後宮物語。ヤブ医者の妻にと請われ進退窮まっていた珠里に訪れた転機。皇帝を育てるのに専念するため実の娘・公主を手放した皇太后の病の原因。公主と皇太后、そして育ての親を敬愛する皇帝の何とも複雑な関係でしたけど、それをドタバタしながらもいい感じに修復してみせた珠里の奮闘ぶりが光っていました。現在2巻まで刊行。

 五龍大陸で不良中年道士に拾われて師事する少女ユギが、追われている幼い少女をかくまったことから日常が変わり始める中華風ファンタジー。口ではいろいろ言いながらも育ててくれた師匠を慕うユギ。このまま変わらず続けばいいと思っていた師匠と兄弟子左慈の三人で過ごす日常が大きく変わっていく中、何とか師匠を助けたいと願うユギの想いと、ユギが無事でいて欲しいと願う師匠のやりとりはとても切なかったです。まだ物語としても始まったばかりでルーインを追うイルラックなど様々な因縁もあり、ユギの今後が気になりますね。現在3巻まで刊行。

(P[わ]2-1)文学少年と書を喰う少女 (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[わ]2-1)文学少年と書を喰う少女 (ポプラ文庫ピュアフル)

 

 明・正徳帝の時代。泰山にあった禄命簿『玉策』が持ち出され不思議な力を持つ少女となり、本と物語が何より好きな少年・呉承恩とともに過ごす彼女がその力目当てで様々な人々に狙われる中華ファンタジー。博覧強記な書痴の少年・呉承恩と出会った本を食べる生意気な少女・玉策。実在した登場人物も織り交ぜつつ描かれる二人が運命的な出会いを果たして、共に笑い時には喧嘩もして絆を育んでいったその短かくも濃密な冒険の日々はとても印象的で、常坤や白華といった脇役もよく効いていて良かったと思いました。

 

以上です。全体からすると中華風ファンタジーの戦記ものや冒険ものは絶対数が多くなくて後宮ものが中心ですね。また正直、特に少女小説レーベルについてはカバーしきれていないので、他にも面白い作品が結構あると思います。この中から興味を持った作品があったら是非手にとって読んでみてください。