読書する日々と備忘録

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2015年に刊行スタートしたラノベ・ハイファンタジー24選

年末ということで今年刊行の新刊も出揃いました。今年も700冊を超えるくらいは読みましたが、自分ならこれだろうということで今年2015年に刊行がスタートしたハイファンタジーのうち、個人的にオススメする25作品を紹介したいと思います。

 

 五公十六王国時代と呼ばれる乱世。弱小国フルミネンセ王国が同盟国の策謀により分割滅亡の憂き目に遭い、爪を隠して生きていた第五王女アリエルが雄飛の機会を得るファンタジー戦記。たまたまアリエルが姉のリリエルとともに避暑地へ向かった時に起きた寝耳に水の侵攻劇。今回は個性的な登場人物たちの紹介や状況説明と危機からの逃亡がメインで、何の力も持たない現状ではどうしようもなかったですね(苦笑)ここで袂を分かった姉もまた数奇な人生を歩むことになりそうですが、次巻以降ゼロからのリスタートになりそうなアリエルたちがどう動くのか今後に期待の作品です。

竜殺しの軍師 ~とある詐欺師の英雄譚~ (ファミ通文庫)

竜殺しの軍師 ~とある詐欺師の英雄譚~ (ファミ通文庫)

 

 天秤評議会一の軍師白銀のエシルを騙っていた詐欺師の少年カイルが、辺境の砦を守る王女フェリスと運命的な出会いを果たし、彼女の軍師となって奮闘する物語。口が達者で面倒なことがあるとすぐ逃げ出したくなるカイルでしたが、本物のエシルに見込まれ王女フェリスの人柄に触れるうちに、身動きない状況に見捨てられようとしていた人々を守るため、自ら身体を張って奮闘する姿には好感。テンポよく進むストーリーにフェリスやエシルといった魅力的なヒロインや登場人物たちもよく動いていて、正統派の本格ファンタジー戦記として次巻に期待ですね。

 アリオン皇国最強と謳われる黒狼卿ヴィンセントが唯一気を抜けるのは、街娘のミアに顔を隠して会う時だけ。そんな彼が帝国軍との戦いで敵国の軍師天眼のフォウの意外な正体を知ってしまう戦略英雄譚。皇国の英雄と帝国の天才軍師という相容れないはずの二人が恋に落ちる悲劇的展開をベースとする物語ですが、お互いの存在を知ってからはむしろ喜劇的展開。それぞれが規格外の力を持ち、似た境遇で世間知らずだったり、同じようなことを考える運命的な二人だからこそ恋の成就目指して頑張って欲しい。次巻以降の展開がとても楽しみな新シリーズです。

セイクリッド・クロニクル (GA文庫)

セイクリッド・クロニクル (GA文庫)

 

 戦場で裏切られ致命傷を負った帝国六大凶殺の一人レキが、敵対する王国の姫騎士マリアに命を救われ、共に生きることを選ぶファンタジー英雄譚。英雄として戦に生きてきて恋愛経験ゼロ、混乱したり皮肉な運命に翻弄されながら、不器用なりに思いをぶつけたり嫉妬したりするマリアと、そんな彼女に恩義を感じ、彼女の思いに真摯に応えようとする天然なレキのやりとりが、周囲も生暖かく見守る甘さでとても素晴らしいです。敵国の姫騎士に仕えたことでレキに血の絆を感じる他の六大凶殺(みんな女性)との因縁と決着がメインになっていきそうです。現在2巻まで刊行で16年2月に3巻刊行予定。

イレギュラーズ・リベリオン 1.王者の紋章 (GA文庫)

イレギュラーズ・リベリオン 1.王者の紋章 (GA文庫)

 

 紋章騎士の養成学校へ歴代最高成績で入学し最強部隊で活躍しながら、今は落第生で落ちこぼれ部隊の隊長となっているハンティスが仲間たちとともに再び立ち上がる物語。序盤の落第生・ハンティスや部隊の現状と、並行して描かれる存在感のあった伝説の第00部隊が比べられるのは厳しいと感じましたが、過去の悲劇を転機に後半は葛藤しながらも再び立ち上がるハンティスと彼を立ち上がらせたマロン、遅れてきたヒロインのサヤが物語を引っ張り、部隊の面々も頑張って盛り上げました。他のメンバーにもストーリーがありそうですね。現在2巻まで刊行。

幻葬神話のドレッドノート (GA文庫)

幻葬神話のドレッドノート (GA文庫)

 

 一族を神話級幻獣に滅ぼされ、全ての神話級幻獣を滅ぼす方法を探るために養成校に入学した御霊志雄とその嫁・日輪の物語。入学式早々新婚宣言したり惚気けたりとバカップル全開の二人でしたが、一方で二人は血の滲むような特訓で突出した存在でもあり、志雄は一族の仇を討つため、傍らに立つことを選んだ日輪も一族のしがらみを乗り越えてきていたりで、イチャイチャだけで終わらずに適度な緊張感もあるバランス感覚がよかったです。因縁の再会を果たしたバトル面も強敵相手に二人で力を合わせて討滅するならではの展開に期待。現在2巻まで刊行。

 竜人によって人類が追い詰められている世界で、とある村を守る剣聖女・メルシオーネと出会い主従契約を結んだシノビ・サビトが二人でドラゴンと戦うバトルファンタジー。特殊な存在であることを隠しながらわりと天然で無防備なメルと、実力はあるけど朴念仁なサビトの二人が出会って、相性の良さを感じさせる会話を積み重ねて少しずつ距離感が変わったり、悲壮な決意を抱えがちなメルをサビトがしっかりと支える構図がとてもいいですね。ライバルでもあった幼馴染を加えた3人の今後が気になります。現在3巻まで刊行。

 亡国の地トレントから大国に反旗を翻した失地王の下、魔剣の軍師ジュリオが集めた英雄たちと立ち上がるファンタジー戦記。英雄たちはなぜかことごとく残念な性格で、日常は突っ込まれることの多い展開になりがちでしたが、そんな彼ら彼女らも戦場では大活躍したり、戦闘パートもしっかり描かれていたり、それだけで終わらずにうまくメリハリを効いています。シリアスな展開の戦記ものが多い中ではやや異色の存在ですが、登場するキャラたちも魅力的に描かれていて面白いですね。現在3巻まで刊行で16年1月に4巻刊行予定。

 落ちこぼれだった魔術師学校を自主退学し、冒険者を目指すジゼルが姉を探す少女の依頼を受け、途上で多くの襲撃者と戦っていた少女・アルミラージを助太刀し、事件に巻き込まれてゆく物語。優しく困った人を見捨てられないジゼルの性格は好みが分かれそうですが、出会ったアルミラージもある組織を追っていて、それらがひとつに繋がってゆくミステリ要素もあるファンタジー。著者さんらしい登場人物たちと緻密に作り込まれた因縁、それらをうまく絡めて作られていくストーリーには大きなポテンシャルを感じました。

 魔力が全く無く仕事に怠惰で、日常生活も妹アンリに世話される状態の下級魔騎士アルフが、亡き両親の思い出が詰まった大切な自宅焼失を機に騎士祭典優勝を目指す物語。わりとよくある設定やストーリー展開という意味では特に目新しさはなかったですが、勝ち抜くためには罵倒されようが卑怯な手段も厭わない主人公アルフの奮闘と、兄を甘やかす妹、ダメダメな主人公の更生に燃える幼馴染の王姫リーネといったキャラクターはなかなか魅力的で、どこかよくある話に留まらないものを感じさせた今後に期待の新シリーズ。

ギルド〈白き盾〉の夜明譚 (MF文庫J)

ギルド〈白き盾〉の夜明譚 (MF文庫J)

 

 能力不足で騎士の士官学校を放校され、諦めきれずに新大陸に渡った少年レイが、英雄カールの子孫マリールイズと出会い、なぜか運営職としてギルド<白き盾>と仮契約する物語。お人好しで無理筋案件も採算度外視で引き受けるギルドマスターに、攻撃力はあってもコストが掛かり過ぎるメンバーたち。商業化したギルドたちの中で理想を掲げ零細弱小に甘んじる構図で、兵站だけは得意なレイがギルドを立て直すべく奮闘しますが、そんな最後の決め手はマリールイーズの人望や秘めた力なのがポイントでしたね。ここから期待の物語で続巻に期待。

 大国アリオンへ人質同然で送り出されていたアトール公国の第二公子レオが、時代の転換期に三人の仲間と運命の出会いを果たし、自ら一歩を踏み出す物語。レオと運命の出会いを果たす三人と、鬱屈した想いを抱えていた宿敵との邂逅と因縁があり、ここまで積み上げられていったエピソードが結実して、物語が大きく動き出してゆく展開を見たらこれはもう期待せざるをえません。運命の出会いを果たしたレオたちがどのような物語を紡いでいくのか楽しみな作品です。現在2巻まで刊行で16年1月に3巻刊行予定。

乙女な王子と魔獣騎士 (電撃文庫)

乙女な王子と魔獣騎士 (電撃文庫)

 

 母を処刑した王に近づき復讐するため、騎士学校に通っている異端の種族スロカーヴの生き残りジュダが、転入してきた眉目秀麗な王子ラウディと出会う物語。密かに王を仇と狙うはずが、近くで過ごすようになった王子が実は女の子だったとか、自分の正体を知らないままラウディの存在がだんだん大きくなっていって、その父王という存在の狭間でジュダが葛藤する展開はベタベタですが、だがそれがいい(苦笑)様々な運命の巡り合わせの結果、王子の剣として共に歩むことになったジュダとラウディの今後がどうなるのか今後に期待の作品です。現在2巻まで刊行。

はみ出し妖精旅団征戦記 (ファンタジア文庫)

はみ出し妖精旅団征戦記 (ファンタジア文庫)

 

 隆盛を極めながら滅びた王国の遺産を狙う者を次々と襲う謎の妖精旅団と、母国の世界装置悪用を止めようとするキラリア皇女レッチが出会ったことで動き出す物語。個性豊かなキャラクター揃いで圧倒的な力を持つ六人の妖精たち。あまり人と交流する立場でなかったレッチが彼らと出会って楽しいという感情を覚え、そんな彼女がピンチに陥った時に迷わず救いにゆく旅団の面々がカッコ良かったです。ハートフルな雰囲気の物語でしたが遺産を狙う六大国の思惑もあり、今回で新たな因縁も生まれて野心も明らかになったりで、ここからの展開が楽しみですね。

 人間と獣人との戦いで命を落としかけたシンが、狐の話術士カズラに助けられて自らも話術士となり、旅先で起こる争いを治めるべく奮闘するレトリック・ファンタジー。クールであろうとしながらも結局は関わる人を見捨てられず奔走するシンの熱い訴え、争いの回避に奔走するギリギリな駆け引きや、真摯な思いが心を動かす展開も緊張感があってなかなか良いです。旅先でシンが出会う女性たちとの心の通い合い、そしてシンと師匠のカズラとの絆もちょっと気になる作品ですね。現在2巻まで刊行

 訓練学校でぼっちだったがゆえに訓練に明け暮れ、飛び級で卒業し軍人となった准士官ハイジが、強大な異能の力「魔性」を持つ鏖殺公女サクラの侍官に任命される物語。最初は汚部屋に住んで人を寄せ付けない彼女のありように戸惑いながらも、強大な力を持つがゆえに一人で戦う彼女が抱え込む孤独や辛さに気づき、飛び出して彼女の傍で共に奮闘するハイジの心意気がいいですね。テンポよく進む展開に脇を固めるキャラも個性的で、不器用な彼女とハイジの今後が気になりますね。現在4巻まで刊行。

成り上がり英雄譚 屑星皇子の戦詩 (HJ文庫)

成り上がり英雄譚 屑星皇子の戦詩 (HJ文庫)

 

宝具を扱えない欠陥から帝国の屑星と見下される存在だった第五皇子ラウル。そんな彼が政略結婚の駒として小国の美しき姫君ルシアへ婿入りするのを機に始まる屑星の快進撃。亡き兄の志を受け継いで、愚鈍を装いつつ文武の才を磨いていたラウルが、政道を正そうと立ち上がるという王道展開。実は夢見る乙女だったルシアのツンデレっぷりとか、立ちはだかった異母兄のテンプレな悪役ぶりとか、健気にラウルを想い続ける従者マリーベルだったり、ベタといえばベタなんですが、脇を固めるキャラたちもしっかりと存在感があって、ここからどう物語を展開していくのか今後が楽しみな作品です。16年2月に3巻刊行予定。

折れた聖剣と帝冠の剣姫(1) (一迅社文庫)

折れた聖剣と帝冠の剣姫(1) (一迅社文庫)

 

 「魔弾の王と戦姫」の川口士による新シリーズ。国同士が険悪になって激突した幼馴染のルシード王子とファルシェーラ王女が、時を同じくして両国で政変が発生して帰るべき祖国を失い、居場所を求め旅立つことになる物語。ルシードと異母妹のコンスタンスル王女、ファルの3人で真の聖剣を得て新たに国を興そうとするストーリーでしたが、魔術や魔物も存在する世界観の中で各キャラそれぞれに持ち味があってよく動けていると思いました。ただ建国の具体的なビジョンはこれからで、今回なかなか重い負債も抱え道のりは遠そう。壮大な物語になりそうですが最後まで描き切ってくれることを期待します。

銀炎の七ツ姫と七禍の王子 (一迅社文庫)

銀炎の七ツ姫と七禍の王子 (一迅社文庫)

 

 王国第二王子シオンが王国を支える魔術師「七ツ姫」の一人・七歌と婚約を果たした日、七歌から突如七日後に死ぬ呪いを掛けられ、その呪いを解くために七歌を追う物語。しっかり者の侍女カティに支えられつつも放蕩王子と呼ばれ庶民に慕われるシオンと、彼を倒すためだけに育てられた真っ直ぐで不器用な七歌。命を賭けた戦いを重ねながらお互いを知り、心を通わせていく悲劇的な運命の二人でしたが、紆余曲折の末に迎えたこの物語らしい決着はとても良かったです。これから他の七ツ姫も登場しそうで、どのような形で絡んでくるのか今後に期待。

暁の女王と塵の勇者 (講談社ラノベ文庫)

暁の女王と塵の勇者 (講談社ラノベ文庫)

 

 勇者の血を引きながら魔物の気配にすら傷つく致命的な欠点を抱える少年・サーレが、幼馴染の少女・シムルを勇者の血筋の呪縛から解き放つ方法を探すため旅に出る物語。サーレと初代勇者の仲間でありがなら追放された魔女の子孫・オーリアーナとの出会い。そして勇者として魔王を倒す旅に出ていたシムルとの再会から物語は意外な方向に向かいましたけど、お互いを気にかける幼馴染二人に三千年前からの因縁も絡んで、なかなか面白い展開になっていきそうな可能性を感じました。イラストもわりといい雰囲気で今後に期待のファンタジー。

 近隣にその名を知られる冒険者の青年デイルが、森の中で拾った幼き魔族の少女・ラティナと共に生活するようになって親バカになってゆくアットホームファンタジー。訳ありっぽい片角のラティナは聞き分け良くとても出来た子で、確かにあんな存在がいたら親バカになるのも仕方ないと思いました(苦笑)時折悲しい出来事もあったりましたが、ほのぼのベースの誰かのために頑張ろうとする展開はとてもいいと思いますね。是非続巻に期待したい作品です。現在2巻まで刊行。

 宝石店を営む店主スプートニクと宝石吐きの少女・クリューが、彼女の体質もあっていろいろ不思議な出来事に巻き込まれていく物語。クリューは奴隷のような毎日から自分を助けだしてくれたスプートニクを慕うものの、子供扱いされたり意地悪だったり、不用意な言動も多くてぷりぷりする毎日。でもそんな彼も彼女の危機には何を置いても最優先で奔走するんですよね。ちょっとしたやりとりに幸せを感じるクリューがとても可愛くて、恋人でも保護者でもないそんな二人のお互いを大切に思うほんわかした距離感や、物語の雰囲気がとてもいいですね。現在2巻まで刊行で16年2月に3巻刊行予定。

北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし

北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし

 

 北欧の雪国貧乏伯爵リツハルドが、退役することになった男前の女性軍人ジークリンデに夜会で一目惚れし告白、一年のお試し婚を条件に一緒に暮らし始める物語。読んでみて表紙を見比べてあれ?と思ったのは私だけじゃないと思いますが(苦笑)率直で飾らないジークとの一緒の生活を楽しいと思うリツと、きちんと女の子扱いしてくれて対等に見てくれるリツの優しさを好ましく思うようになっていくジーク。不器用な二人がお互いの様子を伺いながら少しずつ距離を縮めていく奥ゆかしさがとてもいいですね。たまにはこういう物語もなかなかいいかもしれません。現在2巻まで刊行。

ジンニスタン 1 砂漠と海の物語 (アース・スターノベル)

ジンニスタン 1 砂漠と海の物語 (アース・スターノベル)

 

 ジン族とヘラス人の和平交渉のため人質としてジンの帝国へと送られた王子ペレウスが、ジン族の姫ファリザードと共に帝国を巡る動乱に巻き込まれていく物語。中世十字軍期のイスラム圏にファンタジー要素を掛けあわせた世界観で繰り広げられる運命的な出会いを描くストーリーで、ヘラスのためにという意識を持って努力を惜しまないペレウスと、最初はバカにしながらも急速に彼を意識していくファリザードの初々しいやり取りがとても素晴らしいですね。構想が壮大過ぎて最後まで書ききれるのかちょっと心配ですが、続きがとても楽しみなシリーズです。

 

最近は今後に期待できそうな、紹介したい作品がわりと出てきていて嬉しいです。来年もまた同じように紹介したくなる作品がたくさん生まれることを期待しています。