読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

BW読み放題で全巻読める!ライトノベル15選

先日からBOOK☆WALKERで読み放題サービスがスタートしています。

うららさんが上の記事を挙げているのを見て自分も何か選んでみようと思い、読み放題の中からシリーズ全巻を読める面白いライトノベル作品を15点選んでみました。いや全巻読めるとかほんとすげえな…とか正直思いますが、これ読むことで著者さんにも何らかの形で還元されるんですよね?

【追記】聞いたところによるとこうなってるそうです。

ということで今後の展開に期待しています。

 

1.賭博師は祈らない(電撃文庫)全5巻
https://bookwalker.jp/series/109409/list/

賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)

  • 作者:周藤 蓮
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/03/10
  • メディア: 文庫
 

十八世紀末ロンドン。うっかり大金を得た賭博師ラザルスが仕方なく購入させられたのは、喉を焼かれて声を失った奴隷の少女・リーラ。不器用な二人が戸惑いながらも心通わせてゆく物語。師の教え通り勝たない賭博師としてこれまで生きてきたラザルスの失敗。放り出すわけにもいかず感情に乏しいリーラを教育しながら一緒に生活するようになる日々。徐々に打ち解けてゆく二人の拙い関係の変化が繊細な積み重ねで描写されていて、強奪されたリーラを奪還するため冷静に計算して最後まで完遂してみせたラザルスのありようがとても見事で心に響きますね。

 

2.世界の終わりの世界録MF文庫J)全10巻
https://bookwalker.jp/series/18216/list/

伝説の英勇エルラインと生き写しの容姿ながら才は遠く及ばず、偽英勇と周囲に侮られる日々を送っていたレンが、エルラインのかつての仲間たちと共にエルラインが残した記録「世界録」を求めて旅に出る物語。仲間の大天使、魔王、竜姫はキャラクター的に王道な配置。ただ彼女らも未だ万全ではない状態で、レンも秘めた力は持っていながらも発展途上。そんな中いきなりの強敵を相手にした戦いの結末から広がっていく世界に期待の王道ファンタジーです。

 

3.WORLD END ECONOMiCA電撃文庫)全3巻
https://bookwalker.jp/series/52386/list/

WORLD END ECONOMiCA (1) (電撃文庫)

WORLD END ECONOMiCA (1) (電撃文庫)

 

夢を叶えるため株式市場に活路を見出す月生まれ月育ちの家出少年ハルが、ふとしたきっかけから数学の天才少女ハガナと出会い、コンテスト優勝と周囲の人々の危機打開を目指す物語。夢のために孤高だったハルが彼女たちに出会い触発され、自分に自信を持てなかったハガナもハルへの協力をきっかけに変わっていく、そんな不器用な二人の距離感の変化。そんな存在に葛藤しながら、二人が夢やその思いを語れるようになるまでに近づいたからこそ、終盤の喪失感、そして絶望が切なかったです。そんな一度は全て失ってしまった彼らの壮大な挑戦が盛り上がるシリーズです。

 

4.マグダラで眠れ(電撃文庫)全8巻
https://bookwalker.jp/series/8320/list/

マグダラで眠れ (電撃文庫)

マグダラで眠れ (電撃文庫)

 

錬金術師クースラは罪を許される代わりに、グルベッティの工房で研究を行うことになり、監視役として純真な修道女フェネシスが送り込まれる物語。世界観としては十字軍あたりの時代をベースとした感じなんでしょうか。錬金術師とはどういうものか、その世界における背景の説明に多くを割いた序盤は、なかなかページも進みませんでしたが、それでも相棒にフェネシスの相手を丸投げされてからの繊細な心理描写、巧みな駆け引きから生まれる畳み掛けるような展開は流石です。クースラとフェネシスの今後に期待のシリーズですね。

 

5.エスケヱプ・スピヰド電撃文庫)全8巻
https://bookwalker.jp/series/11881/list/

エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫)

エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫)

 

昭和がもうしばらく続く近未来、大戦後の世界が舞台で、ボーイミーツガールな話と書くには、やや文章が硬めだったかなという印象です。ただ九曜の持っている雰囲気や、この作品の世界観にはうまくマッチしていたと思います。かつての戦友で強敵の竜胆を前にしてあくまで兵器であろうとする九曜と、天涯孤独な叶葉が偶然出会い、お互い感化されていくことで、結果としてこれまで抱えていた過去のしがらみを、何とか乗り越えられた部分があったのかもしれません。旅立つことになった二人がどう変わっていくのか、その行く末が楽しみなシリーズですね。

 

6.さよならピアノソナタ電撃文庫)全5巻
https://bookwalker.jp/series/342/list/ 

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

 

ナオがお気に入りの粗大ゴミ捨て場で出会ったピアノを弾く少女真冬。転校生として再会した彼女は、エレキギターを弾くためナオが利用する廃校舎の部屋を占領してしまうボーイ・ミーツ・ガールな物語。ナオも鈍いしちょっとズレてるんだけど、部屋の奪還を賭けた勝負をきっかけに、心を閉ざしていた真冬と、音楽を通じて、そして行動を共にして少しずつ心を通わせていく描写がいいですよね。自称革命家の神楽坂先輩もいい具合にかき回してくれるし、幼馴染の千晶も好きなキャラです。ベタで王道な作品ですがテンポも良くて、今読んでも面白いですね。

 

7.佐伯さんと、ひとつ屋根の下(ファミ通文庫)全5巻
https://bookwalker.jp/series/104481/list/

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

  • 作者:九曜
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/02/28
  • メディア: 文庫
 

高校二年生の春、ひとり暮らしを始めるはずだった弓月恭嗣が、不動産屋の手違いでひとつ年下の帰国子女・佐伯貴理華と同居するはめになってしまう物語。無防備な距離感で接してきて家の中と外とでは印象が違う佐伯さんと、苦い過去を持つがゆえに家の外では一定の距離を置こうとささやかな抵抗を続ける弓月くん。表情豊かでキャラとしてもよく動いている佐伯さんとの同居生活が弓月くんを少しずつ変えていって、その変化がクールな弓月くんの元カノ宝龍さんや周囲の友人たちにもまた影響を及ぼしてゆく展開はとても良かったです。

 

8.いでおろーぐ!電撃文庫)全7巻
https://bookwalker.jp/series/44304/list/

いでおろーぐ! (電撃文庫)

いでおろーぐ! (電撃文庫)

 

「恋愛を放棄せよ! すべての恋愛感情は幻想である! 」同じクラスの目立たない少女、領家薫の言説に同調した高砂が「反恋愛主義青年同盟部」の活動に参加してゆく物語。仲間を募ってリア充撲滅活動を広げていく一方で、行動を共にしていく過程で接近してゆく二人の距離感。地球外侵略生命体まで絡めた、どう見てもラブコメですありがとうございますな展開にどう決着を付けるのかと思いましたが、さすがにこれは予想できませんでした(苦笑)キャラもよく動いてイラストも秀逸なシリーズです。

 

 

9.白銀のソードブレイカー(電撃文庫)全4巻
https://bookwalker.jp/series/18962/list

聖剣で世界を護る7人の剣聖を殺そうとする少女エリザと、家族を殺した仇を探している傭兵レベンスの物語。バトル多めで、剣聖殺しエリザの剣技の拙さはちょっと気になりましたが、戦っている時と平時のまだ幼い感じのギャップは可愛くて、またレベンスとの組み合わせもなかなか良かったと感じました。戦ったりエリザとの話の中で剣聖と剣魔の謎も徐々に明らかになっていきますが、一方でまだエリザやその剣にも秘密がありそうで、そんな二人の旅路を描いたシリーズです。

 

10.天空監獄の魔術画廊(角川スニーカー文庫)全5巻
https://bookwalker.jp/series/23884/list/

天空監獄の魔術画廊 (角川スニーカー文庫)

天空監獄の魔術画廊 (角川スニーカー文庫)

 

絵画きの少年リオンが罪を着せられて『魔王の絵画』が封じられる『天空の大監獄』に閉じ込められてしまい、与えられた看守の役割を果たしつつ、出会った囚人の少女たちと協力して脱獄の機会をうかがう物語。様々な事情を抱え『魔王の絵画』をその身に封じられてしまった囚人の少女たちも、お姉さんキャラに見えて実はチョロインだったキリカだったり、元詐欺師ながらも心優しいレオナなどそれぞれが魅力的で、リオンもまた熱い心でその想いに応える絆があって期待以上に楽しめた作品でした。


11.クロス×レガリア角川スニーカー文庫)全8巻
https://bookwalker.jp/series/1232/list/

トラブル1回千円でボディーガードをしている高校生の馳郎が、逃亡中だった少女・ナタを拾って一緒に暮らしているうちに、鬼仙たちとの戦いに巻き込まれていくお話。ナタが鬼仙たちの最終兵器という設定を軸に、二転三転する状況で関係性が変わっていくのは面白かったです。普段の雰囲気とのギャップがあるナタと、普通の高校生のボーイミーツガールかと思ったのですが、馳郎も実はトンデモ設定の大物だったりしました(苦笑)終盤に馳郎の義妹のリコも出てきたりで魅力的なキャラも多く、これからの展開が面白いシリーズです。

 

12.剣の女王と烙印の仔MF文庫J)全8巻
https://bookwalker.jp/series/1117/list/

剣の女王と烙印の仔〈1〉 (MF文庫J)

剣の女王と烙印の仔〈1〉 (MF文庫J)

 

「獣の烙印」を持って生まれた傭兵クリスが、自らの死を予見する力を持つ少女ミネルヴァと運命の出会いを果たすファンタジー。著者のファンタジーものは初めて読んだのですが、テンポ良く読めましたね。騎士団の面々もキャラが立っていて好感。最大のライバルになると思っていた存在が、早々に退場したのは意外でしたが、自らと一緒にいると皆死んでしまうと恐れるクリスと、自分の奴隷だとかいいながら独占欲があって、自らの予見を覆すものとしてずっと一緒にいるように求めるミネルヴァの不器用なのに近いその距離感は今後に期待のシリーズ。

 

13.魔剣の軍師と虹の兵団(MF文庫J)全4巻
https://bookwalker.jp/series/22641/list/

魔剣の軍師と虹の兵団<アルクス・レギオン> (MF文庫J)
 

亡国の地トレントから大国に反旗を翻した失地王の下、魔剣の軍師ジュリオが集めた英雄たちと立ち上がるファンタジー戦記。英雄たちはなぜかことごとく残念な性格で、日常は突っ込まれることの多い展開になりがちでしたが、そんな彼ら彼女らも戦場では大活躍したり、戦闘パートもしっかり描かれていたり、それだけで終わらずにうまくメリハリを効かせていました。シリアスな展開の戦記ものが多い中ではやや異色の存在ですが、登場するキャラたちも魅力的に描かれていて面白かったです。

 

14.結局、ニンジャとドラゴンはどっちが強いの?(MF文庫J)全4巻
https://bookwalker.jp/series/43292/list/

結局、ニンジャとドラゴンはどっちが強いの? (MF文庫J)
 

竜人によって人類が追い詰められている世界で、とある村を守る剣聖女・メルシオーネと出会い主従契約を結んだシノビ・サビトが二人でドラゴンと戦うバトルファンジー。特殊な存在であることを隠しながらわりと天然で無防備なメルと、実力はあるけど朴念仁なサビトの二人が出会って、相性の良さを感じさせる会話を積み重ねて少しずつ距離感が変わったり、悲壮な決意を抱えがちなメルをサビトがしっかりと支える構図がとても良かったです。激闘を二人で乗り越えて共に歩むことを選択した二人がこれからどうなっていくのか期待のシリーズ。

 

15.子ひつじは迷わない角川スニーカー文庫)全6巻
https://bookwalker.jp/series/1884/list/

生徒会に持ち込まれた相談事を、隣の資料室で独り読書をしている幽霊文芸部員が、安楽椅子探偵よろしく解き明かすライトミステリー。対極の理由で人との関わりを避けていた生徒会初書記の佐々原と、幽霊文芸部員の仙波、そして何度も失敗しながらも人のために動くなるたまこと成田真一郎の三人それぞれの視点で代わる代わる語られるお話は、仙波が解き明かした結果から、なるたまが独自に行動して一捻り加えてしまうので、手軽に読めるなかなか面白いテイストに仕上がっていたお話でした。その三角関係含めた展開に期待のシリーズ。

 

以上です。

面白いと思える本があったら是非読んでみて下さい。

 

2010年代単行本ベスト20作品

2010年代ベストも「ライトノベル青春小説」 「ライトノベルファンタジー」「ライト文芸」「ライト文芸単巻作品編」「一般文庫」と更新してきましたが、この単行本編が最後です。単行本も文庫化する作品や絶版となってしまう作品もあったりで、セレクトしてみたら最近の本が中心になってしまいましたが、印象に残った作品を20冊選びました。

 

1.medium 霊媒探偵城塚翡翠(2019)

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

 

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎が出会った、霊媒として死者の言葉を伝える城塚翡翠。そんな彼女の霊視と論理の力を組み合わせて殺人事件に立ち向かうミステリ。殺された香月の後輩、招待された別荘で殺された先輩作家、女子高生連続の犯人を警察に協力する二人が翡翠の霊視と香月の論理で何とか解決してゆく展開で、けれど最後の連続殺人犯との対峙は、これまで積み重ねて来たものの何が虚で実だったのか分からなくなる急展開に繋がって、その何とも鮮烈で皮肉に満ちていた決着をいろいろと想起させるエピローグが際立たせていました。

2.線は、僕を描く(2019)

線は、僕を描く

線は、僕を描く

  • 作者:砥上 裕將
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/06/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生・青山霜介。アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会い、初めての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく青春小説。湖山に気に入られてその場で内弟子にされた霜介と、反発して翌年の「湖山賞」での勝負を宣言する湖山の孫・千瑛。初心者ながらも水墨画にのめり込んでいく霜介に、彼と関わるうちに千瑛もお互いに刺激を受けて変わっていって、才能だけでも技術だけでもない水墨画の世界で、その本質に向き合い続けた二人が迎える結末には新たな未来が垣間見えました。面白かったです。

3.永遠についての証明(2018)

永遠についての証明

永遠についての証明

 

特別推薦生として協和大学の数学科にやってきた瞭司と熊沢、そして佐那。眩いばかりの数学的才能で周囲の人生を変えていった瞭司の運命の出会いと失意、彼の遺した研究ノートから熊沢がその想いに再び向き合う物語。仲間と得た成果に希望を見出す瞭司と、突出した成果がそれぞれが別の道を選ぶきっかけとなってしまう皮肉。瞭司と仲間たちのすれ違いは残念でしたが、彼が遺した研究ノートに見出した可能性が、形は変わっても失われていなかったそれぞれの想いを再び繋げていって、それが新たな希望を紡いでゆく展開にはぐっと来るものがありました。

4.名探偵誕生(2018)

名探偵誕生

名探偵誕生

 

小学生の頃から様々な冒険をしていたみーくんに不穏の影が差した時、いつも助けてくれた名探偵のお姉ちゃん。そんな千歳お姉ちゃんとの初恋とみーくんの成長を描くミステリ青春小説。ずっとみーくんに寄り添い見守ってくれていた千歳お姉ちゃんへの想いは募ってゆくのに、なかなか姉妹のような関係から抜け出せないもどかしさについ共感してしまいましたが、次々と事件を解決してきた生粋の探偵である彼女を救うため、ほろ苦い複雑な想いを乗り越えて自ら立ち上がるみーくんがとても格好良かったです。どこでまた彼らのその後を読めるといいですね。

5.電気じかけのクジラは歌う(2019)

電気じかけのクジラは歌う

電気じかけのクジラは歌う

  • 作者:逸木 裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/08/08
  • メディア: 単行本
 

人工知能が作曲をするアプリ「Jing」が普及し、作曲家の仕事が激減した近未来。「Jing」専属検査員になった元作曲家・岡部の元に、自殺した現役作曲家で親友の名塚から未完の新曲と指紋が送られてくる近未来ミステリ。名塚から託されたものの意味と、事故で右手が不自由になった名塚の従妹・梨紗の苦悩、そして「Jing」を作り出した霜野の野望。「Jing」で気軽に音楽を作れてしまう中、あえて自分の手で音楽を作り出す意味に葛藤しながらも、秘められた名塚の想いに気づいてゆく展開は著者さんらしさがよく出ていて面白かったです。

6.禁じられたジュリエット(2017)

禁じられたジュリエット

禁じられたジュリエット

  • 作者:古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

ミステリ小説が退廃文学として禁書扱いな世界観の日本で、それに触れてしまった女子高生6人が囚人として収監され、看守役2名を加えた8名で更正プログラムに参加させられる本格ミステリ。プログラムを早く切り上げられるよう協力するはずだった友人8人。役割に徹するうちに急速に対立を深めてゆく描写はあまりにも過酷で、二転三転してゆく展開には驚かされ、追い詰められた参加者たちの叫びは痛切で心に響くものがありましたが、終わってみるとなぜか清々しさすら感じてしまったその読後感に著者さんの深い本格ミステリ愛を見る思いがしました。

7.友達未遂(2019)

友達未遂

友達未遂

  • 作者:宮西 真冬
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

伝統と格式のある全寮制女子高・星華高等学校。その寮で不審な事件が次々と起き、ルームメイト4人が巻き込まれていく青春小説。家に居場所がなかった茜、学校で伝説となっている母を持つ生徒会長の桜子、美工コースの憧れの先輩・千尋、周囲に迎合しない天才肌の真尋。複雑な家の事情や周囲の評価とのギャップに鬱屈を抱えていたりと、一人ひとり語られてゆくそれぞれの過去。けれど今まで見えていたものが全てではなくて、自分をきちんと見て気にかけてくれる人がいて、少しずつ変わってゆく彼女たちが迎えた結末にはぐっと来るものがありました。

8.彼女の色に届くまで(2017)

彼女の色に届くまで

彼女の色に届くまで

  • 作者:似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/03/29
  • メディア: 単行本
 

画廊の息子で幼い頃から才能を過信し画家を目指している緑川礼。しかしいつの間にか冴えない高校生活を送っていた礼が、無口で謎めいた同学年の美少女・千坂桜と出会うアートミステリ。礼が衝撃を受けた原石のような彼女の絵の才能。その推理で礼の窮地を救ってみせる桜の意外な一面と、共に過ごすようになってゆく日々。圧倒的な才能を前に平凡な自分を突きつけられる葛藤と少しの打算、生活力皆無な桜が気になって飼育係として世話を焼いてしまう礼の複雑な想いが悩ましいですが、それでも不器用な二人らしい結末はとても素敵なものに思えました。

9.君を描けば嘘になる(2018)

君を描けば嘘になる

君を描けば嘘になる

  • 作者:綾崎 隼
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/01/25
  • メディア: 単行本
 

寝食も忘れてアトリエで感情の赴くまま創作に打ち込む毎日だった瀧本灯子が出会った、自分にはない技術を持つ南條遥都という少年の存在。お互いに認め合う二人の若き天才の喜びと絶望の物語。絵を描くこと以外の才能が壊滅的だった灯子と、そんな彼女の指針となったもう一人の天才・遥都。そんな二人のありようを影響を受けた周囲の視点からも浮き彫りにしつつ、良くも悪くも直情的な灯子に対して、断片的にしか描かれない不器用な遥都の積み重ねてきた想いが垣間見える結末は、ほんと素直じゃないなあと苦笑いしつつもとても良かったと思いました。

10.青少年のための小説入門(2018)

青少年のための小説入門

青少年のための小説入門

 

中学2年だった一真が万引きを強要された現場でヤンキーの登と出会い、幼い頃から自由に読み書きができなかった彼と共に小説家を目指す青春小説。文字を読むのには苦労する登が一真に小説の朗読をしてもらって、彼が頭の中に湧き出すストーリーを一真が小説にする日々。そして一真が出会った少女・かすみとのほのかな恋。二人で多くの印象的な作品を読みながらコンビで小説家を目指すべく試行錯誤を続ける二人が、作家になってから少しずつ歯車が狂ってゆく展開はもどかしくて、けれどそんな彼らのままならない青春にはぐっと来るものがありました。

11.探偵は教室にいない(2018)

探偵は教室にいない

探偵は教室にいない

 

北海道の中学校に通う14歳の海砂真史を主人公に、英奈、総士、京介ら同級生たちとの日々の中で生まれるちょっとした謎を、真史のちょっと変わった幼馴染・鳥飼歩が解き明かしてゆく連作短編集。差出人不明のラブレター、ピアノに対する京介の複雑な想い、総士が隠していた真相、そして真史の家出と四つの物語が収録されていて、登場人物たちの周囲に対して素直になれない繊細な心情を巧みに描きつつ、相談された謎を解き明かしてゆく一見無頓着な探偵役・歩が見せる細やかな心遣いがなかなか効いていました。この作品の続編をまた読みたいです。

12.忘られのリメメント(2018)

忘られのリメメント

忘られのリメメント

  • 作者:三雲岳斗
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/08/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

擬憶素子「MEM」を額に張るだけで、他者の記憶を擬憶体験できるようになった近未来。「憶え手」である歌手・宵野深菜が、リギウス社CEOの迫間影巌から脱法MEMの調査を依頼されるSFサスペンス。調べてゆく上で浮かび上がる深菜の生い立ちに深く関わる稀代の殺人鬼・朝来野と模倣犯の存在、そして殺されてしまった同居人・三崎真白。記憶を追体験できるという技術を物語のベースに据え、虚実織り交ぜた体験をしながら朝来野の行方を追ううちに特異だった自らのありようとも向き合い、しっかりと決着をつける展開はなかなか良かったですね。

13.エンド オブ スカイ(2019)

エンド オブ スカイ

エンド オブ スカイ

  • 作者:雪乃 紗衣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/04/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

ゲノム編集技術によって老いや病から緩やかに遠ざかりつつある23世紀。謎の突然死「霧の病」を研究する遺伝子工学の権威ヒナコ・神崎博士が海から現れた少年・ハルと出会う近未来SF。ゲノム編集が推奨された香港に現れたオリジナルゲノムを持つハルと、どこか不安定なヒナコの交流の日々。「霧の病」が急速に拡大してゆく中でその原因が見えてきて、何が正常で異常なのかわからなくなる皮肉な展開でしたけど、周囲の人たちに支えられながらハルと向き合ったかけがえのない日々と、いくつもの伏線が回収された先にある結末が印象的な物語でした。

14.君の話(2018)

君の話

君の話

 

記憶改変技術「義憶」が普及した世界。二十歳の夏、天谷千尋が一度も出会ったことのない、存在しないはずの幼馴染・夏凪灯火と再会し動き出す物語。何もない過去を消したかったはずが、植え付けられたたった一人の幼馴染の鮮明な記憶。あまりにも運命的な再会から突如目の前に現れた灯花の存在を疑いながらも、どうしようもなく惹かれてゆく千尋。そこにはもうひとつの物語があって、不器用でお互い遠回りせざるをえなかった二人がきちんと向き合って、儚く切ないけれど優しさが感じられる物語の結末に著者さんらしさがよく出ていると思いました。

15.愛を知らない(2019)

愛を知らない

愛を知らない

 

ヤマオの推薦で合唱コンクールのソロパートを任された高校二年生の橙子。親戚でクラスメイトの涼の視点から彼女の苦悩と決意が描かれる青春小説。気難しくて周囲から浮いていた橙子に期待するヤマオ、一緒に練習することになった伴奏役の涼と委員長で指揮者の青木、共に過ごす中で意外な一面を見せてゆく橙子が抱える苦悩。これまで見えていたものがガラリと反転した世界で、どうにもならないところまで拗れてしまった関係があって、やりきって勝ち取った結果にはぐっと来ましたが、だからこそその先にあったこの物語の結末が胸に突き刺さりました。

16.映画化決定(2018)

映画化決定

映画化決定

 

過去に描いたマンガ『春に君を想う』を超えられず苦悩していた高二男子のナオトに、学生向けの映画で受賞している天才監督・ハルからの『春に君を想う』映画化オファー。最初は乗り気でなかった彼が少しずつ映画製作にのめり込んでいく青春小説。映画製作の過程でぶつかりあいながらも絆を深めてゆく二人。病をひた隠しにするハルと、映画制作を通じて『春に君を想う』の本質に向き合うことになってゆくナオト。葛藤と情熱が入り交じる形で進行していく物語の構図はわかりやすくて、だからこそ意外に思えたその結末には上手いなあと思わされました。

17.他に好きな人がいるから(2017)

他に好きな人がいるから

他に好きな人がいるから

 

寂れてゆく造船の田舎町。目立たないように鬱屈を抱えながら生きている高校生・坂井が、夜のマンション屋上で危険な自撮りを投稿し続ける白兎のマスクを被った少女と出会う青春恋愛ミステリ。苦い過去に縛られる少年と兎人間の秘密の共犯関係。クラスで浮いている少女・峰に巻き込まれてゆく学校生活と、彼女が意識する優等生の少女・鈴木。どこか危うさを感じさせる日々が続いた末に起きた事件とその真相は衝撃的で、いつまでも忘れられない坂井がこれからどうするのか、読み終わるとタイトルの意味がじわじわと効いてくる印象的な物語でした。

18.悪女の品格 (ミステリ・フロンティア 2017)

悪女の品格 (ミステリ・フロンティア)

悪女の品格 (ミステリ・フロンティア)

 

幼い頃からヒエラルキーの頂点に君臨し、今もかつての同級生三人と同時に付き合い貢がせている光岡めぐみ。しかし小学生時代の同級生への仕打ちをなぞるかのように次々と襲われ、婚活パーティーで知り合った大学教授の山本と犯人を絞り込んでゆくミステリ。共に犯人を追いかける中で暴かれ、明らかになってゆく周囲の人物たちの本当の思い。これまでやりたいように生きてきたことを思えば、因果応報とも思える結末でしたけど、そんな彼女が提示された二回目の人生をこれからどう生きるのか少しだけ気になる、決して悪いばかりではない読後感でした。

19.僕と彼女の左手 (2018)

僕と彼女の左手 (単行本)

僕と彼女の左手 (単行本)

 

幼い頃遭遇した事故のトラウマで、医者になる夢を前に壁にぶつかった医学生の習。そんな彼が左手一本でピアノを引く不思議な女性・さやこに出会い、共に時間を過ごすようになってゆくミステリ。教師を目指すさやこのために家庭教師として共に過ごすようになる二人。彼女にどんどん惹かれてゆき付き合うことになった習が、勉強よりもピアノに意識が向きがちな彼女のありように少しずつ感じるようになってゆく違和感。積み重ねられてゆく不安の先にあった真実は真摯な想いと共にあって、二人が出会えて本当に良かったと思えるとても素敵な物語でした。

20.流浪の月(2019)

流浪の月

流浪の月

 

奔放に育ててくれた両親を失い、引き取られた伯母の家で追い詰められてゆく更紗。そんな行き場のなかった彼女を受け入れた文が抱えていた苦悩。真実を知られることがないまま否定された二人の関係。確かに難しいテーマで、どんなに真摯な想いがあろうと世間一般の常識では容認し難いものがあるのは分からなくもないんですけどね。けれど辛い過去からうまく生きられない不器用な登場人物たちがいて、たくさん傷つきながらも育んできた揺るぎない真っすぐな想いがあって、ただともにありたいというささやかな願いくらいは叶う未来であって欲しいです。

 

以上です。勢いつけてではありましたが、思ったより早く終わったのも見ていただいた皆さんのおかげです。今後ともよろしくお願いします。

2010年代一般文庫ベスト20作品

というわけで「ライトノベル青春小説」「ライトノベルファンタジー」「ライト文芸」「ライト文芸 単巻作品編」に続く第五弾は一般文庫編です。

一般文庫とはいっても「一般文庫レーベルで出している本」という意味で、もともとの嗜好的にキャラ文芸寄りではあるのでその点は予めご了承ください(苦笑)ライト文芸編でシリーズものも好きで入れようと思ったら、ものの見事に単巻が入らず別立ててつくることになりましたが、今回は一般文庫はその反省を踏まえて誰でも知っているような長いシリーズものなどはあえて対象外として、巻数少ないものと単巻中心にこれだと思う作品をセレクトしました。

 

1.君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫 2017) 全2巻

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった (宝島社文庫)

  • 作者:筏田 かつら
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2017/03/25
  • メディア: 文庫
 

勉強合宿の夜に困っていた同級生の北岡恵麻を助けた地味で冴えない飯島靖貴。それをきっかけに密かな交流が生まれてゆく地味系眼鏡男子と人気者ギャルのすれ違いラブストーリー。入学直後の出来事で恵麻に苦手意識を持っていた靖貴と、助けてくれた靖貴が気になってゆく恵麻。学校では知らんぷりだけれど予備校帰りのわずかな時間で育まれてゆく二人の交流。少しずつ想いが積み重なってゆくのに、繊細で不器用な二人が距離を詰め切れないうちに起きる様々なすれ違いがとても切なかったです。そんな焦れったくなる展開と、だからこそギリギリでの巡り合わせの妙がなかなか効いています。
関連シリーズ:「君に恋をしただけじゃ、何も変わらないはずだった」 (宝島社文庫)

 

2.活版印刷日月堂 (ポプラ文庫 2016-2019) 全4巻+別巻1巻

([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)

([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)

 

長らく空き家だった川越の片隅に佇む印刷所・三日月堂。そこにかつて亡くなった店主の孫娘・弓子が住むことになり、昔ながらの活版印刷で人との繋がりを解きほぐしてゆく物語。近しい人との関係に迷いを抱える登場人物たちが、身近な人の繋がりから知る営業を再開した三日月堂の存在。物静かで真摯な弓子さんと一緒に印刷するものを考えてゆくうちに、悩みにもきちんと向き合えるようになってゆく展開は、失われた活版印刷の良さを思い出させてくれるだけでなく、作られた印刷物も悩める人の想いに寄り添っていて、とても素敵な物語だと思いました。

 

3.君を愛したひとりの僕へ/僕が愛したすべての君へ (ハヤカワ文庫 2016)

君を愛したひとりの僕へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-2)

君を愛したひとりの僕へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-2)

 

並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て父親と暮らす少年・日高暦が、父の勤務する虚質科学研究所で佐藤栞という少女に出会う物語。親同士が離婚した研究者という共通点から、共に過ごすうちにほのかな恋心を育んできた暦と栞。全てを一変させるきっかけとなった親同士の再婚話と二人を襲った悲劇。諦めきれずに彼女を取り戻すために生きることを決意した暦の執念は凄まじいと感じましたが、そんな彼に寄り添うように支え続けた同僚の研究者・和音の献身ぶりにも思うところが多かったです。同時刊行のどちらを先に読むのかは悩ましいですね。

僕が愛したすべての君へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-1)

僕が愛したすべての君へ (ハヤカワ文庫 JA オ 12-1)

 

並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦が、地元の進学校で85番目の世界から移動してきたというクラスメイト・瀧川和音と出会う物語。入学時の因縁をきっかけに運命的な出会いを果たした、暦と和音の一見腐れ縁のようにも思える関係。同時刊行作品の出来事との関連性を織り交ぜつつ、並行世界が実在する世界ならではの問題に悩まされながらも、それを力を合わせて乗り越えてゆく二人はとても幸せだったんだろうなと思わせるものがありました。二つ読んで比べてみるといろいろ思うところが出てきてとても面白かったです。

 

4.霊感検定 (講談社文庫 2016- ) 本編3巻

霊感検定 (講談社文庫)

霊感検定 (講談社文庫)

 

バイト帰りに同級生の羽鳥空と印象的な出会いを果たした転校生の修司。彼女と再会した図書室で風変わりな司書・馬渡の心霊現象研究会の活動に巻き込まれてゆく青春ホラー。霊の想いに寄り添うちょっと変わった女の子・空と彼女を見守る幼馴染・晴臣。彼ににらまれながらも空とのやりとりを貴重に思う修司。仲間と解決する霊絡みのトラブルは切なかったり重かったりもしましたが、登場人物も魅力的でページの割にはとても読みやすく、彼らの優しい想いがつまった甘酸っぱい青春している雰囲気をたっぷりと味わえます。

 

5.筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫 2015- ) 本編4巻-

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫)

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫)

  • 作者:谷 春慶
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2015/10/06
  • メディア: 文庫
 

祖父が残した謎を解き明かすため、大学生の美咲が著名な書道家で端正な顔立ちながら毒舌家の同級生・東雲清一郎を訪ねる連作短編ミステリ。清一郎が書に対する知識を披露しつつ筆跡を分析して様々な事件を解決していくストーリーで、始めは美咲を邪険に扱っていた清一郎も、真っ直ぐな彼女と接するうち意外な優しさを見せたり、美咲のために事件解決に奔走したりと徐々に感化されてゆく過程がなかなか良かったですね。徐々に明らかになってゆく清一郎の過去の因縁に二人の関係を絡めて描かれるシリーズです。

 

6.トオチカ (角川文庫 2016)

トオチカ (角川文庫)

トオチカ (角川文庫)

 

親友と2人で鎌倉の小さなアクセサリー店「トオチカ」を営む里葎子。手痛い恋愛を乗り越えていたと思っていた彼女がバイヤーの千正と出会い、心揺さぶられてゆく不器用な大人の恋の物語。会えば行動の一つ一つが気になって苛立つ里葎子と、なぜかそんな彼女の地雷を踏みまくる千正。優しくされたり雑貨の趣味が似ていても素直になれず、距離感が分からなくなったり言葉の選択を間違えてしまう不器用な関係が、とあるきっかけから戸惑いながらもいい感じにまとまっていって安心しました。巻末の短編もいい感じに幸せ感を補足していて良かったですね。

 

7.妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫 2017)

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

  • 作者:桜川 ヒロ
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2017/10/05
  • メディア: 文庫
 

未来に起こる確率を調べる技術が確立した世界。自らが抱える苦しい思いをどうにかしたくて、確率をつい確認し続けてしまう人たちの物語を描く連作短編集。政略結婚や大怪我、路面電車での出会い、届かぬ思いや父と娘の関係、忘れられない運命の出会いなど、停滞する状況を抱える登場人物たち。それでも人との関わりの積み重ねから事態や心境も少しずつ変化して、それに向き合ったり素直になったり次に向けた一歩を踏み出してゆく7つのエピソードは、表題作でもあるタイトルイメージをいい意味で裏切る思いのほか爽やかな読後感の素敵な物語でした。

 

8.女流棋士は三度殺される (宝島社文庫 2017)

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

女流棋士は三度殺される (宝島社文庫)

  • 作者:はまだ 語録
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2017/03/25
  • メディア: 文庫
 

自分の目の前で幼馴染・歩巳が暴漢に襲われ姿を消した事件をきっかけに、棋士を諦めたかつての天才少年棋士・香丞。高校で美貌の女流棋士として再会した彼女が再び何者かに襲われ、その事件の真相を追う将棋ミステリ。コンピューター将棋が棋士に勝つのが当たり前になった近未来が舞台。謎解きのアプローチにいくつか後出し設定もあったのは少し気になりましたが、棋士を目指すもう一人の幼馴染・桂花も交えた三角関係の機微や、コンピューター将棋の考察も絡めながらたどり着いた結末の意味にはなるほどと納得してしまいました。面白かったです。

 

9.外資系オタク秘書 ハセガワノブコの華麗なる日常 (祥伝社文庫 2015- ) 本編3巻

外資系オタク秘書 ハセガワノブコの華麗なる日常 (祥伝社文庫)

外資系オタク秘書 ハセガワノブコの華麗なる日常 (祥伝社文庫)

  • 作者:泉 ハナ
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2015/06/12
  • メディア: 文庫
 

筋金入りのオタクなのに、学生時代をアメリカで過ごさざるをえなかった外資系銀行秘書・ハセガワノブコ(32歳・独身)が、オタクライフを満喫するため日々奮闘する物語。オタクライフさえ充実していればいいのに、アメリカ帰りなことや上司の友人がいい男とか、セレブと知り合いだったり、自分にとってどうでもいいことで周囲から妬まれるのは、なかなか辛いものがありますね。突撃厨は怖すぎ(笑えない)。でも万難を排してオタクライフに邁進するノブコたちはとても楽しそうで、そのありように少し共感してしまいました(苦笑)

 

10.know (ハヤカワ文庫JA 2013年)

know (ハヤカワ文庫JA)

know (ハヤカワ文庫JA)

 

電子葉の接続が義務付けられてるような高度情報化社会を舞台に、全ての情報を手に入れることができる少女知ルを恩師に託された連レルが、約束を果たすまでの四日間を共に過ごすお話。小説ではありますが「知っている」ということの定義が変わった世界で、では「知る」ということがどういうことか、文中で語られる考察はとても興味深く読めました。知ることを突き詰めていくと、最終的に死とは何かに行き着くというのはなるほどと思いましたが、最後の言葉から示唆されるように、この世界ではそれすらも乗り越えてしまったということなんでしょうね。

 

11.リライト (ハヤカワ文庫JA 2013- 2015) 全4巻

リライト (ハヤカワ文庫JA)

リライト (ハヤカワ文庫JA)

 

300年後の未来で見つけた本を探すために、タイムリープで現代にやってきた保彦を救うため、10年後の未来に跳ぶ女子高生美雪のボーイ・ミーツ・ガール...というような単純なお話ではありませんでした(苦笑)2002年の美雪視点と、1992年の過去視点が交互にあって、過去視点は登場人物が変わるのに、なぜか話が繋がって進行していて、どういうことなのか読んでいて頭がグルグルしました。膨大な時間と手間を掛けた壮大な辻褄合わせも、一人の復讐から破綻する。理解しながら読むのにちょっと時間かかりましたけど、面白かったです。

 

12.魔女は月曜日に嘘をつく (朝日エアロ文庫/朝日文庫 2014-2018) 全3巻

魔女は月曜日に嘘をつく (朝日エアロ文庫)

魔女は月曜日に嘘をつく (朝日エアロ文庫)

 

病気をきっかけに仕事も恋人も失い札幌に逃げてきた犬居が、縁で魔女を自称する感受性の強い少女卯月杠葉の経営するハーブ農園「フクロウの丘」で働くことになる物語。上手くやろうと妥協してしまう犬居と、人付き合いが苦手で嘘が大嫌いな杠葉は、最初お互いをよく分からなくてたくさん衝突しましたが、将来的にはお互いが足りない部分を刺激して、いい方向に導けるコンビになれそうな可能性を感じました。杠葉はまだ謎も多いですし、二人の今後も気になるところですが、まずは農園経営を軌道に乗せるところからですよね(苦笑)

 

13.私を知らないで (集英社文庫 2012)

私を知らないで (集英社文庫)

私を知らないで (集英社文庫)

 

転校を繰り返して無難に生きることを覚えてしまった慎平と、クラスで孤立していたキヨコ、そんな彼女を救おうとしながらも、引きこもりになってしまった高野の物語。頭では冷静に計算しつつもキヨコが気になって仕方ない慎平は、彼女を知るたびに惹かれていって、でもおじさんがキヨコを訪ねてきたことでどこか予感できた結末。苦境に陥ったキヨコを救うには中学生はあまりにも無力で、ただ「普通になりたい」という彼女の思いを叶えるために、もっと上手く立ちまわることもできたのに、そうしなかった慎平の決断には、泣きたくなってしまいました。

 

14.プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA 2018)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

 

有機素子コンピュータによる会話プログラムの共同研究者を失い何も手につかなくなった南雲助教と、列車に轢かれて亡くなった元恋人の会話を再現しようとする学部生の佐伯衣理奈。そんな前に進めない二人が巡り合う連作短編集。会話プログラムとのやりとりを交えつつ繰り広げられる、共同研究者、契約社員、元恋人、そして南雲と衣理奈のエピソード。概念自体はやや難解でしたが、理系らしい合理思考と割り切れない情念のせめぎ合いの中で変化してゆく不器用な人間模様はとても優しくて、そんな彼らが迎えた結末はなかなか心に響くものがありました。

関連シリーズ:「グリフォンズ・ガーデン」(ハヤカワ文庫JA)

 

15.僕は小説が書けない (角川文庫 2017)

僕は小説が書けない (角川文庫)

僕は小説が書けない (角川文庫)

 

不幸体質や家族関係に悩む高校1年生の光太郎。先輩・七瀬の強引な勧誘で廃部寸前の文芸部に入部した彼が、部の存続をかけて部誌に小説を書くことになる青春小説。物語を書けなくなっていた光太郎が出会った七瀬先輩の容赦ない批評。プレッシャーが掛かる部誌作成という状況で、振り回すOBふたりの存在と自覚してゆく七瀬先輩への想い。知りたくもない現実を突きつけられてきた光太郎が、それでも苦悩を乗り越えてきちんと向き合ったからこそ見えた光明があって、相変わらず不器用な彼のこれからを予感させるエピローグがとても素敵な物語でした。

 

16.ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫 2019)

ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)

ただいま、ふたりの宝石箱 (角川文庫)

 

仮面を被った仕事ぶりに限界が来て退職し、譲り受けた古民家で趣味のアクセサリーづくりをして暮らす涼子。そんな家に店子として宝飾職人「希美」さん住むことになるあたたかな再生の物語。趣味も合い配慮が行き届いていて、欲しい時に欲しい言葉をくれる希美に惹かれていく涼子。一方で未だに引きずる複雑な過去の想いや、容易に解けない呪いから素直に心を開けない状況にもどかしくもなりましたが、そんな彼女を尊重しつつ粘り強く向き合って、様々な過去のわだかまりを解きほぐすのを手伝ってくれた彼に出会えてほんとに良かったなと思えました。

 

17.サブマリンによろしく (宝島社文庫 2017)

サブマリンによろしく (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

サブマリンによろしく (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者:大津 光央
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2017/05/09
  • メディア: 文庫
 

28年前に八百長疑惑で自殺した伝説のサブマリン投手K・M。行方不明だった1500奪三振の記念ボールが発見されたのをきっかけに再評価する動きが起き、野球嫌いの駆け出しの作家が謎に迫っていくミステリ。誤審、乱闘、転向、落球、そして八百長疑惑…彼にまつわるエピソードの謎を追うために取材した関係者を通じて浮き彫りになってゆくK・Mの人柄と明らかになってゆく真実。文章が若干冗長で誰が誰なのかがイマイチ分かりづらい点もあってやや読むのに難儀しましたが、悪くない真相が積み重ねられてゆくその結末は印象に残りました。

 

18.次回作にご期待下さい (角川文庫 2018- ) 本編2巻-

次回作にご期待下さい (角川文庫)

次回作にご期待下さい (角川文庫)

 

仕事に追われる月刊漫画誌の若き編集長で苦労人の眞坂崇とトンデモ天才漫画編集者・蒔田が、漫画バカの編集者たちや漫画に命をかける漫画家たちとともに日常のお仕事に潜む謎を解き明かしてゆくお仕事小説。落とし物をきっかけに出会ったビルの夜間警備員・夏目の謎、打ち切りに悩む漫画家とのやりとりやヘッドハンティング、そして盗作疑惑の真相など、漫画雑誌はほんと大変な仕事なんだなと実感させる一方で、それでも登場人物たちが面白い漫画を作りたいという想いからぶつかり合うなかなか熱い作品でした。これは次回作も期待できますね(苦笑)

 

19.谷中レトロカメラ店の謎日和 (宝島社文庫 2015-2016) 全2巻

谷中レトロカメラ店の謎日和 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

谷中レトロカメラ店の謎日和 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者:柊 サナカ
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2015/09/04
  • メディア: 文庫
 

思い入れのあった故人のカメラ売却をきっかけに下町谷中のレトロカメラ店でバイトすることになった山之内来夏が、三代目店主の今宮とともに客が持ち込む謎を解決する連作ミステリ。中古クラシックカメラを専門に扱う落ち着いた雰囲気のお店を舞台に、優れたカメラ修理技術や知識、そして卓越した観察眼を持つ今宮と写真に関連する謎を解いたり、様々なやりとりを重ねていく中、徐々に変わってゆく来夏さんの気持ち。繊細な描写を積み重ねた末に明らかにされた事実はやや意外なものでしたが、それを乗り越えようとする二人に注目のシリーズ。
関連シリーズ:「機械式時計王子の休日 千駄木お忍びライフ」(ハルキ文庫)

 

20.ずっとあなたが好きでした (文春文庫 2017)

ずっとあなたが好きでした (文春文庫)

ずっとあなたが好きでした (文春文庫)

 

バイト先の女子高生との淡い恋、転校してきた美少女へのときめき、年上劇団員との溺れるような日々、集団自殺の一歩手前で抱いた恋心、そして人生の夕暮れ時の穏やかな想いが綴られてゆく恋愛小説集。年齢や状況もバラバラな恋の行方と意外な結末。最初は普通の恋愛小説ではあまりない展開で新鮮だなあと思いつつ読んでましたが、途中から読んでいてうん?となって、だんだんその違和感に気づいて、最後でやられた!となりました。一気読みするには分厚いですが、その分手応えを感じた一冊で巻末の解説も必見。それにしても懲りてないな~(苦笑)

 

以上です。人気作品をバッサリ削ると意外とすんなり決まりました。2010年代ベスト20の企画の予定もあとは一般文芸編のみなので何とかなりそうです。ではまた。

 

2010年代ライト文芸ベスト20作品 単巻作品編

 昨日2010年代企画の一環で「ライト文芸ベスト20作品」を作りましたが、予想通りというか仕方ないというか好きな作品の中でもシリーズものの存在感がありすぎて、シリーズもの選出になりそうなのは目に見えてました。なので昨日の記事とは別に、単品作品を対象としたエントリーを別途に作成します。

今回選んだ20作品はどれも自信を持っておすすめできる作品です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。でもこうして作ってみると2~3巻くらいでまとまっている作品が結果的に一番選ばれにくいんですよね。そのあたりも面白い作品はたくさんあるので、今回はあまり選べなかったですけど、どこかでまた紹介できたらいいなと思っています。

 

1.どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫 2017)

どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

 

訳ありの過去もあり友人の幹也と采岐島のシマ高に進学した月ヶ瀬和希。そんな彼が初夏に神隠しの入江で倒れていた少女・七緒を発見するボーイミーツガール青春小説。過去からやって来た七緒と少しずつやりとりを重ねてゆく日々。何気なく過ごせていた高校生活の突然の暗転。明かされる過去の真相と、変わらず向き合ってくれる友人たちの存在、そして覚悟を決めた七緒。甘酸っぱく初々しかった出会いの結末には切なくなりましたけど、繋がって行く過去と未来、そして意外な形で届けられた真摯な思いは、かけがえのないとても素敵なものに思えました。
 関連作品:「また君と出会う未来のために」(集英社オレンジ文庫)

 

2.私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫 2018)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

 

突如失踪した人気小説家・遥川悠真。調査を進めるうちに彼の小説を愛した少女・幕居梓の存在が明らかになってゆく物語。追い詰められて絶望していた梓を偶然救ってくれた遥川。奇妙な共生関係を結んだ二人のささやかな癒やしと、小説を書けなくなってゆく遥川。何とかしたいという思い、魔が差した行為が二人の関係を決定的に変えていって、何とかしようとすればするほどすれ違って、垣間見えたいくつもの想い、ありえたかもしれない可能性が何とも切なかったですが、それでも真っ直ぐで不器用で優しかった二人らしい結末だったのかなと思いました。

 

3.きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫 2016)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

 

2025年の夏休み。双子の高校生・明日子と日々人は突然いとことの同居を父から告げられ、やって来た今日子が実は長い眠りから目覚めた三十年前の女子高生だったという物語。時代のギャップに戸惑いながら徐々に双子と打ち解けてゆく今日子の存在は、バラバラになっていた家族を繋ぐきっかけにもなって、過去との繋がりを感じるがゆえにもう取り戻せないことを痛感する彼女と、どうにもならない現実に直面した双子の対照的な選択、昔の想い人の回想がとても印象に残りました。懐かしい気持ちと切ない気持ちが入り混じる素敵なひと夏の物語ですね。

 

4.君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫 2017)

君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

 

大切な姉の死からどこかなげやりに生きていた岡田卓也が、友人に頼まれ「発光病」で入院したままのクラスメイト・渡良瀬まみずと出会ったことで止まっていた二人の時間が再び動き始める物語。余命を宣告されたまみずに死ぬまでにしたいことがあると知らされ、それに協力することを約束した卓也。無茶振りされても奮闘する卓也がなかなか自覚できない自らの想いや、気持ちを伝えることに躊躇するまみずの距離感がもどかしかったですが、遠回りこそしたものの相手に真摯に向き合い大切に思う気持ちを伝え合った、切なくも心の琴線に触れる物語でした。
 関連作品:「君は月夜に光り輝く +Fragments」(メディアワークス文庫)
 
5.僕が七不思議になったわけ (メディアワークス文庫  2014)

生きたまま学校の七不思議に登録されてしまった中崎君と学校の七不思議の仲間たち、そして中崎君が気にかけている朝倉さんを巡るお話。心配症でちょっと自信がなさげな中崎君でしたが、朝倉さんがピンチになった時には本当に頑張ってましたね。そんな二人の関係性が徐々に変わっていく感じがとても良かったんですが、あまり深く考えずに読んでいたので、バス事故の場面から切り替わったところであれって思いました。それでも切ない終わり方になったわけではなくて、二人が新しい一歩を踏み出して、希望を感じることのできる終わり方は良かったです。

 

6.昨日は彼女も恋してた (メディアワークス文庫 2011)

昨日は彼女も恋してた (メディアワークス文庫)

昨日は彼女も恋してた (メディアワークス文庫)

 

今はすっかり疎遠になってしまったニアとマチが小さい頃にタイムスリップする話。昔は仲良かったのに、些細なきっかけですれ違いが始まるとかよくありますよね。ニアとマチがそれぞれの視点から代わる代わる語られるお話は、小さい頃の二人が大きな方に懐いたりとか、自転車レースでの仲違いの原因回避に動いたりとか、徐々に頑なな心が開いていく感じがとても良かったです。そしてもうひとつの物語「明日も彼女は恋をする」も合わせて読みたい対になる作品ですね。
 関連作品:「明日も彼女は恋をする」(メディアワークス文庫)
 
7.ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫 2017)

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

ひきこもりの弟だった (メディアワークス文庫)

 

突然見知らぬ女性に三つの質問を問いかけられた雪の日。誰も好いたことがない掛橋啓太が問いかけた大野千草と夫婦になり、平穏な彼女との生活の中で過ぎ去った過去の日々を追憶させてゆく物語。お互いの過去を知らないまま三つの質問という契約によって夫婦になった二人。引きこもりの兄と共依存関係にあった母との辛い過去。徐々に惹かれ合っているのを自覚するがゆえに、じわじわと重くのしかかってゆく三つ目の質問。それぞれが抱える壮絶な過去も二人でなら乗り越えられると思えただけに、淡々と綴られたその不器用な結末には衝撃を受けました。

 

8.おそれミミズク (講談社タイガ 2017)

おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱 (講談社タイガ)

おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱 (講談社タイガ)

 

山中にある屋敷の座敷牢で出会った少女ツナ。怖い話を聞かせることを条件に週一回会うことを許されたミミズクが十年目に転機を迎える物語。育ての親や友人にもツナのことを隠し続けてきたミミズクこと瑞樹。かつて投稿した怪談記事が縁で多津音一と出会ったことにより徐々に明かされてゆくツナを巡るからくり。丁寧で繊細なことばによって恐怖が描かれる一方で、瑞樹がきちんと向き合ったことで明らかになった真実は思わぬ奇跡にも繋がっていて、どうにか折り合いをつけて迎えたその結末は、これまでの想いが報われたとても素敵なものに思えました。

 

9.螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫 2015)

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

 

時間遡行機が開発された近未来。過去の美術品を盗み出す泥棒のルフが、至宝とともに19世紀のパリに逃亡した幼馴染のフォースを連れ戻すために過去へ跳ぶ物語。取り戻すまでは簡単に未来に戻れないと知ったルフがループを繰り返す覚悟を決めて試行錯誤していくうちに、不治の病に侵されながらも気丈に振舞う彼女と献身的に向き合うようになっていく姿が印象的でした。彼女が秘めていた想い、そして膨大な時間を乗り越えた二人だからこそ、あのラストシーンを迎えられて良かったです。本作が著者さんのデビュー作。

 

10.雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ 2016)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

  • 作者:城平 京
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/19
  • メディア: 文庫
 

子供の頃から相撲漬けの生活を送ってきた文季が、両親の交通事故死で引き取られた先は相撲好きのカエルの神様が崇められている村で、知恵と知識を見込まれ外来種との相撲勝負を手助けすることになる物語。村を治める一族の娘・真夏と出会い、思いとは裏腹に相撲や村の事情にがっつり関わってゆく文季の洞察力や覚悟には年相応に思えないものもありましたけど、一方でそんな彼の自分に向けられる評価や想いには鈍感だったりするギャップや、相撲勝負にも意外な背景があったことに納得したりで、爽やかな読後感を堪能できる素晴らしい青春小説でした。

 

11.ひとりぼっちのソユーズ (富士見L文庫 2017)

ひとりぼっちのソユーズ 君と月と恋、ときどき猫のお話 (富士見L文庫)

ひとりぼっちのソユーズ 君と月と恋、ときどき猫のお話 (富士見L文庫)

 

幼いころに出会ったハーフの女の子ユーリヤ。僕をスプートニクと呼ぶ彼女と月を見上げて宇宙飛行士に憧れた夢。そんな二人の成長を描く物語。どんどん成長するスプートニクと生まれつき身体が弱い彼女とのすれ違い。遠く離れ夢に向けて突き進むユーリヤとの再会と、焦燥を覚えつつ遅ればせながら夢を追いかけることを決意したスプートニクの思い。彼女との距離がどんどん遠くなっていっても、お互いかけがえのない存在であることは変わりなくて、素直になれない彼女にきちんと向き合ったスプートニクの覚悟には本当にぐっと来るものがありました。

 

12.モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex 2017)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

モノクロの君に恋をする (新潮文庫nex)

  • 作者:坂上 秋成
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: 文庫
 

浪人覚悟で受験した大学に合格した小川卓巳が、加入した奇人変人揃いの漫画サークルで運命的な出会いを果たした新入生・天原と再会する青春小説。将来もマンガに関わっていきたいと考える卓巳が出会った漫画家を目指す訳ありな先輩たち。彼らが作り出す濃い空間にどんどん溶け込んでゆく天原と卓巳。触発されてマンガを書き始めたり天原と二人で出かけたり、いい雰囲気になりかけたのに全てがぶち壊される急展開にはぐいぐい読ませるものがあって、追いかけたはずなのになぜか追い込まれた卓巳が本音をぶちまける熱い展開はとても面白かったです。

 

13.向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex 2016)

向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)

向日葵ちゃん追跡する (新潮文庫nex)

  • 作者:友井 羊
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/08/27
  • メディア: 文庫
 

ストーカー対策員原向日葵19歳。実は元ストーカーの過去を持つ彼女が、接近禁止を言い渡された元恋人を殺人現場で見かけてしまい、再び運命が動き出すほろ苦青春ミステリー。容疑者とされた彼の無実を何とか証明したいと思うものの、すれ違いの結果として接近禁止になった過去から行動を制限されている向日葵。頭では理解していても強い想いに揺れる彼女の複雑な葛藤が痛いほど伝わってきて、その自らの思考に向き合うことが事件解決の伏線に繋がってゆく皮肉な結末でしたけど、前に進むことを決意した彼女の幸せを願わずにはいられませんでした。

 

14.異セカイ系 (講談社タイガ 2018)

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)

  • 作者:名倉 編
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/08/22
  • メディア: 文庫
 

小説投稿サイトでトップ10にランクインし、「死にたい」と思うことで、自分の書いた小説世界に入れることに気がついた名倉編。自分が作った世界を守るため、投稿作家たちと試行錯誤してゆく物語。小説の中の世界とあちらの世界を行き来しながら、現実でも異世界でも全員が幸せになる方法を探そうとする編。作中の登場人物に対する愛があって、自らの意思を表明するようになってゆく作中人物もそんな作家に対する愛が溢れていて。だんだん訳がわからなくなりながらも、どうにかこうにかみんなで幸せになろうとする展開はなかなか面白かったです。

 

15.ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ 2018)

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)

 

就職を前にした何も変わらない灰色の日々。実家に戻り中学時代の卒業文集を開いた池境千弦が気になる作文を発見し、元同級生のその後を追い始めた数日後、接触してきた別の元同級生が謎の死を遂げるミステリ。元同級生・田中美奈子の自殺の真相を探るうちに起きた転落死事件と、縁が繋がって再会したかつての同級生で作家のミユ。千弦だけが分かるように発信されていたミユからのメッセージ。新米編集者と作家による探偵役コンビが真相に迫るたびに意味合いが変わる構図の変化は鮮烈で、秘密を積み重ねてゆく二人が迎えた結末はとても印象的でした。

 

16.終わりの志穂さんは優しすぎるから (メディアワークス文庫 2015)

東京のはるか南に位置する咲留間島。夏の間に画家として納得できる作品を描けなければ、筆を折ってこの島に骨を埋めようと覚悟して絵を描く森公一朗が、ミステリアスな雰囲気を持つ志穂さんと出会うひと夏の物語。なぜこのような場所にいるのか、いかにも訳ありに見える志穂さんと、島にやってきた志穂の妹・紫杏たちと交流しながら絵が完成に近づいていく一方、疑惑を深めていく公一朗が見つけてしまったモノの真実。できることなら二人がもっと違う形で出会うことができれば良かったですが、これはこれでこの物語らしい優しい結末だと思いました。

 

17.カタナなでしこ (講談社タイガ 2016)

カタナなでしこ (講談社タイガ)

カタナなでしこ (講談社タイガ)

  • 作者:榊 一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/19
  • メディア: 文庫
 

女子高生の千鶴が駆りだされた祖父の形見分けの蔵整理で、夢に見た一振りの刀身だけの日本刀と出会い、同級生たちと無くなった「刀の拵え」作りに挑戦する物語。4人の女子高生がそれぞれクオーターな外見で日本人であることだったり、しっくりしない家族関係や将来のこと、地味であることなどの悩みを抱えながらも、挑戦を通じて様々な人と出会ったり経験を重ねて、これまで気づいていなかったことに気づいたり、自分らしさを見出したり、複雑な想いを乗り越えて試行錯誤する姿はとても心に響きました。読みやすく読後感も爽やかな青春小説でした。

 

18.ことのはロジック (講談社タイガ 2019)

ことのはロジック (講談社タイガ)

ことのはロジック (講談社タイガ)

 

書くべき言葉を見失った元天才書道少年の墨森肇。金髪碧眼の転校生・アキに一目惚れした彼が、彼女とともに校内で発生する言葉にまつわる事件を解決してゆくミステリ。好奇心旺盛なアキや仲間たちと一緒に挑む回し手紙の伝言ゲーム、存在しない幽霊文字、同人誌の不可解な改変、そしてアキに対する違和感。探し続ける「月が綺麗ですね」を超える告白の言葉。彼らの心境の変化に繋がってゆくひとつひとつのエピソードがまた絶妙で、明らかになった真実にしっかりと向き合い、想いを込めた回答を提示してみせた結末にはぐっと来るものがありました。

 

19.雪があたたかいなんていままで知らなかった (集英社オレンジ文庫 2018)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (集英社オレンジ文庫)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (集英社オレンジ文庫)

  • 作者:美城 圭
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/01/19
  • メディア: 文庫
 

地元の名士の生まれながら、幽霊が見えることで周囲から孤立する澤村千尋の前に現れた赤いマフラーの幽霊少女。協力してくれたクラスメイトの岩木君やリンたちと共に、記憶を失っている彼女の過去を探し始める青春ミステリー。過去のトラウマから逡巡しながらも始まった身元捜索。それぞれ苦い過去が明らかになってゆく岩木とリン、そして本家の魔王的存在・従兄の義孝。その過程で少しずつ広がって変わってゆく周囲との関係と、いろいろ過去や事実が少しずつ繋がってゆく構成はとても上手くて、切ないけれどぐっと来るものがある素敵な物語でした。

 

20.少女手帖 (集英社オレンジ文庫 2017)

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

 

周囲に迎合しグループ内で平穏に生きていくことに全力を傾けてきた女子高生の小野ひなた。ある日、憧れの同級生結城さんに誘われグループの約束をドタキャンしたことで周囲から孤立してしまう青春小説。これまで無難に生きることに心を砕いてきたはずが、偶然結城の秘密を知り興味を抱いたことで結果的に失った自分の居場所。息苦しい狭い世界でどう生きるのかというお話でしたけど、焦燥を募らせていた彼女が姉や師匠、結城さんなど、たくさんの人と話し合い悩みながらもこれまでの自分を省みて、大切なことを見出してゆく姿はとても印象的でした。

 

以上です。 やっぱりつくづく思いますけど20作品でも少ないですね…そこの枠に入らない作品が出てきてしまうのは仕方ないんですけど。あとは「一般文庫」「単行本」編ですが、このペースなら何とかなりそうです(たぶん)。ライト文芸については別途下半期企画でもたくさん紹介したいと思います。

 

 

2010年代ライト文芸ベスト20作品

2010年代の作品を振り返る企画、ライトノベル青春小説、ライトノベルファンタジーに続く第三弾はライト文芸編です。ここではライト文芸レーベルから2010年以降に刊行された作品を対象に20作品セレクトしています。

ただ、企画立案段階で20作品でこれはというものを選びきれるのか…という懸念はあったのですが、やはりというか選んでみたらシリーズ作品が存在感ありすぎて、単巻ものを1冊も選べないという結果に…orz シリーズもののみの振り返りというのもあれなので、単巻ものを対象に改めて別に1本企画を作ることにしました。というわけで今回はシリーズもののみの紹介になりますが、それでも泣く泣く削ったシリーズ作品がいくつもあったのは言うまでもありません。

 

【追記】 ↓というわけで単巻作品編作りました。

 

1.ビブリア古書堂の事件手帖 (メディアワークス文庫 2011-2018) 全7巻+別巻1巻

貪欲なくらいに本が好きで、本に関する知識も豊富で、本に関わることや思いをを大切にするけど、一方で古書店をやっていけるのか心配されるくらい人付き合いの苦手な栞子さん。本を読めない体質の大輔とは一見正反対のように思えるけれど、補完し合うような二人の関係の妙がいい感じですよね。古書にまつわる蘊蓄が楽しいですし、不器用な二人の因縁や関係の変化を絡めつつ本にまつわる話の数々やお店の重厚感がよく出ているシリーズです。

 

2.階段島シリーズ (新潮文庫nex 2016-2019) 全6巻

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

  • 作者:河野 裕
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/08/28
  • メディア: 文庫
 

何かを失ってしまった人々が集う階段島で平穏な高校生活を送る七草が、そこで出会うはずのない少女真辺由宇と再会してしまうことから始まる物語。相変わらず正直で真っ直ぐで、島から出る手段を得るために周囲と衝突することも厭わない真辺に苛立ちを感じながらも、そんな不器用な彼女を理解しているのは自分だけだと思う七草にとって、正反対な彼女はかけがえのない存在あることが端々に感じられました。でもそんな七草の願いを彼女らしく突っぱねてしまう関係こそ二人の本来あるべき姿だったんですよね。そんな彼らの想いとありようが興味深いシリーズです。

 

3.神様の御用人 (メディアワークス文庫 2013- ) 本編8巻-

神様の御用人 (メディアワークス文庫)

神様の御用人 (メディアワークス文庫)

 

京都近辺を舞台に、膝を痛めたり野球部が休部したりで勤めていた会社を辞めてフリーターになっている良彦が、ふとしたきっかけで祖父が以前務めていた神様の御用人代理に任命され、狐神と一緒に困っている神様の頼み事を解決していくお話。力を失いながらも、人との関わりを気にかける神様たちのために頑張る良彦を通じて、失われつつある周囲との絆とか、もっと身近にいたはずの神様たちとの関係とか、そんなことをふと思い出させるような優しい雰囲気に包まれた読みやすいシリーズです。

 

4.天久鷹央シリーズ (新潮文庫nex 2014- ) 推理カルテ5巻+事件カルテ5巻

天久鷹央の推理カルテ (新潮文庫nex)

天久鷹央の推理カルテ (新潮文庫nex)

  • 作者:知念 実希人
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/27
  • メディア: 文庫
 

統括診断部長として各科で「診断困難」と判断された患者を診断する若き天才女医・天久鷹央と唯一の部下である小鳥遊が挑む、原因不明の症状や診断の難しい症例に日常の謎も交えたメディカルミステリー。好奇心旺盛でいろんなことに首を突っ込む鷹央と、彼女に振り回されながら時には鷹央も気づかない盲点に気づいて事件解決に貢献する小鳥遊はうまく補い合えるいいコンビで、患者の親子問題なども絡めた複雑なテーマも多かったですが、テンポよく進む展開からスッキリした読後感でまとめる構成はとても完成度が高いシリーズですね。
関連シリーズ:「神酒クリニックで乾杯を」(角川文庫)

 

5.ケーキ王子の名推理 (新潮文庫nex 2015- ) 本編4巻-

ケーキ王子の名推理 (新潮文庫nex)

ケーキ王子の名推理 (新潮文庫nex)

  • 作者:七月 隆文
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/10/28
  • メディア: 文庫
 

美味しいケーキ大好きな女子高生・未羽が、失恋直後に迷い込んだケーキ屋でパティシエ修行をしている同級生の冷酷イケメン王子・颯人に遭遇する物語。少女漫画のような設定や展開でミステリとして見るとあっさりめですが、出会った当初はお互いあまり印象が良くない二人が、夢に向かって頑張る颯人を徐々に応援する気持ちになっていったり、ケーキであっさり釣られるもののイケメンだからといって特別視しない未羽は信用できると感じたり、飾らない二人の距離感が心地良かったです。そんな二人の恋の予感にも期待のシリーズですね。

 

6.これは経費で落ちません! (集英社オレンジ文庫 2016- ) 本編6巻

これは経費で落ちません! ~経理部の森若さん~ 1 (集英社オレンジ文庫)

これは経費で落ちません! ~経理部の森若さん~ 1 (集英社オレンジ文庫)

 

入社以来経理一筋、きっちりとした仕事ぶりで評価される森若沙名子27歳。過剰なものも足りないものもないことを理想とする生活を送る彼女が、社内外で次々と起こる経理絡みの問題に巻き込まれてゆく物語。特に噂好きでもなく、社内の複雑な人間関係からどこか一歩引いた位置にいる彼女。怖いと誤解されてしまうこともあるけれど、やや不器用なだけできちんと相手を気遣える優しさを持っていて、幸せになりたくないわけじゃないんですよね。実はみんなに慕われていて、そんな彼女がいいと言ってくれる同僚の存在に気づく結末はいいですね。
関連シリーズ:「風呂ソムリエ」(集英社オレンジ文庫

 

7.小説の神様 (講談社タイガ 2016- ) 本編3巻

小説の神様 (講談社タイガ)

小説の神様 (講談社タイガ)

 

作家としてデビューするも酷評されて書く自信を失っていた高校生・一也が人気作家の転校生・小余綾詩凪と出会い、彼女との小説合作を提案される青春小説。重い病気の妹のためにと思いながら、厳しい評価にネガティブになりがちな一也と、小説の力を信じていて彼に辛辣な詩凪。書く楽しさを思い出してゆく一也に突きつけられた残酷な現実はとても苦しかったですが、そんな彼が完璧に見えていた詩凪の苦しみに気づき、再び向きあおうと決意する姿は応援したくなります。作品を書くことに対するとても繊細で、強い想いを感じられる素晴らしい作品です。

 

8.宝石商リチャード氏の謎鑑定 (集英社オレンジ文庫 2015- ) 本編9巻-

宝石商リチャード氏の謎鑑定 1 (集英社オレンジ文庫)

宝石商リチャード氏の謎鑑定 1 (集英社オレンジ文庫)

 

酔っ払いに絡まれた美貌の敏腕宝石商・リチャードを助けた大学生中田正義が、その縁から密かに持っていた指輪の鑑別を依頼する連作短編集。リチャードの顧客や店を訪れる人々の宝石にまつわる問題を二人で解決するストーリーで、宝石を扱う仕事に誇りを持ち優れた観察眼を持つリチャードと、彼に人物を評価されてバイトに誘われ、宝石に興味を持つようになってゆく真っ直ぐな正義のコンビがとても良かったです。正義を気にかけるリチャードの想いと、正義が片思いする少し変わった谷本さんとの恋の行方がとても気になるシリーズ。

 

9.かくりよの宿飯 (富士見L文庫 2015-2019) 全10巻

かくりよの宿飯 あやかしお宿に嫁入りします。 (富士見L文庫)

かくりよの宿飯 あやかしお宿に嫁入りします。 (富士見L文庫)

 

奔放だった亡き祖父の借金のかたとしてあやかしの棲まう「隠世」に攫われて、老舗宿「天神屋」の大旦那に嫁入りしなくてはならないと告げられた女子大生葵の奮闘を描く物語。隠世で良くも悪くも有名人だった祖父の影響もあって、周囲の第一印象は最悪。そんな状況で嫁入り回避のために働いて借金を返そうとする葵が、あやかし好みの飯で胃袋を掴んで関係を築いていく描写がとても美味しそうで(苦笑)、人情味溢れていてとてもいいなと思いました。あやかしたちとの交流から心境を変化させていった葵と大旦那との今後も気になるシリーズ。
関連シリーズ:「浅草鬼嫁日記」 (富士見L文庫)

 

10.おいしいベランダ (富士見L文庫 2016- ) 本編7巻

おいしいベランダ。 午前1時のお隣ごはん (富士見L文庫)

おいしいベランダ。 午前1時のお隣ごはん (富士見L文庫)

 

ダメダメな一人暮らし生活を送る大学生の栗坂まもりが、ふとしたきっかけからベランダで植物を育てては食すお隣のイケメン園芸男子・亜潟葉二の真の姿を知り、一緒に育てるようになる物語。一人暮らしにありがちなトラブルに巻き込まれて葉ニに救われるまもり。育てたものを一緒に食べることで育まれてゆく二人の交流と、そんな葉二に変わるきっかけを与えた千鶴との再会。不安を抱えながらも自分の思いに正直になって、不器用なりに決意したまもりの奮闘ぶりや、まもりを名前で呼ぶようになった葉ニだったり、二人の今後が楽しみなシリーズです。

関連シリーズ:「恋するアクアリウム。」 (富士見L文庫)


11.紅霞後宮物語 (富士見L文庫 2015- ) 本編10巻+別巻4巻

紅霞後宮物語 (富士見L文庫)

紅霞後宮物語 (富士見L文庫)

 

女性ながら不世出の軍人と評される将軍・関小玉33歳が、かつての相棒にして今は皇帝である文林の懇願を受けある日突然皇后となり、嫉妬と欲望が渦巻く後宮「紅霞宮」に入る物語。軍人らしいきっぱりさっぱりな性格の小玉と、皇帝として公人としての意識も持たざるをえなくなった文林。絆こそ感じられるもののお互い立場も変わり、変わってしまったところと変わらないところに戸惑い葛藤する展開でしたが、ついに覚悟を決めた小玉と、そんな彼女に複雑な想いを抱いたままに見える文林がどんな夫婦になっていくのかいろいろ気になるシリーズです。

 

12.下鴨アンティーク(集英社オレンジ文庫 2015-2018) 全8巻

下鴨アンティーク アリスと紫式部 (集英社オレンジ文庫)

下鴨アンティーク アリスと紫式部 (集英社オレンジ文庫)

 

京都下鴨を舞台に、両親を早くに亡くし古美術商を営む兄と下宿人の慧と三人で古びた洋館に住む高校生・鹿乃と、蔵にあるアンティーク着物をめぐる不思議な物語。亡くなったお祖母ちゃんの大事にしていた着物のコレクションにまつわるお話は、ミステリーというよりはどこかファンタジーな趣でしたが、旧華族である野々宮家を舞台としたどこかおっとりとした物語に垣間見える仄かな想いや、お祖母ちゃんとお祖父ちゃんの馴れ初め話がわりと素敵なお話でした。鹿乃と似た雰囲気を持つ春野の出現で波紋を呼びそうな、慧との関係も気になるシリーズ。

 

13.ゆきうさぎのお品書き (集英社オレンジ文庫 2016- ) 本編8巻

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

 

貧血で倒れた大学生の碧が、小料理屋「ゆきうさぎ」を営む青年大樹に助けられ、バイトとしてとして働くことになる物語。母を亡くして食が細くなっていた碧や大樹が女将から跡を継ぐ前は常連だった父、お向かいの洋菓子店の兄妹やお店の常連客など、周囲の身近な人たちとの相手を思いやるような交流だったり、美味しそうな料理とらしさを取り戻した大食漢・碧の食べっぷりとか、猫の武蔵も存在感があって、特に目新しさはなかったですけど、心温まるような雰囲気がとても素敵なシリーズですね。

 

14.からくさ図書館来客簿 (メディアワークス文庫 2013-2016) 全6巻

京都に作られた私立「からくさ図書館」を舞台に、館長小野篁と時子さんが、訪れる利用者に憑いた「道なし」を天道に導いてゆくお話。小野篁だけでなく、時子内親王も実在人物なんですね。平安時代を生きて冥官となった二人と現世とのギャップとか、当時は親子くらいの年齢差があったはずなのになぜか数歳差になっている二人の微妙な距離感とか、登場人物たちもみんないい人達ばかりで、優しい雰囲気とか世界観が素敵なシリーズですね。世界観や登場人物を共有する作品群が充実していることも魅力のひとつです。
関連シリーズ:「南都あやかし帖」「あやかしとおばんざい」「奈良町ひとり陰陽師」「おとなりの晴明さん」(メディアワークス文庫

 

15.バビロン (講談社タイガ 2015-2017) 本編3巻

バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)

バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)

 

製薬会社と大学が関与する臨床研究不正事件を追っていた東京地検特捜部検事正崎善が、捜査資料の中にあった謎の血痕や毛髪混じりの書面を発見し、相棒の事務官文緒とともにそれを探るうちに大型選挙の裏に潜む陰謀に巻き込まれていく物語。最初は奇異な事件こそあるものの、全体としては正崎が感じた違和感をきっかけにターゲットを絞り込んでいく、わりとオーソドックなストーリーだと思っていたのですが、後半の怒涛の急展開は予想の斜め上でしたね。一人の女により大きく動かされ、二転三転してゆく物語の行方が気になりますね。

 

16.謎好き乙女シリーズ (新潮文庫nex 2015-2016) 全4巻

謎好き乙女と奪われた青春 (新潮文庫nex)

謎好き乙女と奪われた青春 (新潮文庫nex)

  • 作者:瀬川 コウ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/02/28
  • メディア: 文庫
 

謎を引き寄せる体質の高校生矢斗春一に、恋愛や青春に興味がなくミステリを愛する新入生の早伊原樹里が偽装恋人な関係を持ちかけ、二人で一緒に日常の謎を解いていく青春ミステリ。些細な事でいがみ合いながらも、その関係に心地よさを感じていく二人の軽妙なやりとりがわりと好みで、過去が原因で距離を置こうとする春一と、彼の過去を追ううちに結局放っておけなくなる早伊原の微妙な距離感の変化もポイントですね。春一の過去との対決はほろ苦いストーリー展開でしたが、それを乗り越えて落ち着くべきところに落ち着いた二人に期待のシリーズ。

 

17.後宮の烏 (集英社オレンジ文庫 2018- ) 本編3巻-

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

 

後宮奥深くにいる夜伽をしない不思議な力を持つ特別な妃「烏妃」。翡翠の耳飾りに取り憑いた女の幽霊の正体を探るべく訪れた皇帝・高峻が、その不思議な力を目の当たりにする中華風ファンタジー。辛い過去を抱え烏妃として孤独に生きようとする寿雪と、少年時代に生母を皇太后に殺され辛酸を舐めた高峻。後宮で起きる幽鬼絡みの事件を解き明かす過程で二人が関わる機会は増えていって、不器用な彼らの距離感や周囲との関係の変化はとても微笑ましくて、秘密を共有した二人がこれからどう変わってゆくのか、続きが楽しみなシリーズ。

 

18.雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫 2015- ) 本編3巻

雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)

雲は湧き、光あふれて (集英社オレンジ文庫)

 

最後の甲子園を前に故障した屈指のスラッガー専用代走に指名される話/新人スポーツ記者と強豪校と対戦する弱小校のピッチャーの出会い/戦火が拡大する中で甲子園を目指す少年たちの話と、高校野球を題材とする中編三編。今の自分に自信を持てない主人公たちが野球への熱い想いに感化され、今やるべきことに奮闘する姿には心を動かさずにはいられません。いずれも良かったですが、個人的には新人新聞記者と弱小校ピッチャーの出会いを描いた「甲子園への道」が特に好きでした。読むと高校野球につい思いを馳せてしまう是非オススメしたい一冊です。

 

19.鍵屋甘味処改 (集英社オレンジ文庫 2015-2017) 全5巻

鍵屋甘味処改 天才鍵師と野良猫少女の甘くない日常 (集英社オレンジ文庫)

鍵屋甘味処改 天才鍵師と野良猫少女の甘くない日常 (集英社オレンジ文庫)

  • 作者:梨沙
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/01/20
  • メディア: 文庫
 

冬休みに自分の出生の秘密を知って衝動的に家出した女子高生こずえが、鍵師・淀川と知り合い、年齢を偽り助手として彼の家へ居候することになる物語。居付いてしまったこずえをまるで野良猫のようなものと思っている無愛想で職人気質の淀川と、掃除やカメラ撮影といった淀川の苦手な部分を巧みにフォローして居場所を確保していくこずえの、確かに甘いとは言えない非日常。そんな野良猫に接するような二人の距離感がここからどう変わってゆくのかが楽しみなシリーズ。

関連シリーズ:「鍵屋の隣の和菓子屋さん」(集英社オレンジ文庫

 

20.Bの戦場(集英社オレンジ文庫 2016-2019) 全6巻

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

 

物心ついた頃からブスで、結婚式に憧れ自分は無理でもそれを演出する人になろうと、ウェディングプランナーになった北條香澄。そんな彼女が絶世のブスと絶賛されやり手で絶世の美男子・久世課長に求婚される物語。これでもかと香澄のブスっぷりを真正面から突きつけられる展開は少なからずグサグサ突き刺さりましたが、さらに突き抜けている久世課長の存在感(苦笑)そういう決断しちゃうのかーとは少し思いましたが、お仕事小説としても面白かったですし、仕事に真摯に向き合う香澄の姿勢やその人柄が愛されているのが伺えてなかなか良かったです。

 

以上です。

 

 

2010年代ライトノベルファンタジーベスト20作品

 先日の青春小説ベスト20作品に続いて第二弾ファンタジーベスト20作品です。

前回と同様に2010年以降にスタートしたファンタジー作品を対象に20作品を選ぼうと思いましたが、ファンタジー作品は入るべきなんだろうなと思う作品が多すぎて、正直青春小説以上に選考に悩みました(苦笑)いっそのことこれだけ30作品にしようかとも思ったのですが、あえて完結したのか曖昧な作品や続きが出るのか分からない作品、途中までは傑作だったのに…と思った作品などを思い切ってバッサリといって、また個人の好み的な相対評価でいくつか外して何とか20作品まで削りました。

 

正直に言えば客観的に見てこれは入れるべきだったろうなという作品もないわけではないですが、これが苦悩に苦悩を重ねた末に選んだ自分のベストということでよろしくお願いします。たぶんこの時期は他の誰かが同様の企画を作ってくれると思うので、客観的な評価はそちらにお願いすることにします(苦笑)

 

 

1.ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫 2013- )
本編15巻+外伝13巻

出会いを求めてダンジョンに身を投じた冒険者ベルの物語。最初は動機が不純だなあと思って読み始めたんですが(苦笑)、カッコ良くて強い女の子に助けられたのにお礼も言うことができず、自分の力不足を痛感して自分も強くなろうと努力する、そんな主人公ベルの真っ直ぐさには好感が持てました。そんな彼と契約する神様ヘスティアもベルが大好きだし、ギルドの担当者エイナやシルといった周囲にも恵まれていて、そんな彼が加速度的に成長しながら、ピンチに陥ったヒロインを救ってゆく物語はまさに英雄譚で、魅力的なキャラたちをうまく使った外伝もあったりと、奥行きと広がりを感じさせるシリーズですね。

 

2.とある飛空士への誓約 (ガガガ文庫 2012-2015) 全9巻

とある飛空士への誓約 (1) (ガガガ文庫)

とある飛空士への誓約 (1) (ガガガ文庫)

 

同盟関係を結んだセントヴォルト、秋津連邦から集まった士官候補生の七人。親善艦隊と共にセルファウストを目指す中ウラノスが急襲してきて、七人の操縦する飛空艇だけで単独翔破を目指すことに。見事力を合わせて切り抜けた今回でしたが、冒頭から七人のうち二人が裏切り者とされていることが言及され、清顕とミオの誓約、王位継承者と裏切り者、清顕とイリアの父親たちのライバル関係を無視できない複雑さなど、各々が背負う重い背景を前提とした人間関係や、過去シリーズとも絡めた一連の「とある飛空士」の物語の集大成とも言えるシリーズですね。
関連シリーズ:「とある飛空士への追憶」「とある飛空士への恋歌」「とある飛空士への夜想曲」(ガガガ文庫


3.ロクでなし魔術講師と禁忌教典 (ファンタジア文庫 2014- ) 本編15巻+別巻5巻

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 (富士見ファンタジア文庫)

ロクでなし魔術講師と禁忌教典 (富士見ファンタジア文庫)

 

 働きたくない魔術嫌いのグレンが、養ってもらっていた師匠に魔術学院の非常勤講師に推薦され、やる気のない授業をするところから始まる学園アクションファンタジー。若干どこかで見たことあるような設定にも思えますが、きちんと授業をするようになってからのガラリと変わった展開以降は、テンポも良くなって面白くなっていきますね。主人公のグレンは強力な力を持ちながら制約も多く、共に戦う魅力的なヒロインたちとの組み合わせもバランスよくて、過去の因縁も絡めながら広がってゆく物語の展開力は流石です。


4.覇剣の皇姫アルティーナ (ファミ通文庫 2012- )本編14巻+別巻1巻

覇剣の皇姫アルティーナ (ファミ通文庫)

覇剣の皇姫アルティーナ (ファミ通文庫)

 

辺境に飛ばされた皇女アルティーナと、読書好きな軍師レジスが出会うことで始まる戦記ファンタジー。本巻はこれからの物語に向けた前段部分で、世間知らずな感もある真っ直ぐな姫と、本で得た知識をベースに戦略を組み立てる軍師の組み合わせに、若干危うさも感じなくはないですが、魔法や特殊要素がほぼなく、皇女としての立場から次の皇帝を目指す道のりや、戦い方などが変わりつつある時代の中で現実路線を構築していく展開はなかなか興味深いですね。やや刊行ペースが不安定ではあるものの、戦いながら成長してゆくアルティーナやレジスがどんな結末を迎えるのか、期待が大きい作品のひとつです。

 

5.魔法科高校の劣等生 (電撃文庫 2011- ) 本編30巻+別巻3巻

魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)

魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)

 

魔法が伝説や御伽噺の産物ではなく、現実の技術となってから一世紀が経とうとしていた世界。成績が優秀な『一科生』と、その一科生の補欠『二科生』で構成される『魔法科高校』に、ある欠陥を抱える劣等生の兄達也と全てが完全無欠な優等生の妹・美雪が入学する学園ファンタジー。設定が若干凝り過ぎている感はありますが、それを乗り越えると一般に計測可能な尺度では劣等生でも、実戦では圧倒的な力を持っている達也の活躍は痛快で、ある意味タイトル詐欺的な作品ではありますが安定した面白さがありますね。

 

6.ストライク・ザ・ブラッド (電撃文庫 2011- ) 本編20巻+別巻2巻

世界最強の吸血鬼“第四真祖”暁古城。一見怠惰な生活を送る普通の高校生で、そこに獅子王機関から見習い剣巫の姫柊雪菜が、監視役として派遣されることで始まるファンタジー。主人公の古城は血を吸うことでその眷属を目覚めさせることができるけれど、まだ真の力を目覚めさせていない吸血鬼で、その監視役でヒロイン役の雪菜、同級生の浅葱やロリっぽい先生、妹に加えてどんどん増えてゆく魅力的なヒロインたちの存在と、第四真祖を巡る強敵たちとのバトルが物語を盛り上げてゆくシリーズですね。

 

7.デート・ア・ライブ (ファンタジア文庫 2011- ) 本編21巻+別巻10巻

デート・ア・ライブ 十香デッドエンド (富士見ファンタジア文庫)
 

世界を殺す災厄・正体不明の怪物と、世界から否定される少女を止める方法は二つ。殱滅か対話。名前もない精霊を十香と名付けた五河士道が、精霊をデレさせるべく奮闘するボーイ・ミーツ・ガール。人類の敵をデレさせろという突拍子もないテーマで、十香は精霊だけれど一人の可愛い女の子でもあって、士道を支える機関が義妹含めて変な選択肢ばかり選ぶ変人揃いと、士道や精霊たちの背景など不明な点も多いですが、テンポ良く進む展開とシーンごとの印象的な描写が素晴らしくて、シリアスなはずなのにシリアスを感じさせない楽しい物語。魅力的なヒロインたちが大活躍する外伝も必見です。

 

8.WORLD END ECONOMiCA (電撃文庫 2014-2015) 全3巻

WORLD END ECONOMiCA (1) (電撃文庫)

WORLD END ECONOMiCA (1) (電撃文庫)

 

夢を叶えるため株式市場に活路を見出す月生まれ月育ちの家出少年ハルが、ふとしたきっかけから数学の天才少女ハガナと出会い、コンテスト優勝と周囲の人々の危機打開を目指す物語。夢のために孤高だったハルが彼女たちに出会い触発され、自分に自信を持てなかったハガナもハルへの協力をきっかけに変わっていく、そんな不器用な二人の距離感の変化。そんな存在に葛藤しながら、二人が夢やその思いを語れるようになるまでに近づいたからこそ、終盤の喪失感、そして絶望が切なかったです。そんな一度は全て失ってしまった彼らの壮大な挑戦が盛り上がるシリーズです。


9.薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫 2015- ) 本編8巻-

薬屋のひとりごと 2 (ヒーロー文庫)

薬屋のひとりごと 2 (ヒーロー文庫)

 

花街の薬師だったのをさらわれて後宮で下働き中の娘・猫猫が、薬師としての能力を美形の宦官・壬氏に見込まれ、後宮の事件や噂を解決する物語。中華風の後宮にいるものの特に出世を目指すわけでもない猫猫はわりとさっぱりとした性格で、周囲が色めき立つ美貌の壬氏にも醒めた視線を向けるわけですが、そんな猫猫を壬氏が何となく気にかけている構図が面白いですね。狭い世界で繰り広げられる事件に、薬と毒には並々ならぬ執着とこだわりを見せて謎解きに挑む猫猫、彼女を取り巻く登場人物たちも魅力的で、テンポの良いやりとりが楽しいシリーズですね。

 

10.魔弾の王と戦姫 (MF文庫J 2011-2017) 全18巻

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 (MF文庫J)

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 (MF文庫J)

 

戦いに参加して敵国の美しい戦姫エレンの捕虜になってしまった小貴族の少年ティグルが、弓の腕を買われて仕えるように勧誘される物語。弓が軽んじられる国に生まれたティグルとエレンの運命の出会い。世界観や登場人物たちがしっかりと作られていてよく動き、丁寧に物語を描いているのが感じられて良かったです。しかるべき地位にあるキャラが情に流されて動くのではなく、きちんと考えている姿勢にも好感。興味を抱いても最初は知らない者同士、距離感もこんな感じから始まりますよね。そんな彼らの成長と魅力的な戦姫たち、そしてスケールの大きい展開が魅力のシリーズです。

関連シリーズ:「魔弾の王と凍漣の雪姫」「魔弾の王と聖泉の双紋剣」 (ダッシュエックス文庫)

 

11.黒鋼の魔紋修復士 (ファミ通文庫 2012-2015) 全13巻

黒鋼の魔紋修復士1 (ファミ通文庫)

黒鋼の魔紋修復士1 (ファミ通文庫)

 

神巫になったばかりの少女・ヴァレリアと、実力はあるものの性格に難のある紋章官ディミタール。肌に刻まれた魔紋を委ねる恥ずかしさや、プライドが高いのに自分の世間知らずを痛感させられるヴァレリアは、容赦無いディミタールの物言いに当然の如く反発するわけなんですが、そんな分かりやすい性格の彼女に現実を突きつけながらも囚われたヴァレリアを救い出すカッコよさがあった、その思うところもよく理解しているんですよね。スケールの大きい世界観で最初の反発することの多かった二人が、それぞれ成長しどのように関係が変わっていくのか楽しめるシリーズです。

 

12.86―エイティシックス (電撃文庫 2017- ) 本編7巻-

86―エイティシックス― (電撃文庫)

86―エイティシックス― (電撃文庫)

 

帝国の無人兵器レギオンによる侵略を受け、有色人種を差別し戦わせてしのいでいた共和国。そんな若者たちを率いる少年・シンと、後方から彼らの指揮を執るハンドラーとなった少女・レーナが出会う物語。人権を認められない有人の無人機として戦い続ける「エイティシックス」の若者たち。現状に疑問を持つもののその過酷さを本当の意味では分かっていなかったレーナ。次々と仲間が死んでゆく厳しい状況で彼らに突きつけられる指令には絶望的な気持ちになりましたが、因縁にもきちんと決着を付け迎えた意外な結末から始まったシリーズの今後がいろいろ楽しみなシリーズです。

 

13.ゴブリンスレイヤー (GA文庫 2016- ) 本編10巻+外伝4巻

ゴブリンスレイヤー (GA文庫)

ゴブリンスレイヤー (GA文庫)

 

ゴブリン討伐だけで銀等級まで上り詰めた稀有な存在・ゴブリンスレイヤー。そんな彼が冒険者として初めての依頼でピンチだった女神官を助けるところから始まる物語。冒頭から情け容赦のない展開が待っていて面食らいますが、視点を変えるとゴブリン相手の戦い方も奥が深く、えげつない方法も厭わずにゴブリンの習性や倒し方をひたすら極め、世界を救うことには興味がない変わり者のゴブリンスレイヤーが、直面した危機的状況で身近な人を失うことを繰り返さないために、仲間に助けを求めて立ち上がる展開はなかなか来るものがあって面白いシリーズです。

 

14.Unnamed Memory (DENGEKI 2019-) 本編3巻-

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王 (DENGEKI)

 

幼い頃に受けた『子孫を残せない呪い』を解呪するため、強国ファルサスの王太子・オスカーが試練を乗り越えたものに望みのものを与える魔女・ティナーシャの塔に挑むファンタジー。解呪が容易でなく呪いに負けない女であればいい、という状況で目の前に好物件がいたことに気づき求婚するオスカー(苦笑)わりとシリアスな展開ですが繰り返される二人のやりとりが微笑ましくて、感化されつつも容易には頷きそうもない孤高の魔女・ティナーシャが、どんどん強くなってゆく諦めが悪そうなオスカー相手にどこまで頑張れるのか、今後が楽しみなシリーズ。


15.月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫 2016- ) 本編5巻

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

 

連合王国より先に人類を宇宙へ到達させるべく、共和国の最高指導者はロケットで人間を軌道上に送り込む計画を発令。実験体として選ばれた吸血鬼の少女・イリナと監視係に任じられた候補生レフの物語。蔑まれる境遇から自由を得るため実験体として志願したイリナ。そんな彼女に最初は戸惑いながらも、共に過ごし訓練するうちに大切な存在として思うようになってゆくレフ。あくまで実験体としてか扱われない彼女の境遇には厳しいものがありましたが、乗り越えて見せた彼女たちの未来が明るいものであることを信じたくなる希望の物語ですね。

 

16.ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫 2014-2017) 全11巻

ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)

ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)

 

自分が書いた魔法の書を奪われたゼロが、半獣半人の傭兵と一緒にゼロの書を取り戻すため旅をするお話。全体の印象としては、結構自分好みの世界観や登場人物で、読んでいて面白かったです。かけがえのない存在となってゆく二人の関係性を構築していく過程があっさりめなのはやや気になりましたが、しっかりとした構成をベースに手堅く作られていて物語としての完成度も高かったと思います。そんな二人が旅する過程で様々な人たちと巡り合い、騒動に巻き込まれてゆく物語です。
関連シリーズ:魔法使い黎明期 (講談社ラノベ文庫)


17.エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫 2012-2015) 全7巻+別巻1巻

エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫)

エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫)

 

昭和がもうしばらく続く近未来、大戦後の世界が舞台で、ボーイミーツガールな話と書くには、やや文章が硬めだったかなという印象です。ただ九曜の持っている雰囲気や、この作品の世界観にはうまくマッチしていたと思います。かつての戦友で強敵の竜胆を前にしてあくまで兵器であろうとする九曜と、天涯孤独な叶葉が偶然出会い、お互い感化されていくことで、結果としてこれまで抱えていた過去のしがらみを、何とか乗り越えられた部分があったのかもしれません。旅立つことになった二人がどう変わっていくのか、その行く末が楽しみなシリーズですね。

 

18.エイルン・ラストコード (MF文庫J 2015-2019) 全10巻

謎の生命体マリスに対抗する唯一の手段として巨大兵器デストブルムに無理やり乗せられ戦わされていたセレンを救ったのは、人気アニメそっくりの戦闘機とそのパイロット、エイルン・バザットだった。二次元から救世主が現れるというのも設定として新しいですが、本人や周囲もその状況に戸惑ったり、そのありように衝突しながらも、帰ってくると約束したヒロインの絶体絶命のピンチに颯爽と登場して救ってみせた展開はとにかく熱いです。一見荒唐無稽に見えるその登場も何やら理由がありそうな示唆があったりで、エルインと仲間たちの間で育まれてゆく絆にも注目のシリーズです。

 

19.グランクレスト戦記 (ファンタジア文庫 2013-2018) 全10巻+別巻1巻

グランクレスト戦記1 虹の魔女シルーカ (富士見ファンタジア文庫)
 

意に染まぬ契約のため君主の元に向かっていた魔法師シルーカが、道中襲われたところを助けた流浪の騎士テオに運命を感じて契約、二人で君主を目指すお話。ゼロからのスタートながら、襲った君主の領土を奪いテンポよく領土を広げていくスピード感は、ベテラン作家さんらしい安定感と合わせて流石だなと感じました。今回は性急過ぎる勢力拡大の反動で、苦境に陥ってしまいましたが、君主としての地位に固執することなく、一介の騎士としてシルーカとの契約を取ったテオの清々しさに、この物語の今後への期待を感じさせてくれるシリーズですね。

 

20.ファイフステル・サーガ (ファンタジア文庫 2018- ) 本編4巻-

ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団 (ファンタジア文庫)
 

古の魔王が再臨する絶望の未来を変えるため「アレンヘムの聖女」セシリアと婚約し、傭兵団「狂嗤の団」団長となる道を選んだカレル。聖女の加護を受け死の未来を回避する英雄として奮闘するファンタジー戦記。二年後の魔王再臨を限られた人しか知らない中で、代替わりした王国や戦争を仕掛けてきた自治領相手にどう立ち回るのか。腕が立って商才があり現実的な手段を積み重ねるカレルだけでなく、ヒロインのセシリアや仲間たち、王国の登場人物たちもまた魅力的なキャラが多くて、ここから物語がどう動くのか続巻がとても楽しみな新シリーズですね。

 

以上です。

他の人のベストも読んでみたいので、皆さんのセレクトに期待しています(笑)

 

 

 

2010年代ライトノベル青春小説ベスト20作品

今年2019年は2010年代最後ということもあり、年末恒例の下半期ベスト・年間ベストとは別に、特別企画ということでこの10年間を振り返っての10年代ベストを作ろうと思いました。今回はその第一弾としてまず「ライトノベル青春小説」を公開します。

 

ライトノベル青春小説の2010年代は、振り返るとファミ通文庫を中心とする人気作品が完結していった後のひとつの時代の終わりと、2016年以降再び盛り上がってゆく流れがあったのかなと感じています。やはり10年分ともなるとどれを選ぶのかかなり悩みましたが、2010年以降にスタートした作品を対象に、独断と偏見で印象に残った20作品を選んでいます。自分が選ぶ2010年代ライトノベル青春小説ベスト20ということですね。

 

インパクトを考えると最初シリーズもの中心になってしまうかなと思いましたけど、最終的に「下読み男子と投稿女子」「ヴァンパイア・サマータイム」は入れました。また最後の「近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係」は、時代の転換期にジャンル自体が軒並み苦戦し、読者としても希望を失いかけていた時期、あえてこの作品を発表することで一石を投じた著者さんの覚悟に敬意を表しての選出です。

 

こういうのは挙げていくと人の好みが出ますね...考えれば考えるほどこの並びでいいのか、このラインナップでいいのか、ぐるぐる堂々巡りで収集つかなくなりそうなので、えいっと決めたラインナップということでお願いします。 

 

1.やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(ガガガ文庫 2011-2019)

本編全14巻+別巻編3巻

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

 

目が腐っている以外は基本ハイスペック(自称)なはずなのに、平塚先生に強制入部させられるくらい捻くれていて、ぼっちでいろいろ残念な八幡と、容姿端麗文武両道なはずなのに、なぜか孤高を保っている残念美少女雪乃が奉仕部で出会ったボーイミーツガールで始まる物語。地の文読んでるとどれだけトラウマ積み重ねてるんだ的な痛さを感じますが、雪乃もそれはそれでまた違う意味でトラウマを積み重ねて痛い感じになっていて、この二人に結衣を絡めた奉仕部の面々の出来事を中心に描いてゆく面倒すぎる登場人物たちの物語がここまで成長するとは思いませんでした(苦笑)

 

2.冴えない彼女の育てかた(ファンタジア文庫 2012-2019)

本編全13巻・別巻5巻(GS3巻・FD2巻・メモリアル2巻)

春の坂道で飛ばされてきた帽子と白いワンピ-スの娘との出会いをきっかけに、そこからなぜか知り合いの女の子たちを集め、ギャルゲーを作ろうとヒロインが集う物語。英梨々も詩羽もほかのヒロインたちもキャラが濃いのに、逆にメインヒロイン役の恵がモブキャラ過ぎて主張もなく存在感が薄い(苦笑)結果的にその恵の行動が停滞していた話を動かしてゆくのが、このお話のポイントなのかなと思うんですが、あざといテンプレキャラやベタ展開を詰め込み過ぎなのにポテンシャルは相当高く、唸らされる展開の連続が印象的でした。

 

3.りゅうおうのおしごと! (GA文庫 2015- ) 本編11巻-

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

 

16歳で将棋界の最強タイトル『竜王』となった九頭竜八一の自宅に、小学三年生の雛鶴あいが弟子にしてもらうため押しかける物語。姉弟子の銀子とともに将棋漬けの生活を送ってきた八一と、驚異的な博覧強記と負けず嫌いな気持ちの強さで急速に成長していくあい。冒頭にインパクトのある師弟関係が描写されていた分、お互い刺激を受けて成長していく二人の関係がとても好ましいですね。熱い想いを乗せた勝負もありとても面白いですが、やたら周囲に女性の陰が見え隠れするクズ竜八一と幼馴染姉弟子銀子、幼女弟子たちとの今後にも注目ですね。

 

4.青春ブタ野郎シリーズ (電撃文庫 2014- ) 本編9巻-

図書館で突然出会ったバニーガール先輩は、なぜか周囲に存在を認識されてなくて...から始まる不思議系SF青春小説。話の骨子となる思春期症候群は、一応文中で考察されてはいるものの、いまいち分かったような分からないような設定で、周囲からどんどん認識されなくなっていく先輩と、そんな彼女と行動を共にする主人公の不器用なやりとりは結構自分好みだったりしました。ここから咲太の周囲にいるヒロインたちを絡めて繰り広げられてゆく思春期症候群を巡る物語がどういう決着を迎えるのか、とても楽しみなシリーズです。 

 

5.俺を好きなのはお前だけかよ (電撃文庫 2016- ) 本編12巻-

俺を好きなのはお前だけかよ (電撃文庫)
 

気になるコスモス先輩と幼馴染ひまわりがジョーロをデートに誘った目的は親友への橋渡し。そんな彼を好きなのは地味女のパンジーだけというドタバタラブコメディ。物語が進むと構図がどんどんややこしくなりますが各々の行動には理由があり、最初打算的に見えていたジョーロが常に周囲の友人のために行動していて、登場人物たちが利己的な理由で変節していく中でも最後までブレず、またそれを知るヒロインがいることに物語の真骨頂があったのかなと思いました。特殊なストーカー気質ながらお約束な正体を見せたパンジーを軸に、ややヒロインを増やしすぎた感もありますが、物語をどう決着させるのか今後の展開に期待のシリーズです。

 

6.生徒会探偵キリカ (講談社ラノベ文庫 2011- ) 本編6巻+新章1巻-

生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)

生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)

 

ふとしたきっかけから、巨大一貫校の莫大な予算を扱う生徒会に巻き込まれ、生徒会会計兼探偵のキリカと一緒に解決する生徒会探偵ミステリ。個人的にはミステリ部分よりもコメディ的な要素を期待して読んだので、キリカや生徒会長の狐徹といった生徒会の個性的で魅力的な面々とツッコミ役兼詐欺師のヒカゲの掛け合いも面白く、郁乃や朱鷺子ら脇役もいい味を出していました。またキリカとともに探偵役をこなす物語のもうひとつの軸となるミステリもまたなかなか効いていて、新章もスタートして今後も注目のシリーズですね。

 

7.エロマンガ先生 (電撃文庫 2013- ) 本編12巻-

高校生兼ラノベ作家の俺・和泉マサムネには、引きこもりの妹・和泉紗霧がいる。一年前に妹になったまったく部屋から出てこない彼女の正体とマサムネと、ヒロインたちを巡る物語。めんどくさい二人に周囲がやきもきしながら絡んでいく展開で、すれ違っていた二人は分かり合えたかに思えたのに結果的にまたすれ違ってしまったり、ヒロインたちとの気になるやり取りもあったりで、そんな積み重ねがとても印象的な物語になっていますね。方向性こそ見えたはずなのにまだまだ予断を許しません。

 

8.ゲーマーズ!(ファンタジア文庫 2015-2019) 全12巻+別巻2巻

ゲーム好きのぼっち高校生雨野景太が、学園一の美少女でゲーム部長の天道花憐に声をかけられたことから始まるラブコメディ。序盤は雨野の煮え切らなさにもやもやしましたが、天道からの入部の誘いを断り、上原や千秋といった気の合う仲間と出会うことで話も動き出しましたね。それぞれ言葉足らずで踏み込めないゆえにすれ違いが続いて、彼らの仲を取り持とうとした上原まで巻き込まれてしまうドタバタラブコメぶりが面白かったです。雨野を気にかける天道か、息が合いそうで致命的に合わない千秋か。なぜか複雑になってしまった人間関係が面白かったです。

 関連シリーズ:生徒会の一存 (富士見ファンタジア文庫)

 

9.妹さえいればいい。(ガガガ文庫 2015- ) 本編13巻-

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

妹さえいればいい。 (ガガガ文庫)

 

 妹がヒロインの小説しか書けないラノベ作家・羽島伊月と、彼のもとに集まる残念天才美少女作家・那由、イケメン作家・春斗、元同級生・京、そして通いで家事をする義弟・千尋たちの物語。ラノベ作家ものとはいえわりとゆるめの日常描写で、一見気ままにお気楽に生活しているように見える彼らも、一方でそれぞれが悩みや葛藤を抱えているというギャップが魅力。テンション高めで突っ走るストーリーはやや読む人を選ぶような気もしましたが、意外な秘密を抱えたまま話が進んだりもして、どんどん人間関係がややこしくなっていったシリーズにどう決着をつけるのか、最終巻に期待。

 

10.東雲侑子シリーズ (ファミ通文庫 2011-2012) 全3巻

東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)

東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)

 

ひょんなことから兄の持っていた雑誌で、普段一緒に図書委員を務める東雲侑子が作家であることを知った英太は、長編を書くためにという理由で侑子から仮の男女交際を依頼される。英太はつかみ所のない侑子に戸惑うことも多かったようですが、その存在が英太の心境の変化をもたらし、恋愛感情のよく分からなかった侑子もまた、英太に徐々に惹かれていって、その不器用な距離感が何ともまた見ていてもどかしくて、そういった繊細な機微の描写や二人が成長してゆく姿はとても良かったです。

関連シリーズ:この恋と、その未来。(ファミ通文庫)

 

11.ヒカルが地球にいたころ…… (ファミ通文庫 2011-2014) 全10巻

"葵" ヒカルが地球にいたころ……(1) (ファミ通文庫)

 

 見た目ヤンキーっぽい是光と、平安学園のアイドル帝門ヒカル。ひょんなことで知り合った直後にヒカルが死亡し、葬儀に参列した是光は彼の亡霊に取り憑かれる羽目に陥り、ヒカルを成仏させるため心残りを解消するよう行動を開始する是光とヒロインたちの物語。最初はヒカルの幼馴染の婚約者葵の頑なな態度や朝衣の妨害に苦戦するものの、そのまっすぐな気持ちをぶつけて約束を代理で果たそうとしてゆく是光の奔走があって、ヒカルに何らかの思いを抱えていたヒロインたちも、是光やヒカルの思いに触れ、前を向いて一歩を踏み出してゆく展開はなかなか良かったですね。

 

12.明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 (電撃文庫2013-2014) 本編全3巻+別巻1巻

明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 (電撃文庫)

明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 (電撃文庫)

 

女子高生・夢前光の交通事故に遭遇し、自分の寿命の半分と引き換えにその生命を救った坂本秋月は、なぜか1日おきに光の人格と入れ替わる身体になってしまった物語。行動力のあるイタズラ好きな光がぐいぐい引っ張って、どんどん秋月の生活環境が変わっていくのが面白かったですね。後半は一転シリアスな展開で頑張るなあと思ったら、最後のあんまりなオチにずっこけてしまいました(苦笑)可愛い感じなのに残念な光に垣間見える真摯な思い、そして周囲を振り回す泣き笑いの絶妙なバランスはとても自分好みです。

 

13.弱キャラ友崎くん (ガガガ文庫 2016- ) 本編8巻+別巻1巻

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

 

日本屈指のゲーマーながらリアルでは弱キャラの友崎が、同じくらいゲームを極めリアルでもパーフェクトヒロインの日南葵に炊きつけられ、クソゲーと断じるリアルで自己変革を目指す物語。ゲームに対する同じ想いを抱く葵の言葉を信じ、失敗しながらもチャレンジを諦めない友崎。そんな彼のフォローに奔走する葵が、凄まじいまでの努力家であることを何度も垣間見たこともきっと大きかったんですよね。魅力的なヒロインたちを絡めたテンポよく進む物語の顛末は友崎らしいその時点での精一杯で、そんな続巻をまた読んでみたくなる期待感がありますね。


14.29とJK (GA文庫 2016- ) 本編7巻-

目つきは怖いけれど職場では一目置かれる29歳の社畜・槍羽鋭二。そんな彼が休日のネカフェで説教した女子高生・南里花恋になぜか告白されてしまう物語。運命的な出会いと信じて果敢に攻める花恋。彼女の言動にやきもきして孫との交際を業務命令してしまう社長。そんな状況に戸惑う彼が直面する仕事上での危機的状況。女子高生に社畜が迫られるラノベ的展開ながら、そんな鋭二も周囲の人々に慕われる存在で、仕事や花恋の夢にそれぞれの事情とやや詰め込み過ぎた感もありましたが、登場人物たちが奮闘する展開は心に響くものがありますね。


15.ぼくたちのリメイク (MF文庫J 2017- ) 本編6巻-

しがないゲームディレクターで会社は倒産、企画も頓挫して実家に帰ることになった橋場恭也。輝かしいクリエイターの活躍を横目にふて寝して目覚めると、なぜか十年前の大学入学時に巻き戻っていた青春リメイクストーリー。落ちたはずの大学に受かっていて憧れの芸大ライフ、さらにはシェアハウスで男女四人の共同生活。とはいえ同居人はそれぞれキラリと光るものを持っているのが垣間見えてしまう厳しい現実。これまでの経験を活かして存在感を出してもまだまだ試される状況は続きそうで、気になる人間模様も含めて続巻が楽しみなシリーズ。


16.14歳とイラストレーター (MF文庫J 2016- ) 本編7巻-

イベントでコスプレイヤー乃木乃ノ香(14歳)と知り合い、ファンだった彼女に家に手伝いに来てもらうようになったプロ絵師・京橋悠斗と、曲者揃いの仲間たちとのドタバタな日常。作中では絵師さんの描くことは楽しくても大変なことも多いその生活や、なるほどなと思うリアルな事情などもいろいろ語られていて、懇意にする個性的な濃い仲間との繋がりや彼らのために奔走する姿にはいいやつだなあと思いましたけど、そんなつもりはなくても14歳との日常は傍から見たら通報待ったなしですね(苦笑)鈍感で優秀なイラストレーター悠斗と魅力的なヒロインたちの今後が気になります。

 

17.失恋探偵ももせ (電撃文庫 2013) 全3巻

失恋探偵ももせ (電撃文庫)

失恋探偵ももせ (電撃文庫)

 

 「恋はいつか終わります―」そんなことを言う後輩の千代田百瀬に巻き込まれ、野々村九十九は「失恋探偵」である彼女に手を貸す日々を送る青春小説。特にミステリ好きでもないのにミステリ研究会に入会した百瀬は、なぜか九十九を助手に失恋探偵を始める。しかし依頼をこなすうちに、すれ違いが重なって九十九と大喧嘩。でも百瀬は、九十九にとって時々イライラしながらも、ほっとけない存在なんですよね。九十九相手になぜ失恋探偵を始めたのか、訥々と語る百瀬が乙女過ぎて、やっぱりちょっと変わった百瀬も恋する女の子なんだなあとニヤニヤしてしまいました。

関連シリーズ:「三角の距離は限りないゼロ」「読者と主人公と二人のこれから」(電撃文庫)「失恋探偵の調査ノート」 (メディアワークス文庫)

 

18.下読み男子と投稿女子 (ファミ通文庫 2015)

どんな作品も面白いと感じるラノベ新人賞の下読み高校生アルバイト・青と、厳しい祖母との生活や投稿作への酷評から自信をなくしかけていた同級生の美少女・氷ノ宮氷雪。本来出会うはずのない二人が出会い、二人で協力しながら投稿作品を作り上げていく二ヶ月間。周囲とうまく付き合うことのできなかった氷雪と、孤高の彼女に自分は釣り合わないと思う青。お互いに影響を受けて強く惹かれていきながらも、そこからあと一歩を踏み出す勇気を持てないもどかしい二人の迷いや、それを乗り越えようとする真摯な想いが心に響く素敵な青春創作物語でした。

 

19.ヴァンパイア・サマータイム (ファミ通文庫  2013年)

人と吸血鬼が昼と夜を分け合う世界。両親が営むコンビニを手伝う高校生・山森頼雅と、夕方に紅茶を買っていく自分と同じ蓮大附属に通う少女冴原綾萌と出会いを描く青春小説。頼雅と吸血鬼の少女冴原との出会いは不器用だけれどまっすぐで、容易には越えられない壁を感じながら、それでも惹かれ合う二人の思いにとても切ない気持ちになりました。そんな思い悩む吸血鬼の冴原も、夜の世界では厳しい指導ぶりにバレー部の後輩から「オニハラ」とか呼ばれてしまう存在。ファンタジーな設定が日常に溶け込んでいるステキな世界観でした。


20.近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係 (ファミ通文庫 2016) 全2巻

母と二人で暮らす家で、同い年の遠い親戚の女の子和泉里奈と同居することになった高校生の坂本健一。彼女の出現によって様々な変化がもたらされてゆく物語。兄にコンプレックスを抱き他人との距離に悩む健一と、控えめながら女子校育ちで無防備な里奈。近過ぎるのにどこか遠い彼女を意識し友人たちに知られたくないと感じる健一に気づき、心穏やかではいられない幼馴染・由梨子。著者らしい繊細な心理描写がとても印象的で、遠回りしながらもあるべきところに落ち着いた結末には、三人が出会えて良かったと思える心地よい読後感がありました。

 

以上です。

 

作ってみてつくづく痛感しましたが、10年分を振り返って対象作品を挙げてセレクトする、並び順を決める、コメントするまでゼロから作るのはほんと時間かかりますね(苦笑)なんとか頑張って「ラノベファンタジー」「ライト文芸」まではやろうと思っていますが、「文庫」「単行本」あたりは状況次第かなと思っています。