先週刊行された本を中心に気になった本をピックアップする今週注目おすすめ15冊です。
先週は文芸作品が多めで、堂場瞬一さんの定年間近と若手のホープ、二人の記者が権力の汚穢を暴くため奔走する『沈黙の終わり上・下』、西條奈加さんの直木賞受賞後第一作の書き下ろし長篇『曲亭の家』、夢枕獏さんのジョン万次郎を主人公にした小説『白鯨 MOBY-DICK』、榎田ユウリさんの著者デビュー20周年記念作品『武士とジェントルマン』などが刊行になっています。
またベストセラーとなった「ケーキの切れない非行少年たち」の続編『どうしても頑張れない人たち』(新潮新書)、山田昌弘さんが五大格差を徹底検証した『新型格差社会』 (朝日新書)、黒川伊保子さんのトリセツシリーズ『不機嫌のトリセツ』 (河出新書)を挙げておきます。
『沈黙の終わり上・下』
堂場瞬一 角川春樹事務所 各1,870円(税込)
七歳の女の子が遺体で発見された――。その痛ましい事件から、30年間隠されてきたおぞましい連続殺人の疑惑が浮かび上がった。定年間近の松島と若手のホープ古山、二人の記者が権力の汚穢を暴くため奔走する。
『曲亭の家』
西條奈加 角川春樹事務所 1,760円(税込)
小さな幸せが暮らしの糧になる。当代一の人気作家・曲亭(滝沢)馬琴の息子に嫁いだお路。作家の深い業にふり回されながらも己の道を切り開いていく。直木賞受賞後第一作の渾身の書き下ろし長篇。
『白鯨 MOBY-DICK』
夢枕 獏 KADOKAWA 2,640円(税込)
土佐の中浜村で漁師の次男として生まれ育った万次郎は、鯨漁に魅せられる。やがて仲間たちと漁に出た際、足摺岬の沖合で遭難してしまう。漂流した五人は無人島にたどり着くものの万次郎は銛打ちの師匠・半九郎の形見の銛を追って、さらに漂流してしまった。単身、大海原に投げ出された万次郎を救出したのは、米国の捕鯨船ピークオッド号だった。その船長・エイハブは、自分の片足を喰いちぎった巨大な白いマッコウクジラ“モービィ・ディック”への復讐に異常な執念を燃やし、乗り組員となった万次郎を巻き込んでゆく……。
『武士とジェントルマン』
榎田 ユウリ KADOKAWA 1,650円(税込)
日本の大学で講師として教えるため来日した英国人・アンソニー。居候先をイギリスの恩師が手配してくれたが、空港に迎えに来た青年に出会ってびっくり。彼はキモノにカタナ、チョンマゲの武士だった!現代日本に武士がいたのか……!?その彼・隼人が言うには、「伝統文化の保持ならびに地域防犯への奉仕を目的とする新しい武士制度」として現代の武士は存在するらしい。英国紳士と青年武士の不思議な同居生活が始まった!地域で愛され活躍している彼だが、実は悲しい過去も抱えていて……。
『悪魔には悪魔を』
大沢 在昌 毎日新聞出版 1,980円(税込)
二度と後戻りできない 絶体絶命潜入捜査!麻薬取締官の加納良が姿を消した。20年ぶりに故郷に戻った双子の弟・将は捜査協力を求められ、兄になりすまし、ひとり凶悪な密売組織に挑む。男を待ち受ける〈悪〉の正体――驚愕、震撼、衝撃の結末!息つく間もないエンターテインメント。
『MR』
久坂部 羊 幻冬舎 2,200円(税込)
大阪に本社を置く中堅製薬会社・天保薬品の堺営業所所長であり、MRの紀尾中正樹は、自社の画期的新薬「バスター5」が高脂血症の「診療ガイドライン」第一選択Aグレードに決定するべく奔走していた。ところが、外資のライバル社タウロス・ジャパンの鮫島淳による苛烈な妨害工作によって、一転「バスター5」はコンプライアンス違反に問われる。窮地に追い込まれた紀尾中以下、堺営業所MRチームの反転攻勢はあるのか。ガイドラインの行方は? 注目集める医薬業界の表と裏を描いたビジネス小説。
『僕たちの正義』
平沼 正樹,ダイスケリチャード 産業編集センター 1,540円(税込)
10年前、恋人であり、患者であった沙耶が自殺した。心理カウンセラーである悠木文月は、最近になって、彼女の叔父が同じ方法で命を落としたことを知る。止まったままだった時間を動かすため、文月は彼女と叔父の関係性、自殺した動機を追い始めた……。
『花の子ども』
オイズル アーヴァ オウラヴスドッティル,神崎 朗子 早川書房 2,310円(税込)
オイズル・アーヴァ・オウラヴスドッティル/神崎 朗子 早川書房 2021年04月14日頃
母が遺したバラをもって僕は旅に出る。遠くの修道院にある庭園に植えるのだ。ところが、温室育ちの僕の旅は、ままならない。飛行機内で腹痛にもだえ、森でさ迷う。旅で会った女性たちとの関係を妄想しては、空回り。当の庭園は荒れ果てており、手入れを始めたところ、意外な人物が訪れる。かつて僕と一夜をともにした女性が、赤ん坊を預けにきたのだ。 こんな僕が父親に!?ゆったりした時が流れる小さな村で、右往左往しながら成長する青年と家族をあたたかく描くアイスランド女性文学賞受賞作。
『実力も運のうち 能力主義は正義か?』
マイケル・サンデル,本田 由紀,鬼澤 忍 早川書房 2,420円(税込)
マイケル・サンデル/鬼澤 忍 早川書房 2021年04月14日頃
人種や性別、出自によらず能力の高い者が成功を手にできる「平等」な世界を、私たちは理想としてきた。しかしいま、こうした「能力主義(メリトクラシー)」がエリートを傲慢にし、「敗者」との間に未曾有の分断をもたらしている。 この新たな階級社会を、真に正義にかなう共同体へと変えることはできるのか。超人気哲学教授が、現代最大の難問に挑む。
『そもそも植物とは何か』
フロランス・ビュルガ,田中 裕子 河出書房新社 2,585円(税込)
人間や動物とは全然違う生命として生きる植物。死はあるのか、個体なのか中心はあるのか。植物の存在を徹底的に問う斬新なエッセイ。
『映画のメリーゴーラウンド』
川本 三郎 文藝春秋 1,980円(税込)
一本の作品の話をすると、その監督の別の作品を思い出す。舞台となった場所は、前にあの映画でも印象的だった、とか。映画の話は止まらない……。ちょっとした小物、小道具が、そこに込められた思いを想像させ、いろいろなことを暗示する。映画についての雑学、トリビアならこの人、川本三郎さんが贈る、大人のための”映画しりとり遊び”です。
『どうしても頑張れない人たち~ケーキの切れない非行少年たち2 (新潮新書)』
宮口 幸治 新潮社 792円(税込)
「頑張る人を応援します」。世間ではそんなメッセージがよく流されるが、実は「どうしても頑張れない人たち」が一定数存在していることは、あまり知られていない。彼らはサボっているわけではない。頑張れないがゆえに、切実に支援を必要としているのだ。大ベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』に続き、困っている人たちを適切な支援につなげるための知識とメソッドを、児童精神科医が説く。
『新型格差社会 (朝日新書)』
山田 昌弘 朝日新聞出版 825円(税込)
格差は現象?いいえ、人災です――。コロナで可視化された〈家族〉〈教育〉〈仕事〉〈地域〉〈消費〉の五大格差を徹底省察し、令和日本のあるべき姿を緊急提言。格差是正の実践こそが、人生100年時代の世界共通語となる。日本が階級社会に陥る前に、格差を直視し分析することが肝要だ。家族社会学の第一人者による令和のリアルがここに!
『不機嫌のトリセツ (河出新書)』
黒川伊保子 河出書房新社 891円(税込)
コロナ禍でギスギス、家族間のイライラ、職場でモヤモヤ、男女間のムカムカ……。史上最悪の不機嫌の時代、到来! この世のお悩み即解決、著者集大成の「不機嫌退散レシピ」!
『自衛隊最高幹部が語る令和の国防 (新潮新書)』
岩田 清文 ,武居 智久 ,尾上 定正 ,兼原 信克 新潮社 902円(税込)
令和日本の最も重要な戦略的課題は、力による現状変更に躊躇しなくなった中国の封じ込めである。台湾有事は現実の懸念であり、その際には尖閣諸島や沖縄も戦場になる可能性がある。自衛隊は本当に国土・国民を守り切れるのか。日米同盟は機能するのか。そして国民に「有事への備え」はあるのか。陸海空の自衛隊から「平成の名将」が集結、軍人の常識で語り尽くした「今そこにある危機」。