読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

6月の購入検討&気になる本ほかピックアップ

6月は4~5月頃からの刊行延期が入ってきている関係で、注目作品もちょっと多めになっています。この中から読んでいるシリーズを拾いつつ、新刊をどれだけ拾っていけるかとなるとなかなか悩ましいものがあります。また角川文庫は夏の文庫カドフェスの影響で発売日が6/12になっているので注意が必要です。

 

シリーズ続巻としては角川文庫から小野不由美さんの「ゴーストハント」シリーズが再刊となります。また住野よるさんの「青くて痛くて脆い」なども刊行になりますね。その他このラノ単行本部門1位の「Unnamed Memory」5巻目が世界観を同じくする「Babel」とともに同時刊行、またコバルト文庫からオレンジ文庫に移籍したはるおかりのさんの「後宮染華伝」、2013年以来の続巻となる「おいしいコーヒーのいれ方」はJUMP JBOOKS版と文庫版が同時刊行で完結とのこと。また新潮文庫nexから「ケーキ王子の名推理」の5巻目が刊行になります。

 

新作は新潮文庫nexさよなら世界の終わり」(佐野徹夜)のほか、富士見L文庫御苑筆姫物語」(喜咲冬子)、MF文庫J星降る夜になったら」(あまさきみりと)、野村美月さんの世界観を同じくするファミ通文庫/単行本同時刊行「むすぶと本。」に注目しています。もう少し他の新作にも手を出したいところですが、読了状況や内容などを確認しながらもう少し考えたいと思います。

さよなら世界の終わり

さよなら世界の終わり

  • 作者:佐野 徹夜
  • 発売日: 2020/05/28
  • メディア: 文庫
 
御苑筆姫物語 (富士見L文庫)

御苑筆姫物語 (富士見L文庫)

  • 作者:喜咲冬子
  • 発売日: 2020/06/13
  • メディア: 文庫
 
むすぶと本。 『外科室』の一途 (ファミ通文庫)

むすぶと本。 『外科室』の一途 (ファミ通文庫)

  • 作者:野村 美月
  • 発売日: 2020/06/30
  • メディア: 文庫
 

 

 

新潮文庫nex(5/28発売)
・さよなら世界の終わり 佐野徹夜/loundraw
・処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな 葵遼太/いつか

新潮文庫(5/28発売)
・【文】1ミリの後悔もない、はずがない 一木けい

ヒーロー文庫(5/28発売)
・魔神少女と孤独の騎士3 三月ふゆ/ともぞ

HJ文庫(6/1発売)
・【新】夢見る男子は現実主義者1 おけまる/さばみぞれ
・<Infinite Dendrogram>―インフィニット・デンドログラム― 13.バトル・オブ・ヴォーパルバニー 海道左近/タイキ

スニーカー文庫(6/1発売)
・陰に隠れてた俺が魔王軍に入って本当の幸せを掴むまで2 松尾からすけ/riritto
・クラスで一番の彼女、実はボッチの俺の彼女です2 七星蛍/万冬しま
・終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ#02 枯野瑛/ue

講談社ラノベ文庫(6/2発売)
異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術13 むらさきゆきや/鶴崎貴大
・【新】『ラブコメ文芸部』と美少女問題児たちとボッチな俺 秋月一歩/佑りん

ポプラ文庫ピュアフル(6/4発売)
・終電前のちょいごはん 薬院文月のみちくさレシピ 標野凪

宝島社文庫(6/4発売)
・【文】猫のお告げは樹の下で 青山美智子

・ガラッパの謎 引きこもり作家のミステリ取材ファイル  久真瀬 敏也


小学館文庫(6/5発売)
・浅草ばけもの甘味祓い 兼業陰陽師だけれど、お隣に“鬼上司”が住んでます 江本マシメサ/漣ミサ

 

文春文庫(6/9発売)

・【文】風に恋う 額賀澪


電撃文庫(6/10発売)
俺の妹がこんなに可愛いわけがない (14) あやせif 下 伏見つかさ/かんざきひろ
俺を好きなのはお前だけかよ (14) 駱駝/ブリキ
・幼なじみが絶対に負けないラブコメ4 二丸修一/しぐれうい
・声優ラジオのウラオモテ#02 夕陽とやすみは諦めきれない? 二月公/さばみぞれ
・錆喰いビスコ6 奇跡のファイナルカット 瘤久保慎司/赤岸K

TOブックス単行本(6/10発売)
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身Ⅱ」 香月美夜/椎名優

講談社文庫(6/11発売)
・【再】月の都 海の果て 中村ふみ/六七質

幻冬舎文庫(6/11発売)
・コンサバター 大英博物館の天才修復士 一色さゆり
・【文】水上博物館アケローンの夜 蒼月海里

角川文庫(6/12発売)
・【再】ゴーストハント1 旧校舎怪談 小野不由美
・【再】ゴーストハント2 人形の檻 小野不由美
・【文】青くて痛くて脆い 住野よる
・【再】宮廷神官物語 十一 榎田ユウリ
・【文】鹿の王 水底の橋 上橋菜穂子
・その孤島の名は、虚 古野まほろ
・あなたが心置きなく死ぬための簡単なお仕事。 才羽楽
・【文】吹部! 第二楽章 赤澤竜也

GA文庫(6/15発売)
・【新】邪神官に、ちょろい天使が堕とされる日々 千羽十訊/えいひ
・俺の女友達が最高に可愛い。2 あわむら赤光/mmu
・ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?6 望公太/ななせめるち
・天才王子の赤字国家再生術7 ~そうだ、売国しよう~ 鳥羽徹/ファルまろ
落第騎士の英雄譚18 海空りく/をん

富士見L文庫(6/15発売)
・紅霞後宮物語 第十一幕 雪村花菜/桐矢隆
後宮妃の管理人 三 ~寵臣夫婦は繋ぎとめる~ しきみ彰/Izumi
・御苑筆姫物語 喜咲冬子/アオジマイコ
・万葉ブックカフェの顧客録 山咲黒/細居美恵子

ビーズログ文庫(6/15発売)
・十三歳の誕生日、皇后になりました。3 石田リンネ/Izumi

ハルキ文庫(6/15発売)
・菓子屋横丁月光荘 文鳥の宿 ほしおさなえ

電撃の新文芸(6/17発売)
・Unnamed Memory V 祈りへと至る沈黙 古宮九時/chibi
・【再】Babel I 少女は言葉の旅に出る 古宮九時/森沢晴行

新潮社単行本(6/17発売)
・全部ゆるせたらいいのに 一木けい

ガガガ文庫(6/18発売)
・結婚が前提のラブコメ2 栗ノ原草介/吉田ばな
・【新】サンタクロースを殺した。そして、キスをした。 犬君雀/つくぐ
[第14回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>]
・【新】シュレディンガーの猫探し 小林一星/左
[第14回小学館ライトノベル大賞<審査員特別賞>]

KADOKAWA単行本(6/18発売)
・ないものねだりの君に光の花束を 汐見夏衛

ハヤカワ文庫JA(6/18発売)
・【文】コルヌトピア 津久井五月

早川書房単行本(6/18)
・三体2 黒暗森林 上 劉慈欣・著/大森望ほか訳
・三体2 黒暗森林 下 劉慈欣・著/大森望ほか訳

オレンジ文庫(6/19発売)
・ゆきうさぎのお品書き あらたな季節の店開き 小湊悠貴/イシヤマアズサ
後宮染華伝 黒の罪妃と紫の寵妃 はるおかりの/Say-HANa
・谷中びんづめカフェ竹善 3 降っても晴れても梅仕事 竹岡葉月/勝田文
・平安あや解き草紙 ~その女人達、ひとかたならず~ 小田菜摘/シライシユウコ
・宝石商リチャード氏の謎鑑定 久遠の琥珀 辻村七子/雪広うたこ

集英社文庫(6/19発売)
・ありふれた祈り おいしいコーヒーのいれ方 Second Season IX 村山由佳
※JUMP JBOOKS版と同時刊行。
・バンチョ高校クイズ研 蓮見恭子

ファンタジア文庫(6/19発売)
アサシンズプライド12 暗殺教師と薄明星火 天城ケイ/ニノモトニノ

PHP文芸文庫(6/19発売)
・京都祇園もも吉庵のあまから帖 2 志賀内 泰弘

MF文庫J(6/25発売)
・【新】異世界、襲来01 プロジェクト・リバース 丈月城/しらび
・【新】星降る夜になったら あまさきみりと/Nagu
・今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。2  涼暮皐/あやみ
・ぼくたちのリメイク Ver.β 2 木緒なち/えれっと
ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編2 衣笠彰梧/トモセシュンサク
・探偵はもう、死んでいる。3 二語十/うみぼうず
Re:ゼロから始める異世界生活23 長月達平/大塚真一郎

オーバーラップ文庫(6/25発売)
異世界迷宮の最深部を目指そう14 割内タリサ/鵜飼沙樹
・弱小ソシャゲ部の僕らが神ゲーを作るまで2 紙木織々/日向あずり

新潮文庫nex(6/25発売)
・ケーキ王子の名推理 5 七月隆文/高野苺

 

メディアワークス文庫(6/25発売)

・明けない夜のフラグメンツ 青海野灰

・記憶のその先で、キミに会えたなら  佐織えり


KADOKAWA単行本(6/25発売)
#君と明日を駆ける 一宮 梨華/慧子

新潮社単行本(6/25発売)
・どうぞ愛をお叫びください 武田綾乃

ファミ通文庫(6/30発売)
・【新】むすぶと本。 『外科室』の一途 野村美月/竹岡美穂

ファミ通B6判(6/30発売)
・むすぶと本。 『さいごの本やさん』の長い長い終わり 野村美月/竹岡美穂

モンスター文庫(6/30)
・隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた2 荒三水/さばみぞれ

夏のイチオシ文庫15選 一般文庫/ライト文芸編

またもや思いつきで始めた夏の文庫企画。
前回のライトノベル編に続いて、今回は第二弾ということで一般文庫/ライト文芸編ということで15作品を選んでみました。例によって面白い本を選ぼうと試行錯誤しましたが、夏らしさはあまり追及していないのでその点は予めご了承下さい(苦笑)なお、一般文庫/ライト文芸の青春小説については別途企画を考えているので、また改めてご紹介したいと思います。

 

1.虹を待つ彼女 (角川文庫)

虹を待つ彼女 (角川文庫)

虹を待つ彼女 (角川文庫)

  • 作者:逸木 裕
  • 発売日: 2019/05/24
  • メディア: 文庫
 

優秀で予想できてしまう限界に虚しさを覚えていた研究者・工藤が、死者を人工知能化するプロジェクトに参加して、衝撃的な自殺でカルト的な人気のゲームクリエイター・水科晴を知る物語。過去の事件や水科晴のことを調べてゆくうちに、彼女に共鳴し惹かれてゆく工藤。重要なキーパーソン「雨」の存在と調査中止を警告する謎の脅迫。我が身が危険に晒されながらも諦めず、晴を人工知能で再現することに妄執する工藤の姿には鬼気迫るものがありましたが、真相を知った彼のほろ苦くも粋な決断は少なからず心に響くものがありました。

 

2.親王殿下のパティシエール (ハルキ文庫)

親王殿下のパティシエール (ハルキ文庫)

親王殿下のパティシエール (ハルキ文庫)

  • 作者:篠原悠希
  • 発売日: 2019/12/16
  • メディア: 文庫
 

華人移民を母に持つフランス生まれのマリー・趙が、革命後の混乱から救ってくれた清王朝乾隆帝の第十七皇子・永璘お抱えの糕點厨師見習いとして北京で働くことにばる中華ロマン小説。マリーがフランスの菓子職人見習いから清の御膳房に立場を変えて戸惑い苦労する様子はなかなか興味深いものがありましたけど、永璘不在の不安な状況でも試行錯誤しながらの頑張り認められ、自分で居場所を得てゆくマリーの前向きな姿勢がなかなか良かったですね。何かとマリーを気にかけてくれる永璘との関係性が、これからどう変わってゆくのか期待のシリーズです。現在2巻まで刊行。

 

3.妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

妻を殺してもバレない確率 (宝島社文庫)

  • 作者:桜川 ヒロ
  • 発売日: 2017/10/05
  • メディア: 文庫
 

未来に起こる確率を調べる技術が確立した世界。自らが抱える苦しい思いをどうにかしたくて、確率をつい確認し続けてしまう人たちの物語を描く連作短編集。政略結婚や大怪我、路面電車での出会い、届かぬ思いや父と娘の関係、忘れられない運命の出会いなど、停滞する状況を抱える登場人物たち。それでも人との関わりの積み重ねから事態や心境も少しずつ変化して、それに向き合ったり素直になったり次に向けた一歩を踏み出してゆく7つのエピソードは、表題作でもあるタイトルイメージをいい意味で裏切る思いのほか爽やかな読後感の素敵な物語でした。

 

4.流転の貴妃 或いは塞外の女王 (集英社オレンジ文庫)

流転の貴妃 或いは塞外の女王 (集英社オレンジ文庫)
 

商人の娘として生まれ、後宮の貴妃になった柴紅玉。それが勢力を拡大しつつある北方の遊牧民族の盟主へと嫁がされることになり、さらにその途上で嫁ぎ先の敵対部族による襲撃で攫われてしまう中華風浪漫譚。帝の寵愛はなくとも後宮謳歌していた生活から、二転三転する運命に翻弄され激変する紅玉の人生は大変だなあと思わずにいられませんでしたが、族長の末子アマルの妻となった彼女があるべき姿を見定めて覚悟を決め、遊牧民族の妻としては型破りな、けれど自分らしいやり方でアマルを支えるようになってゆく姿にはぐっと来るものがありました。

 

5.君の想い出をください、と天使は言った (角川文庫)

君の想い出をください、と天使は言った (角川文庫)
 

急性脳腫瘍で入院し、医師の態度から最悪の結果を察してしまい絶望する河野夕夏。その夜悪魔を名乗る不思議な青年と出会い、大切なものと引き換えに命を助ける取引を交わす恋愛ミステリ。二年間の記憶を失って様々な違いに戸惑いながらも再び職場の銀行で働き始める夕夏と、そんな彼女の前にアフターフォローとして再び現れた青年・水上。記憶が戻らなくても確実に前に進めている実感があって、そんな彼女を気にかけてくれる人たちがいて、そんな中で本当に大切なものを再び見出して、これまでの全てが繋がってゆく結末がとても素敵な物語でした。

 

6.室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君 (集英社文庫)

室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君 (集英社文庫)
 

南北朝時代南朝帝の妹宮・透子が北朝に帰順した楠木正儀を連れ戻すべく、乳母と二人きり吉野から京へと乗り込む過程で、若き日の宿敵・足利義満観阿弥世阿弥親子と出会う時代小説。跳ねっ返りだった世間知らずな透子の無謀な行動の顛末と意外な出会い。周囲の言うことを鵜呑みにしていた透子が様々な人と出会い、真摯に語らうことで知ってゆく複雑な世界のありよう。自らの無力を痛感しつつも、無用な争いを回避するために奔走する彼女の成長があって、魅力的に描かれた実在の登場人物たちを絡めたテンポの良い展開はなかなか良かったですね。

 

7.三日月邸花図鑑 花の城のアリス (講談社タイガ)

三日月邸花図鑑 花の城のアリス (講談社タイガ)

三日月邸花図鑑 花の城のアリス (講談社タイガ)

  • 作者:白川 紺子
  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: 文庫
 

父が亡くなったことで、大名庭園を敷地内に持つ三日月邸を相続し、探偵事務所を開業した八重樫光一。そんな事務所を訪れた不思議な少女・咲に出会い三日月邸を巡る謎に迫る和風ファンタジー。「庭には誰にも立ち入らないこと」という亡父の謎の遺言。咲と踏み入った庭で出会った人々の悔恨と、彼らのためにそれを解消してゆくお人好し探偵・光一。八重樫家とは険悪の仲と聞いていた牧家の兄妹たちとの出会いがあって、明かされる過去や庭園の真相には切ない気持ちになりましたが、光一と不器用な牧兄妹たちのやりとりが妙にツボにハマる物語でした。

 

8.天盆 (中公文庫)

天盆 (中公文庫)

天盆 (中公文庫)

 

小国「蓋」を動かすのは、国民的盤戯「天盆」を勝ち抜いた者。 貧しい13人兄弟の末っ子・凡天は10歳ながらも天盆にのめり込んでいき、異様な強さで難敵を倒していくファンタジー。将棋のような天盆が軸に据えられた世界観で、のめり込んでいく凡天が行く先々で引き起こす事件と、権力者に睨まれて少しずつ追い詰められてゆくその家族。困難に際しての様々な葛藤はあっても血の繋がらない父母や兄弟たちとの揺るぎない絆は確かにあって、頂点を目指す天盆を巡る戦いはどんどん熱くなっていって、劣勢を覆し上り詰めてゆく戦いぶりは痛快でした。

 

9.太陽のシズク ~大好きな君との最低で最高の12ヶ月~ (新潮文庫nex)

死に至る「宝石病」を患い海の見える高校に転校してきた理奈。親友や彼氏を作って最高の学園生活を送ろうと決意する理奈と、彼女のために受験を頑張る翔太が過ごした最高の12ヶ月の物語。運命の恋人と出会い、印象的な出会いを果たした美里と様々な出来事を経て大切な親友となってゆく理奈。彼女と自分の夢のために受験勉強する翔太が予備校で出会った仲間たち。違う時を過ごす中で不安やすれ違いもあって、それでも二人で育んできた確かな絆があって。そんな二人のかけがえのない日々を必ず読み返したくなる、とても鮮烈で印象に残る物語でした。

 

10.薬も過ぎれば毒となる (宝島社文庫)

医者から処方された薬で足の痒みが治まらず悩んでいたホテルマン水尾爽太。再診後の薬局で薬オタクの女性薬剤師・毒島と出会う薬剤ミステリ。ホテル客室の塗り薬紛失事件に、薬の数が足りないと訴える老人、痩身剤を安く売る病院など、他のことには興味が薄いのに薬が関わると俄然行動力を発揮する毒島の存在感と、そんな彼女が気になる爽太が事件を解決していく展開はなかなか面白かったです。病院や薬剤師、薬の豆知識もあったりで、わりと踏み込んだのに進展しない二人の関係はなかなか遠い道のりですけど、続きが気になるシリーズですね。現在2巻まで刊行。

  

11.アンハッピー・ウエディング 結婚の神様 (PHP文芸文庫)

幼馴染の史郎を一方的に恋慕い、彼との結婚を夢見る会社員の咲希。そんな彼女が妹の紹介で結婚資金を稼ぐために副業で結婚式の「サクラ」のバイトとして働く物語。同じサクラの百合香とともに臨む憧れの結婚式場で次々と起こる略奪婚、歳の差婚、毒親といったワケアリ結婚式の数々。長年の片想いでずっと近くにいるのに、なかなか見えてこない史郎ことシロの本音。これでもかとばかりに結婚の現実が突きつけられて、頻発するトラブルからひとつの構図が見えてきて、それでも結婚に憧れる咲希の真っ直ぐな想いとその結末は心に響くものがありました。

 

12.推定失踪 まだ失くしていない君を (集英社オレンジ文庫)

外務省のグレーゾーンな仕事を引き受ける外交官として働く桐島に宛てて、東南アジアの国・ビサワンで働く元恋人・亜希から謎めいたメールが届き、失踪した彼女を探すためビサワンへ飛ぶ物語。子供兵士の救済を目的とした国際NGOで働いていた亜希の失踪を探るうちに、ビサワンを巡る政情不安な状況に巻き込まれてゆく桐島。各国間の事情や利害関係に振り回されても諦めずに活路を見出そうとする中で、謎めいた彼女の過去も明らかになっていって、何ともやるせない結末でしたけど、最後まで真摯であろうとした彼女のありようはとても印象的でした。

 

14.年下のセンセイ (幻冬舎文庫)

年下のセンセイ (幻冬舎文庫)

年下のセンセイ (幻冬舎文庫)

  • 作者:中村 航
  • 発売日: 2018/04/10
  • メディア: 文庫
 

予備校に勤める28歳の本山みのり。後輩に誘われ生け花教室に通い始め、助手を務める8歳下の透と出会う彼女が、元カレの結婚式の帰りにバーでバイトをする透に再会する恋愛小説。変化のない日々をこれでいいのかという思いと、変化を恐れる気持ちで揺れるみのりが出会った年下の透。惹かれるけれど臆病になってしまうみのりと、進学で地元を離れるのに真っ直ぐに思いをぶつけてくる透のやりとりがドキドキして、もやもやしたりどうしようもなく恋しくなったり、二人を繋いだ生け花を効果的に使いながら綴ってゆく、可愛くて甘い素敵な物語でした。

 

14.一生夢で食わせていきますが、なにか。 (富士見L文庫)

一生夢で食わせていきますが、なにか。 (富士見L文庫)
 

高校時代の先輩でプロのマンガ家を目指す啓汰先輩と再会したあすみ。マネージャーとして交渉役や雑務を引き受けた彼女が次々と直面するトラブルとその奮闘を描くお仕事小説。マンガ家の夢を反対したあすみをマネージャーに据えて、周囲の反対を押し切りマンガ家業を軌道に乗せてみせた啓汰先輩。職場で起きるトラブルに対処していくあすみに対する啓汰先輩の信頼は厚くて、外堀も着実に埋まって周囲もすっかり公認状態なのに、それに全然気づかないあすみを見てると啓汰先輩がちょっと可哀想になりますね(苦笑)二人の今後がまた読んでみたいです。

 

15.銀行ガール 人口六千人の田舎町で、毎日営業やってます (メゾン文庫)

都会に行ってモデルになることを夢見ながら、地方銀行の営業として働く五十嵐吟子、24歳の奮闘が描かれるお仕事小説。渉外として顧客を訪れる吟子の元に次々と舞い込む厄介な相談。戦前から続く雨漏り食堂の修繕費用融資から、リサイクルショップ立ち退き交渉、振り込め詐欺犯逮捕、町おこしに離婚して生き別れた父の過去が絡んできたり、かつての想い人との久しぶりの再会もあって、困っている人たちのために周囲の助けも借りながらアイデアをひねり出し、奔走するうちに自分の目指すところを見出してゆく吟子の姿には心に響くものがありました。

 

以上です。好評ならまた来年以降も考えたいと思います。

 

夏のイチオシ文庫15選 ライトノベル編

 来月あたり各社恒例の夏の文庫フェアの季節だな…と思い出し、ふと自分で夏の文庫を作ったらと思い、ライトノベル編と一般文庫/ライト文芸編を考えてみようと思いつきました。ただ、ここ最近やたらと企画を乱発しすぎたために、そのあたりと被らない作品を...と考えて、読んだ本の中から選んでみようとしたらかなり苦戦しました。

 

新作も最近紹介した本ばかりなので選ぶのを諦めて、前述のように最近の企画で紹介してない本をと削ってと縛りを増やしていったため、今回夏の文庫とは銘打っていますが、夏らしさはあんまり出せてません(苦笑)数巻くらいのシリーズもの入れるとセレクトもう少し楽だったのかも(その辺の反省は次回に活かしたいと思います)。とりあえず第一弾ということでライトノベル編15選を紹介します。

 

1.かりゆしブルー・ブルー 空と神様の八月 (角川スニーカー文庫)

いなり寿司しか食べられない呪いを祓うため神々の住む島・白結木島を訪れた高校生春秋。そんな彼が神様との縁を切ることで怪異を祓う花人の後継者の少女・空と出会い、怪異解決に挑む沖縄青春ファンタジー。天真爛漫でどこまでもフリーダムだけれど島想いな空たちに翻弄されながら、徐々に変わってゆく春秋の心境。師匠を亡くし未熟を自覚しつつも、事情を知って春秋のために呪いを解こうとする空の決意。のびやかな舞台で繰り広げられる物語の結末はちょっぴり切なくて、けれどそれを乗り越える爽快な読後感は著者さんらしい魅力に溢れていました。

 

2.とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

 

空に生き甲斐を見出す傭兵飛空士シャルルが、次期皇妃ファナを送り届けるため、単機敵制空権内を翔破することを命じられる物語。秘密作戦のはずなのに皇子の迂闊な連絡で敵に作戦が筒抜けという状況下、二人が協力して切り抜けていくうちに、命じられたことに従うだけだったファナも本来の自分を取り戻し、お互い想いを育んでいきながら、でも叶わないと知っているその思いに葛藤する展開は切なくて美しく、何度も心を揺さぶられました。もし読んだことがなければぜひ読んでみて欲しい一冊。

 

3.1/2―デュアル― 死にすら値しない紅 (角川スニーカー文庫)

殺されヒトとしての一部分を失い、引き替えに特殊能力を得て生き返る偽生者。偽生者を殺し直すために生きる限夏が、不老不死な偽生者の少女・伴を相棒とする近未来SF。ぎこちない距離感から始まった二人が挑む、偽生者による国家統一を掲げたテロ事件発生と、首謀者と伴を巡る凄惨な因縁。そんな彼女に限夏がいかにして並び立つ存在になりうるのかが問われる展開でしたけど、絶妙のタイミングで複雑な過去や葛藤も絡めつつ、絶望する彼女が直面する最悪の状況にも最後まで諦めずに挑み、見事に伴の相棒たることを証明してみせた結末は見事でした。

 

4.地獄に祈れ。天に堕ちろ。 (電撃文庫)

地獄に祈れ。天に堕ちろ。 (電撃文庫)

地獄に祈れ。天に堕ちろ。 (電撃文庫)

  • 作者:九岡 望
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/11/09
  • メディア: 文庫
 

世界規模の幽界現象と呼ばれる大災厄によって、死者が現世に戻ってきてしまうようになった末世・東凶。聖職者が大嫌いな亡者の死神ミソギと、死者が嫌いな聖職者アッシュが縁あって手を組み立ち向かうダークヒーローアクション。相性最悪な二人の邂逅と、そんな彼らに振り回されるシスターのフィリス。魅力的なキャラたちそれぞれの複雑な事情を絡めながら、東凶中を巻き込んだ麻薬騒動から始まる世界崩壊の危機を吹っ切れたシスコン二人が大暴れして解決に導く展開は痛快でした。いい感じにオチもついた結末でしたけど続巻に期待できそうですね。20年7月に2巻目刊行。

 

5.ディエゴの巨神 (電撃文庫)

ディエゴの巨神 (電撃文庫)

ディエゴの巨神 (電撃文庫)

 

新大陸発見に沸き立つ変革の時代。密かに陰陽術の研究に励む海洋国家スピネイア王国の青年ディエゴが、腐れ縁の友人アルバロと共に新大陸遠征軍の船に乗り込む物語。遠征軍を撃退する森を守る巨神の存在と欺かれた原住民たちの不信、そしてディエゴの悔恨と彼を取り巻く複雑な因縁。理想を持つがゆえに現実に思い至らない面もあったディエゴでしたけど、レラやローゼンといった原住民たちと交流するうちに自分のなすべきことを見出してゆく展開は、新大陸と旧大陸の間で新たに時代を切り開こうとする熱い想いがぶつかりあってとても面白かったです。

 

6.夜明けのヴィラン 聖邪たちの行進 (ダッシュエックス文庫)

ヒーローと悪人であるヴィランの存在が科学的に証明された世界。最凶最悪のヴィランの息子として生まれた高校生のユウマが、Dr.デブリードマンが巻き起こしたヒーロとヴィランの境を超えた壮大な戦いに巻き込まれてゆく物語。分かりやすいヒーローとヴィランの構図がどこかアメコミっぽい雰囲気でしたが、ヒーローを次々と殺しテロを仕掛けるDr.デブリードマンと超人協会の因縁もあり、立ち位置の難しい主人公や正義とは何かというテーマをテンポの良い読みやすい文章で上手く描いていたと思いました。

 

7.MONUMENT あるいは自分自身の怪物 (ダッシュエックス文庫)

人類が火を熾すよりも先に、発火の魔術に目覚めた世界。旧ソ連出身の工作員ボリスが、『賢者』の資質を持った魔術師千種トウコの護衛依頼を受け、学院のあるピラミス島を訪れる物語。クールで目的のためには手段を選ばないボリスが、トウコやその妹ナナコたちと一緒にその依頼の裏にある真の目的に近づいていくストーリーで、やや冗長な文章が物語を必要以上に難解なものにしてしまった感もありましたが、SF的な要素を含むミステリアスな物語には独特の雰囲気がありました。

 

8.裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。 (角川スニーカー文庫) 

担当がついたもののなかなかデビューできない高校生作家の青木。そんな彼を恋愛マスターと勘違いした演劇部所属の憧れの綾瀬マイから、劇の脚本執筆を依頼される青春ラブコメディ。魅力的な彼女にどんどん惹かれてゆくのに、自信がなくて一歩を踏み出せずドツボにハマってゆくジレンマ。理解者の親友や彼女にお似合いのイケメン主人公キャラ、二人を振り回す女友達を配する王道な展開でしたけど、行き詰まっていた状況を打破する疾走感には勢いがあって、なのに何となく締まらない残念な結末に主人公らしさを感じてしまうなかなか面白い一冊でした。

 

9.魔女の花嫁 seasons beside a witch (LINE文庫エッジ) 

魔女の花嫁 seasons beside a witch (LINE文庫エッジ)

魔女の花嫁 seasons beside a witch (LINE文庫エッジ)

  • 作者:空伏空人
  • 発売日: 2019/12/05
  • メディア: 文庫
 

不治の病に罹った少年・桑折冬至が、迷い込んだはずれの森に住む変わり者の魔女・ミーズに出会い、願いを叶える代わりにその弟子となる物語。ハルと名付けられた死にたくないと願うシニカルな少年と、陽気で構いたがりでどこか子供っぽい一面も見せる魔女のミーズ。そんな二人の微笑ましいやりとりは良かったですけど時折ハルが知らないミーズの過去があって。巻き込まれた事件を通して明かされるミーズの真意がまた衝撃的でしたけど、二人で過ごした日々もまた偽りではなかったんですよね。彼らがどうなってゆくのかその後の話を読んでみたくなる一冊でした。

 

10.黒猫のおうて! (ファンタジア文庫)

黒猫のおうて! (ファンタジア文庫)

黒猫のおうて! (ファンタジア文庫)

 

奨励会三段リーグを全勝しながら突如理由も告げずに将棋界を去った天才棋士長門成海。そんな彼のもとに強くなりたい一心でゴスロリ猫耳姿で女流棋士三河美弦が弟子入りを志願する将棋小説。服装にインパクトはありますが、ストーリーとしては将棋から距離を置いていた成海が、将棋で強くなるために真っ直ぐにぶつかってくる美弦の熱い想いに心揺さぶられてゆく展開で、美弦の姉で女流棋士の美夏や初心者の大家の娘・茜も絡めつつ、真摯な想いを胸に秘めた美弦が因縁のプロ棋士加賀薫七段に挑む戦いとその結末には強く心に響くものがありました。

 

11.二周目の僕は君と恋をする (ファミ通文庫)

高三の夏に突如消失した片想いの相手・茉莉。辛い現実を受け止められないまま二十歳の誕生日を迎えた崇希が、消失を回避すべく二人が出会った二年前の春からやり直すタイムリープ青春小説。近くで眺めるだけだった過去を反省し、積極的に茉莉と距離を縮め真相に近づこうとする崇希。幸せな日々に時折訪れる不安な兆候の一方で、明らかになってゆく意外な過去。不安に揺れる二人の初々しい距離感はもどかしくて、容易には覆らない未来に難しさも感じましたけど、再会して絆を育んでいった今の二人ならきっとそれを乗り越えてくれると信じたいですね。

 

12.ストレンジガールは甘い手のひらの上で踊る (MF文庫J)

 クラスメイトの浦上彰人に恋する、地下鉄好きなちょっと変わった女の子一色佐奈。そんな彼女が彼と幼馴染万里花が共有する秘密に引き込まれ、関わるうちに親密になっていく物語。とある事件をきっかけに再構築されて、一見変わらないように見えて決定的に変わってしまった三人の関係。新事実が判明するたびにその構図が変化していきますが、閉塞感を打開しようとあがいた結果、近くて遠い存在になってしまった彼らの関係に、勇気を持って踏み出した一歩と、その原因も絡めて再出発の兆しを見出すあたりが著者さんらしくて、わりと好みの物語でした。

 

13.彼方なる君の笑顔は鏡の向こう (講談社ラノベ文庫)

彼方なる君の笑顔は鏡の向こう (講談社ラノベ文庫)

彼方なる君の笑顔は鏡の向こう (講談社ラノベ文庫)

 

 幼馴染の詩歌だけにはダメな一面も見せる美少女の彼方。そんな彼女が神社での事故から3人の付喪神の女の子を生み出してしまい、その3人と一人暮らしの詩歌が同居生活を始める物語。「詩歌への想い」「記憶」「食欲」の強い想いを失い、どこかよそよそしくなってしまった彼方。欲望に忠実な3人に振り回される詩歌。以前の駄彼方に戻って欲しいと思う一方で、彼方も加えて共に過ごし家族のような関係と感じるようになってゆく彼らは難しい決断を迫られましたが、彼らの強い絆を信じて応援したくなったちょっぴり切ない幼馴染たちの恋の物語でした。

 

14.嫌われエースの数奇な恋路 (電撃文庫)

嫌われエースの数奇な恋路 (電撃文庫)

嫌われエースの数奇な恋路 (電撃文庫)

 

 前年甲子園予選決勝まで残った結果、爆発的に増加した女子マネ志望者。決勝戦敗北のA級戦犯で今は男子マネとなった「嫌われエース」押井数奇と門前払いされる中で一人だけ残った強者・蓮尾凜が織りなす青春小説。難しい状況であえて男子マネとして部に残った数奇と、彼に因縁があるらしく何かと張り合う凜。少しずつ変わってゆく状況と諦めない不器用な数奇の頑張りがあるからこそ、ままならない現実にはもどかしい気持ちにもなりましたが、そこからの彼の頑張りと葛藤もまた青春の1ページで、これはこれで良かったのかなと思えた結末でした。

 

15.自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)

 

 ある朝、同級生の雨宮翼が列車へ飛び込み自殺を図るのに関与してしまった永瀬。その自殺が忘れられない彼が友人の深井から過去に戻れるカプセルを手渡され、やり直すために過去へ遡る物語。最初は彼女に関わらないと決意したはずなのに、逆に雨宮に関わる機会が増えてしまう永瀬。そんな彼に改めて突きつけられる「蝶は羽ばたかない」という事実。それでも当事者の変えようとする意志によって変わることもあって、多くの人にとってはさほど変わらない、けれど確実に変わったその結末に、一抹のほろ苦さを感じながらもどこか救われる思いがしました。

 

以上です。気になる本があったら是非手にとって読んでみて下さい。

 

シリアスな展開が魅力のラノベファンタジー15選

祝「竜と祭礼」の2巻刊行!ということで、今回はシリアスな展開が魅力のラノベファンタジーを15作品紹介したいと思います。この手の重厚なファンタジーは自分の大好物なジャンルなんですが、近年はたくさん刊行されている中では敬遠されがちで、読んでみたら面白くても苦戦する傾向が少なくありません。危惧していた「竜と祭礼」も無事2巻目も刊行されましたし、この手のジャンルがもっと盛り上がることを期待しています。

 

1.竜と祭礼 (GA文庫)

竜と祭礼 ―魔法杖職人の見地から― (GA文庫)

竜と祭礼 ―魔法杖職人の見地から― (GA文庫)

  • 作者:筑紫一明
  • 発売日: 2020/01/11
  • メディア: 文庫
 

師の遺言により少女ユーイの杖を修理することになった、半人前の魔法杖職人・イクス。姉弟子たちの助けも借りてどうにか破損していた芯材を特定した彼が、1000年以上前に絶滅した竜の心臓を求めて旅する物語。夏の終わりまでを期限とした竜の伝承を求めての探索、ユーイが抱える過去と杖が壊れた理由、明らかになってゆく竜が絶滅した真相。戦えない二人が主人公であるがために派手な展開はありませんが、その分しっかりとした世界観の中で動く登場人物の描写は繊細で、積み上げられた先で明かされた真実とその結末は心に響くものがありました。現在2巻まで刊行。

 

2.Unnamed Memory

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王

Unnamed Memory I 青き月の魔女と呪われし王

 

幼い頃に受けた『子孫を残せない呪い』を解呪するため、強国ファルサスの王太子・オスカーが試練を乗り越えたものに望みのものを与える魔女・ティナーシャの塔に挑むファンタジー。解呪が容易でなく呪いに負けない女であればいい、という状況で目の前に好物件がいたことに気づき求婚するオスカー(苦笑)わりとシリアスな展開ですが繰り返される二人のやりとりが微笑ましくて、感化されつつも容易には頷きそうもない孤高の魔女・ティナーシャが、どんどん強くなってゆく諦めが悪そうなオスカーの数奇な運命を描いたシリーズ。20年6月に5巻目刊行予定。

※20年6月には「Babel」も電撃の新文芸から同時刊行ですね。

Babel I 少女は言葉の旅に出る

Babel I 少女は言葉の旅に出る

  • 作者:古宮 九時
  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: 単行本
 

 

3.マグダラで眠れ(電撃文庫

マグダラで眠れ (電撃文庫)

マグダラで眠れ (電撃文庫)

 

錬金術師クースラは罪を許される代わりに、グルベッティの工房で研究を行うことになり、監視役として純真な修道女フェネシスが送り込まれる物語。世界観としては十字軍あたりの時代をベースとした感じなんでしょうか。錬金術師とはどういうものか、その世界における背景の説明に多くを割いた序盤は、なかなかページも進みませんでしたが、それでも相棒にフェネシスの相手を丸投げされてからの繊細な心理描写、巧みな駆け引きから生まれる畳み掛けるような展開は流石です。少しずつ確実に変化してゆくクースラとフェネシスの関係が魅力のシリーズですね。現在8巻まで刊行。

 

4.グランクレスト戦記 (富士見ファンタジア文庫)

グランクレスト戦記1 虹の魔女シルーカ (富士見ファンタジア文庫)
 

意に染まぬ契約のため君主の元に向かっていた魔法師シルーカが、道中襲われたところを助けた流浪の騎士テオに運命を感じて契約、二人で君主を目指すお話。ゼロからのスタートながら、襲った君主の領土を奪いテンポよく領土を広げていくスピード感は、ベテラン作家さんらしい安定感と合わせて流石だなと感じました。今回は性急過ぎる勢力拡大の反動で、苦境に陥ってしまいましたが、君主としての地位に固執することなく、一介の騎士としてシルーカとの契約を取ったテオの清々しさに、この物語の今後への期待を感じさせてくれますね。全11巻。

 

5.ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)

ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)

ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)

 

自分が書いた魔法の書を奪われたゼロが、半獣半人の傭兵と一緒にゼロの書を取り戻すため旅をするお話。全体の印象としては、結構自分好みの世界観や登場人物で、読んでいて面白かったです。かけがえのない存在となってゆく二人の関係性を構築していく過程があっさりめなのはやや気になりましたが、しっかりとした構成をベースに手堅く作られていて物語としての完成度も高かったと思います。そんな二人が旅する過程で様々な人たちと巡り合い、騒動に巻き込まれてゆく物語です。全11巻。

 

6.ファイフステル・サーガ (ファンタジア文庫)

ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団 (ファンタジア文庫)
 

古の魔王が再臨する絶望の未来を変えるため「アレンヘムの聖女」セシリアと婚約し、傭兵団「狂嗤の団」団長となる道を選んだカレル。聖女の加護を受け死の未来を回避する英雄として奮闘するファンタジー戦記。二年後の魔王再臨を限られた人しか知らない中で、代替わりした王国や戦争を仕掛けてきた自治領相手にどう立ち回るのか。腕が立って商才があり現実的な手段を積み重ねるカレルだけでなく、ヒロインのセシリアや仲間たち、王国の登場人物たちもまた魅力的なキャラが多くて、ここから物語がどう動くのか続巻がとても楽しみな新シリーズですね。現在4巻まで刊行。

 

7.血翼王亡命譚 (電撃文庫)

血翼王亡命譚 (1) ―祈刀のアルナ― (電撃文庫)

血翼王亡命譚 (1) ―祈刀のアルナ― (電撃文庫)

  • 作者:新八角
  • 発売日: 2016/03/10
  • メディア: 文庫
 

言葉を話す事を禁じられた王女・アルナと護舞官ユウファ。密かに想いを交わし合う二人が国を挙げての耀天祭に向かう途中で突如襲われ、放浪娘イルナや軍犬ベオルらと逃避行することになる物語。再会しても結ばれることはない二人が5年前に交わしていた約束。逃避行における不器用で繊細な交流や、育まれていった絆がかけがえのないものに思えたからこそ、いくつもの複雑な想いから引き起こされた事件の顛末はとても残念でした…。作品の世界観や概念はやや独特でしたが、新たに始まる彼らの旅の行方がどうなるのか気になるシリーズ。全3巻。

 

8.剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

 

超大国アルキランに突如侵攻されたイアンマッド王国。和議と引き替えに人質として赴くことになった国王の長男王子ルスタットと、残されて次々と危機に見舞われる弟王子レオームの二人の王子の物語。神話的な超越した力と、人が技術を覚え始めた端境期の世界観で、周囲で引き起こされる危機的状況に否応もなく巻き込まれてゆく弟レオームと、アルキランの先進的技術に触れつつ伝説の存在となってゆく兄ルスタットの数奇な運命はとても興味深いですが、それぞれの道を歩み始めた二人がどのような形で再会することになるのか楽しみなシリーズですね。現在3巻まで刊行。

 

9.悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

悪魔の孤独と水銀糖の少女 (電撃文庫)

 

黒い海を越え呪われた悪魔の島にやってきた死霊術師の孫・シュガーリア。そんな彼女が大罪人の男・ヨクサルと出会う愛など知らない男と愛しか知らない少女の物語。可愛がってくれた大切な人たちを失い復讐を志すシュガーリアと、無数の罪をその身に刻み『孤独を力にかえる』悪魔を背負うヨクサル。最初は滅びの運命に囚われ絶望しかなかった二人が、不器用なやり取りを積み重ねていくうちに育んでいった想い、そして相手の危機に命を賭けて飛び込んでいく勇気がもたらした結末には確かな救いがあって、著者さんらしい世界観を存分に堪能できました。現在2巻まで刊行。

 

10.叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 (電撃文庫)

叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 (電撃文庫)

叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 (電撃文庫)

 

邪神カを降臨させたランドール王国の野望を挫いた六人の英雄の一人・ギュネイ。平凡なその後の人生を選ぼうとしていた彼が、ふとしたきっかけから王国の現状を探るうちに、窮状を見捨てられず巻き込まれてゆく物語。戦勝国による身勝手な戦後処理で荒廃する国土と苦しむ民衆の姿に疑念を覚えてゆくギュネイ。苦悩しながらも巻き込まれ続けて救世主に登りつめてゆく彼と、したたかな王女ミネルバや彼を監視するディドー、初恋の王女といったヒロインをうまく絡めて物語を盛り上げてほしいですね。思わぬ方向へ向かう今後が楽しみな新シリーズです。20年7月に3巻目刊行予定。

 

11.D9―聖櫃の悪魔操者― (電撃文庫)

D9―聖櫃の悪魔操者― (電撃文庫)

D9―聖櫃の悪魔操者― (電撃文庫)

 

悪魔召喚して故郷を滅ぼした兄を倒すため悪魔メルヴィーユと契約した少年が、悪魔憑きとなって二人で兄を探す旅を続けるお話。クールで素っ気ないけど優しいソーマは、強力な悪魔も打ち破る力を持っていますが、それもメルヴィーユと二人力を合わせてこそ力を発揮できる関係。そんな二人の連携が問われるところが、お話の肝なのかなと思いました。ソーマ大好きな可愛い悪魔メルヴィーユも、作中に出てくる悪魔とは一線を画する存在で、話の謎にも深く関わっている模様。テンポ良く進むストーリーも好印象で楽しめます。全3巻。

 

12.白銀のソードブレイカー  (電撃文庫)

聖剣で世界を護る7人の剣聖を殺そうとする少女エリザと、家族を殺した仇を探している傭兵レベンスの物語。バトル多めで、剣聖殺しエリザの剣技の拙さはちょっと気になりましたが、戦っている時と平時のまだ幼い感じのギャップは可愛くて、またレベンスとの組み合わせもなかなか良かったと感じました。戦ったりエリザとの話の中で剣聖と剣魔の謎も徐々に明らかになっていきますが、一方でまだエリザやその剣にも秘密があったりで、二人の道中を楽しめるシリーズですね。全4巻。

 

13.魔人の少女を救うもの Goodbye to Fate (GA文庫)

魔人の少女を救うもの Goodbye to Fate (GA文庫)

魔人の少女を救うもの Goodbye to Fate (GA文庫)

 

英雄に選ばれなかった少年・ウィズと運命に振り回される少女・アローン。そんな二人が出会いアローンの護衛役として遠い彼女の故郷を目指すファンタジー。神から英雄として選ばれた幼馴染に力不足でついていけず離脱せざるをえなかったウィズと、秘密を抱え家族のもとに帰ろうとするアローン。お互いへの共感と自分が一緒にいることへのためらいでせめぎ合う不器用な二人が、それぞれ過酷な運命に直面しつつも逃げずに懸命に向き合う姿にはぐっと来るものがありました。覚悟を決めた英雄の裏で二人がどういう物語が紡いでゆくのか続巻に期待ですね。

 

14.君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)

君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)
 

数百年続いた「帝国」と「王国」の戦争。その終戦記念日の慰霊祭で皇帝と国王を殺した「災厄の魔女」アンナ・マリアが世界を敵に回して戦うファンタジー。交互に語られる過去と現在、アニーとユージーンの運命的な出会いとその関係、そしてアニーの弟分・アローンとの邂逅による関係の変化。過去が明らかになってゆくたびに見えているものの印象がガラリと変わっていって、因縁に決着をつけた結末にすら皮肉な事実が提示されてしまう展開に思わず唸らされました。そうだったのか…毎回違うジャンルの作品描くのにそのインパクトは相変わらずですね。

 

15.葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

 

様々な種族がひしめき合う小国ランタン。流浪の少年メルがランタン王に語学を買われ政略結婚を控える豹人族の姫シャルネの教育係に抜擢、なりゆきで次期王に任命され敗戦必至の戦いに挑むファンタジー。常に優しいメルに惹かれてゆく奔放な姫君・シャルネ。婚姻が最悪の形で破談となった巻き添えで亡国の危機に陥ったランタン。シャルネと並び立つ弱小国王として仲間の助力を得て異なる種族の力を糾合し、熱い想いと知略を尽くして大軍に立ち向かいつつ、巧みな心理戦で勝利を手繰り寄せる展開にはぐっと来るものがありました。続編も期待してます。

 

ついでにおまけで少しだけジャンル違いだったりもしますが、最近読んでなかなか印象的だったファンタジー作品も4作品紹介しておきます(この手の作品もわりと紹介する機会がなかったりするので)。


傷心公爵令嬢レイラの逃避行

傷心公爵令嬢レイラの逃避行 上 (DENGEKI)

傷心公爵令嬢レイラの逃避行 上 (DENGEKI)

  • 作者:染井 由乃
  • 発売日: 2020/05/18
  • メディア: 単行本
 

不慮の事故で2年間眠りについていた公爵令嬢レイラ。目覚めると婚約者であったはずの王太子ルイスが懐妊した妹ローゼと婚約を結び直していて、限界を迎え家を飛び出した彼女が伝説の魔術師リーンハルトに求婚されるファンタジー。いきなりこれまでの人生全否定な展開に絶望する不憫なレイラでしたけど、リーンハルトやその妹たちに支えられ癒されてゆく幻の王都での生活は微笑ましかっただけに、何とも複雑な運命を知ってしまい、彼女に執着するルイスとの再会もあって、周囲に病んだ人しかいない悲惨な状況ですけど、幸せを見出して欲しいですね。

王妃ベルタの肖像 (富士見L文庫)

王妃ベルタの肖像 (富士見L文庫)

王妃ベルタの肖像 (富士見L文庫)

 

王妃と仲睦まじいと評判の国王のもとに、巡り合わせで第二妃として嫁いだ南部領主の娘ベルタ。王宮で無難に過ごそうと思っていたベルタが予想外の妊娠をしたことで、状況が変わってゆくファンタジー。数年したら実家に帰るつもりで後宮入りしたのに、まさかの懐妊がもたらしたベルタを巡る心境の変化。最初からボタンの掛け違えで始まった国王との関係はお互い掴み切れずにおっかなびっくりで、もっとお互いを知ろうと努力する必要を感じましたけど、ほろ苦い事件を乗り越えた二人が何だかんだでいい夫婦になりそうだなと思えた結末が印象的でした。

水使いの森 (創元推理文庫)

水使いの森 (創元推理文庫)

水使いの森 (創元推理文庫)

  • 作者:庵野 ゆき
  • 発売日: 2020/03/12
  • メディア: 文庫
 

それはこの世の全ての力を統べる水使い。水荒れ狂う森深くに棲む水蜘蛛族の女タータが、砂漠で少女・ミイアを拾い自らの弟子とするファンタジー。跡継ぎである妹を差し置き水の力を示し、国を乱すことを危惧された王女ミイア、その力を認められながら自覚が足りないと言われるタータ、そして家に馴染めず旅をする式要らずの風丹術士・ハマーヌ。三者三様の理由でどこか燻っていた状況で、運命に導かれるように出会った彼女たちが、危機に直面して自らが何をすべきかを自覚し、乗り越える中でそれぞれ成長していく展開はぐっと来るものがありました。

夢の上-夜を統べる王と六つの輝晶 (中公文庫)

夢の上-夜を統べる王と六つの輝晶1 (中公文庫)

夢の上-夜を統べる王と六つの輝晶1 (中公文庫)

  • 作者:多崎 礼
  • 発売日: 2020/02/20
  • メディア: 文庫
 

六つの輝晶は叶わなかった六人の夢。王に謁見した夢売りによって語られる翠輝晶を巡るファンタジー。夫オープとのささやかな幸せを願いながら死影に憑かれたアイナの物語、数奇な運命の元に生まれ二人の子となったアライス、彼女が繋ぐ女騎士イズガータとアーディンの物語で構成されていて、最初はやや文章が堅いかなと感じましたけど、逆境でも彼と共にあったアイナの幸せ、そしてアーディンたちの報われない想いと、形は違うけれど深い愛を感じるエピソードでしたね。彼女らに育てられたアライスがこれからどんな人生を歩むのか楽しみなシリーズ。全3巻。

 

 

以上です。気になる本があったら是非手にとって見てください。

読めば読むほどクセになる杉井光15作品

杉井光さんの新刊「楽園ノイズ」もう読みましたか?音楽を軸に据えたストーリー、著者さんらしい主人公に、魅力的なヒロインたちとのやりとりは杉井ワールド全開で控えめに言って最高でした。まさにこういうのを待っていたんですよ。どうも刊行ペースにムラがある著者さんですけど、ほんとまた頑張ってもらいたいなと思える作品読むと、また過去作品も読み返したくなりますね。というわけで今回は新刊を含めた音楽もの、探偵もの、近未来ものなどを中心に著作15作品を紹介したいと思います。

 

1.楽園ノイズ (電撃文庫)

楽園ノイズ (電撃文庫)

楽園ノイズ (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2020/05/09
  • メディア: 文庫
 

女装して演奏動画をネットにアップし(男だけど)謎の女子高生ネットミュージシャンとして一躍有名になってしまった村瀬真琴。音楽教師・華園先生に正体を知られ、その弱みからこき使われる羽目に陥った彼が、三人の少女と巡り合うボーイ・ミーツ・ガールズ。不真面目な教師・華園を通じて巡り逢うひねた天才ピアニストの凛子、華道お姫様ドラマーの詩月、不登校座敷童ヴォーカリストの朱音。いかにも著者さんらしい主人公にヒロインたちがいて、そのテンポの良いやり取りは癖になって、熱く盛り上がってゆくストーリーは控えめに言って最高でした。

 

2.神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2007/01/06
  • メディア: 文庫
 

路地裏に吹き溜まるニートたちを統べる「ニート探偵」アリス。高校一年の冬にナルミと同級生の彩夏を巻き込んだ怪事件、都市を蝕む凶悪ドラッグ「エンジェル・フィックス」事件が少女探偵アリスの手によって解体されていく物語。孤独に屋上で過ごすことの多いナルミが園芸部員の彩夏と出会い、そのバイト先「ラーメンはなまる」に集まる面々と知り合ってと、世界が広がってゆく中で受け止めるにはあまりにも重い事件でしたが、周囲の助けを得ながら、自らも探偵助手として事件に向かうことを選択したナルミが今後どう成長していくのか、周囲と関わっていくのか注目していきたいシリーズですね。全9巻。

 

3.さよならピアノソナタ (電撃文庫)

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

 

ナオがお気に入りの粗大ゴミ捨て場で出会ったピアノを弾く少女真冬。転校生として再会した彼女は、エレキギターを弾くためナオが利用する廃校舎の部屋を占領してしまうボーイ・ミーツ・ガールな物語。ナオも鈍いしちょっとズレてるんだけど、部屋の奪還を賭けた勝負をきっかけに、心を閉ざしていた真冬と、音楽を通じて、そして行動を共にして少しずつ心を通わせていく描写がいいですよね。自称革命家の神楽坂先輩もいい具合にかき回してくれるし、幼馴染の千晶も好きなキャラです。ベタで王道な作品ですがテンポも良くて、今読んでも面白いですね。全5巻。

 

4.生徒会探偵キリカ (講談社ラノベ文庫)

生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)

生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)

 

ふとしたきっかけから、巨大一貫校の莫大な予算を扱う生徒会に巻き込まれ、生徒会会計兼探偵のキリカと一緒に解決する生徒会探偵ミステリ。個人的にはミステリ部分よりもコメディ的な要素を期待して読んだので、キリカや生徒会長の狐徹といった生徒会の個性的で魅力的な面々とツッコミ役兼詐欺師のヒカゲの掛け合いも面白く、郁乃や朱鷺子ら脇役もいい味を出していました。またキリカとともに探偵役をこなす物語のもうひとつの軸となるミステリもまたなかなか効いていて、新章もスタートして今後も注目のシリーズですね。本編6巻+新章1巻まで刊行。

 

5.東池袋ストレイキャッツ (電撃文庫)

東池袋ストレイキャッツ (電撃文庫)

東池袋ストレイキャッツ (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2014/06/10
  • メディア: 文庫
 

引きこもって音楽ばかり聞いていた不登校児のハルが、ゴミ捨場に捨てられていたギターと運命的な出会いを果たし、池袋のストリートミュージシャンとしての一歩を歩み出すお話。ギターに取り憑いていたキースはとてもミュージシャンらしい性格でしたね(苦笑)そんな後押しがあったとはいえ、理解してくれる人たちと知り合えた幸運。ハルとの交流があったからこそ、誰も気づかなかったミウの苦しみも救われました。ボリュームはなかったですが作者らしい、それでいて音楽が好きで書いていることを改めて感じさせる、良かったなと思える作品でした。

 

6.ブックマートの金狼 (NOVEL0)

ブックマートの金狼 (NOVEL0)

ブックマートの金狼 (NOVEL0)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2016/02/15
  • メディア: 文庫
 

新宿『くじら堂書店』店長・宮内の元にアイドルの桃坂琴美が現れ、元トラブルシューターだった彼にストーカー解決の依頼を持ちかける物語。バイトにも舐められ仕事に対して思うことはあっても、自らが書店人であることに生き甲斐を感じている宮内ですが、一方で困った人のために奔走する姿もまた彼らしさなんですよね。宮内も頭が上がらない店員吉村さんや意外な一面も見せた琴美、そしてかつての仲間たちも魅力的な存在で、レーベルの路線に沿いながらも著者さんらしさがよく出ていた作品でした。まだまだいろいろ書けそうですし続編にも期待です。

 

7.夜桜ヴァンパネルラ (電撃文庫)

夜桜ヴァンパネルラ (電撃文庫)

夜桜ヴァンパネルラ (電撃文庫)

 

吸血鬼が科学的に認められた近未来。人々を吸血種から護る『捜査第九課』に所属する真祖の少女・櫻夜倫子と、何も知らされないまま配属された新人・桐崎紅朗がコンビを組んで吸血鬼に挑む物語。業を背負って孤独に戦い続けてきた倫子と、辛い過去がありながら底抜けにバカで前向きな紅朗。どうしても凄惨なバトルに繋がりがちな展開で、著者さんらしい二人のボケツッコミが癒やしになっていましたね。敵味方の多くに忌避される倫子の終わりの見えない戦いがどこに向かうのか、紅朗の存在が重要なキーマンになっていきそうな予感ですね。現在2巻まで刊行。

 

8.恋してるひまがあるならガチャ回せ! (電撃文庫)

恋してるひまがあるならガチャ回せ! (電撃文庫)

恋してるひまがあるならガチャ回せ! (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2018/03/10
  • メディア: 文庫
 

バイト代を全てスマホゲーに突っ込んでしまうガチャだけが生き甲斐の留年寸前大学生・遠野が、旧華族出身のガチお嬢様で廃課金ゲーマーの薗村紗雪と邂逅する廃課金ラブコメ。拗らせ過ぎて言動がキモい遠野と、そこまで突き抜けてないだけで負けず嫌いの廃課金ゲーマーな紗雪。一見まともに見える友人の樋沢も違う意味で残念なお人で、ラブコメよりもひたすらスマホゲーとガチャに突っ走る彼らの呆れ果てたやり取りには苦笑いでしたけど、だからこそ覚悟した遠野が見せた矜持とそのブレない熱い想いは良かったですし、二人のその後が気になりますね。

 

9.楽聖少女 (電撃文庫)

楽聖少女 (電撃文庫)

楽聖少女 (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2012/05/10
  • メディア: 文庫
 

ゲーテファウストあたりに着想のヒントを得たんでしょうかね。悪魔メフィストフェレスに導かれて、19世紀のパラレルワールド的なオーストリアに高校生・ユキが文豪ゲーテの身代わりとして転生する物語。歴史上の人物・設定を踏まえつつ、パラレルワールドであることを活かして自由度をもたせて、ある意味とても著者らしいキャラ試行錯誤しつつが躍動していく展開は、音楽的なものに対する情熱もあって、魅力的なものになっていたと思います。現在4巻まで刊行。

 

10.蓮見律子の推理交響楽 比翼のバルカローレ (講談社タイガ)

大学を留年しネット小銭を稼ぐ生活を送る葉山理久央が、新曲の作詞を依頼してきた破天荒な天才作曲家・蓮見律子と出会い、いろいろと巻き込まれてゆく音楽ミステリ。気まぐれな律子に振り回される葉山が大学の授業で出会った美沙、そして弟で若き音楽家本城湊人との邂逅。複雑な関係の姉弟との交流からの予想もしなかった急展開は物語の雰囲気をガラリと変えて、探偵役として律子が葉山と解き明かしてみせた謎と事件の真相、ほろ苦く切ないだけでは終わらない結末には著者さんらしさがよく出ていると思いました。シリーズ化を是非期待したいですね。

 

11.電脳格技メガフィストガールズ (ダッシュエックス文庫)

学校に馴染めず授業をサボってゲーセンに入り浸っていた小野木が迷い込んだ立ち入り禁止の特別棟。学園中のあこがれの的であるお嬢様たちの「電脳格技研究会」で格闘ゲームにのめり込んでいく電脳格技青春小説。ゲーセンへ入り浸って目を付けられた彼の格ゲー好きの美少女たちに振り回される日々の始まり。安心の典型的杉井主人公にヒロイン、そして付き合わされるうちに変わっていく格闘ゲームへの思いと紡がれてゆく絆、そして大切な居場所を賭けた熱い戦いはなかなか良かったです。ヒロインたちとの関係はこれからですし、続巻あるといいですね。

 

12.終わる世界のアルバム (メディアワークス文庫)

終わる世界のアルバム (メディアワークス文庫)

終わる世界のアルバム (メディアワークス文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2012/10/25
  • メディア: 文庫
 

減っていくクラスメイト、理科の先生と暗室、公園で聞くDJサトウのラジオ、写真屋とおじいさん、幼馴染の莉子と恭子さん、そして忽然と現れた奈月。あくまで語られるのはマコの目に見える世界の出来事で、皆が忽然と消えた人を忘れていく中でカメラを通じて自分だけ覚えているマコと、消えていく自分を覚えていて欲しい、忘れて欲しいと葛藤してなかなか素直になれなかった奈月のやりとりが甘酸っぱかったけど、どうにかならんかなと思いながらずっと読んでいたので、最後はちょっと切なかったです...。

 

13.六秒間の永遠

六秒間の永遠

六秒間の永遠

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2015/02/10
  • メディア: 単行本
 

生まれ持った発火能力で父親を殺した過去を持ち、目立たないように警官として過ごしていた紅藤が破天荒な上司・氷室に引き立てられて刑事となり、特殊能力を持った少女・海月と出会う物語。刑事ものとしては杉井作品らしいだけでわりと凡庸な印象でしたが、能力のせいで孤独に生きてきた紅藤が、同じように生きてきた海月とお互いを理解してゆく過程がとても不器用で、終盤で明かされてゆく彼女の能力がもたらした奇蹟の連鎖が意味するところは、何とも切なかったですね。タイトルやなぜ警官になったかの問いが最後に効いてくる構成は秀逸でした。

 

14.すべての愛がゆるされる島 (メディアワークス文庫)

すべての愛がゆるされる島 (メディアワークス文庫)

すべての愛がゆるされる島 (メディアワークス文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2009/12/16
  • メディア: 文庫
 

本当に二人の間に愛があれば、祝福してくれる教会がある島を訪れた、父娘と異母兄弟という二組のカップルのそれぞれの視点から語れる物語。今まで読んだ著者の作品とはちょっと違う印象でしたね。愛の形は定義次第でいかようにも変わるけど、同時に人を縛り付けたり、傷つけたりするものでもあるわけで、描かれた手法も含めて、いろいろなことが織り込まれた、なかなか業の深い話だなあと思いました(苦笑)

 

15.放課後アポカリプス (ダッシュエックス文庫)

放課後アポカリプス (ダッシュエックス文庫)

放課後アポカリプス (ダッシュエックス文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 文庫
 

毎週水曜の放課後、全校生徒ごと謎のサバイバルゲームに巻き込まれていく中で、授業を休んでばかりいた主人公が、記憶に無い隣のクラスに在籍している唯一の女生徒未咲と出会う物語。訳が分からないまま放り込まれたゲームで主人公はクラスの司令官役になっていて、記憶が残るからこそ生徒が殺されていく中で生まれていく違和感、そして判明していく真実。こういう凄惨な状況下で出会った未咲との今後も気になるところですが、そんな未咲が毎朝行っていた行為の意味に気づいた時には切なくなってしまいました。主人公自身の秘密も気になりますね。現在2巻まで刊行。

 

以上です。改めて振り返ると続きが読みたい作品の多い著者さんですが、続巻も新作も首を長くして待ってます。頑張ってください。

明治・大正・昭和初期の時代感がある小説15選

昨日和風ファンタジーを挙げていく流れがあって、自分も作品をいくつか挙げましたが

その流れで明治大正時代を舞台とした作品という話題が出て、今ちょうど鬼滅もビックリするくらい売れてますし、明治大正っぽい世界観で描かれている「わたしの幸せな結婚」もかなり好調のようなので、自分が読んだ本の中から明治・大正と少し幅を広げて昭和初期までを舞台とした小説を挙げてみたいと思います。

 

1.わたしの幸せな結婚 (富士見L文庫)

わたしの幸せな結婚 (富士見L文庫)

わたしの幸せな結婚 (富士見L文庫)

 

名家に生まれたものの実母を早くに亡くし、継母と義母妹に虐げられて育った美世。そんな彼女が名門だけれど冷酷無慈悲と噂の若き軍人・清霞への嫁入りを命じられる物語。義妹のように異能も発現せず、使用人のように扱われていた美世に訪れた転機。我儘放題のお嬢様に辟易していた清霞と、自信なさげだった美世が少しずつ心を通わせてゆく積み重ねがとても良かったですね。因縁ある彼女の実家とはとりあえず決着が付きましたけど、彼女の生い立ちにまつわる謎もまだ残っていて二人のその後も見たいですし、是非シリーズ化に期待したい作品です。

 

2.赤レンガの御庭番 (講談社タイガ)

赤レンガの御庭番 (講談社タイガ)

赤レンガの御庭番 (講談社タイガ)

  • 作者:三木 笙子
  • 発売日: 2019/02/22
  • メディア: 文庫
 

将軍直属の「御庭番」を務めた家で育った米国帰りの探偵・入江明彦。横濱を舞台に犯罪コンサルタント組織『灯台』と対峙する明治浪漫ミステリ。助手の少年・文弥に世話を焼かれつつ暮らす明彦が出会った訳ありの美青年・ミツ。彼らが遭遇する不老不死の霊薬、皇太子の切手、港の青年の行方、そして灯台の首領の意外な正体。著者さんらしい雰囲気描写に加えて、頭脳明晰で容姿端麗な明彦と有能な文哉、訳ありのミツたちのやりとりも軽妙でなかなか楽しめました。「灯台」を巡る事件は今巻で決着のようですが、続きがあるならまた読んでみたいですね。

 

3.密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク

密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク

密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク

  • 作者:三雲 岳斗
  • 発売日: 2017/03/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

第一次世界大戦後、極秘で設置された保安局六課でスパイとして国内の防諜活動を行っていた手嶋。ある事件をきっかけに目を付けた陸軍の武器密売疑惑の潜入捜査でカフェで働く落ちぶれた華族の令嬢・悠木志枝と出会うスパイアクション・サスペンス。手嶋が追う武器密売疑惑の鍵を握る少女・志枝が持つ特殊な力。そして手嶋の前に立ちはだかる旧知の陸軍士官・高柳。関東大震災直前の二転三転する状況で陰謀の核心がどこにあるのか駆け引きしつつ、その阻止と彼女を救うために奔走する展開はテンポも良く、余韻の残る結末がとても印象的な物語でした。

 

4.男爵の密偵 帝都宮内省秘録 (朝日文庫)

男爵の密偵 帝都宮内省秘録 (朝日文庫)

男爵の密偵 帝都宮内省秘録 (朝日文庫)

  • 作者:真堂 樹
  • 発売日: 2017/03/07
  • メディア: 文庫
 

華族たちのあらゆる醜聞が世間をさわがせていた昭和初期。表向きは料亭給仕で宮内省幹部・御園尾男爵の密偵という裏の顔を持つ藤巻虎弥太が、華族絡みの怪事件に巻き込まれてゆく帝都・昭和ロマンサスペンス。変わり者の蕗伯爵家にもぐりこみ若き次期当主を調べることになった虎弥太。あまり馴染みのない時代背景がわりと新鮮で、中国かぶれだけれど意外に物事がよく見えているひらひら若様と虎弥太の組み合わせは意外と面白く、二人でコンビを組んでも面白いかもと思いました。続編ありそうな感じなので、続きが出るようならまた読んでみたいです。

 

5.昭和少女探偵團 (新潮文庫)

昭和少女探偵團 (新潮文庫)

昭和少女探偵團 (新潮文庫)

 

和洋折衷文化が花開く昭和6年。帝都の女学校に通う花村茜と級友たちに怪文書が届き。疑われた親友を庇う茜が謎めいた才女・夏我目潮や謎めいた才女・夏我目潮とともに少女探偵團を結成するレトロ青春ミステリ。怪文書の正体、ドッペルベンゲル遭遇の真相、そして級友の元婚約者が失踪した事情。のんびりとした茜の呼びかけで結成された少女探偵團が周囲で起きる事件を解決してゆく展開で、たびたびの視点変更が読んでいて多少混乱に繋がった感はありますが、登場人物たちもキャラが立っていて、のんびりとしたレトロな雰囲気を楽しめた一冊でした。現在2巻まで刊行。

 

6.シトロン坂を登ったら (創元推理文庫)

大正時代を舞台にちょっと変わった横濱女子仏語塾(実は魔女学校)に通う魔女の卵たちが大活躍する物語。薬草学や占い、ダンス(箒で空を飛ぶことを、そう呼ぶ)も学ぶ小春、宮子、透子の三人のあやかし女学生を中心として、新聞記者でもある年上の甥っ子が持ち込んできた奇妙な噂話をきっかけに、巨大なアメリカ豹を巡る騒動に巻き込まれてゆく展開で、思っていたほどには大正浪漫感はなかったですけど、元気で個性的な少女たちが力を合わせてピンチを乗り越えてゆく展開はなかなか楽しかったですね。魔女学校三部作とのことで続巻にも期待です。

 

7.カスミとオボロ 大正百鬼夜行物語 (集英社オレンジ文庫)

大正時代。退屈な日常にうんざりしていた坂之上伯爵家の令嬢・香澄が、代々祀ってきた悪路王に朧という名を与えて主従関係を結んでしまい、二人で集に起こるあやかしがらみの事件を解決する物語。いいところの令嬢なはずの香澄がなかなかいい性格をしていて、そんな彼女と極悪な鬼であるはずの朧が主従関係を組むと、わりとまともに見えてしまう不思議(苦笑)確かに華族の人々を舞台にするといかにも作中の如く魑魅魍魎がうようよしてそうな感じではあります。香澄と朧の二人の関係にも複雑な因縁あるようで、雰囲気もなかなかいいですね。現在2巻まで刊行。

 

8.大正箱娘 見習い記者と謎解き姫 (講談社タイガ)

大正箱娘 見習い記者と謎解き姫 (講談社タイガ)
 

新米新聞記者の英田紺が旧家の蔵で見つかった呪いの箱を始末してほしいという依頼を受け、呪いの解明のため神楽坂の箱屋敷に住む箱娘・うららを訪れる物語。大正という世の中が少しずつ変わりつつある時代を舞台に、自らの経験もあって窮屈な生き方をせねばならない女性たちのために奮闘する紺と、自らもワケありの縛られた境遇にありながらも紺を助ける謎の多い箱娘・うららの関係や、登場した女性たちもまた矜持を持って生きる姿が印象的でした。まだうららの境遇含めて謎も多いですし、姿を変えて奮闘する紺の行く末も気になるシリーズですね。現在2巻まで刊行。

 

9.明治あやかし新聞 怠惰な記者の裏稼業 (メディアワークス文庫)

明治初期を舞台に書かれた記事が原因で友人が奉公先を追い出されたと新聞社に乗り込んできた少女・香澄が、妖怪にまつわる記事ばかり書く記者・久馬と友人・艶煙と共に人助けをするあやかし謎解き譚。新聞社に乗り込んだ香澄が知る記事が書かれた本当の事情。手伝いをするようになった香澄の心境の変化。普段はぐうたらな久馬がまっすぐなゆえに危なっかしいところもある香澄をきちんと助けたり、だんだんお互いを知ることで少しずつ変わってゆく二人の距離感がなかなか良かったですね。気になるコンビの今後が楽しみなシリーズです。現在3巻まで刊行。

 

10.鳥籠の家 (創元推理文庫)

鳥籠の家 (創元推理文庫)

鳥籠の家 (創元推理文庫)

  • 作者:廣嶋 玲子
  • 発売日: 2017/12/11
  • メディア: 文庫
 

豪商天鵺家の跡継ぎ・鷹丸の遊び相手として迎え入れられた少女・茜。そこは謎めいたしきたりの数々、鳥女と呼ばれる守り神がいる奇妙な屋敷で、屋敷の背後の黒い森にいる怨霊と対峙することになる物語。鷹丸と仲良くなっていく茜と、天鵺家に固執する家族たちの奇妙な関係。鷹丸の乳母・静江の思惑と天鵺家の事情に巻き込まれてゆく茜。不気味なものや忌まわしい儀式が当たり前な天鵺家の雰囲気が、物語をダークな色合いの濃いものにしていますが、長らく続く一族を縛る負の鎖を断ち切るために茜と鷹丸が黒い森へ向かう展開はなかなか良かったです。

 

11.小説家・裏雅の気ままな探偵稼業 (集英社オレンジ文庫)

売れない小説家・裏雅がひそかに観察を続ける、彼を「雅兄様」と慕う春宮伯爵家令嬢茉莉子。彼女の周囲で起こる謎を雅が解決する浪漫ホラーミステリ。幽霊に取り憑かれて自殺した同級生、茉莉子に執着する幼馴染、引きこもってしまった少女が抱える秘密。大正浪漫的な雰囲気を舞台に、感情が欠落した少女と物書き探偵が遭遇する同級生たちの闇を描いた連作短編で、愛するものに対する歪んだ執着がもたらしたそれぞれの悲劇が描かれていきますが、見方を変えれば己の愛を守るために彼らは行動していわけでそんなそれぞれのありようは印象的でした。

 

12.ななつぼし洋食店の秘密 (集英社オレンジ文庫)

ななつぼし洋食店の秘密 (集英社オレンジ文庫)

ななつぼし洋食店の秘密 (集英社オレンジ文庫)

  • 作者:日高 砂羽
  • 発売日: 2015/11/20
  • メディア: 文庫
 

没落華族の令嬢・十和子に新興会社の若社長・桐谷との利害が一致した結婚話が持ち上がり、お見合いの席で十和子は「自分に一切干渉しないこと」を条件に契約を持ちかける物語。関東大震災で行方不明となった縁のある店主・一哉が戻るまで店を守るため下町で洋食店を営む十和子。理由あってそんな条件を飲んだ桐谷も徐々に真っ直ぐな十和子のことを気にかけるようになって、十和子もまた桐谷に素直になれない不器用な二人の関係がもどかしいような微笑ましいような感じで良かったです。

 

13.洋食屋じゃぽんの料理帖 ソップからはじまるフル・コウス (富士見L文庫)

御一新前から続く老舗料理屋「津ざき」。従兄に乗っ取られた亡き両親の店で見習い料理人として働いていた柚子が、両親の墓前で記憶喪失の男・周を助ける物語。明治の時代に元両親の店で見習い料理人として働く柚子の難しい境遇、名前以外記憶がないまま津ざきで働くことになった周の意外な特技、因縁の従兄や古株の親方との対立。辛い立場の柚子と色々言いながら彼女を支えるワケありの周でしたけど、真摯に料理に取り組む彼女を支える人たちもいて、頑張りながら報われていなかった彼女に転機があって良かったなと思えました。

 

14.ねんねこ書房謎解き帖 文豪の尋ね人 (実業之日本社文庫)

関東大震災で職を失った石嶺こよりが、神保町裏通りにある小さな古書店で出会った無愛想な店主・根来佐久路。本業の傍ら萬相談を受けている佐久路と人探しの依頼を受ける大正古書店ミステリ。震災直後の神田を舞台に芥川龍之介羅生門」黒崎涙香「幽霊塔」谷崎潤一郎「秘密」村井呟斎「食道楽」永井荷風ふらんす物語」など当時の本をヒントに繰り広げられる5つの推理劇。こよりが紹介された本をヒントに推理を試みたりするものの佐久路は基本安楽椅子探偵で、読みやすかったですけど物語の展開的にも続巻に期待したいところですね。

 

15.なないろ金平糖 いろりの事件帖 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

大正時代。日本橋金平糖専門店「七ツ堂」の看板娘・いろりが金平糖を食べることで発揮する千里眼を武器に、いろりだけが言葉を解する猫ジロと事件に立ち向かう短編集。食べる金平糖によって人の記憶だったり、過去が視えたりするのは興味深かったですが、特殊能力を持ったことによる辛い過去があるために、周囲と距離を置いたり仲良くしたいと思ったりする優しいいろりに、苦難を共に乗り越えた絹というかけがえのない友人ができて良かったと思いました。いろりとジロのコンビもなかなかいい感じで、続巻あるならまた読んでみたいです。

 

以上です。気になる本があったらぜひ読んでみていただければ幸いです。ちなみに今回は読んだ本だけで構成していいますが、挙げた著者さんは同じような舞台で描いてる作品が結構あったりします。読んで面白かった作家さんは是非周辺作品も当たってみるといいと思います。

最近読んだイチオシ15作品 ライトノベル編

前回のエントリに引き続きの第二弾でライトノベル編です。とはいえ最近読んだ新作を選んでいくと、まずこれまでの企画と似通ったラインナップになってしまうので、今回は趣向を変えてシリーズ続巻だからとか意識せず、読んでインパクトのあった作品を並べてみました。また試験的な試みとして注目ポイントに太字でアンダーラインを引いています。

 

1.継母の連れ子が元カノだった4 ファースト・キスが布告する (角川スニーカー文庫)

夏休みも半ば父方の実家に帰省する伊理戸一家。そこで再会した親戚の清楚風陽キャお姉さん・種里円香に従順な水斗の姿に結女が動揺する第四弾。確かアナタこの前振られましたよね?と突っ込みたくなるいさなのマイペースっぷりには苦笑いでしたけど、それ以上に帰省した先でこれまで知らなかった水斗の姿に複雑な想いを隠せない結女に凄まじい破壊力があって、いろんな意味で存在感抜群だった新キャラ・円香お姉さんが物語を大きく動かす役割を果たしましたね。吹っ切れた彼女の逆襲に期待が高まりますが、最後の対照的な二人の想いが印象的でした。

 

2.千歳くんはラムネ瓶のなか (3) (ガガガ文庫)

千歳くんはラムネ瓶のなか 3 (ガガガ文庫)

千歳くんはラムネ瓶のなか 3 (ガガガ文庫)

  • 作者:裕夢
  • 発売日: 2020/04/17
  • メディア: Kindle
 

高校での進路相談会をきっかけに少しずつ関係が変わってゆく朔と明日姉。そんな中、明日姉の進路を巡る逡巡を知る第三弾。大学進学を目指す田舎の高校生なら誰もが直面する問題にままならなさも痛感しつつ、時にはできたヒロインたちに励まされながら、明日姉のために自分のできることを精一杯やろうとする朔の奔走がカッコ良かったです。これまでのどこかふわふわした印象を覆す強烈なインパクトを残してみせた明日姉の正ヒロイン感っぷりは圧巻で、心揺さぶられるものがありましたが、二人が切ない決意を乗り越える未来を期待したいところですね。

 

3.お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件2 (GA文庫)

ふとしたきっかけから交流が始まり、食事をともにするようになっていった二人の年末年始以降を描く第二弾。年末年始もお互い帰らず一緒に過ごし、周の両親と一緒に初詣、そしてバレンタインとそのお返し。真昼は家族に恵まれてない感じですけど、その分優しい周の両親ともともに過ごしたり、実は頑張ればカッコ良かった周とか真昼の和装姿もまた印象的だったりで、二人で一緒に過ごすことがことがごく当たり前になって、お互いかけがえのない存在に変わりつつあるのを感じますね。あともう一歩踏み込めればというところですけどその辺は続巻に期待。

 

4.隣の女のおかげでいつの間にか大学生活が楽しくなっていた (角川スニーカー文庫)

友人もおらず一人で勉学に励む大学三年生・佐々木健斗。そんな彼の隣の席に突然伊藤奈月が居座るようになり、彼女の存在により健斗の日々が変わってゆく青春小説。意外とぐいぐい来る奈月に女性に不慣れな健斗は押されっぱなしで、勉強を助け合ったり愚痴を言い合いながら、ゆっくりと確実に縮まってゆく二人の関係。不器用だけれど何だかんだで優しい健斗を見ていたからこそ、不安を抱える彼女も彼に歩み寄れたんでしょうね。う少し時間が必要そうな二人を見守りたい展開ですが、もう一人のヒロイン神崎さんの存在が気になるところではあります。

 

5.キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦9 (ファンタジア文庫)

王家『太陽』の策略で帝国へと拉致されたシスベル。そんな彼女を救うべく燐は、イスカたちを尾行する密偵として帝国へ潜入する第九弾。重要任務を託されるできる女のはずなのに敵地でテンパり、わざとやっているのかと突っ込みたくなる画像報告でアリスをイライラさせる燐のポンコツっぷりが炸裂(苦笑)ここに来て帝国と星庁を巡るこの物語の本質に迫る内容にぐいっと踏み込んできて、今回登場のケルヴィナもいいキャラしてましたけど、天帝も絡めた様々な思惑が絡む中で向かう帝都では八大使徒の決議もあって、次巻で物語も大きく動きそうですね。

 

6.やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。アンソロジー: オンパレード (ガガガ文庫)

白戸士郎氏によるジェフサポ葉山が八幡・戸塚と行く熱いフクアリレポート、伊達康氏による材木座と八幡の関係、田中ロミオ氏による八幡の中学生受験指導、天津向氏による平塚静と八幡のある休日の過ごし方、丸戸史郎氏「ぼくのかんがえたけんぜんなはやはち」そしてわたりんの描く奉仕部のその後など、個性豊かなキャラクターに焦点を当てた短編とイラストを集めたアンソロジー。冒頭白戸士郎氏の短編も濃いですが、注目の戸史郎氏が熱く描くはやはちが絶品です...各キャラの個性もよく出ていて、小町加入後の奉仕部の変化といろはすとの熱い攻防も興味深かったです。

 

7.クラスメイトが使い魔になりまして (3) (ガガガ文庫 か)

素直になれないなりに想いを伝えあった想太と千影。そこへ師匠の真紀美から宵の明星の残党をおびき出すための囮として二人に婚前旅行が提案される第三弾。少しずつ想太の過去が明かされていく中、想太を巡ってエスカレートしていく千影と茉莉花の険悪なバトルに残党が仕込んだ罠。甘えベタで想太に自分の味方でいてほしいと訴える千影の破壊力が凄まじかったですが、すっかりヤンデレと化して再登場したソフィア、それ以上に悪辣な神様にまで執着される想太の状況はなかなか厳しくて、けれど二人ならきっとここから巻き返してくれると信じています。

 

8.どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。(2) (Mノベルスf)

片思い相手だったハリージュの婚約者として、彼の屋敷で一緒に住むことになった魔女ロゼ。一緒に住む日々にときめきが止まらない彼女の元に、魔女の弟子になりたいという少女がやってくる第二弾。嘘をつけないから表面上は一生懸命無表情を装っていても、相変わらずコミュ障で「へい」とか返事してしまう恥ずかしがり屋で世間知らずだけど、ハリージュ大好きで何かあるたびに内心キュンキュンしているロゼが可愛くて、ハリージュもロゼをしっかり守ってましたね。思ってもみなかった事件にも巻き込まれましたけど、とてもお似合いな二人が迎えた結末はなかなか素敵でした。

 

9.カノジョの妹とキスをした。 (GA文庫) 

カノジョの妹とキスをした。 (GA文庫)

カノジョの妹とキスをした。 (GA文庫)

  • 作者:海空りく
  • 発売日: 2020/04/14
  • メディア: 文庫
 

人生で初めての恋人晴香と交際一ヵ月。幸せ絶頂の佐藤博道は突然父親が再婚し、家庭の事情で晴香と離ればなれになった双子の妹・時雨と突然同居することになってしまう青春ラブコメ。小学校からの幼馴染で天真爛漫な晴香と、対照的に学校では猫を被っている優等生でことあるごとにからかってくる義妹の時雨。博道の晴香への想いは真っすぐで、けれど同じ顔の義妹との同居は彼女には秘密で、双子姉妹の両親が離婚した経緯や、時雨の複雑な想いも絡めて描かれる三人の関係は波乱必至ですね。突き付けられた衝撃の結末に続巻が気になって仕方ないです。

 

10.シンデレラは探さない。 (講談社ラノベ文庫)

シンデレラは探さない。 (講談社ラノベ文庫)

シンデレラは探さない。 (講談社ラノベ文庫)

  • 作者:天道 源
  • 発売日: 2020/04/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

お城のような五十階建てのタワーマンションにはお姫様が住んでいる。自分には関係のない存在と思っていた高校生の荒木陣が、その最上階に住む同級生・真堂礼と出会う青春小説。妹・舞の看病で学校を休んだ陣にプリントを届けに来たことで始まった礼との関係。無自覚系の陣相手にポンコツでチョロインになってしまう礼でしたけど、そんな彼女を応援する友人コンビもなかなか面白くて、陣を見続けてきた彼女だからこそ気づいた彼の想いがあって、不器用な彼女が陣の家族にも温かく迎えられ幸せになってゆく二人の関係をまた読んでみたいと思いました。

 

11.あなたを諦めきれない元許嫁じゃダメですか? (角川スニーカー文庫)

七渡が進学した高校で再会した元許嫁の翼。しかしその隣には容姿抜群な今どきギャル麗奈がいて、少女たちの恋の駆け引きが始まる青春ラブコメディ。七渡が引っ越す前はお隣同士の幼馴染で許婚だった翼。七渡との関係を取り戻すために上京したのに、中学時代から七渡と関係を構築してきた麗奈がいる構図で、イメチェンを図って健気にぐいぐい攻める元許婚とかいう強烈なライバル相手に危機感を募らせる麗奈目線も多かったですが、ようやく七渡が想いを自覚し始める中、負けられない二人がコンビを組んでどう動くのか続巻が楽しみな新シリーズですね。

 

12.社畜男はB人お姉さんに助けられて(モンスター文庫)

ブラック企業に勤める柳大樹が、終電間際の駅で階段で足を踏み外し落下してきた美人なお姉さん・如月玲華を助け、高級マンションの前で鞄の中身をバラけた彼女に再会したことから始まる社会人ラブコメ。過労で倒れた大樹を助けてくれたお礼として、玲華に料理を振る舞う元洋食屋の息子で社畜の大樹。会社ではできる女社長なのに、私生活では(ほぼ未使用の)調味料と器具だけは無駄にハイスペックとかいうポンコツな玲華のギャップが光っていましたが、作っている描写からして美味しそうな料理で胃袋を掴まれてしまった大樹とのお互い初々しい関係がまた微笑ましくて、これからの展開が楽しみな新シリーズですね。

 

13.月50万もらっても生き甲斐のない隣のお姉さんに30万で雇われて「おかえり」って言うお仕事が楽しい 1 (オーバーラップ文庫)

深夜、雨でずぶ濡れのまま家の鍵をなくし途方に暮れていた隣に住むOL早乙女ミオ。そんな彼女を助けた社畜・松友の「おかえり」が心に刺さったミオに月三十万円の「おかえり」係として雇われるラブコメディ。できる女なのに生活力ゼロのポンコツな上、極度の人間不信で孤独だったミオ突如甘えん坊になったり、雇用関係がないと安心できない彼女の心の闇は深いですが、松友の毎日のおかえりなさいや美味しい料理があって、彼の元同僚土屋や後輩村崎さんもミオを慕って、少しずつ癒やされてゆくミオと彼らの温かい関係がとても良かったですね。

 

14.きみって私のこと好きなんでしょ? とりあえずお試しで付き合ってみる? (GA文庫)

憧れの文芸同好会の先輩で超絶美少女の白森霞。そんな彼女に自らの想いをあっさり見抜かれた後輩陰キャ高校生・黒矢が、先輩からお試しお付き合いを提案される青春ラブコメ余裕があってからかってくる白森先輩相手にいっぱいいっぱいで、振り回されっぱなしの黒矢。でもそんな彼女もまた実はわりと不器用で、からかいながら見えないところで赤面する一面もあって可愛かったですね(苦笑)一年間一緒に活動してきて、自分の大切なものをきちんと理解してくれて、そんな日々を積み重ねてきた二人の不器用で甘い関係にはぐっと来るものがありました。

 

15.きのうの春で、君を待つ (ガガガ文庫)

きのうの春で、君を待つ (ガガガ文庫 は 7-2)

きのうの春で、君を待つ (ガガガ文庫 は 7-2)

  • 作者:八目 迷
  • 発売日: 2020/04/17
  • メディア: 文庫
 

引っ越した先の東京でうまく行かず、かつて住んでいた離島・袖島に家出してきた船見カナエが、幼馴染だった保科あかりと再会。時間を遡る現象「ロールバック」に巻き込まれる青春小説。カナエが巻き込まれた飛ばされた四日後から夕方6時になると一日ずつ遡るロールバック現象。遡る中で明らかになってゆくあかりの兄・彰二の死とあかりの恋心と兄への複雑な思い。ひたむきに頑張ってきたからこそ、失われたものの喪失感も大きくて、けれど何とかしようと懸命だったカナエの奔走が、未来への希望を引き寄せる展開にはぐっと来るものがありました。

 

以上です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。