読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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2015年に刊行した注目の恋愛小説 ライト文芸ほか編24選

 

前回「2015年に刊行・完結した注目の恋愛小説 ライトノベル編23選」ということでライトノベルレーベルの注目の恋愛小説を紹介しましたが、

今回は第二弾としてライト文芸レーベルほかから昨年刊行され、自分が読んだ本の中から個人的に注目する恋愛小説を24作品紹介します。最近は一般文庫でもライト文芸と似たようなテイストの作品が刊行されるトレンドもあり、それを踏まえ一般文庫も含めました。※一部厳密には刊行最新刊時点では明確に恋心を自覚していないシリーズもありますが、今後の展開に期待ということで選んでいます。

 

櫛木理宇さんは今一番推している作家さんなので3作品を紹介。

ホーンテッド・キャンパス  この子のななつのお祝いに (角川ホラー文庫)

ホーンテッド・キャンパス この子のななつのお祝いに (角川ホラー文庫)

 

 幽霊が視えてしまう体質の森司が、心配で見守っていた高校時代の後輩こよみと大学で運命的な再会を果たし、一緒にオカルト研究会に参加するライトなオカルトミステリ。感情をあまり表に出さないながらも端々に森司への好意を隠さないこよみと、彼女の危機には身体を張って守るのになかなか距離を縮められないヘタレな森司。強力なライバルや邪魔者が次々と現れるのに盤石で、結果として外堀だけがどんどん埋まってゆく、傍から見たらもどかしくて仕方ない二人の関係を生暖かく見守ってゆくシリーズです。現在8巻まで刊行。

ドリームダスト・モンスターズ 眠り月は、ただ骨の冬 (幻冬舎文庫)

ドリームダスト・モンスターズ 眠り月は、ただ骨の冬 (幻冬舎文庫)

 

 悪夢に悩まされ、クラスから孤立しつつあった女子高生晶水が、彼女に興味を持つ同級生壱とその祖母の夢見で救われたことをきっかけに、彼らが扱う夢に関する依頼に関わっていくオカルトミステリ。「夢見」能力をもつ高校生の壱と祖母・千代が悩みを抱える依頼者の悪夢に潜り込んで探り悩みを解決していくストーリーで、「好き」とストレートにぶつけてくる壱に戸惑いながらも、いろいろ教えてくれる祖母共々いつの間にか一緒にいることに馴染んでしまった、なかなか素直になれない由緒正しきツンデレ・晶水の心境の変化に注目です。現在3巻まで刊行。

お城のもとの七凪町 骨董屋事件帖 (朝日エアロ文庫)

お城のもとの七凪町 骨董屋事件帖 (朝日エアロ文庫)

 

 城下町・七凪町の骨董店で住込みの職人見習いとして働く荒木堅吾が、狭い町内で発生する事件を解決するミステリ。老人たちに囲まれた日常のせいか主人公・堅吾は高校を卒業したばかりとは思えない落ち着きぶりですが、著者さんらしいホラーテイストな事件を同級生や人情味豊かな老人たちと協力しつつ解決していく物語の雰囲気はとても良い感じですね。師匠が入院で不在の中、共に生活する師匠の孫娘である樋田四姉妹は昔からお互いをよく知る間柄で、長女雪・次女菊とのお互いを思いやるような繊細な三角関係にも期待大のシリーズです。

 

汚れた赤を恋と呼ぶんだ (新潮文庫nex)

汚れた赤を恋と呼ぶんだ (新潮文庫nex)

 

 何かを失ってしまった人々が集う階段島で平穏な高校生活を送る七草が、そこで出会うはずのない少女・真辺由宇と再会したことから始まる物語。相変わらず真っ直ぐで周囲と衝突することも厭わない真辺に苛立ちを感じながらも、そんな真辺のために奔走する七草。空白期間を経て再構築されてゆく二人の関係の変化や、舞台となる階段島での不思議な事件と現実世界での出来事、それぞれの世界で存在する魔女がどのように繋がっていくのか、今後がとても気になる物語ですね。階段島シリーズは「いなくなれ、群青」「その白さえ嘘だとしても」と続いて現在上記の3巻目まで刊行。 

ケーキ王子の名推理 (新潮文庫nex)

ケーキ王子の名推理 (新潮文庫nex)

 

 美味しいケーキ大好きな女子高生・未羽が、失恋直後に迷い込んだケーキ屋でパティシエ修行をしている同級生の冷酷イケメン王子・颯人に遭遇する物語。少女漫画のような設定や展開でミステリとして見るとあっさりめですが、出会った当初はお互いあまり印象が良くない二人が、夢に向かって頑張る颯人を徐々に応援する気持ちになっていったり、ケーキであっさり釣られるもののイケメンだからといって特別視しない未羽は信用できると感じたり、飾らない二人の距離感が心地良かったです。そんな二人の恋の予感はこれからだと思うので続編に期待。

君にさよならを言わない (宝島社文庫)

君にさよならを言わない (宝島社文庫)

 

 普通の高校生だった須玉明が、交通事故で亡くした幼馴染の霊が見えるようになったことをきっかけに、未練を残した幽霊の女の子たちに協力してゆく物語。特殊な力こそ持たないものの、きちんと向き合ってその想いに応えようとする明の姿勢は、なかなか気づいてもらえない霊たちにとってかけがえのないもの。彼女たちの心残りを解消するとともに、これからを生きる人たちの背中も押す、そんな切なくも心が温かくなる物語。一途な想いになかなか気づいてもらえない健気な義妹ちゃんの恋の行方もとても気になるので続巻に期待。

京都寺町三条のホームズ3 浮世に秘めた想い (双葉文庫)

京都寺町三条のホームズ3 浮世に秘めた想い (双葉文庫)

 

 京都の寺町三条の骨董品店『蔵』でバイトすることになった女子高生・真城葵が、店主の息子で京大学院生の家頭清貴(通称ホームズ)とともに客から持ち込まれる奇妙な依頼を解決するライトミステリ。ミステリ自体はわりとあっさりめですが、洞察力に優れるイケメンのいけずな京男子ホームズや、彼らと過ごすうちに傷心が癒やされていく葵にもそれぞれ心境の変化があり、葵の窮地に颯爽と現れて救ってみせるホームズとの距離感を測りかねたりで、縮まりそうでなかなか縮まらないもどかしさを味わえるシリーズです。現在3巻まで刊行。 

神様の御用人 (5) (メディアワークス文庫)
 

 京都近辺を舞台に、勤めていた会社を辞めてフリーターになっていた良彦が祖父が以前務めていた神様の御用人代理に任命され、狐神と一緒に困っている神様の頼み事を解決していくお話。力を失いながらも、人との関わりを気にかける神様たちのために奮闘する良彦と、モフモフ狐型ナビやモフペディアとか良彦に呼ばれる食いしん坊な狐姿の方位神・黄金コンビの妙、2巻から登場する不器用な高校生ヒロイン・穂乃香との今後も気になる期待大のシリーズです。現在5巻まで刊行。

 顔にある大きな痣を持つ高校生の陽介が、公衆電話への謎の電話をきっかけに痣を消して初恋の人初鹿野の心を射止められるか賭けることになる物語。痣が消えて大きく変わっていく周囲の環境に戸惑う陽介と、久しぶりに再会してたものの別人のようになっていた初鹿野。接点が生まれながらも些細なきっかけからすれ違ってゆく中で再び起こる事件。想いを自覚しながらどうにもできないもどかしさ、自分を信じられない臆病さを抱えながら、それでも大切な人と向きあおうとする気持ちがとても心に響く物語です。

 奔放だった亡き祖父の借金のかたとしてあやかしの棲まう「隠世」に攫われ、老舗宿「天神屋」の大旦那に嫁入りしなくてはならないと告げられた女子大生・葵の奮闘を描く物語。周囲の第一印象は最悪な状況で嫁入り回避のために働いて借金を返そうとする葵が、あやかし好みの飯で胃袋を掴み周囲と関係を築いていく描写は必見。大旦那の包容力だったりピンチに駆けつけるカッコ良さだったり、そんな姿に少しずつ変わりつつある葵の心境の変化に注目です。現在2巻まで刊行、2月に3巻発売予定。 

魔女は月曜日に嘘をつく2 (朝日エアロ文庫)

魔女は月曜日に嘘をつく2 (朝日エアロ文庫)

 

 病気をきっかけに仕事も恋人も失い札幌に逃げてきた犬居が、縁で魔女を自称する感受性の強い少女卯月杠葉の経営するハーブ農園「フクロウの丘」で働くことになる物語。何事も上手くやろうとついつい妥協してしまう犬居と、人付き合いが苦手で嘘が大嫌いな杠葉はことあるごとに衝突しますが、将来的にはお互いが足りない部分を刺激して、いい方向に導けるコンビになれそうな可能性を感じます。まだまだ謎の多い杠葉と、農園経営を軌道に乗せるべく動き出す犬居の今後が気になる物語。現在2巻まで刊行。

下鴨アンティーク 祖母の恋文 (集英社オレンジ文庫)

下鴨アンティーク 祖母の恋文 (集英社オレンジ文庫)

 

 京都下鴨を舞台に、両親を早くに亡くし古美術商を営む兄と下宿人の慧と三人で古びた洋館に住む高校生・鹿乃と、蔵にあるアンティーク着物をめぐる不思議な物語。亡くなったお祖母ちゃんの大事にしていた着物のコレクションにまつわるお話はどこか不可思議な雰囲気もありますが、旧華族である野々宮家を舞台としたどこかおっとりとした雰囲気と、周囲の人々との交流や過去をめぐる物語は興味深く、鹿乃と似た雰囲気を持つ春野の出現で波紋を呼びそうな慧との今後が気になります。現在3巻まで刊行。

鎌倉香房メモリーズ2 (集英社オレンジ文庫)

鎌倉香房メモリーズ2 (集英社オレンジ文庫)

 

 人の心の動きを香りで感じる高校生・香乃が、大学生・雪弥とともにゆるりと手伝う鎌倉にある祖母が営む香り専門店『花月香房』を舞台に、やってくるお客さんや身の回りの人たちの事件を解決する物語。ミステリーとしてはあっさりめですが、うっかりな香乃をしっかり者雪弥がフォローする二人の関係は、小さい頃からお互いを大切に思う気持ちをゆっくり着実に育んでいて好感。家族への複雑な思いを抱えながら、家族や親友を大切に思う人たちを救う二人の今後が気になります。現在2巻まで刊行

鍵屋甘味処改 2 猫と宝箱 (集英社オレンジ文庫)

鍵屋甘味処改 2 猫と宝箱 (集英社オレンジ文庫)

 

 冬休みに自分の出生の秘密を知って衝動的に家出した女子高生こずえが、鍵師・淀川と知り合い、年齢を偽り助手として彼の家へ居候することになる物語。居付いてしまったこずえをまるで野良猫のようなものと思っている無愛想で職人気質の淀川と、掃除やカメラ撮影といった淀川の苦手な部分を巧みにフォローして居場所を確保していくこずえの、確かに甘いとは言えない非日常がなかなか興味深かったです。徐々に明らかになっていく周辺事情と二人の距離感の変化が気になります。現在2巻まで刊行で1月に3巻刊行予定。

ある朝目覚めたらぼくは ~千の知恵・万の理解~ (集英社オレンジ文庫)

ある朝目覚めたらぼくは ~千の知恵・万の理解~ (集英社オレンジ文庫)

 

 亡き祖父が準備を進めていた雑貨店を継ぐために引っ越してきた高校生の遼が、いつからか持っていた機械人形をきっかけに、人形の持ち主だった少女・きらと出会う物語。きらの母親が人形と誕生日を絡めて出した謎解きもありましたが、わりと大胆な一方でそそっかしいきらと、ピンチに陥ることたびたびな遼の組み合わせは、傍から見てるとやや危なっかしいながらも、微笑ましいというかうまくいってほしいなと思える二人。エデンという舞台で新キャラも登場しながら物語も広がっていきそうで、今後に期待の物語。現在2巻まで刊行。

恋衣神社で待ちあわせ 2 (集英社オレンジ文庫)

恋衣神社で待ちあわせ 2 (集英社オレンジ文庫)

 

 手違いで巫女カフェでバイトをする破目になったお嬢様女子高生すずが一見軽そうな神主・波留斗に助けられ、恋衣神社で本物の巫女さんのバイトをすることになる物語。トラブルに巻き込まれた世間知らずの女子高生を颯爽と救う神主さんとか少女漫画的展開ですが、登場する女の子たちの繊細な心理描写が秀逸だったり謎解き要素もあったりで、家がちょっと特殊そうなすずや波留斗にもまたいろいろ事情がありそうで、そんな二人の今後が気になります。現在2巻まで刊行。

ななつぼし洋食店の秘密 (集英社オレンジ文庫)

ななつぼし洋食店の秘密 (集英社オレンジ文庫)

 

 没落華族の令嬢・十和子に新興会社の若社長・桐谷との利害が一致した結婚話が持ち上がり、お見合いの席で十和子は「自分に一切干渉しないこと」を条件に契約を持ちかける物語。関東大震災で行方不明となった縁のある店主・一哉が戻るまで店を守るため下町で洋食店を営む十和子。理由あってそんな条件を飲んだ桐谷も徐々に真っ直ぐな十和子のことを気にかけるようになって、十和子もまた桐谷に素直になれない不器用な二人の関係がもどかしいような微笑ましいような感じで良かったです。今後が気になる続巻に期待の物語。

昨日の君は、僕だけの君だった (幻冬舎文庫)

昨日の君は、僕だけの君だった (幻冬舎文庫)

 

 大学生の平沼が一目惚れした同級生佐奈に告白し呆気無くOKをもらうものの、直後に同級生の翔、社会人の三倉という二人の彼氏を紹介され、三人で佐奈をシェアすることになる物語。あくまで関係を維持しようとする佐奈に対し、真面目な平沼は関係に苦悩し、翔と彼を以前から想っていた佐奈の友人風香は急接近、また三倉も大学時代の仲間永澤と運命的な再会を果たしたりと、様々な思惑や葛藤が入り乱れて混沌としていきますが、予想もしなかった幕切れにはしばし呆然。エピローグで意外な事実も判明しますが、何とも皮肉の効いたその結末には驚かされます。

谷中レトロカメラ店の謎日和 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

谷中レトロカメラ店の謎日和 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 思い入れのあった故人のカメラ売却をきっかけに下町谷中のレトロカメラ店でバイトすることになった山之内来夏が、三代目店主の今宮とともに客が持ち込む謎を解決する連作ミステリ。中古クラシックカメラを専門に扱う落ち着いた雰囲気のお店を舞台に、優れたカメラ修理技術や知識、そして卓越した観察眼を持つ今宮と写真に関連する謎を解いたり、様々なやりとりを重ねていく中、徐々に変わってゆく来夏さんの気持ち。繊細な描写を積み重ねた末に明らかにされた事実はやや意外なものでしたが、それを乗り越えようとする二人の今後に期待したくなる物語。

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫)

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫)

 

 祖父が残した謎を解き明かすため、大学生の美咲が著名な書道家で端正な顔立ちながら毒舌家の同級生・東雲清一郎を訪ねる連作短編ミステリ。清一郎が書に対する知識を披露しつつ筆跡を分析して様々な事件を解決していくストーリーで、始めは美咲を邪険に扱っていた清一郎も、真っ直ぐな彼女と接するうち意外な優しさを見せたり。最後の酷い事件はもし清一郎がいなかったらと思うと暗澹たる気持ちになりましたが、美咲のために事件解決に奔走したりと徐々に感化されてゆく過程がなかなか良かったです。

ふたつめの庭 (新潮文庫)

ふたつめの庭 (新潮文庫)

 

 恋には無縁なはずの25歳の保育士・美南が次々と起きる不思議な事件に振り回されながら、男手ひとつで園児・旬太を育てる隆平に少しずつ心惹かれてゆく連作短編集。保育園に来るくらいの年頃の子どもはみんな繊細で、そんな子どもたちの想いや保護者との人間関係に配慮しながら誰かのために奮闘する美南。悩みながらも旬太とともに生きていこうと決意した隆平との少しずつ惹かれ想いを温めてゆく、きちんと筋を通していこうとする関係は、いろいろ大変だなと感じつつも素直に応援できる優しい物語。表紙は谷川史子さん。

海の見える街 (講談社文庫)

海の見える街 (講談社文庫)

 

 海の見える市立図書館で司書として働く31歳の本田。十年も片想いだった相手に失恋した七月、一年契約で派遣されてきた春香がやってきて変わっていく日常。最初は印象があまり良くなかった春香が、少しずつ周囲の影響を受けて変わり、周囲もまたその影響で変わっていく。不器用な登場人物たちゆえになかなかうまくいかないところがもどかしくて、何があったのか気になったままの部分もありましたが、揺れ動く心のありようが淡々と綴られていく描写はとても良くて、すれ違ったままでは終わらない結末にどこかほっとします。

小説 心が叫びたがってるんだ。 (小学館文庫)
 

 話題になった映画のノベライズ版。自らの何気ない言葉で、家族がバラバラになってしまった過去を抱える成瀬順が、クラスメイトの拓実、菜月、大樹と共に「地域ふれあい交流会」の実行委員に選ばれ、それをきっかけに変わってゆく映画ノベライズ版。選ばれた他の3人にもそれぞれ抱えていたものがあって、ミュージカル成功に向けてお互いが言葉で傷つけたり恥ずかしい思いをしながらも、同時に仲間たちの言葉に励まされて葛藤や苦悩を乗り越えてゆくストーリーはとても良かったです。やや意外な結末ではありましたが、映画も見てみたいと思えるような魅力溢れる物語です。

 

今回は反応がどうかなあと思いつつ試みにライト文芸の恋愛小説をセレクトしてみましたが、もし好評なようならライト文芸の作品紹介記事も検討してみたいと思います。