読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

※弊サイト上の商品紹介にはプロモーションが使用されています。

2018年4月に読んだ新作おすすめ本

 4月の新作は「ファイフステル・サーガ」(ファンタジア文庫)と「常敗将軍、また敗れる」(HJ文庫)とファンタジー戦記で素晴らしい作品が2つもあってびっくりしました。「復讐の聖女」(角川スニーカー文庫)も今後が気になるところですが、それ以外だと白川紺子さんの後宮ファンタジー「後宮の烏」、インパクトがあった「閻魔堂沙羅の推理奇譚」(講談社タイガ)「コンビニなしでは生きられない」(講談社ノベルス)あたりですかね。最近のオレンジ文庫講談社タイガはさりげなくおもしろい作品があったりするので、今後も注目していきたいレーベルです。

 

 古の魔王が再臨する絶望の未来を変えるため「アレンヘムの聖女」セシリアと婚約し、傭兵団「狂嗤の団」団長となる道を選んだカレル。聖女の加護を受け死の未来を回避する英雄として奮闘するファンタジー戦記。二年後の魔王再臨を限られた人しか知らない中で、代替わりした王国や戦争を仕掛けてきた自治領相手にどう立ち回るのか。腕が立って商才があり現実的な手段を積み重ねるカレルだけでなく、ヒロインのセシリアや仲間たち、王国の登場人物たちもまた魅力的なキャラが多くて、ここから物語がどう動くのか続巻がとても楽しみな新シリーズですね。

常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

 

 大国ザルツボルクの侵攻を受けたヘイミナル王国が存亡の危機を救う切り札として起用された傭兵・『常敗将軍』のドゥ・ダーカス。王弟や王の娘など様々な思惑が入り乱れる中、圧倒的不利な状況に立ち向かうファンタジー戦記。全幅の信頼を得られず思うように動けない中、要所要所の危機で最悪の状況を回避すべく動くダーカスの奮闘ぶりと、彼が見出そうとした決着の落とし所とその結末。テンポ良い展開に彼を見極めようとするティナや姫将軍・シャルナといった魅力的なキャラクターたちもよく動いて、これは続巻が楽しみな期待大の新シリーズです

復讐の聖女 (角川スニーカー文庫)

復讐の聖女 (角川スニーカー文庫)

 

 自分を陥れた者たちに復讐するため蘇ったジャンヌ・ダルク。そんな彼女に【真実を語らせる力】を見込まれた書記官のギョームが一緒に敗北へ導いた裏切り者を探す旅に出るダークファンタジー。不死身な一方でどこか抜けている食いしん坊なジャンヌと、従者オーヴィエットを交えた三人で旅する中で彼女を見極めようとするギョーム、明らかになってゆく復讐を誓うジャンヌの真の目的。恩人へ冷徹になりきれず苦境に陥る展開に彼女の複雑な心情が垣間見えますが、彼女を導いたものの正体も気になりますし、この旅の行方を最後まで読みたいと思いました。

15歳でも俺の嫁! 交際0日結婚から始める書店戦争 (MF文庫J)

15歳でも俺の嫁! 交際0日結婚から始める書店戦争 (MF文庫J)

 

 突然初対面の少女・君坂アリサに求婚され、うっかり承諾した大手出版取次に勤める火野坂賢一。実は中学生だったアリサとその実家を巡る騒動に巻き込まれてゆくラブコメディ。物語としてはやや構図を単純化し過ぎた感はありましたが、彼女と実家の書店をものにするためには手段を選ばない大手通販のゲスと対峙し、嫌がらせや中学生との婚約暴露という逆風に悩みながらも、これまで頑張ってきた仲間たちともに彼女や彼女が好きな書店を守ろうと奮闘し、愛の共同作戦wで劣勢を見事ひっくり返してみせた逆転劇はスカッとさせてくれるものがありました。

 坂井九太郎が所属するアニ研の部員は、世迷言を乱発する部長をリーダーに九太郎と部長の幼馴染の3人のみ。生徒会に目をつけられている部員不足の彼らが、アニメにまつわる事件に巻き込まれつつ部員を増やし、廃部危機を乗り越えるべく奮闘する青春小説。アニ研廃部を巡る会長や理事長の強引な手法には少しばかり残念な印象もありましたが、ベタな部長や幼馴染の関係、寡黙な美少女やマイペースな田中など主人公を振り回す分かりやすい魅力的なキャラを配しつつ、遭遇する事件に絡めてアニメの多様な側面を語ってゆく展開はなかなか面白かったです。

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

 

 後宮奥深くにいる夜伽をしない不思議な力を持つ特別な妃「烏妃」。翡翠の耳飾りに取り憑いた女の幽霊の正体を探るべく訪れた皇帝・高峻が、その不思議な力を目の当たりにする中華風ファンタジー。辛い過去を抱え烏妃として孤独に生きようとする寿雪と、少年時代に生母を皇太后に殺され辛酸を舐めた高峻。後宮で起きる幽鬼絡みの事件を解き明かす過程で二人が関わる機会は増えていって、不器用な彼らの距離感や周囲との関係の変化はとても微笑ましくて、秘密を共有した二人がこれからどう変わってゆくのか、この続きを是非読んでみたいと思いました。

鍵屋の隣の和菓子屋さん つつじ和菓子本舗のつれづれ (集英社オレンジ文庫)

鍵屋の隣の和菓子屋さん つつじ和菓子本舗のつれづれ (集英社オレンジ文庫)

 

 高校を卒業し「つつじ和菓子本舗」へ住み込み、専門学校へ通いつつ和菓子職人の修業をスタートさせた淀川多喜次。恋する男子の和菓子な日々が描かれる『鍵屋甘味処改』スピンオフ小説。看板娘・祐雨子にプロポーズするも保留され、修行でも和菓子作りに携われない多喜次のもどかしい日々。お隣のその後の様子も垣間見えたり、一歩先ゆく同年代・柴倉の出現に危機感を募らせながら、周囲で起きる和菓子絡みの事件に体当たりで挑む多喜次の頑張りを祐雨子さんも見てくれていますね。柴倉もいいライバル関係になりそうで、この続きをまた読みたいです

閻魔堂沙羅の推理奇譚 (講談社タイガ)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 (講談社タイガ)

 

 現世に未練を残した人間の前に現われる閻魔大王の娘・沙羅。彼女がそんな彼らに願いに応じてある持ちかける生と死を賭けた霊界推理ゲーム。登場人物たちが直面する突然の暗転と、沙羅によって提示される究極の選択。読みやすいテンポよく進む展開の中にヒントを織り交ぜつつ提示されてゆく謎解き。被害者たちに容赦のない現実を突きつけながら解決する可能性も提示して、彼らにしっかり考えさせてそれぞれのエピソードを良かったなと思える結末に導いてゆく沙羅の不思議な魅力が効いていましたね。続刊も決まっているようなので楽しみにしています。

そして僕らはいなくなる (講談社タイガ)

そして僕らはいなくなる (講談社タイガ)

 

 優等生の「着ぐるみ」をかぶって生活する高校生・宗也。帰宅の遅い幼馴染を捜しに出かけ事故に遭った宗也は断片的な幻覚に襲われるようになり、クラスで孤立する志緒と謎を追う青春ミステリ。不可思議な幻覚を共有した志緒と関わり、事件の真相を追ううちに少しずつ変わってゆく宗也の日常や心境。誰もが複雑な思いを抱える登場人物たちの心理描写は繊細で、幻覚を頼りに迫った事件の意外な真相は明示されないまま推測するに留まりましたが、それでもぐいぐい読ませる緊張感のある展開と、彼らが迎えた悪くない結末には充実した読後感がありました。

あなたの人生、交換します The Life Trade (集英社オレンジ文庫)

あなたの人生、交換します The Life Trade (集英社オレンジ文庫)

 

 自分の人生を交換するパーティーの招待状。その招待状を受け取った就職活動や婚活に失敗し続け、病気の母に苦労する山田尚子が、憧れていた国際的美人ピアニスト・桜庭響と人生を交換する物語。今の人生を生きる自分が不幸だと感じていた二人が、お試し期間の二週間付きの入れ替わりができると知って決断し、それぞれ経験してゆくもうひとつの人生。これまでと正反対の新鮮な生き方に刺激を受けたからこそ、見切りをつけようとしていたこれまでの人生で本当に大切だと感じていたことを自覚し、向き合っていこうとする展開はなかなか良かったですね。

 何か縁を切りたいものがあることが入居条件のシェアハウスえのき荘。その管理人に雇われた芽衣が、訳ありなシェアメイトと交友を深めてその卒業を見届ける物語。過剰なダイエットをするOLの理由、アニオタを隠すホスト、医者家系の期待を背負った4浪中の浪人生、そして口は悪いけれど優しい二代目大家。住人たちのエピソードから掘り下げられてゆくそれぞれの事情と大家とともに見届ける結末、そして管理人である彼女自身もまた実家の悪縁に縛られていて、彼らの心地よい距離感と優しさが心に沁みる物語でした。続刊あるならまた読みたいですね。

七月のテロメアが尽きるまで (メディアワークス文庫)

七月のテロメアが尽きるまで (メディアワークス文庫)

 

 人付き合いを避け生きてきた高校生の内村秀。ある日クラスメイト飯山直佳が落としたUSBメモリを拾い、中身の遺書を見てしまったことから奇妙な交流が始まる青春小説。彼女が進行性の記憶障害を患って自殺したがっていると知り、関わりたくなかったのに気になって仕方ないと自覚した秀が交わしたひとつの約束。秘密と約束を共有するようになった二人に訪れた転機と、やがて明らかになってゆく秀の苦い過去があって、その全てが繋がってゆく急展開には驚かされもしましたが、決着をつけた二人のその後のありようにはしっくり来るものがありました。

真実の10メートル手前 (創元推理文庫)
 

 表題作のほか高校生の心中事件「恋累心中」や「正義漢」、「名を刻む死」や「綱渡りの成功例」など、記者・太刀洗万智が遭遇する事件に隠された謎を解き明かしてゆく連作短編集。一見わかりやすい事件に見出した違和感から、鋭い着眼点と積み上げた取材で事件の核心に迫ってゆく万智。その真相にはやりきれないことも多かったですけど、それがそのまま読後感に繋がらなかったのは、真相を知ること向き合うことを恐れずに真摯にアプローチしていく万智の誠実さによるところが大きかったのかもしれないですね。「王とサーカス」の文庫化も楽しみです。

プランナーズ! あなたのお悩み解決します (角川文庫)

プランナーズ! あなたのお悩み解決します (角川文庫)

 

 聴覚過敏症に起因する苦い過去を抱え、就職活動に苦戦していた雛子。ようやく受かった何でもありのマーケティング会社「プランナーズ」で依頼を成功させるべく奮闘するお仕事小説。不運も重なった苦い過去の失敗からすっかり自信喪失していた雛子。けれど蔵元の立て直しに奔走したり、息子の代わりに旅行に連れて行ったり、なかなかうまく行かなくても諦めずに真摯に向き合う気持ちだったり、そんな彼女を支えてくれる先輩たちの協力で乗り越えてゆく展開は良かったですね。気になる関係もいくつかあったりで、続きがあるならまた読んでみたいです。

宮廷神官物語 一 (角川文庫)

宮廷神官物語 一 (角川文庫)

 

 聖なる白虎の伝説が残る麗虎国。美貌の宮廷神官・鶏冠が王命を受け、次の大神官を決めるために必要な慧眼を持つ奇蹟の少年・天青と出会う物語。屈強な青年・曹鉄や鶏冠と共に都を目指す過程で育まれてゆく絆といくつかの出会い、山奥育ちだった天青が知る世界の広さの一端と厳しい現実。そして否応なく巻き込まれてゆく次の大神官を巡る争い。物語としてはまだ序盤といった感じですが、やんちゃな天青や意外な一面も見せる美貌の神官の鶏冠など、登場人物たちがよく動いてテンポも良く、ここからどんな展開になってゆくのか今後に期待したいですね。

マレ・サカチのたったひとつの贈物 (中公文庫)

マレ・サカチのたったひとつの贈物 (中公文庫)

 

 世にも不思議な病「量子病」に冒され、世界中を跳躍し続ける人生を生きることになった坂知稀。人生を“積み重ね"られない彼女がこれからの「幸せ」の意味を問う物語。資本主義が行き詰まった近未来を舞台に、一瞬後の居場所すら予測できず、行き先も滞在期間も不明な彼女にもたらされた、様々な立ち位置や思いを抱いた人たちとの出会いと別れ。繰り返される跳躍から始まる数多くのエピソードはやや断片的な印象もありましたが、そんな彼女に提示される未来の可能性とそれに対する回答は、積み重ねていった末に見出されたひとつの真理に思えました。

死なせない屋 (朝日文庫)

死なせない屋 (朝日文庫)

 

 医師免許国家試験で4浪決定した良太が、謎の美女・神楽からあらゆる手段で依頼人の命を守る『死なせない屋』のアルバイトにスカウトされ、その仕事を手伝うことになるミステリ。4浪決定で「ヨンロー」とか名付けてしまうネーミングセンスには苦笑いでしたが、拷問で死にかけた人を救ったり、都市伝説の殺し屋から狙われる人、自分の小説に登場する殺人鬼に狙われるミステリ作家からの依頼もあったり、著者さんらしい少し変わったテイストのミステリで面白かったです。続編出るならまた読んでみたいですけど主人公の名前変わるんでしょうか(苦笑)

([す]1-1)一瞬の雲の切れ間に (ポプラ文庫)

([す]1-1)一瞬の雲の切れ間に (ポプラ文庫)

 

 小学生の男の子の交通事故死。車で轢いてしまった美里と同乗していた夫・健二、その不倫相手・千恵子、男の子の母・吉乃のその後が描かれる連作短編集。どうすればよかったと思ってももう取り返しがつかない、その交通事故死によって一変してしまった状況と、それでも生きていかねばならない現実。置かれた立場の違いや温度差もあるそれぞれの人物描写と心情がきめ細やかに描かれていて、最後はやや唐突な感もありましたが、時間が経過して日常的には徐々に薄れていくことはあっても、ふとした時に思い出さずにいられないそんな描写が印象的でした。

居酒屋ぼったくり〈1〉 (アルファポリス文庫)

居酒屋ぼったくり〈1〉 (アルファポリス文庫)

 

 東京下町にひっそりとある、居酒屋「ぼったくり」。亡くなった両親の跡を継いだ娘の美音と妹の馨が、旨い酒と美味しい料理を提供しつつ人々とのふれあいも大切にしてゆく連作短編小説。両親の味を守りつつも時には新しいチャレンジをしてたり、客の思いをかなえたり心配事を解消するべくいろいろ試行錯誤してみたり。妹の恋を応援したり拾ってきた子猫のために懸命になる美音のことはお客さんだって応援したくなりますよね。そんな真っ直ぐな美音と印象的な出会いを果たし、常連客になった何やら訳ありっぽい要さんとの今後もちょっと気になります。

コンビニなしでは生きられない (講談社ノベルス)

コンビニなしでは生きられない (講談社ノベルス)

 

 大学生活に馴染めず中退した19歳の白秋が、バイト先のコンビニに研修でやってきた女子高校生の黒葉深咲と次々と起きる謎を解く青春ミステリ。店から逃げ出さない強盗、繰り返しレジに並ぶ客、売り場から消えた少女といった事件が起きるたび、彼女の暴走に翻弄されつつ謎を解き明かす白秋。やや強引な謎もありましたがテンポの良い二人の謎解きは楽しくて、伏線を回収して見事に繋がってゆくほろ苦い背景と、それを乗り越えて迎える結末にはぐっと来るものがあって、何より著者さんの深いコンビニ愛が感じられた作品でした。次回作期待してます。 

拝啓、本が売れません

拝啓、本が売れません

 

 15 年に『松本清張賞』『小学館文庫小説賞』をダブル受賞してデビューした自称「平成生まれのゆとり作家」額賀澪さんが、担当編集といかに自分の本を売るのかあちこち取材していくお話。ダブル受賞デビューした作家さんのリアルな現在地と危機感が綴られていて、三木さんやさわや書店の松本さんといった様々な人を取材して引き出した話もまたなかなか面白くて、タイトルの印象ほどネガティブでもなく、前向きに何とかしようと頑張っている著者さんの姿勢に好感を持ちました。著者さんの作風好きなので今書いている新刊も楽しみに待っています。 

祈りのカルテ

祈りのカルテ

 

 初期臨床研修で様々な科を回る研修医・諏訪野良太が、行く先々で持ち前の観察力で患者たちが抱える秘密に迫り、その解き明かしてゆく医療ミステリ。大量服薬を繰り返し装う女性、自らの身体にメスを入れさせた老人、自ら火傷を負う女性、薬を棄てていた少女、そして世間を欺いて多くの患者を救おうとした女性。奇異な行動をする患者たちにはそうするだけ理由があって、思い悩む彼らの真意に気づいて寄り添いながらその最適解を提示する一方、思い悩んでいた自らの進路にも答えを出してゆく主人公のありようがとても良かったですね。シリーズ化期待。

青春のジョーカー

青春のジョーカー

 

 スクールカースト最底辺に所属し、上位女子グループの咲が気になっていた中三の基哉。閉塞感の漂う毎日を送っていた彼が、兄を通じて知り合った年上の二葉との出会いからジョーカーを得て少しずつ変わってゆく青春小説。いじられる存在で好きな子との会話すらままならない基哉の窮屈な生活と、ちょっとしたことで景色が全く違って見えたり、些細な噂で置かれる状況が一変することへの戸惑い。狭い世界の中での優越感やつまらない意地で失って大切な存在を自覚したり、甘酸っぱくほろ苦い青春と不器用な彼らの成長にはぐっと来るものがありました。 

青くて痛くて脆い

青くて痛くて脆い

 

 大学1年の春に秋好寿乃に出会い、二人で秘密結社「モアイ」を結成した楓。将来の夢を語り合った秋好はいなくなり、すっかり変わってしまったモアイを取り戻すべく楓が動き出す青春小説。周囲から浮いていて誰よりも純粋だった秋吉と、彼女の理想と情熱に感化されつつ徐々にすれ違うようになった楓。明らかになってゆく楓のモアイへの複雑な思いと不穏な構図、そしてやりきれない結末には流石に頭を抱えたくなりました。どこかで軌道修正できなかったのかいろいろ考えてしまいましたが、こういう自己陶酔的な青臭さや痛さもまた青春なんですよね…。

みとりし

みとりし

 

 派遣切りで職を失った薫が、幼い頃に一緒に事故に遭った陽太と偶然再会し、彼が社長を務めるペットの看取りをするペットシッターに再就職する物語。幼くして両親を失い伯母夫婦に育てられ、いい子を演じ続けるうちに自分が分からなくなってしまっていた薫。なかなか難しい人生を送ってきたことで、なかなか自分からアクションを起こせない不器用な彼女が、仕事を通じて飼い主やペット、そして関係者と関わっていくうちに様々な思いに触れ、陽太たちにも支えられながらきっかけを積み重ね、少しずつ変わってゆく展開はなかなか良かったと思いました。