読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2月の購入検討&気になる本ほかピックアップ

【1/28追記】単行本の発売予定を6点ほど追加しました。

 

1月は忙しすぎてブログの更新がなかなかできていませんが、とりあえず恒例の2月の購入検討&気になる本ほかピックアップです。シリーズものではHJ文庫の「魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?」一二三文庫「隣の席の佐藤さん」、幻冬舎文庫の友麻碧さん「鳥居の向こうは、知らない世界でした。」富士見L文庫「おいしいベランダ。」「わたしの幸せな結婚」、二ヶ月連続刊行となる「京都寺町三条のホームズ」、月末に薬屋のひとりごとの9巻目があります。

 

また廣嶋玲子さんの「赤の王」が三部作完結、「宝石吐きのおんなのこ」が10巻目、
妹さえいればいい。が14巻目で完結のようです。また文庫化では多崎礼さんの中公文庫「夢の上」、似鳥鶏さんの角川文庫「彼女の色に届くまで小林泰三さんの創元推理文庫クララ殺し」に注目です。

 

2月は電撃文庫GA文庫などが刊行点数多めで、電撃文庫青春ブタ野郎」シリーズ、「とある」新シリーズ、「七つの魔剣が支配する」など、GA文庫ゴブリンスレイヤー」「処刑少女の生きる道」「りゅうおうのおしごと!」「天才王子の赤字国家再生術」「ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?」など主力が多数投入される中での新作をどう選ぶのか見極めが難しいところでもあります。ラノベの各レーベルから出ているラブコメものを中心に試し読みで確認しながらになりそうです(正直、雰囲気とか文章確認してみないと合うか合わないかわかりませんw)。

 

それ以外の新作では伊与原新さんの「青ノ果テ」創元推理文庫「シトロン坂を登ったら」阿部暁子さんの集英社文庫「パラ・スター」篠原悠希さんの角川文庫「天涯の楽土」、斜線堂有紀さんの「君は地獄に堕ちるだろうから」第26回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞>の「今夜、世界からこの恋が消えても」あたりに期待です。

青ノ果テ :花巻農芸高校地学部の夏

青ノ果テ :花巻農芸高校地学部の夏

  • 作者:伊与原 新
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/01/27
  • メディア: 文庫
 
シトロン坂を登ったら (大正浪漫 横濱魔女学校1) (創元推理文庫)

シトロン坂を登ったら (大正浪漫 横濱魔女学校1) (創元推理文庫)

 
パラ・スター <Side 百花> (集英社文庫)

パラ・スター <Side 百花> (集英社文庫)

 
天涯の楽土 (角川文庫)

天涯の楽土 (角川文庫)

 
今夜、世界からこの恋が消えても (メディアワークス文庫)

今夜、世界からこの恋が消えても (メディアワークス文庫)

  • 作者:一条 岬
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/02/22
  • メディア: 文庫
 

 

新潮文庫nex(1/27発売)
青ノ果テ ―花巻農芸高校地学部の夏― 伊与原新

HJ文庫(2/1発売)
・最強魔法師の隠遁計画10 イズシロ/ミユキルリア
・魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?10 手島史詞/COMTA
・<Infinite Dendrogram>―インフィニット・デンドログラム― 12.アイのカタチ 海道左近/タイキ
百錬の覇王と聖約の戦乙女20 鷹山誠一/ゆきさん

スニーカー文庫(2/1発売)
・【新】クラスで一番の彼女、実はボッチの俺の彼女です 七星蛍/万冬しま
・【新】義姉たちが全員重度のブラコンだった 藤宮カズキ/れいなま
・真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました6 ざっぽん/やすも

LINE文庫(2/5発売)
・甲冑男子 ~言えないわたしを支えてくれる秘密の彼氏たち~ ゆうきりん/usi

ポプラ文庫ピュアフル(2/5発売)
・金沢古妖具屋くらがり堂 峰守ひろかず

一二三文庫(2/5発売)
隣の席の佐藤さん2 森崎緩/げみ

小学館文庫キャラブン!(2/6発売)
・京都鴨川あやかし酒造 龍神さまの花嫁 朝比奈希夜/神江ちず
陰陽師と綺羅のあやかし 中村ふみ/睦月ムンク

宝島社文庫(2/6発売)
・縁結び神社の猫神様 お導きはマッチングアプリで 鹿ノ倉いるか
・京都伏見のあやかし甘味帖 星めぐり、祇園祭の神頼み 柏てん/細居美恵子

幻冬舎文庫(2/6発売)
鳥居の向こうは、知らない世界でした。4 友麻碧

電撃文庫(2/7発売)
・【新】声優ラジオのウラオモテ#01 二月公/さばみぞれ
 [第26回電撃小説大賞<大賞>]
青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない 鴨志田一/溝口ケージ
・創約 とある魔術の禁書目録 鎌池和馬/はいむらきよたか
・七つの魔剣が支配する V 宇野朴人/ミユキルリア
・幼なじみが絶対に負けないラブコメ3 二丸修一/しぐれうい
・【新】魔法も奇跡もない、この退屈な世界で 渡風夕/rioka

メゾン文庫(2/10発売)
・新宿もののけ図書館利用案内2 峰守ひろかず/Laruha

双葉文庫(2/12発売)
・京都寺町三条のホームズ14 摩天楼の誘惑 望月麻衣
・盲目の織姫は後宮で皇帝との恋を紡ぐ 小早川真寛
・ノベライズ ReLIFE 4 蒔田陽平 原作:夜宵草/夜宵草

創元推理文庫(2/13発売)
シトロン坂を登ったら 大正浪漫 横濱魔女学校1 白鷺あおい

東京創元社単行本(2/13発売)
・赤の王 廣嶋玲子

GA文庫(2/14発売)
・【新】俺の女友達が最高に可愛い。 あわむら赤光/mmu
・【新】痴漢されそうになっているS級美少女を助けたら隣の席の幼馴染だった ケンノジ/フライ
・【新】女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話 みかみてれん/雪子
ゴブリンスレイヤー12 蝸牛くも/神奈月昇
・処刑少女の生きる道3 ―鉄砂の檻― 佐藤 真登/ニリツ
りゅうおうのおしごと!12 白鳥士郎/しらび
・天才王子の赤字国家再生術6 鳥羽徹/ファルまろ
・ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?5  望公太/ななせめるち

 

KADOKAWA単行本(2/14発売)

いいからしばらく黙ってろ! 竹宮ゆゆこ

 

産業編集センター単行本(2/14発売)

西新宿 幻影物語 小林栗奈/吉田誠治

 

文藝春秋単行本(2/14発売)

GETUP!GETLIVE! 渡航


富士見L文庫(2/15発売)
・おいしいベランダ。 8番線ホームのベンチとサイダー 竹岡葉月/おかざきおか
・香港シェヘラザード 上・蕾の義 三角くるみ/猫将軍
・香港シェヘラザード 下・花の奸 三角くるみ/猫将軍
・わたしの幸せな結婚 三 顎木あくみ/月岡月穂
・旺華国後宮の薬師2 甲斐田紫乃/友風子

ポルタ文庫(2/15発売)
・ルーツパーラー『宝石果店』の憂鬱 江本 マシメサ

ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ(2/17発売)
宝石吐きのおんなのこ10 ~ちいさな宝石店の紡ぐ未来~ なみあと/景

ガガガ文庫(2/18発売)
妹さえいればいい。14 平坂読/カントク

創元推理文庫(2/19発売)
・臨床探偵と消えた脳病変 浅ノ宮遼

中央公論新社単行本(2/19発売)
・愛の色いろ 奥田亜希子

ファンタジア文庫(2/20発売)
・【新】俺がラブコメ彼女を絶対に奪い取るまで。 戸塚陸/昆布わかめ
・氷川先生はオタク彼氏がほしい。 2時間目 篠宮夕/西沢5ミリ

オレンジ文庫(2/20発売)
・鬼恋語リ 永瀬さらさ/ねぎしきょうこ
・君がいて僕はいない くらゆいあゆ/hiko
・モノノケ踊りて、絵師が狩る。  水守糸子/Minoru
・死神のノルマ 宮田光/海凪コウ
・線香花火のような恋だった 櫻井千姫/望月深冬

集英社文庫(2/20発売)
パラ・スター side 百花 阿部暁子

ハヤカワ文庫JA(2/20発売)
・探偵は絵にならない 森晶麿

中公文庫(2/20発売)
【文】夢の上-夜を統べる王と六つの輝晶1 多崎礼

 

光文社単行本(2/20発売)
宝の山 水生大海
境内ではお静かに(2) 天祢涼


ダッシュエックス文庫(2/21発売)
・魔弾の王と聖泉の双紋剣2 瀬尾つかさ/八坂ミナト
・魔弾の王と凍漣の雪姫5 川口士/美弥月いつか
・わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ! みかみてれん/竹嶋えく

角川文庫(2/21発売)
【文】彼女の色に届くまで 似鳥鶏
・紙屋ふじさき記念館 麻の葉のカード ほしおさなえ
天涯の楽土 篠原悠希

角川ホラー文庫(2/21発売)
・義眼堂 あなたの世界の半分をいただきます 一田和樹

KADOKAWA単行本(2/21発売)
・うちの父が運転をやめません 垣谷美雨

メディアワークス文庫(2/22発売)
・イーグルドライバーと人生リセット婚 綾藤安樹
・君は地獄に堕ちるだろうから 斜線堂有紀
・おとなりの晴明さん 第六集 ~陰陽師は狐の花嫁を守る~ 仲町六絵
・そして、遺骸が嘶く。 死者たちの手紙 酒場御行/toi8
 [第26回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>]
・今夜、世界からこの恋が消えても 一条岬
 [第26回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞>]

MF文庫J(2/25発売)
・【新】そうだな、確かに可愛いな 刈野ミカタ/magako
・わたしの知らない、先輩の100コのこと2 兎谷あおい/ふーみ
・なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?8 久遠の魂 細音啓/neco
・やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい2 芝村裕吏/片桐雛太

 

講談社単行本(2/27発売)
さよならが言えるその日まで 高木敦史


ヒーロー文庫(2/28発売)
薬屋のひとりごと日向夏/しのとうこ

創元推理文庫(2/28発売)
【文】クララ殺し 小林泰三

スターツ出版文庫(2/28発売)
・こんなにも美しい世界で、君に出会えたということ (仮) 小鳥居ほたる

 

以上です。

2019年に文庫化されたおススメ15作品

最近は単行本が刊行されても伸び悩み、密かに文庫化されずに終わる作品も少なくありませんが、一方でメディアミックスやいろいろ工夫をこらしながら文庫化され、人気を集める作品も少なくありません。昨年は単行本時代に読んだ本も含めていろいろ注目の作品も多数文庫化されました。その中で個人的におススメの15作品を紹介したいと思います。

 

1.騙し絵の牙 (角川文庫)

騙し絵の牙 (角川文庫)

騙し絵の牙 (角川文庫)

 

大手出版社で雑誌編集長を務める速水。上司の相沢から自身の雑誌の廃刊を匂わされたことをきっかけに、組織の思惑に翻弄されながらも懸命に抗う物語。作中では出版業界の厳しい状況が端的に描かれていて、部下や上司に振り回され大規模リストラや社内他誌の廃刊に直面したり、さらには家庭不和まで顕在化して、どんどん追い詰められてゆく速水。一方で出版界の新たな可能性の模索もあって、絶望しか見えなかった先にあった思わぬ展開には驚かされましたが、一見輝ける未来を手にしたかに見えた彼が直面する何とも皮肉な結末がとても効いていました。

2.屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

 

神紅大学ミステリ愛好会会長の探偵・明智恭介と助手・葉村譲が、もう一人の探偵・剣崎比留子と共に紫湛荘を訪れ、予想もしなかった事態で荘内に籠城を余儀される中、次々と連続殺人事件が起きるミステリ。過去に因縁あるペンションでの夏合宿で、思わぬ形で閉じ込められた参加者たち。外部からの脅威による惨劇と、次々と起きる因縁じみた殺人事件の組み合わせが奇抜で事態をより難しいものにしていましたけど、その特殊な状況下で起きた事件の真相は切なくて、そんな事件を見事解決に導いてみせた探偵たちのその後をまた読んでみたいと思いました。

3.わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)

わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)

わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)

  • 作者:朱野 帰子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/01/27
  • メディア: 文庫
 

苦い過去の経験から定時で帰ることをモットーにウェブ会社で働く東山結衣。ブラック上司に曲者揃いの同僚相手に定時で帰る?仕事する気あるの?という空気の中奮闘するお仕事小説。働き方も婚約者もやや極端から極端に走りがちな感もあった結衣でしたが、無理を精神論で通そうとする天敵の勘違い上司や、同僚や取引先に振り回され続ける展開には共感めいたものを覚えてしまいますね(苦笑)それでも何とかしてみせた結衣の奮闘っぷりは流石で、婚約者は正直どっちもどっちだけれど、とりあえず巧は止めておいて正解だった気がしました。あれはない。

4.木曜日にはココアを (宝島社文庫)

木曜日にはココアを (宝島社文庫)

木曜日にはココアを (宝島社文庫)

  • 作者:青山 美智子
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/08/06
  • メディア: 文庫
 

川沿いを散歩する、卵焼きを作る、ココアを頼む、ネイルを落とし忘れる...小さな喫茶店「マーブル・カフェ」の一杯のココアから始まる些細な出来事の積み重ねが、最後に繋がってゆく連作短編集。登場人物たちがどこかでさり気なく繋がっている連作短編集で、行き詰まっていた登場人物たちが新たな出会いや今まで気づかなかった優しさに触れて、見える世界を少しだけ変えていって、連鎖反応的に繋がってゆく物語がもたらした勇気と、それがもたらした結末がとても素敵な物語でした。最初のエピソードが最後にこういう形で結実するのもいいですね。

5.虹を待つ彼女 (角川文庫)

虹を待つ彼女 (角川文庫)

虹を待つ彼女 (角川文庫)

  • 作者:逸木 裕
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/05/24
  • メディア: 文庫
 

優秀で予想できてしまう限界に虚しさを覚えていた研究者・工藤が、死者を人工知能化するプロジェクトに参加して、衝撃的な自殺でカルト的な人気のゲームクリエイター・水科晴を知る物語。過去の事件や水科晴のことを調べてゆくうちに、彼女に共鳴し惹かれてゆく工藤。重要なキーパーソン「雨」の存在と調査中止を警告する謎の脅迫。我が身が危険に晒されながらも諦めず、晴を人工知能で再現することに妄執する工藤の姿には鬼気迫るものがありましたが、真相を知った彼のほろ苦くも粋な決断は少なからず心に響くものがありました。次回作にも期待。

 

6.明るい夜に出かけて (新潮文庫)

明るい夜に出かけて (新潮文庫)

明るい夜に出かけて (新潮文庫)

  • 作者:佐藤 多佳子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/04/26
  • メディア: 文庫
 

あるトラブルがきっかけで大学を休学し、実家を離れて期間限定の自立を始めた富山。人に言えない葛藤や臆病な自分に自信喪失気味だった彼が、バイトするコンビニで印象的な人たちと出会う青春小説。バイトリーダーの鹿沢や同級生の氷川、同じラジオ番組のヘビーリスナーの女子高生・佐古田たちと出会い、繋がっていくことで少しずつ変わってゆくその心境。誰しも不器用な一面があって、上手くいくことばかりでもなくて、けれどそんな彼らとの関わりから生まれる様々な出来事が、前へ進むきっかけに繋がってゆく展開にはぐっと来るものがありました。

7.ひよっこ社労士のヒナコ (文春文庫)

ひよっこ社労士のヒナコ (文春文庫)

ひよっこ社労士のヒナコ (文春文庫)

 

派遣社員から一念発起し社会保険労務士になった二十六歳のヒナコが、得意先で相談に乗りながら事件を解決し成長していくお仕事小説。解雇、ブラックバイト、産休育休、パワハラ、残業代、裁量労働制、労災といったよくある事例をテーマに取り組んでいく新米社労士の仕事はなかなかハードで、社内トラブルに巻き込まれかけたり、上手く利用されそうになったりもありましたけど、それでも試行錯誤しながら真摯に取り組んでいく雛子の頑張る姿には素直に応援したくなるものがありました。いろいろ勉強にもなって続刊あるようならまた読んでみたいです。

 

8.農ガール、農ライフ (祥伝社文庫)

農ガール、農ライフ (祥伝社文庫)

農ガール、農ライフ (祥伝社文庫)

 

派遣切りに遭い、同棲相手からも突然別れを告げられ失意のどん底の水沢久美子、三十二歳の春。TV番組の「農業女子特集」を見て運命を感じ、一念発起田舎に引っ越し農業大学へ入学することを決意する物語。頼れる実家もない状況で同棲相手と別れると、こんな不安定な境遇になってしまうのかと痛感させられる展開でしたが、やはり地縁のないところで女ひとり就農するのも言うほど簡単ではないですよね…。知り合った友人たちのしたたかな行動力が印象的でしたけど、周囲の助けもあって久美子にもどうにか希望が見えてくる展開に救われる思いでした。

9.タスキメシ (小学館文庫)

タスキメシ (小学館文庫)

タスキメシ (小学館文庫)

  • 作者:額賀 澪
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2019/11/06
  • メディア: 文庫
 

長距離選手として将来を期待されながら大怪我を負った高校三年生の眞家早馬。そんな彼が料理研究部に入り浸るようになる中、それぞれの熱い思いが交錯する駅伝大会が始まる青春小説。料理研究部の井坂都との出会いと、複雑な想いを抱える早馬が新たに見出した夢。そんな彼を諦められない同級生の助川や弟・春馬。都への想いも絡めた早馬の真意はどこにあるのか、彼に抱く周囲の複雑な想いが何とももどかしかったですが、仲間たちが突きつける熱い想いが早馬の心を強く揺さぶる結末はなかなか良かったですね。都との関係はどうなったのか気になる…。

10.君はレフティ (小学館文庫)

君はレフティ (小学館文庫)

君はレフティ (小学館文庫)

  • 作者:額賀 澪
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2019/08/06
  • メディア: 文庫
 

夏休み中、交通事故に遭った高校生・古谷野真樹。後遺症で過去の記憶を失いつつも夏休み明けの日常を取り戻しつつあった古谷野が謎の落書き「7.6」にあちこちで遭遇する青春ミステリ。自分へのメッセージと直感で感じて、同じクラスで写真部の生駒桂佑や春日まどかと一緒にその謎に挑む古谷野。謎を追ううちに明らかになってゆく親友の秘密と事件の真相。事実を知るたびに過去にあった情景が変化して、正直な心境は時に残酷で、失われたものの大きさを痛感しましたが、それでもまっすぐに向き合った彼らの真摯な想いがとても印象的な物語でした。

11.イダジョ! 医大女子 (ハルキ文庫)

イダジョ! 医大女子 (ハルキ文庫 と 8-1)

イダジョ! 医大女子 (ハルキ文庫 と 8-1)

 

私立医科大に入学することになった普通のサラリーマンの娘・安月美南。周囲とのギャップや現実に振り回されつつ逆境に立ち向かってゆく医大女子小説。入学早々直面するボンボン医大生との差、実習・勉強での実力不足、そして身近な人の死を目の当たりにして問われる医者になる覚悟。読んでいて医大生の勉強の大変さや、忙し過ぎて恋愛にかまけてる余裕なさそうとか、何より高額な学費払い続ける親御さんの大変さとか一歩間違えばの危うさに身につまされましたが、周囲と衝突したり助けられつつ人としても成長していく展開はなかなか良かったですね。
続巻:「イダジョ!研修医編(ハルキ文庫 と)

12.病弱探偵 謎は彼女の特効薬 (講談社文庫)

病弱探偵 謎は彼女の特効薬 (講談社文庫)

病弱探偵 謎は彼女の特効薬 (講談社文庫)

 

超病弱で学校は欠席続きの高校生・貫地谷マイ。幼馴染の同級生・山名井ゲンキがマイのために、学校で起こった不思議な事件を送り届ける寝台探偵ミステリ。消えた万引や持ち去られた短冊、着替えられた浴衣といった身近な謎をマイが寝台探偵よろしく謎解きする構図で、あまり学校に行けず友達も少ないがゆえにその推理には限界があるものの、いがみ合いながらもお互いをフォローして解決してゆく展開は良かったですね。甘え下手なマイの悪戯に毎回騙される学習しないゲンキには苦笑いでしたが、随分遠回りした二人の結末はなかなか素敵なものでした。

 

13.石黒くんに春は来ない (幻冬舎文庫)

石黒くんに春は来ない (幻冬舎文庫)

石黒くんに春は来ない (幻冬舎文庫)

 

典型的なスクールカーストが形成されたクラスで起こった、スキー教室における石黒君の遭難事件。平穏なようでいて歪な日常を取り戻した生徒たちに突然、意識不明の重体だった石黒君からメッセージが届く学園サスペンス。気ままに君臨するグループに事なかれの主義の教師、それによって生じる不登校や少しずつ溜まってゆく不満。それを巧みに扇動するものが現れることでガラリと様相が変わる狭い社会における群集心理の怖さが生々しかったです。途中から傍観者だった主人公恵美でしたけど、一度作られてしまった流れをどうにかするのは難しいですね。

14.少女は鳥籠で眠らない (講談社文庫)

少女は鳥籠で眠らない (講談社文庫)

少女は鳥籠で眠らない (講談社文庫)

 

法律事務所に務める新米弁護士木村と有能な先輩・高塚のコンビが挑む連作リーガル・ミステリ。15歳の少女に手を出したとして逮捕された元家庭教師、中退した元同期の覚悟、浮気され離婚を望む男が親権を望んだ理由、そして高名な芸術家と娘の関係の4話からなる構成で、最初は一見よくあるありふれた事件に思えますが、それが性格の違う弁護士コンビによる別視点からのアプローチによって、もうひとつの構図を浮かび上がらせてゆく構成となっていて、事件決着後に木村が垣間見るほろ苦くもなかなか味わいのある結末がとても印象的な物語でした。

15.科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました (文春文庫)

科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました (文春文庫)

科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました (文春文庫)

 

自社の非科学的な商品にダメ出しをしたばかりに、最も行きたくなかった商品企画部に島流しになった大手電器メーカーに勤める科学マニア羽嶋賢児。その真っすぐすぎる科学愛が騒動を巻き起こすお仕事小説。苦い経験をさせられたり振り回された過去から、似非科学を否定し空気を読まずに正論を言って衝突する賢児。正しければいいというものでもないという現実と、科学好きを拗らせてしまう要因となった複雑な事情…こんな人が周囲にいたら疲れそうですが、科学研究を巡る厳しい事情も語られていたりで、理想と現実のバランスを取るのは難しいですね。

 

以上です。気になる本があったらぜひ手に取って読んでみてください。

 

好きなラノベを投票しよう 2019年下期投票10作品

今回も好きラノの季節がやってきました。ということで2019年下期の投票10作品をセレクトしています。最近追いかけている既存シリーズが多すぎて、新作をあまり読めてない気がしないでもないですが、とりあえず今回も新作ベースで選びました。

 

1.プロペラオペラ (ガガガ文庫)

プロペラオペラ (ガガガ文庫)

プロペラオペラ (ガガガ文庫)

 

追い詰められた極東の島国・日之雄。悲壮な決意で駆逐艦「井吹」の艦長として戦いに挑む皇家第一王女イザヤのもとに、かつて最低の事件を起こして皇籍剥奪された幼馴染・クロトが部下として乗り込む空戦ファンタジー。敵国ガメリア合衆国で投資家として成功していたクロトが日之雄に戻ってきた理由。苦戦必至の状況の中、超傲慢で頭が切れてバカがつく努力家クロトが、アホな部下たちと共にイザヤを支えて大逆転に導く熱い展開で、異国で台頭しつつある因縁のライバルの魔の手から彼女を守りきれるのか、これは今後がとても楽しみなシリーズですね。

【19下ラノベ投票/9784094518122】

2.吸血鬼に天国はない (電撃文庫)

吸血鬼に天国はない (電撃文庫)

吸血鬼に天国はない (電撃文庫)

  • 作者:周藤 蓮
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/08/10
  • メディア: 文庫
 

大戦と禁酒法で旧来の道徳が崩れ去った時代。非合法の運び屋シーモアのもとに、運んで欲しい荷物として正真正銘の吸血鬼の少女・ルーミーが持ち込まれる歴史ファンタジー。仕事上のトラブルから始まったルーミーとの同居生活。吸血鬼らしさを見せないルーミーと共に過ごすうちにシーモアの心境が変化してゆく中で、ふと気づいてしまったひとつの事実。確かに変わってしまった何かがあって、それでも二人の間には確かに育まれていたものがあって、ぶつかりあった本音の先にあった結末がとても自分好みでした。これは続巻に期待大の新シリーズですね。現在2巻目まで刊行。

【19下ラノベ投票/9784049126709】

3.処刑少女の生きる道 (GA文庫)

過去に起きた人災で異世界からの召喚者は見つけ次第処刑される世界。躊躇なく冷徹に任務を遂行する処刑人の少女・メノウが、迷い人の少女アカリと運命の出会いを果たすファンタジー。不可避に思えた運命をあっさり乗り越えるアカリと、そんな彼女に調子が狂わせながらも決着をつけるべく二人で旅するメノウの距離感がなかなかいい感じで、それに処刑人補佐のモモや王の娘アーシュナといった魅力的なキャラを絡めて展開する物語の安定感には驚かされました。ワケありな二人の旅がこれからどのようなものになるのか、続巻が楽しみな新シリーズですね。20年2月3巻目刊行予定。

【19下ラノベ投票/9784815601188】

4.天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)

天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)

天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)

 

大好きなフリーゲーム制作者Aに会うため、桜山学園ゲーム制作部に入った水谷湊。しかしAと思しき部長の菖蒲は不登校で、彼女が学校に来るよう部員たちから託される青春小説。仲が良さげなゲーム部員が抱える苦い過去、そして湊のもとに送られてきたひとつのノベルゲームが示唆する過去。部員それぞれの事情が明らかになってゆくたびに彼らの印象も変化して、構図が二転三転した末の決着は新たな違和感に繋がって、確執が残る母とも向き合いつつバットエンドに隠されていた真相を見出して、大切な笑顔を取り戻してみせた結末がとても印象的でした。

【19下ラノベ投票/9784047358935】

5.夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

  • 作者:八目 迷
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2019/07/18
  • メディア: 文庫
 

海に面する田舎町・香崎。家族崩壊させた過去を悔やむ高校生・塔野カオルが、クラスで浮いた存在になっていた転校生・花城あんずと互いの欲しいものを手に入れるため協力関係を結ぶ青春小説。夏の日のある朝、塔野カオルが偶然耳にした、中に入れば年を取る代わりに欲しいものが何でも手に入る『ウラシマトンネル』の都市伝説。周囲との関係を拒絶していたあんずの言動はなかなかぶっ飛んでいましたが、彼女との協力関係から始まった二人の不器用なやりとりはとても甘酸っぱくて、大切なものに向き合った二人の結末にはぐっと来るものがありました。

【19下ラノベ投票/9784094518023】

6.塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (ガガガ文庫)

塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (ガガガ文庫)

塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (ガガガ文庫)

 

高嶺の花で誰に対しても塩対応な佐藤こはると、誰に対しても優しい押尾颯太。初々しくてもどかしい高校生二人の初恋物語。告白されても話しかけられても実はコミュ障で塩対応のこはる。そんな不器用な彼女が想い人に近づきたい一心で頑張って颯太だけに見せる様々な可愛い表情があって、彼女をフォローしようと頑張る颯太もいちいちカッコ良くて、そんなじれじれ初恋両片想いな二人の破壊力がスゴイですね。勘違いからすれ違いかけたり大きな壁が立ちはだかったりしても、勇気を出して前に一歩踏み出した二人の今後がとても楽しみな新シリーズです。

【19下ラノベ投票/9784094518238】

7.友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? (オーバーラップ文庫)

友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? 1 (オーバーラップ文庫)

友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? 1 (オーバーラップ文庫)

  • 作者:世界一
  • 出版社/メーカー: オーバーラップ
  • 発売日: 2019/07/24
  • メディア: 文庫
 

目つきの悪さから不良のレッテルを貼られた友木優児。『主人公キャラ』池春馬以外に誰も近寄らない彼が、春馬の妹で美少女の池冬華に突然告白されるラブコメディ。腑に落ちない告白の真意を問いただす優児と、思うところあって彼とニセの恋人関係を結んだ新入生の冬華。外見がアレで不器用だから誤解されがちだけれど、困った人を助けることを厭わず、相手にきちんと真摯に向き合える優児の良さを知ってゆく人が増えていって、そんなエピソードを積み重ねて冬華の想いも変化してゆく展開がとても良かったです。これは続巻に期待の新シリーズですね。現在2巻まで刊行。

【19下ラノベ投票/9784865545203】

 

 

8.由比ガ浜機械修理相談所 (DENGEKI)

由比ガ浜機械修理相談所 (DENGEKI)

由比ガ浜機械修理相談所 (DENGEKI)

 

リアルなヒューマノイド「TOWA」を助けたい想いが空回りして挫折した若宮氷雨。世間から逃げるように鎌倉に機械修理相談所を開いた彼の元に、TOWAの結を伴った戸川が訪れる物語。十五億で結を売ってほしいという戸川の依頼から買ってくれる人を探すことになった氷雨。束の間の彼女と共に過ごす日々で少しずつ変わってゆく心境。けれどそれに素直に向き合えない苦い過去があって、不器用過ぎる氷雨の葛藤もありましたけど、様々なことが繋がって明らかになってゆく過去や、今の大切な想いにきちんと向き合えた結末がとても素敵な物語でした。

【19下ラノベ投票/9784049126624】

9.わたしの知らない、先輩の100コのこと (MF文庫J)

わたしの知らない、先輩の100コのこと1 (MF文庫J)

わたしの知らない、先輩の100コのこと1 (MF文庫J)

 

最寄り駅が同じ以外接点がなく、毎朝顔を合わせるだけだった先輩と後輩。そんな二人がある日『1日1問だけ、どんな質問にも絶対正直に答える』という約束を交わす青春ラブコメディ。大部分の生徒と違う二人だけが通う通学電車で、話すことはなくても存在を意識していた二人。ふとしたきっかけから一つずつ質問を積み重ねていって、話すことや会うことが増えいくことで少しずつ二人の距離感も変わっていって、ミステリアスな小悪魔・後輩ちゃんの言動に先輩が振り回される二人の関係がこれからどうなってゆくのか続巻に期待したいシリーズですね。 

【19下ラノベ投票/9784040659183】

10.最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ (ダッシュエックス文庫)

孤高のゲーマー・古霧坂里央。学校一の完璧美少女、真理峰桜。現実世界では何の関わりもない2人が、VRゲーム「MEO」で最強コンビとして名を馳せる物語。妹の同級生以外は何の接点もない、学校では違う意味で有名人の2人。そんな2人がVRMMOのゲームの中では同棲して、お化け屋敷気分の廃墟探索や混浴イベント、他プレイヤーと協力して超大型ボスと阿吽の呼吸で戦いながら周囲も呆れるいちゃいちゃっぷりで、だけどこの二人付き合ってないんですよ…?(苦笑)こういう関係は邪魔者が出現してこそさらに燃え上がりそうなので次巻に期待。

【19下ラノベ投票/9784086313452】

 

2019年12月に読んだ新作おすすめ本

2019年12月に読んだ新作おすすめ本です。

 

ラノベはやはりミステリテイストの三田さんらしい作「天才少女Aと告白するノベルゲーム」ですか。あとガガガ文庫のベタな感じが逆にいい「塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い」、もう熟年夫婦みたいな阿吽の呼吸な「最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ」、インパクトはさすがな「娘じゃなくて私が好きなの!?」など注目の作品が刊行されています。

 

ライト文芸は久しぶりに松村涼哉さんの「僕が僕をやめる日」を読みましたけど、ライト文芸向きの作家さんなのかもしれないですね。そういう意味では「終わった恋、はじめました」の小川晴央さんも久しぶりでしたけどなかなか良かったです。「執筆中につき後宮ではお静かに」の田井ノエルさんは初めて読みましたけど、今後の展開次第では大きく伸びそうなポテンシャルの高さを感じる作品でした。「青い灯の百物語」もなかなか興味深い作品です。

 

単行本では知念実希人さんの「ムゲンのi」は流石の一言。「スワン」は何となく積んでいるうちに直木賞候補作になっていましたが、なかなかインパクトがある作品でした。コミュ障大学生を主人公とした似鳥鶏さんの探偵ミステリ「目を見て話せない」も著者さんらしい作品で、コミュ障あるあるが楽しめる興味深い一冊です。

 

天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)

天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)

 

大好きなフリーゲーム制作者Aに会うため、桜山学園ゲーム制作部に入った水谷湊。しかしAと思しき部長の菖蒲は不登校で、彼女が学校に来るよう部員たちから託される青春小説。仲が良さげなゲーム部員が抱える苦い過去、そして湊のもとに送られてきたひとつのノベルゲームが示唆する過去。部員それぞれの事情が明らかになってゆくたびに彼らの印象も変化して、構図が二転三転した末の決着は新たな違和感に繋がって、確執が残る母とも向き合いつつバットエンドに隠されていた真相を見出して、大切な笑顔を取り戻してみせた結末がとても印象的でした。

塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (ガガガ文庫)

塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (ガガガ文庫)

 

高嶺の花で誰に対しても塩対応な佐藤こはると、誰に対しても優しい押尾颯太。初々しくてもどかしい高校生二人の初恋物語。告白されても話しかけられても実はコミュ障で塩対応のこはる。そんな不器用な彼女が想い人に近づきたい一心で頑張って颯太だけに見せる様々な可愛い表情があって、彼女をフォローしようと頑張る颯太もいちいちカッコ良くて、そんなじれじれ初恋両片想いな二人の破壊力がスゴイですね。勘違いからすれ違いかけたり大きな壁が立ちはだかったりしても、勇気を出して前に一歩踏み出した二人の今後がとても楽しみな新シリーズです。

孤高のゲーマー・古霧坂里央。学校一の完璧美少女、真理峰桜。現実世界では何の関わりもない2人が、VRゲーム「MEO」で最強コンビとして名を馳せる物語。妹の同級生以外は何の接点もない、学校では違う意味で有名人の2人。そんな2人がVRMMOのゲームの中では同棲して、お化け屋敷気分の廃墟探索や混浴イベント、他プレイヤーと協力して超大型ボスと阿吽の呼吸で戦いながら周囲も呆れるいちゃいちゃっぷりで、だけどこの二人付き合ってないんですよ…?(苦笑)こういう関係は邪魔者が出現してこそさらに燃え上がりそうなので次巻に期待。

魔女の花嫁 seasons beside a witch (LINE文庫エッジ)

魔女の花嫁 seasons beside a witch (LINE文庫エッジ)

  • 作者:空伏空人
  • 出版社/メーカー: LINE
  • 発売日: 2019/12/05
  • メディア: 文庫
 

不治の病に罹った少年・桑折冬至が、迷い込んだはずれの森に住む変わり者の魔女・ミーズに出会い、願いを叶える代わりにその弟子となる物語。ハルと名付けられた死にたくないと願うシニカルな少年と、陽気で構いたがりでどこか子供っぽい一面も見せる魔女のミーズ。そんな二人の微笑ましいやりとりは良かったですけど時折ハルが知らないミーズの過去があって。巻き込まれた事件を通して明かされるミーズの真意がまた衝撃的でしたけど、二人で過ごした日々もまた偽りではなかったんですよね。彼らがどうなってゆくのかその後の話を読んでみたいです。

娘じゃなくて私が好きなの!? (電撃文庫)

娘じゃなくて私が好きなの!? (電撃文庫)

  • 作者:望 公太
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/12/10
  • メディア: 文庫
 

就職したばかりなのに両親を亡くした幼馴染を引き取って育ててくれた綾子さん。そこから十年...幼馴染同士の恋を応援していた彼女が、大学生になった男の子・左沢巧にまさかの告白をされる恋愛ラブコメ。思ってもみなかった告白に動揺する綾子さんが可愛くて、障害だったはずの諸々もあっさりクリアされて外堀が埋まってゆく展開には苦笑いでしたが、何より十年間頑張ってきた一途な巧の想いが眩しかったですね。あとは自分次第という急展開についていけず、迷走したり暴走してしまう微笑ましい彼女と二人の恋を生温かく見守りたいと思いました。

帝剣のパラベラム (ダッシュエックス文庫)

帝剣のパラベラム (ダッシュエックス文庫)

  • 作者:川口 士
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: 文庫
 

己の力で名声を得るため、仲間たちとともに遊歴の騎士として旅をする皇帝の妾腹の子・アルヴェールが、帝国を滅ぼそうと企む陰謀に巻き込まれてゆくファンタジー。神敵には大鎌を振るい隙あらば夜這いをかけてくるシルファ、大食いで名言好きなセイランと旅を続けていたアルが抱く皇帝への複雑な想い。けれど巨大な魔物「地底樹」出現を放っておけない彼が、シルファも絡んだ因縁のエルフとその魔物に挑む展開は熱かったですし、その過程で挟まれるアルの過去エピソードが、仲間に慕われる彼のこれまでの成長を物語っていてなかなか効いていました。

地獄に祈れ。天に堕ちろ。 (電撃文庫)

地獄に祈れ。天に堕ちろ。 (電撃文庫)

  • 作者:九岡 望
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/11/09
  • メディア: 文庫
 

世界規模の幽界現象と呼ばれる大災厄によって、死者が現世に戻ってきてしまうようになった末世・東凶。聖職者が大嫌いな亡者の死神ミソギと、死者が嫌いな聖職者アッシュが縁あって手を組み立ち向かうダークヒーローアクション。相性最悪な二人の邂逅と、そんな彼らに振り回されるシスターのフィリス。魅力的なキャラたちそれぞれの複雑な事情を絡めながら、東凶中を巻き込んだ麻薬騒動から始まる世界崩壊の危機を吹っ切れたシスコン二人が大暴れして解決に導く展開は痛快でした。いい感じにオチもついた結末でしたけど続巻に期待できそうですね。

父の頼みで疎遠だったギャルJKの従妹・奏音を預かることになった独身サラリーマン・駒村。そんな帰りに痴漢から助けた家出JK・ひまりも転がり込んでくる同居物語。母親が失踪して行き場をなくした奏音と、夢を諦めたくない一心で家出したひまり。タイプの違う二人にもそれぞれ抱く複雑な想いがあって、それを戸惑いながらも同居を始めた駒村が真摯に支えたいと思う姿がいいですよね。そんな状況で現れた駒村の幼馴染という強力な伏兵出現は物語の重要なポイントになりそうですけど、ここからどう展開していくのか今後が楽しみなシリーズです。

 

僕が僕をやめる日 (メディアワークス文庫)

僕が僕をやめる日 (メディアワークス文庫)

 

困窮し生きることに絶望した立井潤貴。そんな彼を救った高木健介の代わりに大学に通うようになった二年後、高木が突如失踪するミステリ。作家でもある高木との充実した共同生活、そして失踪から始まる突然の暗転。残された数少ない手掛かりと作品をもとに高木の過去を知る人に会い、その行方を追う立井が知ってゆく意外な繋がりと高木の壮絶な過去。彼らが置かれた環境の過酷さと、何度も絶望感を突き付けられる彼らの生々しい感情描写はインパクトがあって、繋がってゆく複雑な因縁とその結末に至るまでを描く著者の熱い想いで読ませる物語でした。

本を愛した彼女と、彼女の本の物語 (メディアワークス文庫)

本を愛した彼女と、彼女の本の物語 (メディアワークス文庫)

  • 作者:上野 遊
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/09/25
  • メディア: 文庫
 

生まれた時から意識があった文庫本『ホテル・カロン』。なかなか売れなかった文庫本と、ある一人の少女が出会い、ともに過ごしたかけがえのない日々の物語。病弱な女の子・銀河に勇気をもたらした『ホテル・カロン』との出会い。そんな密かに彼が見守る銀河の成長と、親友・睦月との邂逅、運命の相手・輝星とのと出会い。見守ることしかできない本の視点というのがもどかしくて、けれどそんな想いはかけがえのない彼女にもしっかり伝わってたんでしょうね...最後まで寄り添い続けた姿がとても印象的で、受け継がれてゆく想いを感じる物語でした。

終わった恋、はじめました (講談社タイガ)

終わった恋、はじめました (講談社タイガ)

 

意地を通して退職した拓斗にかかってきた妹・莉音からの一年ぶりの電話。妹と一緒に心残りだった高校時代の恋人・小夜の足跡を辿る旅に出る物語。妹に指摘されて未練が残る過去の恋に決着をつけることを決意した拓斗。遭遇する謎を気が利く賢い妹にフォローされつつ解きながら、小夜に繋がる手がかりを追ってゆく展開でしたけど、それは一方で妹もまた思い悩む自身の過去に向き合う過程に繋がっていて、これまで積み重ねてきた状況からつい小夜のその後を想像してしまいましたが、そんな結末をいい意味で見事裏切ってくれたとても素敵な物語でした。

突然終わった結婚生活。バツイチか―と嘆く余裕もないまま娘の美空とともに実家に戻った涼子に、妻と娘を亡くした作家相手の住み込み家政婦の仕事が舞い込む再生の物語。嘆くばかりだった涼子が実家で直面する現実はなかなか厳しいなと感じましたけど、家族を亡くてから作品を書けなくなっていた山丘と出会い、彼の家で家事に取り組むようになり、元夫にビシッと言えるまで自信を取り戻してゆく展開はなかなか良かったです。山丘の存在も大きかったですけど、娘の美空や要所でフォローする山丘の元に通う編集・川谷もいい感じに効いていましたね。

社長が失踪し会社は倒産、アパートは火事で焼失。全てを失ったカナが、紹介されたシェアハウスの大家・前園に巻き込まれ洋服知識ゼロなのに個人経営の小さなアパレルブランドで働きはじめる物語。騙して実質タダ働きさせるとかブラックだなあと苦笑いしましたが、カナを長年無自覚に貶める存在だった男友達と決別できたのは良かったですし、コスパキング前園や引きこもりデザイナー・アリス、ワケありモデルのミキなどと関わるうちに、自ら積極的に関わるようになったり、互いにいい影響を及ぼすようになってゆく姿にはぐっと来るものがありました。

自室に引きこもれるという理由で後宮入りし、日々執筆にいそしむ娘・青楓。謎の襲撃者たちに襲われたところを皇帝に救われ、愛憎渦巻く後宮の陰謀に巻き込まれてゆく中華風ファンタジー。皇帝から後宮の不審死事件の真相を掴むべく協力を命じられた青楓は意外と才色兼備なのに価値観がズレていて、自分を雑に扱う彼女を新鮮に感じる皇帝との距離感はこれからな感じでしたけど、個性的な上級妃嬪たちにも振り回され、複雑な想いを抱えながら事件を解決に導く青楓のありようがなかなか印象的で面白かったです。これは続巻を読んでみたいと思いました。

君が今夜もごはんを食べますように (集英社オレンジ文庫)

君が今夜もごはんを食べますように (集英社オレンジ文庫)

  • 作者:山本 瑤
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: 文庫
 

金沢にある家具工房「ときわ」の職人・楡崎の作るテーブルに一目惚れをし、飛び込みで弟子入り修行に励んでいた倉木相馬と純平の「エプロン男子」の前日譚的物語。今回のエピソードで明らかになっていったかつての相馬や純平の境遇でしたけど、当時相馬が付き合っていた恋人・沙希との何とも複雑な関係や、その後のエデン設立にいたるきっかけとなった出来事など、登場人物たちのままならないほろ苦さが残る結末の中で垣間見える優しさに著者さんらしさを感じました。小梅のその後は気になるので、またどこかで登場してくれるといいなと思いました。

青い灯の百物語 (集英社オレンジ文庫)

青い灯の百物語 (集英社オレンジ文庫)

 

昔から続く怪異と関わる真魚寺の家に生まれた千歳。幼い頃に青行灯と契約を交わした彼女が、家業を継いだ兄や彼女を守る青行灯とともに様々な家の怪異にまつわる事件を解決してゆく物語。持ち主の元に帰りたかった本、残されたゲドと小さな子との絆、悩める同級生の決断や、神隠しにあった娘といった悲喜こもごものエピソードを重ねていった先に浮き彫りになる、千歳と青行灯の何とも複雑で特殊な関係があって、育んできた絆を大切に思う(けれどなかなか素直になれない)二人の関係が、もうしばらく続けばいいなと願わずにはいられませんでした。

一乗寺探偵事務所の広辞くんと千世子さん (メゾン文庫)

一乗寺探偵事務所の広辞くんと千世子さん (メゾン文庫)

  • 作者:山咲 黒
  • 出版社/メーカー: 一迅社
  • 発売日: 2019/10/10
  • メディア: 文庫
 

浮気調査に人捜し、その他どんな不思議な依頼でも承り中の一乗寺探偵事務所。所長不在の中でも、依頼解決のために仲良し夫婦が奮闘する日常ミステリ。広辞苑仕込みの知識を披露する広辞くんと、食いしん坊の千世子さんが調査する浮気調査の真相、いなくなった金魚、そして二人の出会いと後輩の父親探しの顛末。時系列やところどころでうん?と思うような何か少し違和感があると思ったら意外な事実が明らかになって、そこからの真相に言われてみればと思い当たりましたけど、強い絆と注意深い観察がもたらした優しく幸せな結末に救われる思いでした。

 

 

トラットリア代官山 (ハルキ文庫)

トラットリア代官山 (ハルキ文庫)

 

亡き父から受け継いだ店を気丈に守り続ける男装の女支配人・大須薫と天涯孤独の年下敏腕シェフ・安東怜が、訪れたお客の問題を解決に導くグルメ小説。結婚して代官山で暮らす友人に抱く独身アラサー女子の複雑な思い、転落事故で記憶を失った父親と愛犬の失踪の真相、若きネイリストが抱いた彼への疑念の顛末といった事件をお客様と一緒に解決する展開で、そんな積み重ねが最後に繋がりましたね。美味しそうな料理との描写も合わせて著者さんらしい物語でした。薫と怜の関係も気になるところですけど、そのあたりも続刊で読めることを期待してます。

科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました (文春文庫)

科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました (文春文庫)

 

自社の非科学的な商品にダメ出しをしたばかりに、最も行きたくなかった商品企画部に島流しになった大手電器メーカーに勤める科学マニア羽嶋賢児。その真っすぐすぎる科学愛が騒動を巻き起こすお仕事小説。苦い経験をさせられたり振り回された過去から、似非科学を否定し空気を読まずに正論を言って衝突する賢児。正しければいいというものでもないという現実と、科学好きを拗らせてしまう要因となった複雑な事情…こんな人が周囲にいたら疲れそうですが、科学研究を巡る厳しい事情も語られていたりで、理想と現実のバランスを取るのは難しいですね。

本と踊れば恋をする (角川文庫)

本と踊れば恋をする (角川文庫)

 

母子家庭で高校がバイト禁止ため、父の遺した蔵書で「セドリ」を始めた十屋龍之介。多摩川沿いの古書店を訪ねた彼が、朝香が作製した贋作本探しを手伝うことになるビブリオ・ミステリ。店主。朝香の依頼で本の探偵・吟子とともに贋作本探しを始めた龍之介が遭遇する、彼の父親がいない理由、ネットで出品された贋作本の真相、謎の句読点の落書き。この手の本にしてはあっさりとした読みやすさがやや意外でしたが、残された本を通じて見えてくる何とも複雑な心情と、抱えているものがありそうな登場人物たちのその後をまた読んでみたいと思いました。

 

ムゲンのi(上)

ムゲンのi(上)

  • 作者:知念 実希人
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/09/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

眠りから醒めない謎の病気・イレスという難病の患者を3人も同時に抱える女医・識名愛衣。霊能力者である祖母の助言により、患者を目醒めさせるために魂の救済〈マブイグミ〉に挑むミステリ。父と一緒に乗った飛行機で視力を失いパイロットの夢を絶たれた娘、無実と信じて無罪を勝ち取った被告が殺人を犯した現実を突き付けられた弁護士を夢幻の中で救ってゆく展開で、珍しいファンタジーっぽい要素がある展開でしたけど、解決するたびに新たな謎が増えてゆく中でこの物語をどうまとめあがるのか、現実世界とのリンクも気になるところではあります。

ムゲンのi(下)

ムゲンのi(下)

  • 作者:知念 実希人
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/09/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

次々とマブイグミを成功させた識名愛衣。次第に患者のトラウマが都内西部で頻発する猟奇殺人と関係があり、しかも23年前の少年Xによる通り魔殺人とも繋がっていたことに気付き難事件の真相究明に立ち向かう下巻。イレスの繋がりが見えてきた中で救急搬送されてきた虐待された形跡のある少年、そして愛衣自身が記憶から消していた現実。繋がってゆく様々な出来事や事実の中で、ようやく置かれた現状を理解した愛衣も辛かったとは思いますが、そんな過去を乗り越えて大切な人たちの温かい想いに見守られていたことを知る結末がとても印象的でした。

スワン

スワン

  • 作者:呉 勝浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/10/31
  • メディア: 単行本
 

巨大ショッピングモール「スワン」で起きた前代未聞のテロ事件。生き残った五人の関係者に招待状が届き、事件の中の一つの死の真相を明らかにするために集まるミステリ。自暴自棄なテロリストによる襲撃という極限状況において、それぞれがどんな行動を取ったのか。同じ被害者でも各々が置かれた立場は違って、思惑を秘めて参加したお茶会で暴かれる当日の行動。その場で最善を取るのは容易ではなくて、終わってからもどうすればという後悔は消えなくて、そんな中でどんなに追い詰められても大切なものを手放さなかったいずみの決意が印象的でした。

目を見て話せない

目を見て話せない

  • 作者:似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/10/31
  • メディア: 単行本
 

入学早々友達づくりに乗り遅れて愕然とする房総大学の新入生・藤村京。教室に残された高級な傘に気づき持ち主を推理するコミュ障探偵ミステリ。傘を忘れた人は誰か、服屋で消えた同級生の謎、カラオケで酒を飲ませた犯人、祭りの中での盗難事件、元喫煙室で起きた冤罪事件の真相。いろいろ考え過ぎて話せなくなる/動けなくなる藤村だからこそ、その推理力には眼を見張るものがあって、少しずつ増えてゆくかけがえのない友人たちを助けるため、遭遇した謎を推理してゆく彼のありようはとても好ましかったです。続巻あるならまた読んでみたいですね。

卒業タイムリミット

卒業タイムリミット

  • 作者:辻堂 ゆめ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

欅台高校の女教師・水口理紗子が突如監禁され、犯人が72時間後に始末するとネット動画で予告。卒業間近の3年生・黒川のもとに犯人から挑戦状が届き、同じ挑戦状が届いた同級生三人と事件解決に挑むタイムリミットミステリ。監禁された水口の人間関係を探るうちに浮上する三人の教師たち。挿入される生徒たちの意味深な告白や散りばめられた伏線が意外なところで繋がっていて、思っていた以上に根が深いと感じた事件の真相はやや意外でしたが、最後の三日間の挑戦を乗り越え一回り成長した彼らが迎えた卒業式にはぐっと来るものがありました。

彼方のゴールド

彼方のゴールド

 

出版社の営業にようやく慣れた頃、野球もサッカーも知らない明日香がスポーツ雑誌「Gold」に配属され、体当たりでぶつかってゆく出版社お仕事小説。昔とは役割も様変わりした野球のリリーフ投手へのインタビューに始まり、子供の頃のスイミングスクールと幼馴染との思い出、スキャンダルと密告の真相、社内カメラマンの思わぬ再会、サッカーコーチと15年前の因縁、そして再会したもうひとりの幼馴染。雑誌編集として分からないなりに一生懸命調べて考え、真摯に相手に向き合おうとする明日香の成長とその結末にはぐっと来るものがありました。

ひとり旅日和

ひとり旅日和

 

人見知りで要領の悪く、紹介されて就職した先でも叱られてばかりの日和。そんな時に社長から気晴らしに旅に出ることを勧められ、旅好きの同僚に後押しされ一人旅を始める物語。初めて日帰りで行った熱海を皮切りに、千葉の水郷佐原、仙台、金沢、福岡と、時には失敗しながら遠くへ足を延ばしてゆく日和の気ままなひとり旅は楽しそうでしたね。それをきっかけにいろいろ変化の兆しが見えはじめて、状況が好転してゆく展開は良かったですけど、意外なところで繋がっていた縁がこれからどうなるのか、彼女の様子をもう少し見守ってみたいと思いました。

二丁目のガンスミス

二丁目のガンスミス

 

一緒に立てこもり事件に巻き込まれて偶然京介が知ってしまった美夜の秘密。一見地味な黒縁眼鏡なのに超人的な射撃能力を持つガンスミスな彼女との同居物語。偽装する絵本店「ひまわり堂」にやってくる訳ありの客たち。結婚式を偽装した救出劇、山の民と火縄銃、VRで再現される悲劇、遺品からなくなった銃。ガンマニアな解説や依頼の中で美夜の複雑な過去も明らかになっていきましたけど、表情乏しい塩対応から始まった二人の関係が、ともにありたい京介の餌付けや秘密特訓といった努力で変化の兆しを見せ始めて、面白くなるのはこれからですかね。

2019年12月に読んだ本 #読書メーターより

2019年12月に読んだ本はだいぶマンガで冊数を稼いだような気はしないでもないですが、最終的にはそれなりの冊数に。シリーズものも新作もなかなかおもしろい本が多かったです。2019年としてもそこそこ読めましたが、いろいろ忙しくなってきたので2020年はもう少し冊数が減りそうですが、読みたい本は減らないのでできる範囲で貪欲に読んでいこうと思います(苦笑)

 

2019年の読書メーター
読んだ本の数:1104冊
読んだページ数:285373ページ
ナイス数:72154ナイス

https://bookmeter.com/users/385946/summary/yearly

 

12月の読書メーター
読んだ本の数:89
読んだページ数:22976
ナイス数:6157


科警研のホームズ 毒殺のシンフォニア (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)科警研のホームズ 毒殺のシンフォニア (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
研修期間が延びた「科警研」の本郷分室の三人の研修生たち。相変わらず事件より大学の研究に夢中な様子の土屋に変化が訪れる第二弾。毒殺のトリックや溶解した白骨死体の謎、一酸化中毒死かどうかの究明、教祖の死の真相など、前回と同様に三人の研修生がそれぞれの得意分野を活かしつつ、協力して事件解決のためにアプローチしていく展開で、確かに土屋のアドバイスもありましたけど、教え子たちの成長を感じられたことがその心境の変化に繋がりましたかね…。研修生としては一区切りのようですけど、また新たな形で彼らの活躍を読んでみたいです。
読了日:12月01日 著者:喜多 喜久
天命の巫女は白雨に煙る 彩蓮景国記 (角川文庫)天命の巫女は白雨に煙る 彩蓮景国記 (角川文庫)感想
禁軍に勤める婚約者の皇甫珪と共に15年に1度行われる結界の張替えに駆り出されていた貞彩蓮。陵に祀られていた遺体が行方不明になったことからその捜索を公子・騎遼より依頼される第二弾。今回は彩蓮が陥れられた騎遼の窮地を救うために動いたり、前王と現王の因縁に繋がる陰謀に巻き込まれてゆく展開で、登場人物の構図がはっきりしたからなのか前巻よりだいぶ読みやすくなりましたかね。なかなか素直になれない彩蓮と、彼女と釣り合う男になれるよう頑張る皇甫珪の恋はなかなか前途多難で、二人で頑張って乗り越えてほしいですね。続巻も期待。
読了日:12月02日 著者:朝田小夏
日経テクノロジー展望2020 世界を変える100の技術日経テクノロジー展望2020 世界を変える100の技術感想
5G/人工知能/AI検査/AR・VR/人間拡張/量子コンピューター/フィンテック/自己治療材料/曲がるディスプレー/木造超高層/生分解性プラスチック/水素発電/アクティブ消音システム/再生医療/人工脾臓/細胞医薬など、今話題になっている最新技術を100紹介した一冊。中には一般人が使うレベルに実用化できるのかなと思う技術もありましたが、使う側の倫理観が問われるようなものは法整備も必要ですね。五輪に向けて東京が暑さ対策にいろいろ整備を進めていた点は、話が出た時にもう少し言及されても良かったのではと感じました。
読了日:12月02日 著者: 
目を見て話せない目を見て話せない感想
入学早々友達づくりに乗り遅れて愕然とする房総大学の新入生・藤村京。教室に残された高級な傘に気づき持ち主を推理するコミュ障探偵ミステリ。傘を忘れた人は誰か、服屋で消えた同級生の謎、カラオケで酒を飲ませた犯人、祭りの中での盗難事件、元喫煙室で起きた冤罪事件の真相。いろいろ考え過ぎて話せなくなる/動けなくなる藤村だからこそ、その推理力には眼を見張るものがあって、少しずつ増えてゆくかけがえのない友人たちを助けるため、遭遇した謎を推理してゆく彼のありようはとても好ましかったです。続巻あるならまた読んでみたいですね。
読了日:12月03日 著者:似鳥 鶏
彼方のゴールド彼方のゴールド感想
出版社の営業にようやく慣れた頃、野球もサッカーも知らない明日香がスポーツ雑誌「Gold」に配属され、体当たりでぶつかってゆく出版社お仕事小説。昔とは役割も様変わりした野球のリリーフ投手へのインタビューに始まり、子供の頃のスイミングスクールと幼馴染との思い出、スキャンダルと密告の真相、社内カメラマンの思わぬ再会、サッカーコーチと15年前の因縁、そして再会したもうひとりの幼馴染。雑誌編集として分からないなりに一生懸命調べて考え、真摯に相手に向き合おうとする明日香の成長とその結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:12月03日 著者:大崎 梢
アンチ整理術アンチ整理術感想
シンプルな文体や洗練されたロジックが物語を彩る作風でも、実は主な活動場所は散らかり放題だという著者が整理術に関して自分の見解を語った一冊。「メモは取らない」「ほとんどのデータは保存しない」という著者は、ものを整理することそのものよりも、自分自身の頭の中を整理することの方が重要だと考えていて、結果に効率が伴わない整理など意味がないと語る著者がそこから仕事論まで展開していましたけど、確かにそうだよなと思える部分もあったりで、整理整頓することの意味/させることの意味を考えるきっかけをもらったような気がしました。
読了日:12月04日 著者:森 博嗣
今日は心のおそうじ日和 素直じゃない小説家と自信がない私 (メディアワークス文庫)今日は心のおそうじ日和 素直じゃない小説家と自信がない私 (メディアワークス文庫)感想
突然終わった結婚生活。バツイチか―と嘆く余裕もないまま娘の美空とともに実家に戻った涼子に、妻と娘を亡くした作家相手の住み込み家政婦の仕事が舞い込む再生の物語。嘆くばかりだった涼子が実家で直面する現実はなかなか厳しいなと感じましたけど、家族を亡くてから作品を書けなくなっていた山丘と出会い、彼の家で家事に取り組むようになり、元夫にビシッと言えるまで自信を取り戻してゆく展開はなかなか良かったです。山丘の存在も大きかったですけど、娘の美空や要所でフォローする山丘の元に通う編集・川谷もいい感じに効いていましたね。
読了日:12月04日 著者:成田 名璃子
ウォルテニア戦記XIV (HJ NOVELS)ウォルテニア戦記XIV (HJ NOVELS)感想
御子柴亮真の作戦で各地から流れ込んできた難民との衝突により、混乱のるつぼと化した城塞都市イピロス。亮真は自ら乗り込みザルツベルグ伯爵と決着をつける第十四弾。ここまで来るのにだいぶ時間がかかりましたけど、ようやく北部動乱編も決着ですか。無能な貴族というイメージもあったザルツベルグ伯爵はかなりの実力者で、そんな彼を失ってから王国として亮真の排除に動き始めるとか遅きに失するというか、無謀な予感しかしないですね…一方で実力者であることが明らかになってゆく浩一郎や、暗躍する須藤の動向も気になるところではあります。
読了日:12月04日 著者:保利亮太
ひとり旅日和ひとり旅日和感想
人見知りで要領の悪く、紹介されて就職した先でも叱られてばかりの日和。そんな時に社長から気晴らしに旅に出ることを勧められ、旅好きの同僚に後押しされ一人旅を始める物語。初めて日帰りで行った熱海を皮切りに、千葉の水郷佐原、仙台、金沢、福岡と、時には失敗しながら遠くへ足を延ばしてゆく日和の気ままなひとり旅は楽しそうでしたね。それをきっかけにいろいろ変化の兆しが見えはじめて、状況が好転してゆく展開は良かったですけど、意外なところで繋がっていた縁がこれからどうなるのか、彼女の様子をもう少し見守ってみたいと思いました。
読了日:12月05日 著者:秋川 滝美
スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 子ども食堂と家族のおみそ汁 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 子ども食堂と家族のおみそ汁 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
スープ屋「しずく」の評判を聞きつけ相談にやってきた青年・省吾。麻野のスープと頭脳に惚れ込んだ彼が、協力している子ども食堂への協力を依頼する第五弾。子ども食堂「はぐみ」にやってきた麻野と理恵が遭遇した事件と、事件を解決する麻野が指摘した省吾の真の目的。まさかのそこに繋がってゆくのかという意外な展開でしたけど、今回の子どもが絡む難しい問題を解決してゆく中で見えてきたひとつの事実は、麻野が過去を乗り越えるために必要な過程だったのかもしれないですね。もどかしい想いを抱く理恵さんがいつか報われる日が来てほしいです。
読了日:12月05日 著者:友井 羊
([ほ]4-5)活版印刷三日月堂 空色の冊子 (ポプラ文庫)([ほ]4-5)活版印刷三日月堂 空色の冊子 (ポプラ文庫)感想
本編では描かれなかった三日月堂と関わった人たちの過去が詰まった番外編。「我らの西部劇」に込められた片山さんたちの想い、弓子の父・修平と母・カナコさんのエピソード、弓子がおばあちゃんと一緒に作ったレターセット、カナコさんの親友・真子さんのエピソード、祖父が三日月堂を閉めるときの話、震災に遭遇して三日月堂でおじいちゃんと一緒に作った空色の冊子、川越に引っ越すエピソード。完結からもう一冊出るとは思わなかったですが、もう一度あの世界を堪能できて良かったとしみじみと感じました。来月もう一冊あるようなので楽しみです。
読了日:12月06日 著者:ほしお さなえ
魔女の花嫁 seasons beside a witch (LINE文庫エッジ)魔女の花嫁 seasons beside a witch (LINE文庫エッジ)感想
不治の病に罹った少年・桑折冬至が、迷い込んだはずれの森に住む変わり者の魔女・ミーズに出会い、願いを叶える代わりにその弟子となる物語。ハルと名付けられた死にたくないと願うシニカルな少年と、陽気で構いたがりでどこか子供っぽい一面も見せる魔女のミーズ。そんな二人の微笑ましいやりとりは良かったですけど時折ハルが知らないミーズの過去があって。巻き込まれた事件を通して明かされるミーズの真意がまた衝撃的でしたけど、二人で過ごした日々もまた偽りではなかったんですよね。彼らがどうなってゆくのかその後の話を読んでみたいです。
読了日:12月07日 著者:空伏空人
記憶屋0 (角川ホラー文庫)記憶屋0 (角川ホラー文庫)感想
つらい記憶を消してくれる都市伝説の怪人「記憶屋」。それに頼ることを選んだ彼らはどんな想いを胸に抱えていたのか前日譚的スピンオフ作品集。過去の交通事故の記憶に苦しむ依頼人・美月と出会った弁護士の高原が病院で受けた宣告。待ち続けた夫の真相を知り憔悴してしまった叔母を救いたいと願う亜沙子。そして遼一をデートに誘った真希の結末と、記憶屋のエピソードを追加しつつ、本編の前日譚的繋がりを描いていて、でもちょっと最後のはええっ?ちょっとだけ待ってと思ってしまいましたが、それによって二人がどうなったのか気になりますね。
読了日:12月07日 著者:織守きょうや
異世界温泉郷 あやかし湯屋の恋ごよみ (集英社オレンジ文庫)異世界温泉郷 あやかし湯屋の恋ごよみ (集英社オレンジ文庫)感想
京之介との婚姻関係も継続中のまま下働きを続ける凛子の元に、死んだ恋人の子を身ごもる人間の娘・七緒が預けられ、行方知れずだった京之介の弟の登場により、湯屋高天原に存続の危機が訪れる第三弾。京之介の過去が明かされてゆく中で、彼の弟・天月も絡む存続の危機。なかなか素直になれないなりに湯屋での暮らしに愛着持ち始めてきた凛子が微笑ましかったですけど、先代から続く因縁の相手・入道との対決もあって諸々の過去の精算も済んだ感じですかね。ようやく変化の兆しが見え始めて面白くなりそうな二人の今後をもう少し読んでみたいです。
読了日:12月08日 著者:高山 ちあき
終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#08 (角川スニーカー文庫)終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#08 (角川スニーカー文庫)感想
パニバルたちが十一番目の獣を討ち、歓喜の騒乱にあった38番島。しかし水面下に隠されていた最後の危機を前に、護翼軍、貴翼帝国、そしてオデットが相対する第八弾。オデットが提示する滅びを避けられる手順と、幽遠から目覚めた入り混じっている青年の想い。なんかずいぶん大変なことになっている状況ですけど、相変わらずな彼と少女たちとのやりとりなどは印象的で、みんなの頑張りもあってこれが最初の方の最後とお話としては繋がったんですかね。まだまだ何かありそうですけど、ここからどう話をまとめ上げてゆくのか続巻に期待ということで。
読了日:12月09日 著者:枯野 瑛
異世界誕生 2007 (講談社ラノベ文庫)異世界誕生 2007 (講談社ラノベ文庫)感想
2007年夏。中学一年の嶋田チカは、幼馴染の藤岡キョウヤから頼まれ、長い入院生活から帰ってきた妹のハルナに作った話を聞かせる第二弾。ハルナを取り巻く残酷な現実と、巻き込まれてゆくチカがハルナのために作る物語、そして現実を直視できないニートの作家志望の青年・西藤リク。チカ自身もいろいろ難しい状況に追い込まれてゆく中、戸惑いながらもハルナと向き合おうとする彼女が知った新事実が混乱に拍車を掛けましたけど、それでも周囲の協力も得つつ頑張ったことでハルナも少しは報われたのかな…今回もまた時代感が懐かしかったですね。
読了日:12月09日 著者:伊藤 ヒロ
俺を好きなのはお前だけかよ(13) (電撃文庫)俺を好きなのはお前だけかよ(13) (電撃文庫)感想
とある冬の日、ジョーロ、ホース、フーちゃんを呼び出した、サンちゃん。そこから始める恋愛相談とジョーロとヒロインたちのエピソードが語られる第十三弾。男どもの恋愛相談に対して、参考に語られるジョーロとサザンカ、パンジー、ひまわり、コスモスとのそれぞれのエピソード。彼らの恋愛模様やジョーロとともに過ごした彼女たちの気になる素振りもあったのに、ジョーロの先輩を狙うお姉さんのジャスミンとかドジっ子ぶり大爆発のチェリーがインパクトありすぎて持っていかれた感w でもジョーロもついに一人を選んだんですね…誰だか気になる。
読了日:12月10日 著者:駱駝
娘じゃなくて私が好きなの!? (電撃文庫)娘じゃなくて私が好きなの!? (電撃文庫)感想
就職したばかりなのに両親を亡くした幼馴染を引き取って育ててくれた綾子さん。そこから十年...幼馴染同士の恋を応援していた彼女が、大学生になった男の子・左沢巧にまさかの告白をされる恋愛ラブコメ。思ってもみなかった告白に動揺する綾子さんが可愛くて、障害だったはずの諸々もあっさりクリアされて外堀が埋まってゆく展開には苦笑いでしたが、何より十年間頑張ってきた一途な巧の想いが眩しかったですね。あとは自分次第という急展開についていけず、迷走したり暴走してしまう微笑ましい彼女と二人の恋を生温かく見守りたいと思いました。
読了日:12月10日 著者:望 公太
吸血鬼に天国はない(2) (電撃文庫)吸血鬼に天国はない(2) (電撃文庫)感想
吸血鬼ルーミーを因縁と陰謀の中から救い出し、日常へと回帰したシーモア。ぎこちなくも幸福な日々を送っていた二人がマフィアに追われていた双子のバーズアイ姉妹と出会う第二弾。姉妹とともに過ごすことで浮き彫りになってゆく二人の関係の危うさ、そしてシーモアと約束を交わしたことで直面するルーミーの葛藤と飢えの限界。相変わらず無自覚で言葉足らずで不器用な二人の関係がもどかしいですが、再び二人が交わした約束と新たな関係によって垣間見えた可能性と、今後に向けて張られた伏線がどう絡んでくるのか、これからの展開が楽しみです。
読了日:12月10日 著者:周藤 蓮
終わった恋、はじめました (講談社タイガ)終わった恋、はじめました (講談社タイガ)感想
意地を通して退職した拓斗にかかってきた妹・莉音からの一年ぶりの電話。妹と一緒に心残りだった高校時代の恋人・小夜の足跡を辿る旅に出る物語。妹に指摘されて未練が残る過去の恋に決着をつけることを決意した拓斗。遭遇する謎を気が利く賢い妹にフォローされつつ解きながら、小夜に繋がる手がかりを追ってゆく展開でしたけど、それは一方で妹もまた思い悩む自身の過去に向き合う過程に繋がっていて、これまで積み重ねてきた状況からつい小夜のその後を想像してしまいましたが、そんな結末をいい意味で見事裏切ってくれたとても素敵な物語でした。
読了日:12月11日 著者:小川 晴央
タスキメシ (小学館文庫)タスキメシ (小学館文庫)感想
長距離選手として将来を期待されながら大怪我を負った高校三年生の眞家早馬。そんな彼が料理研究部に入り浸るようになる中、それぞれの熱い思いが交錯する駅伝大会が始まる青春小説。料理研究部の井坂都との出会いと、複雑な想いを抱える早馬が新たに見出した夢。そんな彼を諦められない同級生の助川や弟・春馬。都への想いも絡めた早馬の真意はどこにあるのか、彼に抱く周囲の複雑な想いが何とももどかしかったですが、仲間たちが突きつける熱い想いが早馬の心を強く揺さぶる結末はなかなか良かったですね。都との関係はどうなったのか気になる…。
読了日:12月12日 著者:額賀 澪
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeフレイヤ (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeフレイヤ (GA文庫)感想
自らの伴侶を求める美神フレイヤ。頭を抱える眷族達を他所に、迷宮都市の外へ『運命探し』の一人旅へ出てしまった彼女が一人の少女と出会う外伝第二弾。最初はフレイヤの気まぐれに付き合う眷属たちも大変だなと苦笑いしながら読み始めましたけど、そんな一見気まぐれに見える彼女の判断には違った一面も垣間見えますね。ニリツさんの印象的なイラストがカッコいい八眷属との邂逅やその関係、豊饒の女主人・ミアの過去、娘と呼ぶシルとの出会いといった印象的なエピソードも書かれていて、かのファミリアに属する人々の印象がまた少し変わりました。
読了日:12月12日 著者:大森 藤ノ
タスキメシ 箱根タスキメシ 箱根感想
大学卒業後、管理栄養士として病院で働いていた早馬が、紫峰大学駅伝部のコーチアシスタント兼栄養管理として部員たちと箱根駅伝初出場を目指す第二弾。大学で栄養士を目指しながら箱根を目指した早馬が、数々の挫折を経験した者として部員たちに寄り添い、食の大切さや目標達成の楽しさを伝えようと奮闘する展開で、助川に遠慮してしまう早馬には正直イラッとしましたし、箱根駅伝本戦もまたいい思い出になるばかりではないんだなとも痛感しましたが、部員たちやかつての仲間たちを励まして全力でサポートする早馬の姿は心に響くものがありました。
読了日:12月13日 著者:額賀 澪
地名崩壊 (角川新書)地名崩壊 (角川新書)感想
ブランド地名の拡大、忌避される地名の消滅、市町村合併でのひらがな化、カタカナ地名の急増。安易な地名変更の成立を憂いてその変貌を追い、あるべき姿を考える一冊。地名の成り立ちと由来から始まって、土地の特徴や地形、道に関する地名の説明、駅名と地名の関係やJRや私鉄の駅命名意識の違い、キラキラ地名や土地の安全性で忌避される地名、震災や合併といった地名を大きく変えた経緯などが説明されていて、もう少し旧地名を残しても良かったのではと感じる地域は確かにあるので、旧地名を復活させようという動きには期待したいと思いました。
読了日:12月14日 著者:今尾 恵介
本と踊れば恋をする (角川文庫)本と踊れば恋をする (角川文庫)感想
母子家庭で高校がバイト禁止ため、父の遺した蔵書で「セドリ」を始めた十屋龍之介。多摩川沿いの古書店を訪ねた彼が、朝香が作製した贋作本探しを手伝うことになるビブリオ・ミステリ。店主。朝香の依頼で本の探偵・吟子とともに贋作本探しを始めた龍之介が遭遇する、彼の父親がいない理由、ネットで出品された贋作本の真相、謎の句読点の落書き。この手の本にしてはあっさりとした読みやすさがやや意外でしたが、残された本を通じて見えてくる何とも複雑な心情と、抱えているものがありそうな登場人物たちのその後をまた読んでみたいと思いました。
読了日:12月14日 著者:石川 智健
お迎えに上がりました。 4 国土交通省国土政策局幽冥推進課 (集英社文庫)お迎えに上がりました。 4 国土交通省国土政策局幽冥推進課 (集英社文庫)感想
自分以外は全員妖怪、という環境のなか、臨時採用職員として日々奮闘中の夕霞。バイパス候補地に現れる地縛霊の説得に赴くことになる第四弾。東名バイパス工事予定地にある所有者不明土地や、青木ヶ原樹海付近でカーナビから聞こえる不気味な声、三年坂の呪いにまつわる真相といった、頑張りが報われたような展開もあれば、何とも複雑な気持ちが残る結末もありましたけど、辻神課長がわざわざ国土交通省まで出向いていたのはそういう理由でしたか…夕霞は頑張っていると思いますけど、幽冥推進課がどうなってしまうのか気になるところではあります。
読了日:12月15日 著者:竹林 七草
青い灯の百物語 (集英社オレンジ文庫)青い灯の百物語 (集英社オレンジ文庫)感想
昔から続く怪異と関わる真魚寺の家に生まれた千歳。幼い頃に青行灯と契約を交わした彼女が、家業を継いだ兄や彼女を守る青行灯とともに様々な家の怪異にまつわる事件を解決してゆく物語。持ち主の元に帰りたかった本、残されたゲドと小さな子との絆、悩める同級生の決断や、神隠しにあった娘といった悲喜こもごものエピソードを重ねていった先に浮き彫りになる、千歳と青行灯の何とも複雑で特殊な関係があって、育んできた絆を大切に思う(けれどなかなか素直になれない)二人の関係が、もうしばらく続けばいいなと願わずにはいられませんでした。
読了日:12月16日 著者:椎名 鳴葉
二丁目のガンスミス二丁目のガンスミス感想
一緒に立てこもり事件に巻き込まれて偶然京介が知ってしまった美夜の秘密。一見地味な黒縁眼鏡なのに超人的な射撃能力を持つガンスミスな彼女との同居物語。偽装する絵本店「ひまわり堂」にやってくる訳ありの客たち。結婚式を偽装した救出劇、山の民と火縄銃、VRで再現される悲劇、遺品からなくなった銃。ガンマニアな解説や依頼の中で美夜の複雑な過去も明らかになっていきましたけど、表情乏しい塩対応から始まった二人の関係が、ともにありたい京介の餌付けや秘密特訓といった努力で変化の兆しを見せ始めて、面白くなるのはこれからですかね。
読了日:12月16日 著者:柊サナカ
地獄に祈れ。天に堕ちろ。 (電撃文庫)地獄に祈れ。天に堕ちろ。 (電撃文庫)感想
世界規模の幽界現象と呼ばれる大災厄によって、死者が現世に戻ってきてしまうようになった末世・東凶。聖職者が大嫌いな亡者の死神ミソギと、死者が嫌いな聖職者アッシュが縁あって手を組み立ち向かうダークヒーローアクション。相性最悪な二人の邂逅と、そんな彼らに振り回されるシスターのフィリス。魅力的なキャラたちそれぞれの複雑な事情を絡めながら、東凶中を巻き込んだ麻薬騒動から始まる世界崩壊の危機を吹っ切れたシスコン二人が大暴れして解決に導く展開は痛快でした。いい感じにオチもついた結末でしたけど続巻に期待できそうですね。
読了日:12月17日 著者:九岡 望
塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (ガガガ文庫)塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (ガガガ文庫)感想
高嶺の花で誰に対しても塩対応な佐藤こはると、誰に対しても優しい押尾颯太。初々しくてもどかしい高校生二人の初恋物語。告白されても話しかけられても実はコミュ障で塩対応のこはる。そんな不器用な彼女が想い人に近づきたい一心で頑張って颯太だけに見せる様々な可愛い表情があって、彼女をフォローしようと頑張る颯太もいちいちカッコ良くて、そんなじれじれ初恋両片想いな二人の破壊力がスゴイですね。勘違いからすれ違いかけたり大きな壁が立ちはだかったりしても、勇気を出して前に一歩踏み出した二人の今後がとても楽しみな新シリーズです。
読了日:12月17日 著者:猿渡 かざみ
落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)17 (GA文庫)落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)17 (GA文庫)感想
刀華の魂に輝きを見出した天童は九州全土を巻き込む災害級の伐刀絶技を発動。一方、首都東京では海の向こうから迫る新たな脅威を察知。これに対応すべく騎士連盟は戦力の総動員を開始する第十七弾。今回は主人公不在で同時に起きた災厄に残った戦力で挑む苦しい展開で、一輝たちがどこまでも強くなっていく中、その限界を突破するということは誰にでもできるわけじゃないんだな…という当たり前のことを思い出しましたけど、それでも成長した仲間たちが力を合わせて難敵を打ち破ってみせる展開は、ベタではあるんですがそれがまた良かったですね。
読了日:12月17日 著者:海空りく
君が今夜もごはんを食べますように (集英社オレンジ文庫)君が今夜もごはんを食べますように (集英社オレンジ文庫)感想
金沢にある家具工房「ときわ」の職人・楡崎の作るテーブルに一目惚れをし、飛び込みで弟子入り修行に励んでいた倉木相馬と純平の「エプロン男子」の前日譚的物語。今回のエピソードで明らかになっていったかつての相馬や純平の境遇でしたけど、当時相馬が付き合っていた恋人・沙希との何とも複雑な関係や、その後のエデン設立にいたるきっかけとなった出来事など、登場人物たちのままならないほろ苦さが残る結末の中で垣間見える優しさに著者さんらしさを感じました。小梅のその後は気になるので、またどこかで登場してくれるといいなと思いました。
読了日:12月18日 著者:山本 瑤
異人館画廊 透明な絵と堕天使の誘惑 (集英社オレンジ文庫)異人館画廊 透明な絵と堕天使の誘惑 (集英社オレンジ文庫)感想
千景に脅迫めいた手紙が届き、早速調査に乗り出すキューブのメンバーたち。プラチナミューズの矢神が関わる可能性も浮上し、謎は更に深まる第六弾。消えた図像術の研究者、有名な心霊スポット「切山荘」、四つの絵など、ひとつひとつのピースが千景の過去に繋がってゆく中で、因縁の過去に繋がる新たな人物の登場を契機に、記憶に向き合おうとする彼女とそれを案じる透磨。過去を思い出すたびに二人の距離感にどうなるのがハラハラしながら読んでいましたけど、千景の決意と透磨の変わらない想いが紡いでいく今後の関係が楽しみになってきましたね。
読了日:12月18日 著者:谷 瑞恵
リーリエ国騎士団とシンデレラの弓音 ― 綺羅星の覚悟 ― (集英社オレンジ文庫)リーリエ国騎士団とシンデレラの弓音 ― 綺羅星の覚悟 ― (集英社オレンジ文庫)感想
弓の才能を見出され、リーリエ国騎士団の団員となったニナ。団が年に一度の祭典・西方地域杯へ参加することになり、そこで怪我の後遺症に苦しみながらも戦い続けようとする女騎士と出会う第二弾。秘密を抱える女騎士・フォルビナとの出会いと。初戦で露呈したリーリエ国騎士団内でのリーリエを巡る問題。ニナ相手だとリヒトとの仲もなかなか進展しないだろうな…と苦笑いしながら読んでましたけど、次戦ではそんなリーリエがこのままではいけないと覚悟を決める場面もあったりで、二人で成長する彼女たちのこれからが楽しみになるシリーズですね。
読了日:12月19日 著者:瑚池 ことり,六七質
ホテルクラシカル猫番館 横浜山手のパン職人 2 (集英社オレンジ文庫)ホテルクラシカル猫番館 横浜山手のパン職人 2 (集英社オレンジ文庫)感想
パン職人の紗良が横浜山手のホテル・猫番館で勤めて早3か月。長逗留して新作執筆中の人気小説家がパンは食べないと言い出す第二弾。今回は人気小説家が抱える苦悩、ベルスタッフの小夏が就職したきっかけ、特別ディナーをリクエストした女性実業家と誠の過去、ウェディングパーティーのサプライズ演出といったエピソードに絡めて、猫番館で働く人たちの新たな一面が垣間見える展開で、彼ら彼女らの過去の回想がメインということもあって全体的には穏やかな展開で、要と紗良あたりの関係もこれをきっかけに少し進展を期待したいところではあります。
読了日:12月19日 著者:小湊 悠貴
谷中びんづめカフェ竹善 2 春と桜のエトセトラ (集英社オレンジ文庫)谷中びんづめカフェ竹善 2 春と桜のエトセトラ (集英社オレンジ文庫)感想
営む英国人セドリックと知り合い、彼の義理の息子・武流の家庭教師として店に出入りする女子大生の紬。ある日商店街で観光客に人気の猫の置物が盗まれ、同じ頃、武流の飼い猫がいなくなる第二弾。猫探しから始まった外国人の奥様にごちそうになった甘い麦茶探し、紬の風邪から始まった意外な結末、呼び出されたセドリックが密かに会っていた人物の正体。紬とセドリックの関係って実際どうなんですかね…と思いながら読んでいたらここで思わぬ展開が待っていて正直ビックリしましたよ(苦笑)なかなか面白い状況になってきて今後に期待ということで。
読了日:12月19日 著者:竹岡 葉月,勝田 文
最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ 温泉旅行編:繋いだ手だけがここにある (ダッシュエックス文庫)最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ 温泉旅行編:繋いだ手だけがここにある (ダッシュエックス文庫)感想
孤高のゲーマー・古霧坂里央。学校一の完璧美少女、真理峰桜。現実世界では何の関わりもない2人が、VRゲーム「MEO」で最強コンビとして名を馳せる物語。妹の同級生以外は何の接点もない、学校では違う意味で有名人の2人。そんな2人がVRMMOのゲームの中では同棲して、お化け屋敷気分の廃墟探索や混浴イベント、他プレイヤーと協力して超大型ボスと阿吽の呼吸で戦いながら周囲も呆れるいちゃいちゃっぷりで、だけどこの二人付き合ってないんですよ…?(苦笑)こういう関係は邪魔者が出現してこそさらに燃え上がりそうなので次巻に期待。
読了日:12月19日 著者:紙城 境介,きただ りょうま
1LDK、そして2JK。 ~26歳サラリーマン、女子高生二人と同居始めました~ (ファンタジア文庫)1LDK、そして2JK。 ~26歳サラリーマン、女子高生二人と同居始めました~ (ファンタジア文庫)感想
父の頼みで疎遠だったギャルJKの従妹・奏音を預かることになった独身サラリーマン・駒村。そんな帰りに痴漢から助けた家出JK・ひまりも転がり込んでくる同居物語。母親が失踪して行き場をなくした奏音と、夢を諦めたくない一心で家出したひまり。タイプの違う二人にもそれぞれ抱く複雑な想いがあって、それを戸惑いながらも同居を始めた駒村が真摯に支えたいと思う姿がいいですよね。そんな状況で現れた駒村の幼馴染という強力な伏兵出現は物語の重要なポイントになりそうですけど、ここからどう展開していくのか今後が楽しみなシリーズです。
読了日:12月20日 著者:福山 陽士
帝剣のパラベラム (ダッシュエックス文庫)帝剣のパラベラム (ダッシュエックス文庫)感想
己の力で名声を得るため、仲間たちとともに遊歴の騎士として旅をする皇帝の妾腹の子・アルヴェールが、帝国を滅ぼそうと企む陰謀に巻き込まれてゆくファンタジー。神敵には大鎌を振るい隙あらば夜這いをかけてくるシルファ、大食いで名言好きなセイランと旅を続けていたアルが抱く皇帝への複雑な想い。けれど巨大な魔物「地底樹」出現を放っておけない彼が、シルファも絡んだ因縁のエルフとその魔物に挑む展開は熱かったですし、その過程で挟まれるアルの過去エピソードが、仲間に慕われる彼のこれまでの成長を物語っていてなかなか効いていました。
読了日:12月20日 著者:川口 士,kakao
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦8 (ファンタジア文庫)キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦8 (ファンタジア文庫)感想
魔女狩りの夜で甚大な被害を受けた皇庁では女王が帝国軍襲撃事件の責任を問われ、女王の負傷により女王代理となったアリスは、黒幕を暴く鍵となるシスベルの救出をイスカたちに託す第八弾。黒幕の思惑通りな展開を覆すべく、ヒュドラ家の星霊工学研究所に潜入するイスカたち。新登場の王女・ミゼルヒビィは確かに強敵でしたが、それよりもミラを傷つけられて怒るサリンジャーや、イスカが絡むとポンコツになるお疲れ気味なアリスの方がインパクトありました(仕方ない)。いつの間にか帝国潜入任務で星庁の命運を託されてた燐…責任重大だな(苦笑)
読了日:12月20日 著者:細音 啓
アサシンズプライドSecret Garden2 (ファンタジア文庫)アサシンズプライドSecret Garden2 (ファンタジア文庫)感想
マナを持つ令嬢たちの研鑽を見守る暗殺教師のクーファ。レッスン以外の日々も騒々しい彼の教師生活が描かれる外伝第二弾。メリダの成長具合を確かめるため、絵のモデルと称して服を脱がせたり、ハプニングで下着姿のエリーゼと修行することになったり、サラシャとミュールのメイド力を審査したり、そんなつもりはなくともちょっと残念な暗殺教師になってて苦笑いでしたが、マディアとの泥棒探しエピや、公爵令嬢たちと力を合わせて開催したパーティーなど、恥じらいながらもクーファたちを慕う令嬢たちが可愛くて、らしいエピソードを楽しめました。
読了日:12月20日 著者:天城ケイ
北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし ~契約夫婦がめぐる四季~ (PASH!ブックス)北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし ~契約夫婦がめぐる四季~ (PASH!ブックス)感想
極寒の地を治める陽気な貧乏貴族・リツハルドと男顔負けな元軍人・ジークリンデ。とある夜会で出会いリツハルドの一目惚れから始まった、1年間の「お試し婚」での四季の暮らしを綴る書き下ろし短編集。コミック読者への配慮か、出会いのエピソードなどを補完しつつ、リンゴのコンポートにパンケーキ作りをしたり、薬草採取に出かけたり、村の子供たちと復活祭を楽しんだり、領主としての責任を果たしたりと、一緒にのびのびと生活した四季を過ごすことで、不器用な二人がお互いのことを理解し、距離感を縮めてゆくのも納得できる素敵な物語でした。
読了日:12月21日 著者:江本 マシメサ
一乗寺探偵事務所の広辞くんと千世子さん (メゾン文庫)一乗寺探偵事務所の広辞くんと千世子さん (メゾン文庫)感想
浮気調査に人捜し、その他どんな不思議な依頼でも承り中の一乗寺探偵事務所。所長不在の中でも、依頼解決のために仲良し夫婦が奮闘する日常ミステリ。広辞苑仕込みの知識を披露する広辞くんと、食いしん坊の千世子さんが調査する浮気調査の真相、いなくなった金魚、そして二人の出会いと後輩の父親探しの顛末。時系列やところどころでうん?と思うような何か少し違和感があると思ったら意外な事実が明らかになって、そこからの真相に言われてみればと思い当たりましたけど、強い絆と注意深い観察がもたらした優しく幸せな結末に救われる思いでした。
読了日:12月22日 著者:山咲 黒
破滅の刑死者2 内閣情報調査室CIRO-S第四班 (メディアワークス文庫)破滅の刑死者2 内閣情報調査室CIRO-S第四班 (メディアワークス文庫)感想
国家機密ファイルを巡る命懸けの捜査線から無事生還し、その功績から揃って捜査官として仮採用された雙ヶ岡珠子と戻橋トウヤ。次の任務として彼らがある大学の「連続不審死事件」の潜入捜査に挑む第二弾。彼らに提示された事件は不可解な死因、物証もゼロで、接点のない三人の被害者という謎に潜む能力者の存在。二人に接触してくるいかにも怪しい教授と謎の少女がいて、ややこしい展開のわりにはギリギリだった勝負の中から見えてきた黒幕は分かりやすかったですけど、一方でいいところで顔を出したまゆみさんも今後焦点になってきそうですね…。
読了日:12月23日 著者:吹井 賢
訳ありブランドで働いています。 ~王様が仕立てる特別な一着~ (メディアワークス文庫)訳ありブランドで働いています。 ~王様が仕立てる特別な一着~ (メディアワークス文庫)感想
社長が失踪し会社は倒産、アパートは火事で焼失。全てを失ったカナが、紹介されたシェアハウスの大家・前園に巻き込まれ洋服知識ゼロなのに個人経営の小さなアパレルブランドで働きはじめる物語。騙して実質タダ働きさせるとかブラックだなあと苦笑いしましたが、カナを長年無自覚に貶める存在だった男友達と決別できたのは良かったですし、コスパキング前園や引きこもりデザイナー・アリス、ワケありモデルのミキなどと関わるうちに、自ら積極的に関わるようになったり、互いにいい影響を及ぼすようになってゆく姿にはぐっと来るものがありました。
読了日:12月23日 著者:神戸遥真
トラットリア代官山 (ハルキ文庫)トラットリア代官山 (ハルキ文庫)感想
亡き父から受け継いだ店を気丈に守り続ける男装の女支配人・大須薫と天涯孤独の年下敏腕シェフ・安東怜が、訪れたお客の問題を解決に導くグルメ小説。結婚して代官山で暮らす友人に抱く独身アラサー女子の複雑な思い、転落事故で記憶を失った父親と愛犬の失踪の真相、若きネイリストが抱いた彼への疑念の顛末といった事件をお客様と一緒に解決する展開で、そんな積み重ねが最後に繋がりましたね。美味しそうな料理との描写も合わせて著者さんらしい物語でした。薫と怜の関係も気になるところですけど、そのあたりも続刊で読めることを期待してます。
読了日:12月24日 著者:斎藤千輪
ぼくたちのリメイク7 ものをつくるということ (MF文庫J)ぼくたちのリメイク7 ものをつくるということ (MF文庫J)感想
九路田組で驚異的な成長を遂げていくシノアキ。最後のピースを取り戻して盤石の体制になったチームきたやま△も対決に向けて一丸となり制作を進めていく第七弾。圧倒的なクオリティを誇る九路田組の作品に評価で超える為、橋場が打ち出した秘策。学園祭では意外な存在感を発揮した河瀬川が微笑ましかったですが、力量が飛び抜けているシノアキたち強敵相手の決着は、全く違う方向からのアプローチで面白かったですね。悩める仲間たちを見事未来へと導いた橋場の本番はこれからで、もっとたくさんの人に読んでもらいたい期待感のあるシリーズです。
読了日:12月24日 著者:木緒 なち
君死にたもう流星群5 (MF文庫J)君死にたもう流星群5 (MF文庫J)感想
高校時代にタイムリープを果たし、多くの友人たちの『夢』を手助けしたがゆえに、自分自身に夢がないことに劣等感を抱くようになっていく大地。謎の後輩『犂紫苑』が現れて意外な正体を明かす第五弾。星乃が宇宙飛行士という夢に着々と近づく中、それを素直に喜べない大地に起きた異変。タイムリープの背景が明らかになってゆく中で、目をそらしていた根本的な問題が顕在化する絶望的な展開で、それでもこれまでの積み重ねがあったからこそ挽回の機会もあって、だいぶ変わってきた大地の姿にはぐっと来るものがありましたけど、最後の展開は...。
読了日:12月24日 著者:松山 剛
朝比奈若葉と○○な彼氏2 (MF文庫J)朝比奈若葉と○○な彼氏2 (MF文庫J)感想
「罰ゲーム」で告白し晴斗の優しさにだんだんと心惹かれていく若葉。けれどその嘘が晴斗の親友・備前亮一にバレてしまい絶望する第二弾。晴斗の優しさに希望を見出しかけていたからこその、嘘がバレてしまう恐怖を突きつけられた若葉の絶望。そりゃ動揺するのも仕方ないよな…と思いながら読んでましたけど、若葉の嘘を密かに知ってしまってからの晴斗の周囲を巻き込んでの獅子奮迅ぶりが凄まじくて、見事若葉を救ってハッピーエンドに導いた展開はぐっと来るものがありました。晴斗の友人たちの話も面白そうだし機会があるなら読んでみたいですね。
読了日:12月25日 著者:間 孝史
朝比奈うさぎは報・恋・想で推理する (新潮文庫nex)朝比奈うさぎは報・恋・想で推理する (新潮文庫nex)感想
超絶可愛い女子大生ストーカー朝比奈うさぎの重すぎる愛に悩まされ続ける探偵の迅人。そんな二人の前に№1キャバ嬢になっていた迅人の元同級生で初恋の相手・揚羽沢が現れる第二弾。キャバクラ、バッティングセンター、高校時代の林間学校、ビラ配り時など、相変わらず殺人事件に巻き込まれ体質な迅人は昔からそうだったんだなと苦笑いでしたけど、恋のライバルでもあるノリのいい揚羽沢が加わったことで賑やかになり、なぜか真相にたどり着いてしまううさぎの妄想推理を絡めたカオスっぷりがなかなか面白かったので、揚羽沢のレギュラー化に期待。
読了日:12月26日 著者:柾木 政宗
天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)感想
大好きなフリーゲーム制作者Aに会うため、桜山学園ゲーム制作部に入った水谷湊。しかしAと思しき部長の菖蒲は不登校で、彼女が学校に来るよう部員たちから託される青春小説。仲が良さげなゲーム部員が抱える苦い過去、そして湊のもとに送られてきたひとつのノベルゲームが示唆する過去。部員それぞれの事情が明らかになってゆくたびに彼らの印象も変化して、構図が二転三転した末の決着は新たな違和感に繋がって、確執が残る母とも向き合いつつバットエンドに隠されていた真相を見出して、大切な笑顔を取り戻してみせた結末がとても印象的でした。
読了日:12月26日 著者:三田 千恵
蟲愛づる姫君の寵愛 (キャラブン!小学館文庫)蟲愛づる姫君の寵愛 (キャラブン!小学館文庫)感想
夫の意向などものともしない新婚生活を送る玲琳。蟲師の彼女から世継ぎの王子や姫が生まれることを危ぶんだ姜大臣が鍠牙に側室を進める第二弾。相変わらずな二人には苦笑いでしたけど、何とも複雑な背景をお持ちの姜大臣が送り込んだ側室は元婚約者の妹…。どうにも捻くれた二人の関係だからこそ、ふとしたきっかけでボタンの掛け違いが起こるわけですけど、しかし鍠牙の母・夕蓮の化物っぷりというか、周囲への悪影響が半端ないですね。玲琳の心境にも変化が起こりつつあるようですが、今後彼女や鍠牙との関係がこれからどう変わるのか楽しみです。
読了日:12月26日 著者:宮野 美嘉
科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました (文春文庫)科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました (文春文庫)感想
自社の非科学的な商品にダメ出しをしたばかりに、最も行きたくなかった商品企画部に島流しになった大手電器メーカーに勤める科学マニア羽嶋賢児。その真っすぐすぎる科学愛が騒動を巻き起こすお仕事小説。苦い経験をさせられたり振り回された過去から、似非科学を否定し空気を読まずに正論を言って衝突する賢児。正しければいいというものでもないという現実と、科学好きを拗らせてしまう要因となった複雑な事情…こんな人が周囲にいたら疲れそうですが、科学研究を巡る厳しい事情も語られていたりで、理想と現実のバランスを取るのは難しいですね。
読了日:12月27日 著者:朱野 帰子
僕が僕をやめる日 (メディアワークス文庫)僕が僕をやめる日 (メディアワークス文庫)感想
困窮し生きることに絶望した立井潤貴。そんな彼を救った高木健介の代わりに大学に通うようになった二年後、高木が突如失踪するミステリ。作家でもある高木との充実した共同生活、そして失踪から始まる突然の暗転。残された数少ない手掛かりと作品をもとに高木の過去を知る人に会い、その行方を追う立井が知ってゆく意外な繋がりと高木の壮絶な過去。彼らが置かれた環境の過酷さと、何度も絶望感を突き付けられる彼らの生々しい感情描写はインパクトがあって、繋がってゆく複雑な因縁とその結末に至るまでを描く著者の熱い想いで読ませる物語でした。
読了日:12月28日 著者:松村 涼哉
(P[た]2-1)執筆中につき後宮ではお静かに: 愛書妃の朱国宮廷抄 (ポプラ文庫ピュアフル)(P[た]2-1)執筆中につき後宮ではお静かに: 愛書妃の朱国宮廷抄 (ポプラ文庫ピュアフル)感想
自室に引きこもれるという理由で後宮入りし、日々執筆にいそしむ娘・青楓。謎の襲撃者たちに襲われたところを皇帝に救われ、愛憎渦巻く後宮の陰謀に巻き込まれてゆく中華風ファンタジー。皇帝から後宮の不審死事件の真相を掴むべく協力を命じられた青楓は意外と才色兼備なのに価値観がズレていて、自分を雑に扱う彼女を新鮮に感じる皇帝との距離感はこれからな感じでしたけど、個性的な上級妃嬪たちにも振り回され、複雑な想いを抱えながら事件を解決に導く青楓のありようがなかなか印象的で面白かったです。これは続巻を読んでみたいと思いました。
読了日:12月28日 著者:田井 ノエル
卒業タイムリミット卒業タイムリミット感想
欅台高校の女教師・水口理紗子が突如監禁され、犯人が72時間後に始末するとネット動画で予告。卒業間近の3年生・黒川のもとに犯人から挑戦状が届き、同じ挑戦状が届いた同級生三人と事件解決に挑むタイムリミットミステリ。監禁された水口の人間関係を探るうちに浮上する三人の教師たち。挿入される生徒たちの意味深な告白や散りばめられた伏線が意外なところで繋がっていて、思っていた以上に根が深いと感じた事件の真相はやや意外でしたが、最後の三日間の挑戦を乗り越え一回り成長した彼らが迎えた卒業式にはぐっと来るものがありました。
読了日:12月29日 著者:辻堂 ゆめ
本を愛した彼女と、彼女の本の物語 (メディアワークス文庫)本を愛した彼女と、彼女の本の物語 (メディアワークス文庫)感想
生まれた時から意識があった文庫本『ホテル・カロン』。なかなか売れなかった文庫本と、ある一人の少女が出会い、ともに過ごしたかけがえのない日々の物語。病弱な女の子・銀河に勇気をもたらした『ホテル・カロン』との出会い。そんな密かに彼が見守る銀河の成長と、親友・睦月との邂逅、運命の相手・輝星とのと出会い。見守ることしかできない本の視点というのがもどかしくて、けれどそんな想いはかけがえのない彼女にもしっかり伝わってたんでしょうね...最後まで寄り添い続けた姿がとても印象的で、受け継がれてゆく想いを感じる物語でした。
読了日:12月29日 著者:上野 遊
スワンスワン感想
巨大ショッピングモール「スワン」で起きた前代未聞のテロ事件。生き残った五人の関係者に招待状が届き、事件の中の一つの死の真相を明らかにするために集まるミステリ。自暴自棄なテロリストによる襲撃という極限状況において、それぞれがどんな行動を取ったのか。同じ被害者でも各々が置かれた立場は違って、思惑を秘めて参加したお茶会で暴かれる当日の行動。その場で最善を取るのは容易ではなくて、終わってからもどうすればという後悔は消えなくて、そんな中でどんなに追い詰められても大切なものを手放さなかったいずみの決意が印象的でした。
読了日:12月30日 著者:呉 勝浩
ムゲンのi(上)ムゲンのi(上)感想
眠りから醒めない謎の病気・イレスという難病の患者を3人も同時に抱える女医・識名愛衣。霊能力者である祖母の助言により、患者を目醒めさせるために魂の救済〈マブイグミ〉に挑むミステリ。父と一緒に乗った飛行機で視力を失いパイロットの夢を絶たれた娘、無実と信じて無罪を勝ち取った被告が殺人を犯した現実を突き付けられた弁護士を夢幻の中で救ってゆく展開で、珍しいファンタジーっぽい要素がある展開でしたけど、解決するたびに新たな謎が増えてゆく中でこの物語をどうまとめあがるのか、現実世界とのリンクも気になるところではあります。
読了日:12月31日 著者:知念 実希人
ムゲンのi(下)ムゲンのi(下)感想
次々とマブイグミを成功させた識名愛衣。次第に患者のトラウマが都内西部で頻発する猟奇殺人と関係があり、しかも23年前の少年Xによる通り魔殺人とも繋がっていたことに気付き難事件の真相究明に立ち向かう下巻。イレスの繋がりが見えてきた中で救急搬送されてきた虐待された形跡のある少年、そして愛衣自身が記憶から消していた現実。繋がってゆく様々な出来事や事実の中で、ようやく置かれた現状を理解した愛衣も辛かったとは思いますが、そんな過去を乗り越えて大切な人たちの温かい想いに見守られていたことを知る結末がとても印象的でした。
読了日:12月31日 著者:知念 実希人

読書メーター

2019年下半期注目のオススメ新作単行本20選

2019年上半期注目のオススメ新作企画第五弾の単行本編です。読みたい本が多すぎて後追いになっているという状況もあり、読み残している積読をどこまで消化してから作るか迷いましたが、気になる本をギリギリまで読んでの作成になりました(苦笑)そんな事情もあって最後までどれを入れるのか迷いましたが、今回読んだ一般文芸単行本の中から20作品選んでいます。

上半期版と合わせて2019年単行本のおススメということで参考になれば幸いです。 

 

1.medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

  • 作者:相沢 沙呼
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/09/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎が出会った、霊媒として死者の言葉を伝える城塚翡翠。そんな彼女の霊視と論理の力を組み合わせて殺人事件に立ち向かうミステリ。殺された香月の後輩、招待された別荘で殺された先輩作家、女子高生連続の犯人を警察に協力する二人が翡翠の霊視と香月の論理で何とか解決してゆく展開で、けれど最後の連続殺人犯との対峙は、これまで積み重ねて来たものの何が虚で実だったのか分からなくなる急展開に繋がって、その何とも鮮烈で皮肉に満ちていた決着をいろいろと想起させるエピローグが際立たせていました。

 

2.線は、僕を描く

線は、僕を描く

線は、僕を描く

  • 作者:砥上 裕將
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生・青山霜介。アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会い、初めての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく青春小説。湖山に気に入られてその場で内弟子にされた霜介と、反発して翌年の「湖山賞」での勝負を宣言する湖山の孫・千瑛。初心者ながらも水墨画にのめり込んでいく霜介に、彼と関わるうちに千瑛もお互いに刺激を受けて変わっていって、才能だけでも技術だけでもない水墨画の世界で、その本質に向き合い続けた二人が迎える結末には新たな未来が垣間見えました。面白かったです。

 

3.ムゲンのi(上)(下)

ムゲンのi(上)

ムゲンのi(上)

  • 作者:知念 実希人
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/09/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

眠りから醒めない謎の病気・イレスという難病の患者を3人も同時に抱える女医・識名愛衣。霊能力者である祖母の助言により、患者を目醒めさせるために魂の救済〈マブイグミ〉に挑むミステリ。父と一緒に乗った飛行機で視力を失いパイロットの夢を絶たれた娘、無実と信じて無罪を勝ち取った被告が殺人を犯した現実を突き付けられた弁護士を夢幻の中で救ってゆく展開で、珍しいファンタジーっぽい要素がある展開でしたけど、解決するたびに新たな謎が増えてゆく中でこの物語をどうまとめあがるのか、現実世界とのリンクも気になるところではあります。

ムゲンのi(下)

ムゲンのi(下)

  • 作者:知念 実希人
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/09/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

次々とマブイグミを成功させた識名愛衣。次第に患者のトラウマが都内西部で頻発する猟奇殺人と関係があり、しかも23年前の少年Xによる通り魔殺人とも繋がっていたことに気付き難事件の真相究明に立ち向かう下巻。イレスの繋がりが見えてきた中で救急搬送されてきた虐待された形跡のある少年、そして愛衣自身が記憶から消していた現実。繋がってゆく様々な出来事や事実の中で、ようやく置かれた現状を理解した愛衣も辛かったとは思いますが、そんな過去を乗り越えて大切な人たちの温かい想いに見守られていたことを知る結末がとても印象的でした。

 

4.スワン

スワン

スワン

  • 作者:呉 勝浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/10/31
  • メディア: 単行本
 

巨大ショッピングモール「スワン」で起きた前代未聞のテロ事件。生き残った五人の関係者に招待状が届き、事件の中の一つの死の真相を明らかにするために集まるミステリ。自暴自棄なテロリストによる襲撃という極限状況において、それぞれがどんな行動を取ったのか。同じ被害者でも各々が置かれた立場は違って、思惑を秘めて参加したお茶会で暴かれる当日の行動。その場で最善を取るのは容易ではなくて、終わってからもどうすればという後悔は消えなくて、そんな中でどんなに追い詰められても大切なものを手放さなかったいずみの決意が印象的でした。

 

5.電気じかけのクジラは歌う

電気じかけのクジラは歌う

電気じかけのクジラは歌う

  • 作者:逸木 裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/08/08
  • メディア: 単行本
 

人工知能が作曲をするアプリ「Jing」が普及し、作曲家の仕事が激減した近未来。「Jing」専属検査員になった元作曲家・岡部の元に、自殺した現役作曲家で親友の名塚から未完の新曲と指紋が送られてくる近未来ミステリ。名塚から託されたものの意味と、事故で右手が不自由になった名塚の従妹・梨紗の苦悩、そして「Jing」を作り出した霜野の野望。「Jing」で気軽に音楽を作れてしまう中、あえて自分の手で音楽を作り出す意味に葛藤しながらも、秘められた名塚の想いに気づいてゆく展開は著者さんらしさがよく出ていて面白かったです。

 

6.ベーシックインカム

ベーシックインカム

ベーシックインカム

 

AI、遺伝子操作、VR、人間強化、ベーシックインカム。未来で技術・制度が実現したとき何が起こるのか、そのひとつの可能性を描いた近未来SFミステリ短編集。日本語を学ぶために幼稚園で働くエレナが気になった言葉、豪雪地帯に残された家族と父親の奇妙な遺体、VR映画を観た妻が突然失踪した理由、視覚障害の娘が人工視覚手術で知る真実、ベーシックインカムを肯定する教授の預金通帳が盗まれた理由。確かにこれはそんな未来が実現したからこそ起きた事件で、けれどその鍵を握るのが人の複雑で繊細な心理だったりするのが面白かったですね。

 

7.なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

 

いくつもの並行世界を行き来する少女たちの1度きりの青春、ゼロ年代のSF論、脳科学インプラントと複雑な想いが交錯する愛憎劇、ソ連アメリカの超高度人工知能を巡る争い、未曾有の災害に巻き込まれた新幹線が陥った低減世界といった6つのSF連作短編集。テイストの違う世界を描いた作品にはそれぞれの良さがあって面白かったです。個人的には「美亜羽へ贈る拳銃」「ひかりより速く、ゆるやかに」が好みでしたかね。相手を思う真摯な気持ちの中にも複雑な想いが入り混じるからこそ、明示されないその結末がとても印象的なものに思えました。

 

8.競歩

競歩王

競歩王

  • 作者:額賀 澪
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/09/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

天才高校生作家と持て囃されてデビューしながら、その後は燻っていた大学生・榛名忍。競歩リオ五輪ハイライト番組を見て号泣する八千代と出会い競歩という競技にのめり込んでゆくスポーツ小説。最初は気乗りしないまま始めた競歩の取材。そんな忍に不機嫌を隠そうともしない八千代を追ううちに自らの苦悩も重ねて、ライバルたちと競い東京五輪を目指す八千代の苦闘のめり込んでゆく展開はとても重く苦しかったですが、それでも向き合い続けてきたからこそ見えたもの乗り越えられたこともあって、そんな彼らの結末にはぐっとくるものがありました。

 

9.目を見て話せない

目を見て話せない

目を見て話せない

  • 作者:似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/10/31
  • メディア: 単行本
 

入学早々友達づくりに乗り遅れて愕然とする房総大学の新入生・藤村京。教室に残された高級な傘に気づき持ち主を推理するコミュ障探偵ミステリ。傘を忘れた人は誰か、服屋で消えた同級生の謎、カラオケで酒を飲ませた犯人、祭りの中での盗難事件、元喫煙室で起きた冤罪事件の真相。いろいろ考え過ぎて話せなくなる/動けなくなる藤村だからこそ、その推理力には眼を見張るものがあって、少しずつ増えてゆくかけがえのない友人たちを助けるため、遭遇した謎を推理してゆく彼のありようはとても好ましかったです。続巻あるならまた読んでみたいですね。

 

10.最後のページをめくるまで

最後のページをめくるまで

最後のページをめくるまで

  • 作者:水生 大海
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/07/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

使い勝手のいい女が隠していたもの、詐欺に手を染めた大学生のわずかばかりの犠牲、死体が火葬されるまで落ち着かなかった理由、夫の浮気発覚から始まった意外な結末、ひき逃げされた息子の復讐を誓う母の顛末の5つのエピソードから構成される連作短編集。緊迫感ある展開の先にあった意外な結末だったり、手に染めた過去の因果応報だったりで、作中で主人公の心境が変わっていったとしても、だからといってそうそういい感じに終わらせたりしないあたりがむしろ新鮮で印象的な物語でした。個人的には冒頭の「使い勝手のいい女」が良かったですね。 

 

11.Iの悲劇

Iの悲劇

Iの悲劇

 

六年前に滅びた簑石に人を呼び戻すIターン支援プロジェクトが実施され、南はかま市甦り課の三人が奔走する現実と真実の物語。最初に入居した二組の夫婦のいがみ合い、水田養鯉を志した入居者の誤算、行方不明になった子ども、秋祭りで起きた食中毒、なくなった仏像といった問題に、やる気の見えない課長・西野の下で、実務を担う万願寺や新人の観山が奔走する展開でしたけど、やけに西野が要所をしっかり押さえていると思ったら真相はそういうことでしたか。言われてみれば納得ですけど、苦心してきた立場からすればそれはないよって話ですよね。

 

12.流浪の月

流浪の月

流浪の月

 

奔放に育ててくれた両親を失い、引き取られた伯母の家で追い詰められてゆく更紗。そんな行き場のなかった彼女を受け入れた文が抱えていた苦悩。真実を知られることがないまま否定された二人の関係。確かに難しいテーマで、どんなに真摯な想いがあろうと世間一般の常識では容認し難いものがあるのは分からなくもないんですけどね。けれど辛い過去からうまく生きられない不器用な登場人物たちがいて、たくさん傷つきながらも育んできた揺るぎない真っすぐな想いがあって、ただともにありたいというささやかな願いくらいは叶う未来であって欲しいです。

 

13.森があふれる

森があふれる

森があふれる

 

作家の夫に小説の題材にされ続けて植物の種を一心不乱に食べ続けた結果、身体から芽吹いて森と化した妻。壊れた作家夫婦と彼らに関わった人々の物語。家でどんどん森を侵食させてゆく妻とそれを題材にして執筆する夫の狂気。彼らに関わった担当編集者たちや不倫相手の家族関係にも歪みをもたらして、妻の不在が作家として決定的な停滞をもたらしたのに、それにすら慣れてしまう懲りない作家と妻のどこまでも噛み合わない会話には絶望しかけましたが、それでも夫にようやく話し合おうとする姿勢が生まれたことに希望を感じるべきなんでしょうかね…。

 

14.定価のない本

定価のない本

定価のない本

 

終戦から一年。復興を遂げつつあった神田神保町で、古書の山に圧し潰されて死んだ古書店主・芳松。事後処理を引き受けた琴岡庄治が芳松の不自然な死に気づき、そこから始まる古書店主たちの終わらない戦いを描いた物語。行方を眩ませる被害者の妻、注文帳に残された謎の名前、名もなき古書店主の死を巡る探偵行の先にあった暗躍するGHQの壮大な計画。登場した意外な人物もいい感じに効いていて、追い詰められながらも大切なもののために反撃の道を探り続けて、仲間の古書店主たちとともに戦ってみせた庄治たちの意地とその結末は圧巻でした。

 

15.虎を追う

虎を追う

虎を追う

  • 作者:櫛木 理宇
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/09/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

30年前に起きた連続幼女殺人事件。刑事を引退した後もこの事件には真犯人がいるのではとずっと感じていた星野誠司が、孫である大学生の旭とその友人・哲に協力を仰いで事件を再び追う物語。孫たちの協力も得てSNSや動画投稿サイトも駆使し冤罪事件の真相解明を目指す星野班。そしてそんな彼らの活動に反応する真犯人「虎」。遺族など関係者への配慮や世論を巻き込んで事態を動かしていく手法の是非は難しいものがありますが、それでも緊張感のある展開はなかなか読ませるものがあって、物語を締めくくるエピローグにまたゾッとさせられました。

 

16.彼方のゴールド

彼方のゴールド

彼方のゴールド

 

出版社の営業にようやく慣れた頃、野球もサッカーも知らない明日香がスポーツ雑誌「Gold」に配属され、体当たりでぶつかってゆく出版社お仕事小説。昔とは役割も様変わりした野球のリリーフ投手へのインタビューに始まり、子供の頃のスイミングスクールと幼馴染との思い出、スキャンダルと密告の真相、社内カメラマンの思わぬ再会、サッカーコーチと15年前の因縁、そして再会したもうひとりの幼馴染。雑誌編集として分からないなりに一生懸命調べて考え、真摯に相手に向き合おうとする明日香の成長とその結末にはぐっと来るものがありました。

 

17.いのち短し、踊れよ男子

いのち短し、踊れよ男子

いのち短し、踊れよ男子

 

一目惚れした清香に誘われ舞い上がり、興味のなかった日本舞踊の発表会を見た大学生の駿介。そこで華やかな舞台で堂々と踊る吉樹と出会い、日本舞踊に魅せられてゆく青春小説。清香に「踊りの上手い人が好き」と言われて下心たっぷりの稽古通いを始めた駿介に、容赦なく欠点を指摘する師匠の息子・吉樹。踊りの上手さは認めざるを得ない吉樹にも日舞への複雑な想いがあって、一緒に踊ることになった二人が抱える葛藤と、真摯に向き合おうとする気持ちに向き合いながら、お互い刺激し合えるいい関係になってゆく展開にはぐっと来るものがありました。

 

18.卒業タイムリミット

卒業タイムリミット

卒業タイムリミット

  • 作者:辻堂 ゆめ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 欅台高校の女教師・水口理紗子が突如監禁され、犯人が72時間後に始末するとネット動画で予告。卒業間近の3年生・黒川のもとに犯人から挑戦状が届き、同じ挑戦状が届いた同級生三人と事件解決に挑むタイムリミットミステリ。監禁された水口の人間関係を探るうちに浮上する三人の教師たち。挿入される生徒たちの意味深な告白や散りばめられた伏線が意外なところで繋がっていて、思っていた以上に根が深いと感じた事件の真相はやや意外でしたが、最後の三日間の挑戦を乗り越え一回り成長した彼らが迎えた卒業式にはぐっと来るものがありました。

 

19.キキ・ホリック

キキ・ホリック

キキ・ホリック

  • 作者:森 晶麿
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/07/31
  • メディア: 単行本
 

かつて校庭の一角を占める<プラントハウス>を管理していた蘇芳キキ。ミステリアスな彼女と運命的な出会いを果たした若宮波留花が事件に巻き込まれてゆくミステリ。学校ではいじめに遭い、家では両親に抑圧されていた波留花。キキと出会ったことで劇的に変わってゆく彼女の環境。キキに惹かれてゆく波留花が邂逅するキキの妹・カラの存在、謎めいたキキの周辺で次々と起こった殺人事件。姿を消した彼女の行方を追う波留花が直面する真相は何とも切なかったですが、巧みに回収されてゆく伏線によって紡がれていった結末が儚くも美しい物語でした。

 

20.星砕きの娘

星砕きの娘

星砕きの娘

 

魔の化生、鬼の跋扈する地、敷島国。幼い頃に鬼に浚われ て囚われの身となっていた豪族の跡取り・弦太が、蓮の蕾から変化した赤ん坊・蓮華と運命の出会いを果たす和風ファンタジー。囚われて七年後、美しさと強さを兼ね備えた娘に成長した蓮華と弦太が迎える転機。弦太が後継者ゆえのままならなさを痛感する一方で、彼を慕う蓮華との間には変わらない強い絆があって、周囲の複雑な想いを絡めて二転三転してゆく激動の展開に翻弄されながらも、数奇な運命に向き合って決然と立ち向かった二人がたどり着いた粋な結末にはぐっと来るものがありました。

 

以上です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。 

 

 

2019年おすすめ本40冊(ライトノベル20冊/一般文芸・文庫・ライト文芸20冊)

年末最終日になりましたが、単行本オススメを書くまでに読んでおきたい本がまだ読み終わりません(苦笑)というわけで年末企画を先に作ってしまうことにしました。今回もだいぶ選ぶのに悩みましたが、 ライトノベル部門20冊、一般文芸・文庫本部門20冊ということで作りました。ご参考になれば幸いです。

 

ライトノベル部門20選】

1.Unnamed Memory (DENGEKI

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

 

幼い頃に受けた『子孫を残せない呪い』を解呪するため、強国ファルサスの王太子・オスカーが試練を乗り越えたものに望みのものを与える魔女・ティナーシャの塔に挑むファンタジー。解呪が容易でなく呪いに負けない女であればいい、という状況で目の前に好物件がいたことに気づき求婚するオスカー(苦笑)わりとシリアスな展開ですが繰り返される二人のやりとりが微笑ましくて、感化されつつも容易には頷きそうもない孤高の魔女・ティナーシャが、どんどん強くなってゆく諦めが悪いオスカー相手にどこまで頑張れるのか今後に期待のシリーズです。20年1月に4巻目刊行予定。

 

2.プロペラオペラ (ガガガ文庫)

プロペラオペラ (ガガガ文庫)

プロペラオペラ (ガガガ文庫)

 

追い詰められた極東の島国・日之雄。悲壮な決意で駆逐艦「井吹」の艦長として戦いに挑む皇家第一王女イザヤのもとに、かつて最低の事件を起こして皇籍剥奪された幼馴染・クロトが部下として乗り込む空戦ファンタジー。敵国ガメリア合衆国で投資家として成功していたクロトが日之雄に戻ってきた理由。苦戦必至の状況の中、超傲慢で頭が切れてバカがつく努力家クロトが、アホな部下たちと共にイザヤを支えて大逆転に導く熱い展開で、異国で台頭しつつある因縁のライバルの魔の手から彼女を守りきれるのか、これは今後がとても楽しみなシリーズですね。

 

3.千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

千歳くんはラムネ瓶のなか (ガガガ文庫)

 

クラス委員に指名されたトップカーストの千歳朔。担任から引きこもり生徒の更生を頼まれ、自信回復の手伝いをする青春小説。仲間の協力も得ながらあの手この手で引きこもりの健太を引っ張り出してみせた朔。そんな彼が魅力的な仲間やヒロインたちに信頼されるのも、周囲の期待に真摯に向き合い、大切なもののため誰かのために奔走することを惜しまないからで、テンプレートなリア充論を論破してみせる彼が、時折垣間見せる本音や葛藤がとても印象的でした。彼の恋愛模様やワケありの過去も気になりますし、続巻が楽しみな期待の新シリーズですね。 現在2巻目まで刊行。

 

4.クラスメイトが使い魔になりまして (ガガガ文庫)

クラスメイトが使い魔になりまして (ガガガ文庫)

クラスメイトが使い魔になりまして (ガガガ文庫)

 

異世界の魔人召喚に失敗したクラスメイトの美少女・藤原千影。不可抗力で彼女を使い魔にしてしまった落ちこぼれ魔術師・芦屋想太の主従関係を描く魔法学園ラブコメ。千影と融合した皇女で想太に執着する強力な異世界の魔人ソフィア。不本意な同居生活を始めた二人のツンデレ気味なテンポの良い掛け合いには確かな積み重ねがあって、自分を救ってくれた千影を取り戻すために想太が立ち上がり、千影が魔人相手に見事決着をつけてみせる展開にはぐっと来ました。過去の因縁を抱える主従関係がこれからどうなるのか、続巻にも期待大の新シリーズですね。現在2巻目まで刊行。

 

5.探偵はもう、死んでいる。 (MF文庫J)

探偵はもう、死んでいる。 (MF文庫J)

探偵はもう、死んでいる。 (MF文庫J)

  • 作者:二語十
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/11/25
  • メディア: 文庫
 

完全無欠に巻き込まれ体質で天使のように美しい探偵・シエスタの助手だった君塚君彦。その探偵と死に別れ高校生になり、日常というぬるま湯に浸っていた彼が一人の少女と出会う物語。ひとを探してほしいという依頼を持ってきた同級生・夏川渚、三十億のサファイアが盗まれるのを防いで欲しいというアイドル・斎川唯、そして探偵のかつての弟子・シャーロット。彼女たちと出会いが探偵の死によって止まっていた君彦の時間を動かし始めて、この一冊自体がまるごとプロローグという豪快な構成でしたけど、彼らがこれからどんな活躍を見せてくれるのか今後に期待したい作品ですね。20年1月に2巻目刊行予定。

 

6.吸血鬼に天国はない (電撃文庫)

吸血鬼に天国はない (電撃文庫)

吸血鬼に天国はない (電撃文庫)

  • 作者:周藤 蓮
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/08/10
  • メディア: 文庫
 

大戦と禁酒法で旧来の道徳が崩れ去った時代。非合法の運び屋シーモアのもとに、運んで欲しい荷物として正真正銘の吸血鬼の少女・ルーミーが持ち込まれる歴史ファンタジー。仕事上のトラブルから始まったルーミーとの同居生活。吸血鬼らしさを見せないルーミーと共に過ごすうちにシーモアの心境が変化してゆく中で、ふと気づいてしまったひとつの事実。確かに変わってしまった何かがあって、それでも二人の間には確かに育まれていたものがあって、ぶつかりあった本音の先にあった結末がとても自分好みでした。これは続巻に期待大の新シリーズですね。現在2巻目まで刊行。

 

7.友達の妹が俺にだけウザい (GA文庫)

友達の妹が俺にだけウザい (GA文庫)

友達の妹が俺にだけウザい (GA文庫)

 

 青春の一切を非効率とする俺・大星明照が目指す伯父の会社への就職。ウザい親友の妹・彩羽に絡まれつつ、就職の条件として提示された幼馴染従妹・真白の偽彼氏役に挑む青春ラブコメディ。学校では存在感皆無の生活を送る明照と、彼に絡み部屋に入り浸る親友の妹・彩羽、最悪の再会から険悪な雰囲気の真白。親友を含めた周囲の登場人物にはそれぞれ抱える事情があって、陰キャラに甘んじる明照が仲間のためなら頑張る姿を見ると、彼らに慕われているのも納得ですね。気になる関係に投げ込まれた波紋で物語がどう動くのか、今後に期待大の新シリーズ。現在3巻目まで刊行。

 

8.幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

 

脈アリと思っていた片思いの相手・白草に彼氏ができたと知った高校生・丸末晴。失意の彼に以前告白してきた幼馴染・黒羽が復讐を持ちかける青春ラブコメディ。美少女で芥見賞受賞の現役女子高生作家・白草と、陽キャでクラスの人気者、かつ中身は世話焼きお姉系の黒羽。偽恋人として白草を挑発したり、白草の恋人という先輩と勝負したり、だいぶ拗らせたそれぞれの恋愛模様にもう素直になれよ…と思いましたけど、甘酸っぱい青春の先には斜め上の結末が待ってました(苦笑)そんな彼らだからこその新展開もあって、今後に期待大の新シリーズですね。現在2巻目まで刊行。

 

9.天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)

天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)

天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)

 

大好きなフリーゲーム制作者Aに会うため、桜山学園ゲーム制作部に入った水谷湊。しかしAと思しき部長の菖蒲は不登校で、彼女が学校に来るよう部員たちから託される青春小説。仲が良さげなゲーム部員が抱える苦い過去、そして湊のもとに送られてきたひとつのノベルゲームが示唆する過去。部員それぞれの事情が明らかになってゆくたびに彼らの印象も変化して、構図が二転三転した末の決着は新たな違和感に繋がって、確執が残る母とも向き合いつつバットエンドに隠されていた真相を見出して、大切な笑顔を取り戻してみせた結末がとても印象的でした。

 

10.お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件 (GA文庫)

お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件 (GA文庫)

お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件 (GA文庫)

 

藤宮周が一人暮らしするマンションの隣室に住む学校で一番の美少女・椎名真昼。特に関わり合いのなかった彼女とふとしたきっかけから交流が始まる青春小説。雨の中ずぶ濡れの彼女に貸した傘をきかっけに、自堕落な一人暮らしを送る周を見かねて食事を作り部屋を掃除し、何かと世話を焼く真昼。自分だけが知るクールで毒舌な彼女と過ごす日々に少しずつ心境が変化してく周と、家の事情を抱えていそうな彼女との関係がどうなるのか。現時点ではまだまだこれからですけど、もどかしい甘酸っぱい展開を期待できそうで今後が楽しみな新シリーズですね。

 

11.処刑少女の生きる道 (GA文庫)

過去に起きた人災で異世界からの召喚者は見つけ次第処刑される世界。躊躇なく冷徹に任務を遂行する処刑人の少女・メノウが、迷い人の少女アカリと運命の出会いを果たすファンタジー。不可避に思えた運命をあっさり乗り越えるアカリと、そんな彼女に調子が狂わせながらも決着をつけるべく二人で旅するメノウの距離感がなかなかいい感じで、それに処刑人補佐のモモや王の娘アーシュナといった魅力的なキャラを絡めて展開する物語の安定感には驚かされました。ワケありな二人の旅がこれからどのようなものになるのか、続巻が楽しみな新シリーズですね。20年2月3巻目刊行予定。

 

12.夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

  • 作者:八目 迷
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2019/07/18
  • メディア: 文庫
 

海に面する田舎町・香崎。家族崩壊させた過去を悔やむ高校生・塔野カオルが、クラスで浮いた存在になっていた転校生・花城あんずと互いの欲しいものを手に入れるため協力関係を結ぶ青春小説。夏の日のある朝、塔野カオルが偶然耳にした、中に入れば年を取る代わりに欲しいものが何でも手に入る『ウラシマトンネル』の都市伝説。周囲との関係を拒絶していたあんずの言動はなかなかぶっ飛んでいましたが、彼女との協力関係から始まった二人の不器用なやりとりはとても甘酸っぱくて、大切なものに向き合った二人の結末にはぐっと来るものがありました。

 

13.塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (ガガガ文庫)

塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (ガガガ文庫)

塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (ガガガ文庫)

 

高嶺の花で誰に対しても塩対応な佐藤こはると、誰に対しても優しい押尾颯太。初々しくてもどかしい高校生二人の初恋物語。告白されても話しかけられても実はコミュ障で塩対応のこはる。そんな不器用な彼女が想い人に近づきたい一心で頑張って颯太だけに見せる様々な可愛い表情があって、彼女をフォローしようと頑張る颯太もいちいちカッコ良くて、そんなじれじれ初恋両片想いな二人の破壊力がスゴイですね。勘違いからすれ違いかけたり大きな壁が立ちはだかったりしても、勇気を出して前に一歩踏み出した二人の今後がとても楽しみな新シリーズです。

 

14.あの日、神様に願ったことはI kiss of the orange prince (電撃文庫)

あの日、神様に願ったことはI kiss of the orange prince (電撃文庫)

あの日、神様に願ったことはI kiss of the orange prince (電撃文庫)

 

一年に一度、願いが叶う宿星市に住む風祭叶羽が、十七歳の誕生日に出会った先輩・逢見燈華。願いを叶えるために星の幸魂の試練を課された燈華と、姉を喪い傷心を抱える叶羽の優しくて少し痛い奇跡の青春小説。病床にあった姉との悔いの残る別れから、写真を撮ることを止めてしまった叶羽が、人知れず試練を抱えていた燈華と出会い、振り回されながらも惹かれていく展開で、登場人物たちの不器用で甘酸っぱい想い、そして絶望を救おうと奔走する真摯で一途な想いがもたらした奇跡はとても素晴らしかったです。現在2巻目まで刊行。

 

15.リベンジャーズ・ハイ (ガガガ文庫)

リベンジャーズ・ハイ (ガガガ文庫)

リベンジャーズ・ハイ (ガガガ文庫)

 

塵禍で文明が一度滅び、砂塵を異能力に変換できる「砂塵能力者」が力を持つ近未来。因縁の復讐相手・スマイリーを追うチューミーが、利害の一致から一時的に粛清官に協力し、ワケありの粛清官・シルヴィとコンビを組む近未来SF復讐譚。特殊な事情を抱えていたシルヴィと出会い、最初は反発しながらも徐々に育まれていく相棒としての信頼感。テンポよく進む中でスマイリーと追う二人を巡る因縁も明らかになって、何度も葛藤と絶望に直面する異端のバディが待ち望んだ宿敵との対峙と決着、確かな絆が垣間見えた結末にはぐっと来るものがありました。

 

16.子守り男子の日向くんは帰宅が早い。 (角川スニーカー文庫)

子守り男子の日向くんは帰宅が早い。 (角川スニーカー文庫)

子守り男子の日向くんは帰宅が早い。 (角川スニーカー文庫)

 

両親が共働きで5歳の妹・蕾のために日々を過ごす子守リ男子・新垣日向。そんな彼が偶然クラスメイトの芹沢悠里とスーパーで出会ったことをきっかけに、その高校生活が変わってゆく青春小説。蕾の可愛らしさに魅せられ、日向を意識するようになってゆく悠里。そんな二人を面白がる悠里の親友・唯やヒロインたちに振り回される日向の親友・雅も関わるようになって、疎遠になっていた後輩・日和との再会もあって。物語としてはまだまだこれからな感もありますが、変わり始めた日向の高校生活がどうなってゆくのか、今後に期待大の新シリーズ。現在2巻まで刊行。 

 

17.つるぎのかなた (電撃文庫)

つるぎのかなた (電撃文庫)

つるぎのかなた (電撃文庫)

 

高二の春に藤宮高校に転校してきた水上悠。そんな彼が負けず嫌いな新入生・深瀬史織と出会い、一緒に剣道部に入部する青春小説。昔、剣道で最強と呼ばれながら一度はその座を降りた悠を少しずつ変えていった剣道部の仲間たちとの出会い、剣姫と呼ばれる吹雪との運命的な邂逅と、かつての約束に妄執する吹雪の兄で高校剣道界最強の男・快晴。複雑に絡み合う因縁と剣道に賭ける想いをぶつけ合う熱い戦いがあって、不器用なヒロインたちも自分の想いにまっすぐで、荒削りなところも散見されましたが、それでも十分に魅力的な物語に仕上がっていました。20年1月に3巻目刊行予定。

 

18.友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? (オーバーラップ文庫)

友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? 1 (オーバーラップ文庫)

友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? 1 (オーバーラップ文庫)

  • 作者:世界一
  • 出版社/メーカー: オーバーラップ
  • 発売日: 2019/07/24
  • メディア: 文庫
 

目つきの悪さから不良のレッテルを貼られた友木優児。『主人公キャラ』池春馬以外に誰も近寄らない彼が、春馬の妹で美少女の池冬華に突然告白されるラブコメディ。腑に落ちない告白の真意を問いただす優児と、思うところあって彼とニセの恋人関係を結んだ新入生の冬華。外見がアレで不器用だから誤解されがちだけれど、困った人を助けることを厭わず、相手にきちんと真摯に向き合える優児の良さを知ってゆく人が増えていって、そんなエピソードを積み重ねて冬華の想いも変化してゆく展開がとても良かったです。これは続巻に期待の新シリーズですね。現在2巻まで刊行。

 

19.お隣さんと始める節約生活。 (ファンタジア文庫)

一人暮らしの高校生の間宮哲郎が、高校の先輩でもある同じ境遇の隣人山野さんが似たような境遇であることを知り、一緒に節約生活を始めてみる青春ラブコメディ。高校がバイト禁止という状況で、もう少し遊ぶお金を確保するには節約しか選択肢がない似たような境遇にいる二人。最初は自作の弁当を比べたり巨大なパンをシェアしたり、電気代を減らすために夏休みを一緒に過ごすようになったり、ベタながらも日常にあるドキドキの積み重ねから、お互いのことを少しずつ意識してゆく展開がいいですね。そんな二人の今後がとても楽しみな新シリーズです。

 

20.カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています (角川スニーカー文庫)

クリスマス直前に彼女に浮気されて別れた大学二年生の羽瀬川悠太。そんな傷心の彼がサンタのバイトをしていた後輩・志乃原真由と出会う青春小説。いつの間にか懐いて勝手に家にまで上がり込んでくるようになった後輩・志乃原と、付き合いが長い友人ヒロイン・彩華、そして悠太を気にかける元カノの存在。三者三様のヒロインたちはそれぞれに事情があるようで、その妙に狭い人間関係の繋がりも地味に効いていますが、単純な恋愛模様にはならなさそうな彼女たちとの繊細な距離感や関係がこれからどう変わってゆくのか、続巻に期待の新シリーズですね。

 

【一般文芸・文庫・ライト文芸20選】

1.medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

  • 作者:相沢 沙呼
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/09/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎が出会った、霊媒として死者の言葉を伝える城塚翡翠。そんな彼女の霊視と論理の力を組み合わせて殺人事件に立ち向かうミステリ。殺された香月の後輩、招待された別荘で殺された先輩作家、女子高生連続の犯人を警察に協力する二人が翡翠の霊視と香月の論理で何とか解決してゆく展開で、けれど最後の連続殺人犯との対峙は、これまで積み重ねて来たものの何が虚で実だったのか分からなくなる急展開に繋がって、その何とも鮮烈で皮肉に満ちていた決着をいろいろと想起させるエピローグが際立たせていました。


2.線は、僕を描く

線は、僕を描く

線は、僕を描く

  • 作者:砥上 裕將
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生・青山霜介。アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会い、初めての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく青春小説。湖山に気に入られてその場で内弟子にされた霜介と、反発して翌年の「湖山賞」での勝負を宣言する湖山の孫・千瑛。初心者ながらも水墨画にのめり込んでいく霜介に、彼と関わるうちに千瑛もお互いに刺激を受けて変わっていって、才能だけでも技術だけでもない水墨画の世界で、その本質に向き合い続けた二人が迎える結末には新たな未来が垣間見えました。面白かったです。


3.電気じかけのクジラは歌う

電気じかけのクジラは歌う

電気じかけのクジラは歌う

  • 作者:逸木 裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/08/08
  • メディア: 単行本
 

人工知能が作曲をするアプリ「Jing」が普及し、作曲家の仕事が激減した近未来。「Jing」専属検査員になった元作曲家・岡部の元に、自殺した現役作曲家で親友の名塚から未完の新曲と指紋が送られてくる近未来ミステリ。名塚から託されたものの意味と、事故で右手が不自由になった名塚の従妹・梨紗の苦悩、そして「Jing」を作り出した霜野の野望。「Jing」で気軽に音楽を作れてしまう中、あえて自分の手で音楽を作り出す意味に葛藤しながらも、秘められた名塚の想いに気づいてゆく展開は著者さんらしさがよく出ていて面白かったです。

 

4.夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫)

夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫)

夏の終わりに君が死ねば完璧だったから (メディアワークス文庫)

 

片田舎の劣悪な家庭環境に育ち将来に希望を抱けずにいた少年・日向が、身体が金塊に変わる致死の病「金塊病」を患う女子大生・都村弥子と運命の出会いを果たす壮絶で切ない最後の夏の物語。死後三億で売れる『自分』の相続を突如彼に持ち掛けた弥子と、相続の条件として提示された古い盤上ゲーム・チェッカーを通じて心を通わせてゆく日向。絶望を抱えた二人が惹かれていけばいくほど、彼女の死に三億円の価値があることの意味が重くのしかかってきて、明かされてゆくそれぞれの秘密と葛藤の末に二人が選択した「正解」がとても印象的な物語でした。

 

5.愛を知らない

愛を知らない

愛を知らない

 

ヤマオの推薦で合唱コンクールのソロパートを任された高校二年生の橙子。親戚でクラスメイトの涼の視点から彼女の苦悩と決意が描かれる青春小説。気難しくて周囲から浮いていた橙子に期待するヤマオ、一緒に練習することになった伴奏役の涼と委員長で指揮者の青木、共に過ごす中で意外な一面を見せてゆく橙子が抱える苦悩。これまで見えていたものがガラリと反転した世界で、どうにもならないところまで拗れてしまった関係があって、やりきって勝ち取った結果にはぐっと来ましたが、だからこそその先にあったこの物語の結末が胸に突き刺さりました。

 

6.高校事変 (角川文庫)

高校事変 (角川文庫)

高校事変 (角川文庫)

 

平成最大のテロ事件を起こし死刑になった男の次女・優莉結衣。彼女が転入した武蔵小杉高校を総理大臣が極秘訪問することになり、学校が突如武装勢力に占拠に巻き込まれてしまうエンタメ小説。こういう状況に遭遇するのは偶然でも、なにかあるたびにその関与を疑われてしまう境遇というのはなかなか厳しい…とはいえ武装勢力を相手に先生や他の生徒たちがパニックに陥る中、冷静に状況を見極めて判断し活路を見出してゆく結衣の行動力は際立っていました。そんな結衣がこれからも普通の女子高生でいられるのか、続巻が気になるシリーズ。20年1月に5巻目刊行予定。

 

7.君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部 (新潮文庫nex)

君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部 (新潮文庫)

君と漕ぐ: ながとろ高校カヌー部 (新潮文庫)

 

両親の離婚で引っ越してきた高校一年生の舞奈。地元の川でカヌーを操る少女・恵梨香に出会った彼女が、一緒にながとろ高校カヌー部に入部する青春部活小説。長年コンビを組むも少しずつ想いがすれ違ってきた先輩の希衣と千帆。実力者恵梨香の出現による希衣の決意。初心者の舞奈は今後に期待ですけど、過去に執着していたり今の自分を見て欲しいと願う、それぞれの繊細で複雑な心情を巧みに描きつつ、ずっともやもやしていた思いをぶつけ合って、前に進む力に昇華させてゆく展開にはぐっと来るものがありますね。これは続巻に期待の新シリーズです。現在2巻まで刊行。

 

8.どうかこの声が、あなたに届きますように (文春文庫)

どうかこの声が、あなたに届きますように (文春文庫)

どうかこの声が、あなたに届きますように (文春文庫)

 

地下アイドル時代に心身に深い傷を負い、鎌倉の祖母のもとでひっそりと生活を送っていた小松奈々子20歳。そこに突然現れたラジオ局ディレクター黒木から番組アシスタントにスカウトされる物語。母親に認められるために頑張っていたアイドル活動に挫折して、希望を失いかけていた奈々子が挑戦するラジオの世界。戸惑いながら始めた彼女が多くの人に支えられて成長し、切実な日々を生きるリスナーたちと交流を深めていって、何度か危機に直面しながらも、これまでの放送で積み重ねてきたみんなの力を合わせて乗り越えていくとても素敵な物語でした。

 

9.太陽のシズク ~大好きな君との最低で最高の12ヶ月~ (新潮文庫nex)

太陽のシズク ~大好きな君との最低で最高の12ヶ月~ (新潮文庫nex)

太陽のシズク ~大好きな君との最低で最高の12ヶ月~ (新潮文庫nex)

  • 作者:三田 千恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/10/27
  • メディア: 文庫
 

死に至る「宝石病」を患い海の見える高校に転校してきた理奈。親友や彼氏を作って最高の学園生活を送ろうと決意する理奈と、彼女のために受験を頑張る翔太が過ごした最高の12ヶ月の物語。運命の恋人と出会い、印象的な出会いを果たした美里と様々な出来事を経て大切な親友となってゆく理奈。彼女と自分の夢のために受験勉強する翔太が予備校で出会った仲間たち。違う時を過ごす中で不安やすれ違いもあって、それでも二人で育んできた確かな絆があって。そんな二人のかけがえのない日々を必ず読み返したくなる、とても鮮烈で印象に残る物語でした。

 

10.流浪の月

流浪の月

流浪の月

 

奔放に育ててくれた両親を失い、引き取られた伯母の家で追い詰められてゆく更紗。そんな行き場のなかった彼女を受け入れた文が抱えていた苦悩。真実を知られることがないまま否定された二人の関係。確かに難しいテーマで、どんなに真摯な想いがあろうと世間一般の常識では容認し難いものがあるのは分からなくもないんですけどね。けれど辛い過去からうまく生きられない不器用な登場人物たちがいて、たくさん傷つきながらも育んできた揺るぎない真っすぐな想いがあって、ただともにありたいというささやかな願いくらいは叶う未来であって欲しいです。

 

11.教室が、ひとりになるまで

教室が、ひとりになるまで

教室が、ひとりになるまで

 

北楓高校で起きた三人の生徒連続自殺事件。クラス内でも地味な存在の垣内友弘が、最高のクラスで起きた一連の不審死の謎を追う青春ミステリ。生徒に代々引き継がれてきた4つの特殊能力。不登校の白瀬美月から三人を殺した死神の存在を知らされた垣内が、突如引き継いだ特殊能力で他の能力者や犯人の正体を探ってゆく展開で、スクールカーストの力関係や伏線を巧妙に絡めながら、地味な特殊能力を駆使した殺人の結末へと導いていく展開はお見事。突きつけられた現実への失望があるからこそ、そんな彼にもたらされる一筋の光にぐっと来る物語でした。

 

12.エンド オブ スカイ

エンド オブ スカイ

エンド オブ スカイ

 

ゲノム編集技術によって老いや病から緩やかに遠ざかりつつある23世紀。謎の突然死「霧の病」を研究する遺伝子工学の権威ヒナコ・神崎博士が海から現れた少年・ハルと出会う近未来SF。ゲノム編集が推奨された香港に現れたオリジナルゲノムを持つハルと、どこか不安定なヒナコの交流の日々。「霧の病」が急速に拡大してゆく中でその原因が見えてきて、何が正常で異常なのかわからなくなる皮肉な展開でしたけど、周囲の人たちに支えられながらハルと向き合ったかけがえのない日々と、いくつもの伏線が回収された先にある結末が印象的な物語でした。

 

13.彼女は死んでも治らない (光文社文庫)

彼女は死んでも治らない (光文社文庫)

彼女は死んでも治らない (光文社文庫)

  • 作者:大澤 めぐみ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/08/08
  • メディア: 文庫
 

いつも殺されがちな最高に可愛い幼馴染の沙紀。普通じゃないレベルで彼女のことが好きな女子高生・神野羊子が得意の推理を巡らせるハイテンションコージーミステリ。沙紀を殺した犯人を羊子が見つけ出すと、犯人を身代わりになぜか彼女が生き返る歪な関係、そんな羊子と一緒にいてサポートする昇の存在。のんびり屋なのに核心を突く乃亜や、正義感あふれる拝み屋女子高生・楓との出会いは羊子たちの関係に変化をもたらして、あの斜め上のカオスな展開から始まったこの物語を、伏線や真相を絡めつつすっきりとまとめ上げてみせた結末はお見事でした。

 

14.君の想い出をください、と天使は言った (角川文庫)

君の想い出をください、と天使は言った (角川文庫)

君の想い出をください、と天使は言った (角川文庫)

 

急性脳腫瘍で入院し、医師の態度から最悪の結果を察してしまい絶望する河野夕夏。その夜悪魔を名乗る不思議な青年と出会い、大切なものと引き換えに命を助ける取引を交わす恋愛ミステリ。二年間の記憶を失って様々な違いに戸惑いながらも再び職場の銀行で働き始める夕夏と、そんな彼女の前にアフターフォローとして再び現れた青年・水上。記憶が戻らなくても確実に前に進めている実感があって、そんな彼女を気にかけてくれる人たちがいて、そんな中で本当に大切なものを再び見出して、これまでの全てが繋がってゆく結末がとても素敵な物語でした。

 

15.不純文学 (宝島社文庫)

不純文学 1ページで綴られる先輩と私の不思議な物語 (宝島社文庫)

不純文学 1ページで綴られる先輩と私の不思議な物語 (宝島社文庫)

  • 作者:斜線堂 有紀
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/10/04
  • メディア: 文庫
 

本を読むのが好きな「先輩」と一緒にいる「私」。私と先輩の二人が織り成す奇妙で不思議で切ない掌編集。本作は右ページに章題、左ページに1ページ完結の私と先輩の話が全120話ひたすら続くシンプルな構成。様々なシチェーションで私と先輩の関係が綴られて、時には不純に、時には愛しく、時には複雑な気持ちで先輩を想う私がいて、一見淡々としているように見える不器用な先輩の私への優しさがあって、そんな二人のエピソードの積み重ねがクセになってゆく、どんな状況でもお互いを大切に思う気持ちは変わらない姿がとても印象的な物語でした。

 

 

16.メイデーア転生物語 (富士見L文庫)

メイデーア転生物語 1 この世界で一番悪い魔女 (富士見L文庫)

メイデーア転生物語 1 この世界で一番悪い魔女 (富士見L文庫)

  • 作者:友麻碧
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/10/15
  • メディア: 文庫
 

幼馴染に片想いしていた前世を時々夢に見る辺境貴族の令嬢マキア。運命的な出会いを果たした少年トールと魔法を学ぶ楽しい日々を過ごしていた彼女が、引き離されたトールと再会するために奮闘する転生ファンタジー。トールが救世主の守護者に選ばれ引き離されてしまう二人。トールと再会するため王都で最高峰の魔法学校を目指すマキア。学校では個性的な仲間もできて、選ばれていた救世主がまた前世でいろいろと因縁のあった存在で、抗いがたい運命に翻弄されるマキアとトールが大切な絆を守っていけるのか、続巻がとても楽しみな新シリーズですね。

 

17.リーリエ国騎士団とシンデレラの弓音 (集英社オレンジ文庫)

リーリエ国騎士団とシンデレラの弓音 (集英社オレンジ文庫)

リーリエ国騎士団とシンデレラの弓音 (集英社オレンジ文庫)

 

兜にある命石を砕いて勝敗を競う戦闘競技会が国々の命運を決する世界。優秀な騎士を輩出する村で弓しか扱えず周囲にバカにされてきた少女・ニナを、地方競技会を見たという騎士リヒトが騎士団へ勧誘するファンタジー。優秀な兄の片目を事故で失わせてしまい、自身も非力で自信喪失気味なニナの弓に希望を見出したリヒト。勧誘先がまさかの国家騎士団で最初は怯えて逃げ出しそうになりながらも、自分を認めてくれた大切な人たちのため「赤い猛禽」に立ち向かう構図はとても分かりやすいですが、最後まで期待にしっかり応えてくれた素敵な物語でした。現在2巻まで刊行。

 

 

18.ネガレアリテの悪魔 贋者たちの輪舞曲 (角川文庫)

ネガレアリテの悪魔 贋者たちの輪舞曲 (角川文庫)

ネガレアリテの悪魔 贋者たちの輪舞曲 (角川文庫)

 

19世紀末、ロンドンの画廊で展示されたルーベンス未発表の真作。その絵に目を奪われたエディスが「贋作」と断言する美貌の青年・サミュエルと運命の出会いを果たすファンタジー。訳ありな貴族の娘・エディスと、絵より現れた異形の怪物から彼女を救ったサミュエル。ジョン・ラスキンヴィクトリア女王など実在の人物も絡めつつ、サミュエルと宿敵・ブラウンの贋作に宿る怪物を巡る戦いを描く展開でしたけど、虚構も織り交ぜながら展開されるストーリーはなかなか面白かったですね。未だ謎多きサミュエルとエディスの今後が楽しみです。現在2巻まで刊行。

 

 

19.ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)

ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)

ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)

 

仮面を被った仕事ぶりに限界が来て退職し、譲り受けた古民家で趣味のアクセサリーづくりをして暮らす涼子。そんな家に店子として宝飾職人「希美」さん住むことになるあたたかな再生の物語。趣味も合い配慮が行き届いていて、欲しい時に欲しい言葉をくれる希美に惹かれていく涼子。一方で未だに引きずる複雑な過去の想いや、容易に解けない呪いから素直に心を開けない状況にもどかしくもなりましたが、そんな彼女を尊重しつつ粘り強く向き合って、様々な過去のわだかまりを解きほぐすのを手伝ってくれた彼に出会えてほんとに良かったなと思えました。

 

 

 

20.ことのはロジック (講談社タイガ)

ことのはロジック (講談社タイガ)

ことのはロジック (講談社タイガ)

 

書くべき言葉を見失った元天才書道少年の墨森肇。金髪碧眼の転校生・アキに一目惚れした彼が、彼女とともに校内で発生する言葉にまつわる事件を解決してゆくミステリ。好奇心旺盛なアキや仲間たちと一緒に挑む回し手紙の伝言ゲーム、存在しない幽霊文字、同人誌の不可解な改変、そしてアキに対する違和感。探し続ける「月が綺麗ですね」を超える告白の言葉。彼らの心境の変化に繋がってゆくひとつひとつのエピソードがまた絶妙で、明らかになった真実にしっかりと向き合い、想いを込めた回答を提示してみせた結末にはぐっと来るものがありました。

 

以上です。一般部門の方は選んでみたら思ったより単行本が多くなってしまいましたが、どれもオススメの一冊です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。