読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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2015年8月のおすすめライトノベル

8月は冊数自体は56冊と結構読んでいたんですが、新作の購入はそんなに多くなくて、続巻と既刊消化に充てられた1ヶ月だったりしました。そんな中で今月紹介したい作品は以下の5点です。 

 

まず新作で紹介したい3点。

 一つの身体に複数の人格が生まれるシノニムという多重人格に似た病気が珍しくなくない世界。複雑な想いを抱える藍理・茜・蘭香の人格を抱えた少女と友人たち、彼女を支える兄が織りなす青春群像劇。人格が入れ替わっていく自分の知らない世界がある日常。それでも彼女たちにも大切なもの、大切な存在がいる。自分という人格が消えるかもしれないと思いながらも向き合おうとする覚悟があまりにも切なくて、紆余曲折の末に彼女たちの想いが少しだけ報われたように感じたエピローグもまたとても素晴らしかったですね。こういった切ない雰囲気をうまく物語として昇華させていく作品がもっと出てくることを期待します。

 

たま高社交ダンス部へようこそ (角川スニーカー文庫)

たま高社交ダンス部へようこそ (角川スニーカー文庫)

 

 何をやっても三日坊主だった雪也がうっかり入部した社交ダンス部で、部の存続を賭けて競技大会に出場することになる物語。最初は望んで入ったわけでもなく、何事にも腰が引け気味の雪也でしたが、社交ダンスの楽しさを知ったり、部活の居心地の良さを感じたりするうちに、真摯に取り組む璃子や、部長の想いに応えようと前向きに取り組もうと決意し、パートナーになった璃子と心を通わせていく王道なストーリーがとても良かったです。難しく感じない程度に社交ダンスを紹介していて、とてもいい雰囲気の終わり方でしたが、まだまだ面白い話を続けられそうなポテンシャルはあると思うので、続編を期待する作品です。

幻葬神話のドレッドノート (GA文庫)

幻葬神話のドレッドノート (GA文庫)

 

 一族を神話級幻獣に滅ぼされ、全ての神話級幻獣を滅ぼす方法を探るために養成校に入学した御霊志雄とその嫁・日輪の物語。入学式早々新婚宣言したり惚気けたりとバカップル全開の二人ですが、一方で二人は血の滲むような特訓で突出した存在でもあり、志雄は一族の仇を討つため、傍らに立つことを選んだ日輪も一族のしがらみを乗り越えてきていたりで、イチャイチャだけで終わらずに適度な緊張感もあるバランス感覚がよかったです。因縁の再会を果たしたバトル面も強敵相手に二人で力を合わせて討滅するこの作品の特性を活かした展開に大満足。これも続編に期待大な作品です。

 

以下2シリーズが完結・打ち切り...orz

 ヴァレリアのために覚悟を決めたディー。カリンと決着をつけようと願うダンテと、ルオーマに直接攻撃をかける用意を整えたルキウスとオルヴィエト。それぞれが最後の戦いに挑むシリーズもこれでついに完結。これまでの因縁に決着をつけるべく各々がついに動き出した今巻でしたが、丁寧に描かれた対決でひとつひとつのエピソードを回収していきながら、終わりに向かう物語としてまとめていく上手さはさすがベテラン作家さんらしいですね。最後までヴァレリアとディーのやりとりも十分堪能出来て、気になる部分もきちんと補足してくれた大満足の完結。次回作にも期待しています。

 バレンタイン公演は『ロミオとジュリエット』恋人同士になった綾音と詩也にいち子からまさかの交際NG宣言!そんな二人と周囲の人々が織りなす第五弾。質問には「付き合ってません」と答える二人がプライベートや公演で見せる甘い描写の数々。一方で自分の想いを再確認し覚悟を決める少女たちやほのめかされる雫との因縁、初詣やバレンタイン・ホワイトデー・卒業式など数々のイベントエピソードも盛り込まれた濃厚な一冊でしたが、何とこの巻で打ち切りとのこと。著者さん的にもそれなりにパワーを割いて書いていた作品だと思うので残念です。

 

最近の打ち切りを見ていると、作品を多数出されているベテラン作家さんでも早い段階の打ち切りがあったりで、刊行点数の急増によって競争が激しくなっていると同時に、全体のトレンドがここ数年大きく変わってきているようにも感じます。読者としても本当に厳しいところですが、続いて欲しいと思う作品はきちんと買い支えしたり、普及活動したり、自分なりにできることを頑張っていきたいと思います。