読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

続巻に期待したい!ライトノベル20選

少し前に20年上半期のオススメライトノベル企画を作りましたが、あくまで新作のみのセレクトだったので、今回は最新刊で強烈なインパクトを残した展開があった作品、あるいは今後に続巻予定があって期待の作品を中心に、個人的に注目の20作品をセレクトしました。

 

1.継母の連れ子が元カノだった (角川スニーカー文庫)

「IT促進法」により学生の部活にソシャゲ開発が推進される世界。不正の内部告発を行いソシャゲの名門校から命薫高校へと転校してきた白析解が、弱小ソシャゲ部の部長・青井七花に出会う青春小説。廃部寸前の部に所属するガチャ狂いのプログラマー・黄島文、思い込みの激しいイラストレーター・黒羽絵瑠といった優秀で個性的な部員たちと出会い、ぶつかり合いながら絆を育んでいって、そんな新しい仲間たちに支えられながら過去を乗り越える展開はなかなか良かったですね。スタートラインに立った続巻ではヒロインたちの掘り下げも期待しています。現在2巻目まで刊行。

 

11.育ちざかりの教え子がやけにエモい (ガガガ文庫)

満員電車で疎遠になっていた幼馴染の伏見姫奈を助けた高校二年生の高森諒。それをきっかけに学校ではすっかり人気者になっていた彼女と、少しずつ幼馴染としての関係を取り戻してゆく青春小説。ずっと同じクラスだったけど中高では疎遠になっていた二人の距離感。それがきっかけを得て、今までとはまた変わってゆくことに戸惑いを感じながらも、二人が絆を再び育んでいく展開はなかなか良かったですね。鳥越さんの存在も物語の構図として効いてましたけど、どこか詰めが甘い二人の関係がこれからどうなってゆくのか、今後が楽しみな新シリーズです。20年8月に2巻目刊行。

 

16.友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ? (オーバーラップ文庫)

同じクラスの美少女・夏川愛華との両想いを夢見て、めげずにアプローチを続けていた佐城渉。しかしある日突然、現実を見て適切な距離を取ろうとする彼の急変に、愛華も逆に気になり始める青春ラブコメディ。周囲もカップルなのではと誤解するくらいの距離感だったのに、一転渉が邪魔をしないよう遠くから見守るようにしたことで、ウザかったはずが逆にその不在が落ち着かなくなってゆく愛華。とはいえ現時点では彼女も違和感にモヤモヤしているくらいで、想いを自覚するのはこれからなんですかね。そんな二人のこれからに期待したい新シリーズです。

 

20.仲が悪すぎる幼馴染が、俺が5年以上ハマっているFPSゲームのフレンドだった件について。 (ブレイブ文庫)

FPSゲーム世界一位の雨川真太郎。そんな彼と相性抜群なフレンド「2N」の正体が、喧嘩別れした幼馴染・奈月だったことに気づく青春小説。辛い時に拒絶したのに、意外な形で真太郎を支え続けてくれた奈月。鈍い彼と素直になれない奈月の最強ケンカップルに、ゲームの全国大会優勝を目指すために真太郎に惚れた美青年・ジルと美少女配信者・ベル子を加え結成されたチームは、ちょっとベクトルが一極集中しすぎて苦笑いですが、それぞれのエピソードにえげつない合宿中のゲームプレイもあったりで、絆も深めた彼らの全国大会での活躍が楽しみです。

 

以上です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。

好きなラノベを投票しよう 2020年上投票10作品

というわけで今年もやってきました『好きラノ』2020年上期。

毎回ここでは該当期間中に新作を投票していましたが、この企画はTwitterでの投票多くてわりと票が分散しそうな感じで、さらに考えてみたら別に新作の上半期オススメ企画を作っていますし、この先ラノもあるので、もうここは新作既刊関係なく個人的に上半期でインパクトのあった10作品を選ぶことにしました。

 

1.継母の連れ子が元カノだった4 (角川スニーカー文庫)

2020年上半期注目のオススメ新作一般文庫30選

 2020年上半期注目のオススメ新作企画「ライトノベル」「ライト文芸」「文芸単行本」に続いて最後の第四弾ということで「一般文庫」レーベル編です。今回上半期のオススメ作品ということで一般文庫レーベルから30作品選びましたが、文庫はどれ削るのか、どう並べるのか結構悩みました(苦笑)これで4企画120作品を紹介しましたが、ライトノベルに関しては新作以外の注目シリーズの紹介企画も別途考えていますのでよろしくお願いします。

 

1.仙文閣の稀書目録 (角川文庫)

3.パラ・スター (集英社文庫)

5.プリズン・ドクター (幻冬舎文庫)

幼くして帝たる父と母を亡くし東北の鎮守府副将軍となり、蝦夷との戦いに生きてきた源譲。都で検非違使の少尉となった彼が、時の権力者・藤原基経から神霊に憑かれた姫を元に戻せと命じられる平安ファンタジー。帝位を巡る争いに巻き込まれた譲が押し付けられた基経の娘、出羽から連れてきた蝦夷の神女・為斗の存在、そして幼き頃の約束を果たすなら姫の魂を捜すという神霊・虚神と魂がさまよう魔道山。以前の立場から時の権力者たちに目の敵にされ窮地に陥りながらも、大切なものを最後まで見失わなかった譲が迎えた結末はなかなか良かったですね。

 

21.シトロン坂を登ったら 大正浪漫 横濱魔女学校 (創元推理文庫)

26.山神よろず相談所 (角川文庫)

 

29.幽霊たちの不在証明 (宝島社文庫)

 

30.その終末に君はいない。 (スターツ出版文庫)

2020年上半期注目のオススメ新作文芸単行本30選

20年上半期注目のオススメ新作企画第三弾の文芸単行本編です。毎度のことですが読みたい本が多すぎて後追いになっているという状況もあり、気になる本をギリギリまで読んでの作成が常態化しつつあります。そんな事情もあって最後までどれを入れるのか迷いましたが、今回読んだ一般文芸単行本の中から30作品選んでいます。

 

ちなみにこれまで6月12月刊行の本は極力該当上半期/下半期の中で紹介していましたが、実情として当月のうちに全て読み終わるのが困難なため、これまで上半期下半期どちらにも紹介できない新作が発生してしまっていました。それを解消するため今回から前半期に刊行された本も該当月に読んだ本は含めることにします。その点は予めご了承ください。「わたしの美しい庭」を入れるまではどうも並びがしっくりこなかったのですが、要するにこれを入れろということだったんだと思います。

 

1.わたしの美しい庭

至高のAI『タイタン』のサポートで、人類は仕事から解放され自由を謳歌する未来。心理学を趣味とする内匠成果を世界でほんの一握りの就労者ナレインが訪れ、彼女に仕事を依頼する近未来SF。成果に託される突如として機能不全に陥ったタイタンAIのカウンセリング。仕事という概念がない世界で考察する働くことの意味、仕事しかしたことがないコイオスと共に旅する中で目にする様々なこと、そんな中でコイオスの成長や彼女自身の心境の変化もあって、未来に生きるとはどういうことか、いろいろと可能性を垣間見せてくれる物語は面白かったです。

 

11.銀色の国

手伝っている叔父の店を訪れる女性の苦悩、一緒に住むようになった相手が時折頼んでくる悲しい思い出のパン、うっかり不倫してしまった妻の複雑な想い、仕事と家事の日々に疲れた妻と保育園仲間の逃避行、子供に先立たれたのに周囲に気を遣わねばならない友人、娘も構ってくれた趣味仲間の入院など6つの連作短編集でしたが、登場人物たちが辛く苦しい時に寄り添ってくれる人たち、そして物語の中に出てくる料理の存在が彼ら彼女らを優しく温かく癒してくれるものとして効いていて、救いが垣間見えるそれぞれの結末はなかなか印象的な物語でした。

 

16.さいはての家

三人の少女を繋ぐ町であった殺人事件。夏休み、置き去りにされた謎を追いかける彼女たちに想像もしていなかった危険が迫る青春ミステリ。祖父の農業を手伝い琴子たちと遊んでくれたお兄さんの正体、祥子の想い人・土屋が告げた意外な疑惑、そして新聞部の沙也香が調査する廃ホテルの事情から思わぬ形で繋がってゆく三十年前の事件。彼女たちの捜査はわりと危なっかしくてハラハラすることもありましたけど、エピソードの繋がりを垣間見せながら、パズルのピースを組み合わせてゆくように真相が浮かび上がってくる構図はなかなか上手かったですね。

 

18.湯けむり食事処 ヒソップ

名料亭の料理人をある事情から辞めた章が、幼馴染夫婦の素泊まり温泉旅館「猫柳苑」の食事処「ヒソップ亭」の主人となり、店を訪れるワケありの客たちにこだわりの料理を提供する料理小説。お節介な幼馴染夫婦に誘われ、旅館の元料理人の娘・桃子と始めた食事処。両親が出かける時の妻の表情を気にする中年男性、史跡めぐりの定年退職者のピンバッジ、酒を知るひとり旅の女性のリベンジ、そして桃子の気がかりや、旅館が抱える苦悩にも向き合いつつ、美味しい料理を食べてもらうこと、周囲の人たちを大切にする章の生き方がなかなか良かったですね。

 

19.いきるりすく

十六年前の地震で温泉が涸れ衰退する一方の岐阜県宝幢村。地震で家族を亡くし、伯父夫婦の介護に明け暮れる日々を送る希子が、村で起きた事故死を巡る騒動に巻き込まれてゆくミステリ。典型的な狭い村社会での生き方を当たり前と思う伯父夫婦や村役場の婚約者・竜哉。働き始めた希子が、雇われブロガーの死にから広がる不審点を不気味な隣家長谷川家の長男・耀とともに探る展開でしたけど、真相を掘り起こしてみたらとんでもないものが出てきましたね(苦笑)旧弊に縛られる村と決別し、新たな可能性を見出した彼女たちの姿が印象に残る結末でした。

 

28.永遠の夏をあとに

最近やたら目にする高齢者ドライバーの事故。ふと高齢者の父に不安を覚えた猪狩雅志が、息子の息吹と帰省した夏に父親に運転をやめるよう説得を試みる家族小説。安い給料のやり甲斐ない研究職、高校生になってから元気のない息子に共稼ぎで忙しい妻。高齢者の運転は危険でもかといって現実はなかなか切実で、通販の利用や都会暮らしのトライアルも失敗。途中までは行き詰った閉塞感が半端ない展開でしたけど、後半の急展開はなかなか興味深く読みました。そうそう上手くは行かないでしょうけど、一つの提案としてこういう生き方もありなんですかね。

 

30.運命の人を見つけた、ら

 

2020年6月に読んだ新作おすすめ本

6月の新作もなかなか興味深い作品が目白押しでしたが、なんといっても注目は単行本版も同時刊行で復活の野村美月さんの新シリーズ「むすぶと本。」ですね。体調不良でしばらく刊行なかったようですが、7月に講談社タイガでも新刊が刊行になりますし、今後の活躍に期待です。

 

あとは電撃文庫版とはすっかり別物に仕上がっていて、「Unnamed Memory」と分厚い2冊同時刊行で読者に読んでみろとばかりに挑戦してきた「Babel」、あまさきみりとさんの久しぶりの新刊「星降る夜になったら」、ガガガ文庫の「サンタクロースを殺した。そして、キスをした。」「シュレディンガーの猫探し」あたりですか。

 

ライト文芸は今回も印象的な物語だった「明けない夜のフラグメンツ」映画化もされた「水曜日が消えた」、オレンジ文庫で再出発となった「後宮染華伝 黒の罪妃と紫の寵妃」あたり、単行本は今回読んだ作品はどれも面白かったですが、個人的には野崎まどさんの「タイタン」、武田綾乃さんの「どうぞ愛をお叫びください」、逸木裕さんの「銀色の国」を挙げておきます。

 

むすぶと本。 『外科室』の一途 (ファミ通文庫)

本の声が聞こえる少年榎木むすぶ。やきもち焼きの恋人の夜長姫(=本)に激しく嫉妬されながら、本の味方を自認する彼が様々な人と本の問題を解決する学園ビブリオミステリー。学園の王子様・姫倉悠人先輩の協力も得ながら取り組むハナちゃんとの再会を望む「長くつしたのヒッピ」、書店で出会ったとあるラノベの願い、ある本に罹患した少年の苦悩、「十五少年漂流記」と無人島生活といった事件の中で仲良くなった人たちがいて、何より最後の「外科室」の朗読会が迎えた結末が劇的で印象に残りました。彼の物語をまた読んでみたい新シリーズですね。

むすぶと本。 『さいごの本やさん』の長い長い終わり

 

Babel I 少女は言葉の旅に出る (電撃の新文芸)

 

星降る夜になったら (MF文庫J)

 

サンタクロースを殺した。そして、キスをした。 (ガガガ文庫)

 

シュレディンガーの猫探し (ガガガ文庫)

 

君を失いたくない僕と、僕の幸せを願う君 (電撃文庫)

 

邪神官に、ちょろい天使が堕とされる日々 (GA文庫)

 

明けない夜のフラグメンツ (メディアワークス文庫)

 

水曜日が消えた (講談社タイガ)

 

後宮染華伝 黒の罪妃と紫の寵妃 (集英社オレンジ文庫)

 

呪殺島の殺人 (新潮文庫nex)

 

ブルーネス (文春文庫)

 

緑の窓口 樹木トラブル解決します (講談社文庫)

 

ループ・ループ・ループ (宝島社文庫)

 

私の彼は腐ってる (中公文庫)

 

タイタン

 

どうぞ愛をお叫びください

 

銀色の国

 

あなたに会えて困った

 

まだ温かい鍋を抱いておやすみ

 

あの日の交換日記

 

さよなら願いごと

 

湯けむり食事処 ヒソップ

 

十字架のカルテ

 

いきるりすく

2020年6月に読んだ本 #読書メーターより

6月はだんだん忙しくなってくる中でどうにかこれくらいはという冊数でしたが、13年以来刊行が止まっていた「おいしいコーヒーのいれ方」がようやく完結、また「宝石商リチャード氏の謎鑑定」は今回で第二部が完結しましたね。電撃文庫の「俺を好きなのはお前だけかよ」や「マージナル・オペレーション」の完結が近づく一方、「結婚が前提のラブコメ」「俺の女友達が最高に可愛い。」あたりは2巻目で盛り上がりを見せて今後に期待したくなりました。

 

6月の読書メーター
読んだ本の数:69
読んだページ数:20286
ナイス数:4602

鳥居の向こうは、知らない世界でした。4 花ざかりの王宮の妃たち (幻冬舎文庫)鳥居の向こうは、知らない世界でした。4 花ざかりの王宮の妃たち (幻冬舎文庫)感想
異界「千国」に迷い込んで二年。仙人の薬師・零の弟子として働き、初恋の相手・透李王子との結婚を控える千歳が、今後のあり方を見定めてゆく第四弾。零の弟子としての自分、彼女が見出した新たな弟子候補、王宮の妃たちからも頼られ、国王から謀反の罪で幽閉中の前王妃・香華の最後の願いを叶えるよう命ぜられる展開で、変わることを選んだ千国を巡る状況は難しいものがありそうですけど、様々な人と出会い、その考えや思いに触れてゆく中で覚悟を決めて自分のあり方を決めた千歳なら、透李ともきっといい夫婦になれるのかなと思えた結末でした。
読了日:06月01日 著者:友麻 碧
いきるりすくいきるりすく感想
命を絶ったとある女子高校生。刑事・安西京香はその自殺に違和感を抱き、真相を追う彼女がセリーヌという「死神」と「1錠の薬」の真実に行きつく物語。死神を巡る事件で1年間の休職に追い込まれていた京香が、職場復帰した直後に起きた自殺。妹と知人だったという女子高生と、ファンだった人気アイドルの自殺、京香をこの事件から遠ざけようとする上司の真意。背景が明らかになっていくうちに見えてきたもうひとつの側面があって、彼女自身も過去にしっかりと向き合い、前作から続く事件もしっかりと決着してみせた結末はなかなか良かったですね。
読了日:06月02日 著者:平沼 正樹
地図とデータでみる都道府県と市町村の成り立ち (平凡社新書)地図とデータでみる都道府県と市町村の成り立ち (平凡社新書)感想
律令時代に全国に制定され、国郡制度によってそれぞれの地域が定められた日本の「国」。秀吉の時代を経て江戸初期には郡と村が確定し、明治維新を経て始まった地方再編と昭和と平成の大合併までの変遷を解説した一冊。構成としては秀吉の太閤検地以降がメイン。江戸時代を経て明治新政府の中央集権化を推進すべく廃藩置県から地方改編をどのように進めたかという部分に力点を解説されていて、提言には特に見るべき点はなかったものの、北海道や沖縄の変遷や統治機構を大きく変えることになった明治政府の試行錯誤の歴史はなかなか興味深かったです。
読了日:06月02日 著者:齊藤 忠光
スガリさんの感想文はいつだって斜め上 3 (5分シリーズ+)スガリさんの感想文はいつだって斜め上 3 (5分シリーズ+)感想
学園の問題児・丹波舜斗が読書感想部にやってきた。人を寄せつけない舜斗とかかわるうちに、3年前に起きた大騒動の真相が浮かび上がる第三弾。今回は取り上げたのは『走れメロス』と『秘密の花園』。問題児の新入部員・丹波が悔いる過去の真相に繋がる太宰治の解釈だったり、高井田先生の暴走だったり、杏介に意外な同好の士が見つかったりと、スガリさん自身の破天荒ぶりは珍しく控えめで、読書感想部も部員が増えていい感じになりつつありますね。でも巻末の思わせぶりなエピローグはいかにも何かありそうで、次巻の展開が気になるところです。
読了日:06月03日 著者:平田駒
新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙V (電撃文庫)新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙V (電撃文庫)感想
女商人エーブの謀略を見事に退け、王国と教会による戦争危機を回避したコルとミューリ。コルは自らを慕ってくれるミューリのために二人の紋章を作ることを思いつくシリーズ第五弾。調べものの過程でミューリが気づいたこと、ブロンデル修道院を目指す道中で出会った行き倒れの見習い騎士ローズ、そして王国で進退窮まった聖クルザ騎士団分隊の存在。理想と現実、各陣営の面子と利害と思惑が絡み合う中、今回もまた見事な落とし所を見出してみせたコルの機転が光りましたけど、月を狩る熊のことや二人の関係がこれからどうなるのか続巻に期待ですね。
読了日:06月03日 著者:支倉 凍砂
十字架のカルテ十字架のカルテ感想
親友を殺した犯人が精神鑑定で不起訴になった過去を抱える若き新人医師・弓削凛が、正確な鑑定のためにはあらゆる手を尽くす日本有数の精神鑑定医・影山司の助手に志願する物語。歌舞伎町無差別通り魔事件、生後五ヶ月の娘を抱いてマンションから飛び降りた母、姉を刺し逮捕された引きこもり、精神疾患詐病とした傷害致死犯の思わぬ反撃、過去に犯した殺人事件を多重人格で不起訴となっていた犯人の真意。容疑者たちの真意を些細な手がかりから見抜いていく展開はなかなか面白かったですが、過去の因縁を絡めた最後の事件は業が深かったですね…。
読了日:06月04日 著者:知念 実希人
宮廷神官物語 十 (角川文庫)宮廷神官物語 十 (角川文庫)感想
大神官選定が近づく麗虎国。筆頭候補となった瑛鶏冠は王子の推挙にもかかわらず固辞し続け、その秘密を知る苑遊は死んだはずの鶏冠の弟・葉寧を捜し出し、手中に収める第十弾。王太子が定まっても未だ逆転を諦めない苑遊と、出生の秘密を抱えたまま弟の身柄を押さえられたことで苦悩する鶏冠。ここまで来て往生際が悪い苑遊もあれですけど、自らが窮地に陥っても相談したり周囲を頼るのではなく、一人で何とかしようと奔走するのが鶏冠らしくて、再び女装までして仲間の助けも来たのに何ともやるせない結末でしたね。いい感じにまとまって欲しい…。
読了日:06月04日 著者:榎田 ユウリ
ブルーネス (文春文庫)ブルーネス (文春文庫)感想
東日本大震災後、地震研究所を辞めた行田準平。学界で異端視される武智に誘われ、海洋工学や観測機器などのエキスパートだが個性が強すぎて組織に馴染めないはみ出し者たちと津波監視システムの実現に挑む物語。広報として震災を直面した準平が、武智に触発されて彼を中心とするはぐれものたちと前人未到のプロジェクトに挑む展開でしたが、メンバーに振り回されたり古巣との対立だったり、設置場所を巡って漁師とすれ違いもある中で、津波被害から救いたいという熱い想いが関係者たちの心を動かし、窮地を救う展開にはぐっと来るものがありました。
読了日:06月04日 著者:伊与原 新
あの日の交換日記 (単行本)あの日の交換日記 (単行本)感想
先生の提案から始まった交換日記。様々な立場の二人による7編の交換日記が紡ぐ連作短編集。白血病で入院する生徒と先生、教師と殺人予告をする生徒、双子姉妹のやりとり、母に息子が書いた交換日記の真相、交通事故の加害者と被害者のやりとり、上司と部下による手書きの業務日誌を通じた交流、先生が縁で出会った夫妻と、ひとつひとつのエピソードが積み重ねてゆく中で、徐々に明らかになってゆく登場人物たちの意外な繋がりとその後にも驚かされましたが、交換日記の広がりを通じて紡がれていった優しさに満ちた関係がとても印象的な物語でした。
読了日:06月05日 著者:辻堂 ゆめ
君を失いたくない僕と、僕の幸せを願う君 (電撃文庫)君を失いたくない僕と、僕の幸せを願う君 (電撃文庫)感想
高校一年の夏。晴丘蒼がようやく自覚した恋心を告げた日、最愛の幼馴染・天ヶ瀬一陽が告げた返事。運命を変えるため、彼女を取り戻すためにタイムリープを繰り返す青春小説。小さい頃から一緒にいるのが当たり前だった幼馴染・一陽との関係。そんな彼女が友人になった涼夜蛍と蒼をくっつけようとしたり、らしさを失っていった理由。彼女の切なすぎる覚悟と、それでも諦めない蒼のループの繰り返しには壮絶なものがありましたけど、二人の確かな絆が厳しい試練を乗り越えさせましたかね。背景にあったもうひとつのエピソードもなかなか良かったです。
読了日:06月05日 著者:神田 夏生
タイタンタイタン感想
至高のAI『タイタン』のサポートで、人類は仕事から解放され自由を謳歌する未来。心理学を趣味とする内匠成果を世界でほんの一握りの就労者ナレインが訪れ、彼女に仕事を依頼する近未来SF。成果に託される突如として機能不全に陥ったタイタンAIのカウンセリング。仕事という概念がない世界で考察する働くことの意味、仕事しかしたことがないコイオスと共に旅する中で目にする様々なこと、そんな中でコイオスの成長や彼女自身の心境の変化もあって、未来に生きるとはどういうことか、いろいろと可能性を垣間見せてくれる物語は面白かったです。
読了日:06月06日 著者:野崎 まど
移民の世界史移民の世界史感想
移民の歴史を4部44テーマという形で取り上げ、人の移動がどのような理由によって引き起こされ、どんな経緯を辿ったのかを解説した一冊。古くからある宗教を絡めた人の移動、近世の西洋の奴隷貿易やアジアの年季奉公人といった強制移動、国を巡る事情で突然状況が変わり振り回され行き場を失う人々、移民の増加や内戦による難民発生など、様々なアプローチから分かりやすく紹介されていて、世界の人の流れが現代の生活に付随する様々なものの流れと同じようなものになりつつある中、これからどのような流れが生まれるのか今後の動向に注目したい。
読了日:06月06日 著者:ロビン コーエン
壁の世界史-万里の長城からトランプの壁まで (単行本)壁の世界史-万里の長城からトランプの壁まで (単行本)感想
トランプ大統領が選挙戦で打ち出した、アメリカとメキシコの国境に設けるとした壁。万里の長城ハドリアヌスの壁、パレスチナ分離壁、ティエールの城壁、ベルリンの壁などを取り上げつつ、壁という存在の謎に迫った一冊。冒頭に世界の壁を記した地図はあるものの、構成としてはアメリカとメキシコの国境を扱う章と、世界中の壁を扱う章が交互に配置されていて、各地の取材した壁の解説を交えつつ、メキシコとの国境には壁自体は元からあり、それが政治の材料として取り上げられた意味を問う内容として読むとなかなか興味深いのかなと感じました。
読了日:06月07日 著者:イアン・ヴォルナー
緑の窓口 樹木トラブル解決します (講談社文庫)緑の窓口 樹木トラブル解決します (講談社文庫)感想
先輩・岩浪とともに「緑の窓口」への異動を言い渡された区役所職員・天野優樹が、変わり者の樹木医・柊紅葉と樹木トラブルを解決するミステリ。スギを巡る嫁姑の確執、クヌギが起こした自動車破損事故の真相、モッコクの元気がなくなった理由、ヤマザクラの下に埋められたタイムカプセル、チャボヒバが切り倒された理由、エドヒガンザクラの元気がなくなった理由など、持ち込まれた依頼を協力して解決する展開で、樹木の知識もなかなか興味深かったですが、有能だけれど人付き合いが苦手な紅葉とそれをフォローする天野がなかなかいいコンビでした。
読了日:06月08日 著者:下村 敦史
サクラの降る町 (KAエスマ文庫)サクラの降る町 (KAエスマ文庫)感想
空から花びらが降る不可思議な現象「アマザクラ」。突如発生したその現象を巡り、秘密を抱えた少女たちの運命が動き出す青春小説。幼馴染で仲が良かったはずなのに、周囲と距離を置き自分に価値を見出せないツバサと、過去に囚われ前に進めずにいるヒヨリ。すれ違っていた二人の関係に転校生・ルカの存在が変化のきっかけとなって、ルカの目的や二人が仲違いした過去が明らかになってゆく先に見えてきたそれぞれの想い、そして過去を乗り越えぶつかり合った彼女たちが迎える結末にはぐっと来るものがありましたね。ルカのその後も読んでみたいです。
読了日:06月08日 著者:小川 晴央
弱小ソシャゲ部の僕らが神ゲーを作るまで 1 (オーバーラップ文庫)弱小ソシャゲ部の僕らが神ゲーを作るまで 1 (オーバーラップ文庫)感想
「IT促進法」により学生の部活にソシャゲ開発が推進される世界。不正の内部告発を行いソシャゲの名門校から命薫高校へと転校してきた白析解が、弱小ソシャゲ部の部長・青井七花に出会う青春小説。廃部寸前の部に所属するガチャ狂いのプログラマー・黄島文、思い込みの激しいイラストレーター・黒羽絵瑠といった優秀で個性的な部員たちと出会い、ぶつかり合いながら絆を育んでいって、そんな新しい仲間たちに支えられながら過去を乗り越える展開はなかなか良かったですね。スタートラインに立った続巻ではヒロインたちの掘り下げも期待しています。
読了日:06月09日 著者:紙木織々
中古でも恋がしたい! 13 (GA文庫)中古でも恋がしたい! 13 (GA文庫)感想
古都子、麻奈との三名での飲酒と不純異性行為の疑いで停学・謹慎処分となってしまった清一。古都子は意気消沈する清一を励まして、周囲の協力を受けながら何があったのかを調べ始める第十三弾。18年以来の完結巻ということで、どういう話しだったかなあと思い出しながらの局面で、どうにか退学の危機を乗り越えて、学校中に蔓延する麻奈の噂の真相を追い、これまでの過去にもしっかり決着を付けて、ヒロインたちの想いにもひとりひとり向き合いましたね。最後はやや駆け足だった感もありましたが、この物語を最後まできちんと読めて良かったです。
読了日:06月09日 著者:田尾典丈
俺を好きなのはお前だけかよ(14) (電撃文庫)俺を好きなのはお前だけかよ(14) (電撃文庫)感想
終業式。二学期の終わりを生徒達に告げ冬休みが始まる日。サザンカ、パンジー、ひまわり、コスモスの4人の少女が待つ場所へ、ジョーロが本当の気持ちを伝えるために動く第十四弾。冒頭のとんでもドジっ子娘チェリーの規格外っぷりや図書室を巡るやり取りは微笑ましかったですけど、ジョーロが向き合った彼女たちとのそれぞれの結末で、もうこの物語も終わりに向かってるんだなとしみじみとしていたところに、ここでもう一波乱ありましたか。でもジョーロならこれもしっかりと乗り越えて、彼女とのハッピーエンドを掴み取ってくれると信じてますよ。
読了日:06月10日 著者:駱駝
幼なじみが絶対に負けないラブコメ4 (電撃文庫)幼なじみが絶対に負けないラブコメ4 (電撃文庫)感想
骨折した末晴のために泊まり込みでお世話にやってきた白草。白草大好き可知家のメイド・紫苑も登場し、黒羽や真理愛も交えて新たなバトルが繰り広げられる第四弾。瞬社長により秘められた過去が週刊誌に暴露され、対抗するために末晴がヒロインたちと撮ることになった真実。紫苑の乱入が末晴との関係に波紋を投げかけつつ、彼女たちらしいアプローチの中で一歩出し抜くクロというある意味いつも通りの構図でしたけど、見方を変えれば必死な彼女が印象ほどヒロインレース圧倒してるわけでもないんですよね…でも自分はそんな彼女を応援したいです。
読了日:06月10日 著者:二丸 修一
俺の妹がこんなに可愛いわけがない(14) あやせif 下 (電撃文庫)俺の妹がこんなに可愛いわけがない(14) あやせif 下 (電撃文庫)感想
高校3年の夏、あやせの告白を受け容れ、恋人同士になった京介。毎日のように逢瀬を重ね、絆を深めていく二人の関係を、ついに桐乃が知られることになる第二弾。いやほんと京介も相変わらず暑苦しくて、恋人になったあやせのヤンデレっぷりが正直ちょっとヤバいよ?と心配になるレベルで(苦笑)、桐乃も桐乃でなんかちょっとあれな中、一見マイペースに見える加奈子の存在感が効いてましたね…。いやもう三人の関係それでいいの?と思う結末でしたけど、あれもまた彼ららしいとも言えるのかな。黒猫ifや加奈子ifも気になるところではあります。
読了日:06月10日 著者:伏見 つかさ
声優ラジオのウラオモテ #02 夕陽とやすみは諦めきれない? (電撃文庫)声優ラジオのウラオモテ #02 夕陽とやすみは諦めきれない? (電撃文庫)感想
夕陽の裏営業スキャンダルを何とか乗り越えたかに見えた二人。けれど夕陽の仕事は激減して周囲の反応も相変わらずで、そんな声優生命最大の危機に素の自分たちで勝負する第二弾。実力派の先輩声優・柚日咲めくるに突然浴びせられた強烈な罵倒、イメチェンして再び仕事を再開した二人が募らせてゆく違和感、そんな事態に業を煮やした夕陽の母がふたりに課した難題。今回は素の姿を知られた声優がどうあるべきかで揺れる二人の試行錯誤でしたけど、ギリギリの状況で感じたファンたちの想いに真摯に向き合って出した彼女たちの決断を応援したいですね。
読了日:06月10日 著者:二月 公
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身II」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身II」感想
王族に呼び出されたばかりか、貴族院の図書館に秘められた地下書庫へ近付こうとし、相変わらずフェルディナンドを悩ませるローゼマイン。相変わらず我が道を全力で突っ走るローゼマインにレスティラウトから驚愕の提案がされる第五部第二弾。不思議な現象を起こした上に学生たちの共同研究に王を巻き込み、聖女と持ち上げられ事実と異なる認識をされてイライラするお茶会。少しずついろいろなことがズレていった先にあったディッター勝負は、彼女の立ち位置を決定的に変えてしまったような気がしますね…ハンネローレにも転機となるか注目してます。
読了日:06月11日 著者:香月美夜
天才王子の赤字国家再生術7~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)天才王子の赤字国家再生術7~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)感想
三皇子のいがみ合いで長らく膠着状態が続いてきた帝国の後継者争い。そこで劣勢の長兄ディメトリオが戴冠式を強行するために兵を挙げて事態が動き始め、ウェインがなぜかディメトリオ陣営に取り込まれる第七弾。ウェインの躍進に危機感を持ち罠にハメたロウェルミナ皇女の駆け引き、そして三皇子を巡る闘争に巻き込まれ暗躍するウェインの悪辣な打開策。二転三転する状況の中で優劣もまた頻繁に入れ替わり、終わってみれば誰もが痛み分けとかいう結末には苦笑いでしたけど、兄に追い付かんと奮闘するフラーニャが打った一手も気になるところです。
読了日:06月11日 著者:鳥羽 徹
俺の女友達が最高に可愛い。2 (GA文庫)俺の女友達が最高に可愛い。2 (GA文庫)感想
仲良くしていたアニメ大好きなバイトの後輩・琴吹に告白されたカイ。果敢な猛アタックでカイと初デートにこぎ着けた琴吹が、カイの親友ジュンと邂逅する第二弾。親友とか言われたら心穏やかにいられるはずもないカイとジュンの関係に、勇猛果敢に突っ込んでいってジュンに愛でられまくる琴吹が可愛いかったですが、いやほんと傍から見たらあの二人は一体何なの?って思いますよね(苦笑)一緒にコスプレ撮影に至るまでの展開に、ほんの少しだけ可能性が垣間見えなくもなかったですが、それでも二人の関係が鉄壁過ぎて突破口はあるんでしょうかね…。
読了日:06月11日 著者:あわむら赤光
ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?6 ~とびっきりの王子様~ (GA文庫)ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?6 ~とびっきりの王子様~ (GA文庫)感想
織原さんとの秘密の交際が家族にバレた桃田が、新たな義母の存在に戸惑いながらも新生活に慣れ始めた頃。文化祭のクラス代表になった浦野が、咲と口論の末に文化祭直前で引きこもってしまう第六弾。思わぬ形でマウントを取りに来る妃だったり、文化祭でやらかす姫に苦笑いでしたけど、今回のメインは変わりつつあるウラの状況や彼らの親友カナを巡るエピソードで、小心者なりに頑張ったウラの奮闘や旧友を絡めた過去の清算はなかなか良かっただけに、そんな展開から美味しいところをかっさらっていくカナの彼女・唄にはやられたと思いました(苦笑)
読了日:06月12日 著者:望公太
邪神官に、ちょろい天使が堕とされる日々 (GA文庫)邪神官に、ちょろい天使が堕とされる日々 (GA文庫)感想
神々の覇権戦争を制したヤルダバオト教団の不良祈師ギィと、その戦いで破れ神格奴隷となった天使チェルシーラグナロク古戦場に潜むイフリート討伐に向かう教団の《英雄》アウグストの仕事を二人が手伝うことになるファンタジー。隷従させるべき神格奴隷・チェルシーを愛でるギィと、森の中で出会った神格の少女・アストリッド、明らかになってゆく討伐の真実。チェルシーとギィの強い絆を感じさせる二人の関係がなかなか良くて、アストリッドも加えた三人で戦う展開を軸に、神々の因縁も絡めながらうまく物語を広げていってほしい新シリーズです。
読了日:06月12日 著者:千羽十訊
紅霞後宮物語 第十一幕 (富士見L文庫)紅霞後宮物語 第十一幕 (富士見L文庫)感想
仙娥の懐妊が分かり、慌ただしい雰囲気に包まれる後宮。そんな中、文林と小玉の想いはすれ違ったまま、紅霞宮は小玉はじめ女官たちも謎の体調不良で療養地に赴く第十一弾。何だかんだで深い絆で結ばれていたように思っていた小玉と文林のすれ違いは、小玉自身にもいろいろなものを突き付けて、周囲もまたいろいろ思うところがあったりで、挙句に真相がまた何ともあれでしたけど、外から見ていたらまた違ったように見えるのかもですね。思わぬ急展開でまたどうなるか、並行して描かれる康や寛の事情、鵬たち三人の様子も気になるところではあります。
読了日:06月13日 著者:雪村花菜