読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2020年上半期注目のオススメ新作文芸単行本30選

20年上半期注目のオススメ新作企画第三弾の文芸単行本編です。毎度のことですが読みたい本が多すぎて後追いになっているという状況もあり、気になる本をギリギリまで読んでの作成が常態化しつつあります。そんな事情もあって最後までどれを入れるのか迷いましたが、今回読んだ一般文芸単行本の中から30作品選んでいます。

 

ちなみにこれまで6月12月刊行の本は極力該当上半期/下半期の中で紹介していましたが、実情として当月のうちに全て読み終わるのが困難なため、これまで上半期下半期どちらにも紹介できない新作が発生してしまっていました。それを解消するため今回から前半期に刊行された本も該当月に読んだ本は含めることにします。その点は予めご了承ください。「わたしの美しい庭」を入れるまではどうも並びがしっくりこなかったのですが、要するにこれを入れろということだったんだと思います。

 

1.わたしの美しい庭

至高のAI『タイタン』のサポートで、人類は仕事から解放され自由を謳歌する未来。心理学を趣味とする内匠成果を世界でほんの一握りの就労者ナレインが訪れ、彼女に仕事を依頼する近未来SF。成果に託される突如として機能不全に陥ったタイタンAIのカウンセリング。仕事という概念がない世界で考察する働くことの意味、仕事しかしたことがないコイオスと共に旅する中で目にする様々なこと、そんな中でコイオスの成長や彼女自身の心境の変化もあって、未来に生きるとはどういうことか、いろいろと可能性を垣間見せてくれる物語は面白かったです。

 

11.銀色の国

手伝っている叔父の店を訪れる女性の苦悩、一緒に住むようになった相手が時折頼んでくる悲しい思い出のパン、うっかり不倫してしまった妻の複雑な想い、仕事と家事の日々に疲れた妻と保育園仲間の逃避行、子供に先立たれたのに周囲に気を遣わねばならない友人、娘も構ってくれた趣味仲間の入院など6つの連作短編集でしたが、登場人物たちが辛く苦しい時に寄り添ってくれる人たち、そして物語の中に出てくる料理の存在が彼ら彼女らを優しく温かく癒してくれるものとして効いていて、救いが垣間見えるそれぞれの結末はなかなか印象的な物語でした。

 

16.さいはての家

三人の少女を繋ぐ町であった殺人事件。夏休み、置き去りにされた謎を追いかける彼女たちに想像もしていなかった危険が迫る青春ミステリ。祖父の農業を手伝い琴子たちと遊んでくれたお兄さんの正体、祥子の想い人・土屋が告げた意外な疑惑、そして新聞部の沙也香が調査する廃ホテルの事情から思わぬ形で繋がってゆく三十年前の事件。彼女たちの捜査はわりと危なっかしくてハラハラすることもありましたけど、エピソードの繋がりを垣間見せながら、パズルのピースを組み合わせてゆくように真相が浮かび上がってくる構図はなかなか上手かったですね。

 

18.湯けむり食事処 ヒソップ

名料亭の料理人をある事情から辞めた章が、幼馴染夫婦の素泊まり温泉旅館「猫柳苑」の食事処「ヒソップ亭」の主人となり、店を訪れるワケありの客たちにこだわりの料理を提供する料理小説。お節介な幼馴染夫婦に誘われ、旅館の元料理人の娘・桃子と始めた食事処。両親が出かける時の妻の表情を気にする中年男性、史跡めぐりの定年退職者のピンバッジ、酒を知るひとり旅の女性のリベンジ、そして桃子の気がかりや、旅館が抱える苦悩にも向き合いつつ、美味しい料理を食べてもらうこと、周囲の人たちを大切にする章の生き方がなかなか良かったですね。

 

19.いきるりすく

十六年前の地震で温泉が涸れ衰退する一方の岐阜県宝幢村。地震で家族を亡くし、伯父夫婦の介護に明け暮れる日々を送る希子が、村で起きた事故死を巡る騒動に巻き込まれてゆくミステリ。典型的な狭い村社会での生き方を当たり前と思う伯父夫婦や村役場の婚約者・竜哉。働き始めた希子が、雇われブロガーの死にから広がる不審点を不気味な隣家長谷川家の長男・耀とともに探る展開でしたけど、真相を掘り起こしてみたらとんでもないものが出てきましたね(苦笑)旧弊に縛られる村と決別し、新たな可能性を見出した彼女たちの姿が印象に残る結末でした。

 

28.永遠の夏をあとに

最近やたら目にする高齢者ドライバーの事故。ふと高齢者の父に不安を覚えた猪狩雅志が、息子の息吹と帰省した夏に父親に運転をやめるよう説得を試みる家族小説。安い給料のやり甲斐ない研究職、高校生になってから元気のない息子に共稼ぎで忙しい妻。高齢者の運転は危険でもかといって現実はなかなか切実で、通販の利用や都会暮らしのトライアルも失敗。途中までは行き詰った閉塞感が半端ない展開でしたけど、後半の急展開はなかなか興味深く読みました。そうそう上手くは行かないでしょうけど、一つの提案としてこういう生き方もありなんですかね。

 

30.運命の人を見つけた、ら

2020年6月に読んだ新作おすすめ本

6月の新作もなかなか興味深い作品が目白押しでしたが、なんといっても注目は単行本版も同時刊行で復活の野村美月さんの新シリーズ「むすぶと本。」ですね。体調不良でしばらく刊行なかったようですが、7月に講談社タイガでも新刊が刊行になりますし、今後の活躍に期待です。

 

あとは電撃文庫版とはすっかり別物に仕上がっていて、「Unnamed Memory」と分厚い2冊同時刊行で読者に読んでみろとばかりに挑戦してきた「Babel」、あまさきみりとさんの久しぶりの新刊「星降る夜になったら」、ガガガ文庫の「サンタクロースを殺した。そして、キスをした。」「シュレディンガーの猫探し」あたりですか。

 

ライト文芸は今回も印象的な物語だった「明けない夜のフラグメンツ」映画化もされた「水曜日が消えた」、オレンジ文庫で再出発となった「後宮染華伝 黒の罪妃と紫の寵妃」あたり、単行本は今回読んだ作品はどれも面白かったですが、個人的には野崎まどさんの「タイタン」、武田綾乃さんの「どうぞ愛をお叫びください」、逸木裕さんの「銀色の国」を挙げておきます。

 

むすぶと本。 『外科室』の一途 (ファミ通文庫)

本の声が聞こえる少年榎木むすぶ。やきもち焼きの恋人の夜長姫(=本)に激しく嫉妬されながら、本の味方を自認する彼が様々な人と本の問題を解決する学園ビブリオミステリー。学園の王子様・姫倉悠人先輩の協力も得ながら取り組むハナちゃんとの再会を望む「長くつしたのヒッピ」、書店で出会ったとあるラノベの願い、ある本に罹患した少年の苦悩、「十五少年漂流記」と無人島生活といった事件の中で仲良くなった人たちがいて、何より最後の「外科室」の朗読会が迎えた結末が劇的で印象に残りました。彼の物語をまた読んでみたい新シリーズですね。

むすぶと本。 『さいごの本やさん』の長い長い終わり

 

Babel I 少女は言葉の旅に出る (電撃の新文芸)

 

星降る夜になったら (MF文庫J)

 

サンタクロースを殺した。そして、キスをした。 (ガガガ文庫)

 

シュレディンガーの猫探し (ガガガ文庫)

 

君を失いたくない僕と、僕の幸せを願う君 (電撃文庫)

 

邪神官に、ちょろい天使が堕とされる日々 (GA文庫)

 

明けない夜のフラグメンツ (メディアワークス文庫)

 

水曜日が消えた (講談社タイガ)

 

後宮染華伝 黒の罪妃と紫の寵妃 (集英社オレンジ文庫)

 

呪殺島の殺人 (新潮文庫nex)

 

ブルーネス (文春文庫)

 

緑の窓口 樹木トラブル解決します (講談社文庫)

 

ループ・ループ・ループ (宝島社文庫)

 

私の彼は腐ってる (中公文庫)

 

タイタン

 

どうぞ愛をお叫びください

 

銀色の国

 

あなたに会えて困った

 

まだ温かい鍋を抱いておやすみ

 

あの日の交換日記

 

さよなら願いごと

 

湯けむり食事処 ヒソップ

 

十字架のカルテ

 

いきるりすく

2020年6月に読んだ本 #読書メーターより

6月はだんだん忙しくなってくる中でどうにかこれくらいはという冊数でしたが、13年以来刊行が止まっていた「おいしいコーヒーのいれ方」がようやく完結、また「宝石商リチャード氏の謎鑑定」は今回で第二部が完結しましたね。電撃文庫の「俺を好きなのはお前だけかよ」や「マージナル・オペレーション」の完結が近づく一方、「結婚が前提のラブコメ」「俺の女友達が最高に可愛い。」あたりは2巻目で盛り上がりを見せて今後に期待したくなりました。

 

6月の読書メーター
読んだ本の数:69
読んだページ数:20286
ナイス数:4602

鳥居の向こうは、知らない世界でした。4 花ざかりの王宮の妃たち (幻冬舎文庫)鳥居の向こうは、知らない世界でした。4 花ざかりの王宮の妃たち (幻冬舎文庫)感想
異界「千国」に迷い込んで二年。仙人の薬師・零の弟子として働き、初恋の相手・透李王子との結婚を控える千歳が、今後のあり方を見定めてゆく第四弾。零の弟子としての自分、彼女が見出した新たな弟子候補、王宮の妃たちからも頼られ、国王から謀反の罪で幽閉中の前王妃・香華の最後の願いを叶えるよう命ぜられる展開で、変わることを選んだ千国を巡る状況は難しいものがありそうですけど、様々な人と出会い、その考えや思いに触れてゆく中で覚悟を決めて自分のあり方を決めた千歳なら、透李ともきっといい夫婦になれるのかなと思えた結末でした。
読了日:06月01日 著者:友麻 碧
いきるりすくいきるりすく感想
命を絶ったとある女子高校生。刑事・安西京香はその自殺に違和感を抱き、真相を追う彼女がセリーヌという「死神」と「1錠の薬」の真実に行きつく物語。死神を巡る事件で1年間の休職に追い込まれていた京香が、職場復帰した直後に起きた自殺。妹と知人だったという女子高生と、ファンだった人気アイドルの自殺、京香をこの事件から遠ざけようとする上司の真意。背景が明らかになっていくうちに見えてきたもうひとつの側面があって、彼女自身も過去にしっかりと向き合い、前作から続く事件もしっかりと決着してみせた結末はなかなか良かったですね。
読了日:06月02日 著者:平沼 正樹
地図とデータでみる都道府県と市町村の成り立ち (平凡社新書)地図とデータでみる都道府県と市町村の成り立ち (平凡社新書)感想
律令時代に全国に制定され、国郡制度によってそれぞれの地域が定められた日本の「国」。秀吉の時代を経て江戸初期には郡と村が確定し、明治維新を経て始まった地方再編と昭和と平成の大合併までの変遷を解説した一冊。構成としては秀吉の太閤検地以降がメイン。江戸時代を経て明治新政府の中央集権化を推進すべく廃藩置県から地方改編をどのように進めたかという部分に力点を解説されていて、提言には特に見るべき点はなかったものの、北海道や沖縄の変遷や統治機構を大きく変えることになった明治政府の試行錯誤の歴史はなかなか興味深かったです。
読了日:06月02日 著者:齊藤 忠光
スガリさんの感想文はいつだって斜め上 3 (5分シリーズ+)スガリさんの感想文はいつだって斜め上 3 (5分シリーズ+)感想
学園の問題児・丹波舜斗が読書感想部にやってきた。人を寄せつけない舜斗とかかわるうちに、3年前に起きた大騒動の真相が浮かび上がる第三弾。今回は取り上げたのは『走れメロス』と『秘密の花園』。問題児の新入部員・丹波が悔いる過去の真相に繋がる太宰治の解釈だったり、高井田先生の暴走だったり、杏介に意外な同好の士が見つかったりと、スガリさん自身の破天荒ぶりは珍しく控えめで、読書感想部も部員が増えていい感じになりつつありますね。でも巻末の思わせぶりなエピローグはいかにも何かありそうで、次巻の展開が気になるところです。
読了日:06月03日 著者:平田駒
新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙V (電撃文庫)新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙V (電撃文庫)感想
女商人エーブの謀略を見事に退け、王国と教会による戦争危機を回避したコルとミューリ。コルは自らを慕ってくれるミューリのために二人の紋章を作ることを思いつくシリーズ第五弾。調べものの過程でミューリが気づいたこと、ブロンデル修道院を目指す道中で出会った行き倒れの見習い騎士ローズ、そして王国で進退窮まった聖クルザ騎士団分隊の存在。理想と現実、各陣営の面子と利害と思惑が絡み合う中、今回もまた見事な落とし所を見出してみせたコルの機転が光りましたけど、月を狩る熊のことや二人の関係がこれからどうなるのか続巻に期待ですね。
読了日:06月03日 著者:支倉 凍砂
十字架のカルテ十字架のカルテ感想
親友を殺した犯人が精神鑑定で不起訴になった過去を抱える若き新人医師・弓削凛が、正確な鑑定のためにはあらゆる手を尽くす日本有数の精神鑑定医・影山司の助手に志願する物語。歌舞伎町無差別通り魔事件、生後五ヶ月の娘を抱いてマンションから飛び降りた母、姉を刺し逮捕された引きこもり、精神疾患詐病とした傷害致死犯の思わぬ反撃、過去に犯した殺人事件を多重人格で不起訴となっていた犯人の真意。容疑者たちの真意を些細な手がかりから見抜いていく展開はなかなか面白かったですが、過去の因縁を絡めた最後の事件は業が深かったですね…。
読了日:06月04日 著者:知念 実希人
宮廷神官物語 十 (角川文庫)宮廷神官物語 十 (角川文庫)感想
大神官選定が近づく麗虎国。筆頭候補となった瑛鶏冠は王子の推挙にもかかわらず固辞し続け、その秘密を知る苑遊は死んだはずの鶏冠の弟・葉寧を捜し出し、手中に収める第十弾。王太子が定まっても未だ逆転を諦めない苑遊と、出生の秘密を抱えたまま弟の身柄を押さえられたことで苦悩する鶏冠。ここまで来て往生際が悪い苑遊もあれですけど、自らが窮地に陥っても相談したり周囲を頼るのではなく、一人で何とかしようと奔走するのが鶏冠らしくて、再び女装までして仲間の助けも来たのに何ともやるせない結末でしたね。いい感じにまとまって欲しい…。
読了日:06月04日 著者:榎田 ユウリ
ブルーネス (文春文庫)ブルーネス (文春文庫)感想
東日本大震災後、地震研究所を辞めた行田準平。学界で異端視される武智に誘われ、海洋工学や観測機器などのエキスパートだが個性が強すぎて組織に馴染めないはみ出し者たちと津波監視システムの実現に挑む物語。広報として震災を直面した準平が、武智に触発されて彼を中心とするはぐれものたちと前人未到のプロジェクトに挑む展開でしたが、メンバーに振り回されたり古巣との対立だったり、設置場所を巡って漁師とすれ違いもある中で、津波被害から救いたいという熱い想いが関係者たちの心を動かし、窮地を救う展開にはぐっと来るものがありました。
読了日:06月04日 著者:伊与原 新
あの日の交換日記 (単行本)あの日の交換日記 (単行本)感想
先生の提案から始まった交換日記。様々な立場の二人による7編の交換日記が紡ぐ連作短編集。白血病で入院する生徒と先生、教師と殺人予告をする生徒、双子姉妹のやりとり、母に息子が書いた交換日記の真相、交通事故の加害者と被害者のやりとり、上司と部下による手書きの業務日誌を通じた交流、先生が縁で出会った夫妻と、ひとつひとつのエピソードが積み重ねてゆく中で、徐々に明らかになってゆく登場人物たちの意外な繋がりとその後にも驚かされましたが、交換日記の広がりを通じて紡がれていった優しさに満ちた関係がとても印象的な物語でした。
読了日:06月05日 著者:辻堂 ゆめ
君を失いたくない僕と、僕の幸せを願う君 (電撃文庫)君を失いたくない僕と、僕の幸せを願う君 (電撃文庫)感想
高校一年の夏。晴丘蒼がようやく自覚した恋心を告げた日、最愛の幼馴染・天ヶ瀬一陽が告げた返事。運命を変えるため、彼女を取り戻すためにタイムリープを繰り返す青春小説。小さい頃から一緒にいるのが当たり前だった幼馴染・一陽との関係。そんな彼女が友人になった涼夜蛍と蒼をくっつけようとしたり、らしさを失っていった理由。彼女の切なすぎる覚悟と、それでも諦めない蒼のループの繰り返しには壮絶なものがありましたけど、二人の確かな絆が厳しい試練を乗り越えさせましたかね。背景にあったもうひとつのエピソードもなかなか良かったです。
読了日:06月05日 著者:神田 夏生
タイタンタイタン感想
至高のAI『タイタン』のサポートで、人類は仕事から解放され自由を謳歌する未来。心理学を趣味とする内匠成果を世界でほんの一握りの就労者ナレインが訪れ、彼女に仕事を依頼する近未来SF。成果に託される突如として機能不全に陥ったタイタンAIのカウンセリング。仕事という概念がない世界で考察する働くことの意味、仕事しかしたことがないコイオスと共に旅する中で目にする様々なこと、そんな中でコイオスの成長や彼女自身の心境の変化もあって、未来に生きるとはどういうことか、いろいろと可能性を垣間見せてくれる物語は面白かったです。
読了日:06月06日 著者:野崎 まど
移民の世界史移民の世界史感想
移民の歴史を4部44テーマという形で取り上げ、人の移動がどのような理由によって引き起こされ、どんな経緯を辿ったのかを解説した一冊。古くからある宗教を絡めた人の移動、近世の西洋の奴隷貿易やアジアの年季奉公人といった強制移動、国を巡る事情で突然状況が変わり振り回され行き場を失う人々、移民の増加や内戦による難民発生など、様々なアプローチから分かりやすく紹介されていて、世界の人の流れが現代の生活に付随する様々なものの流れと同じようなものになりつつある中、これからどのような流れが生まれるのか今後の動向に注目したい。
読了日:06月06日 著者:ロビン コーエン
壁の世界史-万里の長城からトランプの壁まで (単行本)壁の世界史-万里の長城からトランプの壁まで (単行本)感想
トランプ大統領が選挙戦で打ち出した、アメリカとメキシコの国境に設けるとした壁。万里の長城ハドリアヌスの壁、パレスチナ分離壁、ティエールの城壁、ベルリンの壁などを取り上げつつ、壁という存在の謎に迫った一冊。冒頭に世界の壁を記した地図はあるものの、構成としてはアメリカとメキシコの国境を扱う章と、世界中の壁を扱う章が交互に配置されていて、各地の取材した壁の解説を交えつつ、メキシコとの国境には壁自体は元からあり、それが政治の材料として取り上げられた意味を問う内容として読むとなかなか興味深いのかなと感じました。
読了日:06月07日 著者:イアン・ヴォルナー
緑の窓口 樹木トラブル解決します (講談社文庫)緑の窓口 樹木トラブル解決します (講談社文庫)感想
先輩・岩浪とともに「緑の窓口」への異動を言い渡された区役所職員・天野優樹が、変わり者の樹木医・柊紅葉と樹木トラブルを解決するミステリ。スギを巡る嫁姑の確執、クヌギが起こした自動車破損事故の真相、モッコクの元気がなくなった理由、ヤマザクラの下に埋められたタイムカプセル、チャボヒバが切り倒された理由、エドヒガンザクラの元気がなくなった理由など、持ち込まれた依頼を協力して解決する展開で、樹木の知識もなかなか興味深かったですが、有能だけれど人付き合いが苦手な紅葉とそれをフォローする天野がなかなかいいコンビでした。
読了日:06月08日 著者:下村 敦史
サクラの降る町 (KAエスマ文庫)サクラの降る町 (KAエスマ文庫)感想
空から花びらが降る不可思議な現象「アマザクラ」。突如発生したその現象を巡り、秘密を抱えた少女たちの運命が動き出す青春小説。幼馴染で仲が良かったはずなのに、周囲と距離を置き自分に価値を見出せないツバサと、過去に囚われ前に進めずにいるヒヨリ。すれ違っていた二人の関係に転校生・ルカの存在が変化のきっかけとなって、ルカの目的や二人が仲違いした過去が明らかになってゆく先に見えてきたそれぞれの想い、そして過去を乗り越えぶつかり合った彼女たちが迎える結末にはぐっと来るものがありましたね。ルカのその後も読んでみたいです。
読了日:06月08日 著者:小川 晴央
弱小ソシャゲ部の僕らが神ゲーを作るまで 1 (オーバーラップ文庫)弱小ソシャゲ部の僕らが神ゲーを作るまで 1 (オーバーラップ文庫)感想
「IT促進法」により学生の部活にソシャゲ開発が推進される世界。不正の内部告発を行いソシャゲの名門校から命薫高校へと転校してきた白析解が、弱小ソシャゲ部の部長・青井七花に出会う青春小説。廃部寸前の部に所属するガチャ狂いのプログラマー・黄島文、思い込みの激しいイラストレーター・黒羽絵瑠といった優秀で個性的な部員たちと出会い、ぶつかり合いながら絆を育んでいって、そんな新しい仲間たちに支えられながら過去を乗り越える展開はなかなか良かったですね。スタートラインに立った続巻ではヒロインたちの掘り下げも期待しています。
読了日:06月09日 著者:紙木織々
中古でも恋がしたい! 13 (GA文庫)中古でも恋がしたい! 13 (GA文庫)感想
古都子、麻奈との三名での飲酒と不純異性行為の疑いで停学・謹慎処分となってしまった清一。古都子は意気消沈する清一を励まして、周囲の協力を受けながら何があったのかを調べ始める第十三弾。18年以来の完結巻ということで、どういう話しだったかなあと思い出しながらの局面で、どうにか退学の危機を乗り越えて、学校中に蔓延する麻奈の噂の真相を追い、これまでの過去にもしっかり決着を付けて、ヒロインたちの想いにもひとりひとり向き合いましたね。最後はやや駆け足だった感もありましたが、この物語を最後まできちんと読めて良かったです。
読了日:06月09日 著者:田尾典丈
俺を好きなのはお前だけかよ(14) (電撃文庫)俺を好きなのはお前だけかよ(14) (電撃文庫)感想
終業式。二学期の終わりを生徒達に告げ冬休みが始まる日。サザンカ、パンジー、ひまわり、コスモスの4人の少女が待つ場所へ、ジョーロが本当の気持ちを伝えるために動く第十四弾。冒頭のとんでもドジっ子娘チェリーの規格外っぷりや図書室を巡るやり取りは微笑ましかったですけど、ジョーロが向き合った彼女たちとのそれぞれの結末で、もうこの物語も終わりに向かってるんだなとしみじみとしていたところに、ここでもう一波乱ありましたか。でもジョーロならこれもしっかりと乗り越えて、彼女とのハッピーエンドを掴み取ってくれると信じてますよ。
読了日:06月10日 著者:駱駝
幼なじみが絶対に負けないラブコメ4 (電撃文庫)幼なじみが絶対に負けないラブコメ4 (電撃文庫)感想
骨折した末晴のために泊まり込みでお世話にやってきた白草。白草大好き可知家のメイド・紫苑も登場し、黒羽や真理愛も交えて新たなバトルが繰り広げられる第四弾。瞬社長により秘められた過去が週刊誌に暴露され、対抗するために末晴がヒロインたちと撮ることになった真実。紫苑の乱入が末晴との関係に波紋を投げかけつつ、彼女たちらしいアプローチの中で一歩出し抜くクロというある意味いつも通りの構図でしたけど、見方を変えれば必死な彼女が印象ほどヒロインレース圧倒してるわけでもないんですよね…でも自分はそんな彼女を応援したいです。
読了日:06月10日 著者:二丸 修一
俺の妹がこんなに可愛いわけがない(14) あやせif 下 (電撃文庫)俺の妹がこんなに可愛いわけがない(14) あやせif 下 (電撃文庫)感想
高校3年の夏、あやせの告白を受け容れ、恋人同士になった京介。毎日のように逢瀬を重ね、絆を深めていく二人の関係を、ついに桐乃が知られることになる第二弾。いやほんと京介も相変わらず暑苦しくて、恋人になったあやせのヤンデレっぷりが正直ちょっとヤバいよ?と心配になるレベルで(苦笑)、桐乃も桐乃でなんかちょっとあれな中、一見マイペースに見える加奈子の存在感が効いてましたね…。いやもう三人の関係それでいいの?と思う結末でしたけど、あれもまた彼ららしいとも言えるのかな。黒猫ifや加奈子ifも気になるところではあります。
読了日:06月10日 著者:伏見 つかさ
声優ラジオのウラオモテ #02 夕陽とやすみは諦めきれない? (電撃文庫)声優ラジオのウラオモテ #02 夕陽とやすみは諦めきれない? (電撃文庫)感想
夕陽の裏営業スキャンダルを何とか乗り越えたかに見えた二人。けれど夕陽の仕事は激減して周囲の反応も相変わらずで、そんな声優生命最大の危機に素の自分たちで勝負する第二弾。実力派の先輩声優・柚日咲めくるに突然浴びせられた強烈な罵倒、イメチェンして再び仕事を再開した二人が募らせてゆく違和感、そんな事態に業を煮やした夕陽の母がふたりに課した難題。今回は素の姿を知られた声優がどうあるべきかで揺れる二人の試行錯誤でしたけど、ギリギリの状況で感じたファンたちの想いに真摯に向き合って出した彼女たちの決断を応援したいですね。
読了日:06月10日 著者:二月 公
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身II」本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身II」感想
王族に呼び出されたばかりか、貴族院の図書館に秘められた地下書庫へ近付こうとし、相変わらずフェルディナンドを悩ませるローゼマイン。相変わらず我が道を全力で突っ走るローゼマインにレスティラウトから驚愕の提案がされる第五部第二弾。不思議な現象を起こした上に学生たちの共同研究に王を巻き込み、聖女と持ち上げられ事実と異なる認識をされてイライラするお茶会。少しずついろいろなことがズレていった先にあったディッター勝負は、彼女の立ち位置を決定的に変えてしまったような気がしますね…ハンネローレにも転機となるか注目してます。
読了日:06月11日 著者:香月美夜
天才王子の赤字国家再生術7~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)天才王子の赤字国家再生術7~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)感想
三皇子のいがみ合いで長らく膠着状態が続いてきた帝国の後継者争い。そこで劣勢の長兄ディメトリオが戴冠式を強行するために兵を挙げて事態が動き始め、ウェインがなぜかディメトリオ陣営に取り込まれる第七弾。ウェインの躍進に危機感を持ち罠にハメたロウェルミナ皇女の駆け引き、そして三皇子を巡る闘争に巻き込まれ暗躍するウェインの悪辣な打開策。二転三転する状況の中で優劣もまた頻繁に入れ替わり、終わってみれば誰もが痛み分けとかいう結末には苦笑いでしたけど、兄に追い付かんと奮闘するフラーニャが打った一手も気になるところです。
読了日:06月11日 著者:鳥羽 徹
俺の女友達が最高に可愛い。2 (GA文庫)俺の女友達が最高に可愛い。2 (GA文庫)感想
仲良くしていたアニメ大好きなバイトの後輩・琴吹に告白されたカイ。果敢な猛アタックでカイと初デートにこぎ着けた琴吹が、カイの親友ジュンと邂逅する第二弾。親友とか言われたら心穏やかにいられるはずもないカイとジュンの関係に、勇猛果敢に突っ込んでいってジュンに愛でられまくる琴吹が可愛いかったですが、いやほんと傍から見たらあの二人は一体何なの?って思いますよね(苦笑)一緒にコスプレ撮影に至るまでの展開に、ほんの少しだけ可能性が垣間見えなくもなかったですが、それでも二人の関係が鉄壁過ぎて突破口はあるんでしょうかね…。
読了日:06月11日 著者:あわむら赤光
ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?6 ~とびっきりの王子様~ (GA文庫)ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?6 ~とびっきりの王子様~ (GA文庫)感想
織原さんとの秘密の交際が家族にバレた桃田が、新たな義母の存在に戸惑いながらも新生活に慣れ始めた頃。文化祭のクラス代表になった浦野が、咲と口論の末に文化祭直前で引きこもってしまう第六弾。思わぬ形でマウントを取りに来る妃だったり、文化祭でやらかす姫に苦笑いでしたけど、今回のメインは変わりつつあるウラの状況や彼らの親友カナを巡るエピソードで、小心者なりに頑張ったウラの奮闘や旧友を絡めた過去の清算はなかなか良かっただけに、そんな展開から美味しいところをかっさらっていくカナの彼女・唄にはやられたと思いました(苦笑)
読了日:06月12日 著者:望公太
邪神官に、ちょろい天使が堕とされる日々 (GA文庫)邪神官に、ちょろい天使が堕とされる日々 (GA文庫)感想
神々の覇権戦争を制したヤルダバオト教団の不良祈師ギィと、その戦いで破れ神格奴隷となった天使チェルシーラグナロク古戦場に潜むイフリート討伐に向かう教団の《英雄》アウグストの仕事を二人が手伝うことになるファンタジー。隷従させるべき神格奴隷・チェルシーを愛でるギィと、森の中で出会った神格の少女・アストリッド、明らかになってゆく討伐の真実。チェルシーとギィの強い絆を感じさせる二人の関係がなかなか良くて、アストリッドも加えた三人で戦う展開を軸に、神々の因縁も絡めながらうまく物語を広げていってほしい新シリーズです。
読了日:06月12日 著者:千羽十訊
紅霞後宮物語 第十一幕 (富士見L文庫)紅霞後宮物語 第十一幕 (富士見L文庫)感想
仙娥の懐妊が分かり、慌ただしい雰囲気に包まれる後宮。そんな中、文林と小玉の想いはすれ違ったまま、紅霞宮は小玉はじめ女官たちも謎の体調不良で療養地に赴く第十一弾。何だかんだで深い絆で結ばれていたように思っていた小玉と文林のすれ違いは、小玉自身にもいろいろなものを突き付けて、周囲もまたいろいろ思うところがあったりで、挙句に真相がまた何ともあれでしたけど、外から見ていたらまた違ったように見えるのかもですね。思わぬ急展開でまたどうなるか、並行して描かれる康や寛の事情、鵬たち三人の様子も気になるところではあります。
読了日:06月13日 著者:雪村花菜
遺跡発掘師は笑わない 鬼ヶ島の証明 (角川文庫)遺跡発掘師は笑わない 鬼ヶ島の証明 (角川文庫)感想
戸川海運会長・戸川孝之助に依頼され、香川県丸亀市本島に向かった天才発掘師・西原無量。破格のギャラで呼び寄せられた4人による発掘調査が始まった日、無量の元に鬼を名乗る人物からの嘆願書が届く第十一弾。岡山・瀬戸内海にある桃太郎伝説についての解説も興味深くて、本島に眠る宝を巡る様々な思惑や駆け引きに巻き込まれてゆく中、忍と降籏も絡めて再登場のコルドと対峙する展開はなかなか良かったです。監視者争いも気になるところですが、萌絵は後方支援でもいい存在感を出してましたし、仲良くなった桃太郎軍団には再登場を期待してます。
読了日:06月14日 著者:桑原 水菜
さよなら願いごとさよなら願いごと感想
三人の少女を繋ぐ町であった殺人事件。夏休み、置き去りにされた謎を追いかける彼女たちに想像もしていなかった危険が迫る青春ミステリ。祖父の農業を手伝い琴子たちと遊んでくれたお兄さんの正体、祥子の想い人・土屋が告げた意外な疑惑、そして新聞部の沙也香が調査する廃ホテルの事情から思わぬ形で繋がってゆく三十年前の事件。彼女たちの捜査はわりと危なっかしくてハラハラすることもありましたけど、エピソードの繋がりを垣間見せながら、パズルのピースを組み合わせてゆくように真相が浮かび上がってくる構図はなかなか上手かったですね。
読了日:06月15日 著者:大崎 梢
ループ・ループ・ループ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)ループ・ループ・ループ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
ある朝目を覚まし学校へ向かうと、どこか見たことがある光景が繰り返されていたことを自覚する郁郎。誰かのループに巻き込まれていると考えた彼が、ループを引き起こす人物を探し始める巻き込まれループミステリ。ループを引き起こしている原因は誰か。周囲を助け出すたびにループに巻き込まれる人が増えて、協力して解決しようとするもののなかなかループは終わらなくて、テンポよく進む展開の中で見えてくる事情と、過去に起きた二つの事件の真相は何とも切なかったですが、ループを繰り返す中で育まれていった彼らの絆はなかなか良かったですね。
読了日:06月15日 著者:桐山 徹也
Unnamed Memory V 祈りへと至る沈黙 (電撃の新文芸)Unnamed Memory V 祈りへと至る沈黙 (電撃の新文芸)感想
オスカーの呪いを解いて魔法大国・トゥルダールの女王として即位したティナーシャ。そして呪いの元凶たる『沈黙の魔女』がついに二人の前に現れ、オスカーにかけられた呪いの真実が明らかになる第五弾。王としての立場を忘れない前途多難な二人の即位後の展開にはおおっ!ってなりましたけど、とはいえあの二人があっさり幸せになれるはずもなく、次々と襲い掛かる災厄に立ち向かう怒涛の展開を乗り越えて、ともにあろうとする二人の最凶カップルっぷりが際立っていましたね(苦笑)いろんな意味で規格外な二人がどんな結末を迎えるのか続巻に期待。
読了日:06月15日 著者:古宮 九時
Babel I 少女は言葉の旅に出る (電撃の新文芸)Babel I 少女は言葉の旅に出る (電撃の新文芸)感想
現代日本から突如異世界に迷い込んだ女子大生の水瀬雫。異世界の辺境に降り立ってしまい途方に暮れる彼女が、魔法文字を研究する風変わりな魔法士・エリクと出会うファンタジー。雫が日本に帰還する術を探すため、魔法大国ファルサスを目指す旅に出る二人。二人の言語を巡るやりとりや考察はとても興味深くて、傭兵ターキスとの出会いという転機から、ネビス湖での出会いやノイ家の塔の呪い、カンデラの街で次々と事件に巻き込まれ、困った人を放っておけない雫の奔走が周囲の人々や事態を動かし、状況を打開してゆく結末がなかなか印象的でした。
読了日:06月16日 著者:古宮 九時
呪殺島の殺人 (新潮文庫nex)呪殺島の殺人 (新潮文庫nex)感想
呪術者として穢れを背負った赤江一族が暮らした呪殺島。伯母・赤江神楽に招待され、友人の古陶里とともに島を訪れた秋津真白が、記憶を失い神楽の遺体の前で目を覚ます密室ミステリ。ミステリ作家の神楽に招かれた8人が密室状態の殺人事件に遭遇し、連絡も絶たれた孤立状態で発生する連続殺人という典型的な展開でしたが、お互い疑心暗鬼な状況で肝心の真白が記憶を失っていることも効いていて、前提を覆される意外な事実と人物配置の妙、これこそ呪いだったのかと唸らされた結末がなかなか印象的でした。続編があるようならまた読んでみたいです。
読了日:06月17日 著者:萩原 麻里
水曜日が消えた (講談社タイガ)水曜日が消えた (講談社タイガ)感想
周期性人格障害を抱え、曜日ごとに人格が切り替わる僕。これまで一週間のうち火曜日しか生きてこなかった七人のうちの一人が、初めて水曜日を経験し世界が広がってゆく物語。いつもは定休日の飲食店、入ったことのない図書館、そして初めて出会った恋。過ごす曜日が違うと世界もまた違って見える感覚がなかなか興味深かったですが、裏を返せば自分が他の曜日を過ごせている理由にも気づいてしまうわけで、迎えた転機に自分がどうあるべきか、自分にとって大切なものは何か、知ってしまったがゆえの葛藤の末に出した結論がなかなか素敵な物語でした。
読了日:06月17日 著者:本田 壱成
結婚が前提のラブコメ (2) (ガガガ文庫 く 2-5)結婚が前提のラブコメ (2) (ガガガ文庫 く 2-5)感想
とあるイベント婚活で気になる相手がバッティングしてしまう結衣とカレン。しかし明らかに自分に不利となる申し出をするカレンに疑問を持ち、彼女にとっての婚活を考え始める第二弾。自分で婚活したいとは思うけれど、何もかもが初めての結衣が理想とするデートにはドン引きでしたけど(苦笑)結衣とのドキドキデートも、カレンの婚活の理由を突き詰める旅にも、しっかりと向き合う縁太郎のらしさがうかがえる展開で、2巻目で物語としてだいぶ面白くなってきました。なるべくしてなった必然の結末からどう展開するのか、これは続巻が楽しみですね。
読了日:06月17日 著者:栗ノ原 草介
サンタクロースを殺した。そして、キスをした。 (ガガガ文庫)サンタクロースを殺した。そして、キスをした。 (ガガガ文庫)感想
聖夜を間近に控えて街も浮き立つ12月初旬。先輩にフラれて絶望していた大学生の僕が、クリスマスをなくせるという高校生らしい一人の少女と出会う青春小説。少女が持つ『望まない願いのみを叶える』ノートの存在。ノートの力で消すためにはクリスマスを好きになる必要があり、少女と疑似恋人になった僕。共に過ごすうちに変わってゆく心境があって、それぞれが心残りを解消していった先で明らかになってゆくもう一つの物語があって、思ってもみなかったクリスマスの真相とその結末、そしてそんな二人が見出したかすかな希望が印象的な物語でした。
読了日:06月17日 著者:犬君 雀
シュレディンガーの猫探し (ガガガ文庫 こ)シュレディンガーの猫探し (ガガガ文庫 こ)感想
守明令和の妹・弥生にまつわる不思議な現象「やよいトリップ」。未来視の力が原因で巻き込まれたとある事件をきっかけに、訪れた洋館で神秘的でミステリアスな魔女・焔螺と出会うミステリ。事件が解決すれば謎なんて解かなくていいという探偵嫌いの令和と、不可能犯罪を迷宮入りさせる魔女の焔螺が名探偵たちと対峙する、平成最多の密室事件、同時存在のアリバイ崩し、そして令和最初の迷宮入り事件。ミステリ好きの心をくすぐる展開の中、焔螺たち登場人物たちの存在感もまた際立っていて、焔螺と令和のコンビの妙をまた読んでみたいと思いました。
読了日:06月18日 著者:小林 一星
ありふれた祈り おいしいコーヒーのいれ方 Second Season IX (集英社文庫)ありふれた祈り おいしいコーヒーのいれ方 Second Season IX (集英社文庫)感想
ある事故の知らせで秀人とともに急遽帰国した勝利。そんな彼の元に現れたかれんとぎくしゃくしたやりとりしかできない二人の試練と波乱の恋の結末が描かれるセカンドシーズン第九弾。取り返しのつかない事件からの逃避にどう決着をつけるのか。リアルタイムで読んできたこの作品が中断して、もう最後まで読めないのかと半ば諦めかけていましたが、向き合って乗り越えて前に進もうとする彼らの決意を最後に読めて良かったです。あとがきを読むと著者さんもなかなか書けない苦労はあったようですが、きちんと完結させてくれてありがとうございました。
読了日:06月19日 著者:村山 由佳
アサシンズプライド12 暗殺教師と薄明星火 (ファンタジア文庫)アサシンズプライド12 暗殺教師と薄明星火 (ファンタジア文庫)感想
封じられた歴史の真実を探るべく、時間旅行の実現に奔走するクーファたち。夜界の大地に降り立った一行の旅行計画を阻むべく最強の刺客が襲撃する第十二弾。クーファたちの策略を察知しそれを打破すべく襲撃するヴァンパイア族の重鎮セオドーア。クーファたちとはぐれてしまった少女たちが出会った夜界の難民の子供たち。はぐれても楽しそうな少女たちの姿は微笑ましかったですし、セオドーアとの戦いの中で明らかになってゆくクーファの複雑な立ち位置も気になるところですけど、クライマックスに向かう物語の核心に迫る次巻が今から楽しみですね。
読了日:06月19日 著者:天城ケイ
宝石商リチャード氏の謎鑑定 久遠の琥珀 (集英社オレンジ文庫)宝石商リチャード氏の謎鑑定 久遠の琥珀 (集英社オレンジ文庫)感想
オクタヴィアにスリランカ随一の山岳リゾート地ヌワラエリヤのホテルへ呼び出された正義とリチャード。多くの人々がここに集い、ここまでの経緯と複雑な想い、そしてさまざまな答えが明かされる第十弾。ジェフリーとヘンリーも合流し、彼女とコミュニケーションを図ろうと力を尽くす正義。明らかになってゆく彼女の真意、そしてクレアモント家執事室の暗躍。これまでの複雑に絡まっていた因縁に向き合い、本音でぶつかり合った決着、そしてそれぞれが前を踏み出す中で正義が出した今後に向けた決意がとても印象的でした。第三部も期待しています。
読了日:06月19日 著者:辻村 七子,雪広 うたこ
後宮染華伝 黒の罪妃と紫の寵妃 (集英社オレンジ文庫)後宮染華伝 黒の罪妃と紫の寵妃 (集英社オレンジ文庫)感想
諍いの絶えない後宮を治めるため、凱帝国皇帝・高隆青の皇貴妃となった共紫蓮。聡明さを買われて入宮した紫蓮が、職務上の信頼関係で結ばれた隆青を巡る妃たちの野心と嫉妬に巻き込まれてゆく中華風ファンタジー。皇太后・李飛燕の後ろ盾の下で蔡貴妃と許麗妃の派閥がぶつかり合う後宮を統率する紫蓮、そしてかつて隆青が寵愛した冷宮にいる元皇貴妃・黛玉の存在。より重厚な雰囲気にシフトする中で対比するように様々な愛が描かれましたが、重責に苦悩する隆青と彼を支える覚悟を決めた紫蓮がぶつかり合いながら育んでいく絆がとても印象的でした。
読了日:06月20日 著者:はるおか りの,Say HANa
小説の生存戦略 ライトノベル・メディア・ジェンダー小説の生存戦略 ライトノベル・メディア・ジェンダー感想
現代小説の枠組みを確認するために、マンガやアニメ、ゲームなどのサブカルチャーを雑食的に取り入れて発展・成熟を遂げてきたライトノベルの方法や様式を検証する一冊。全体としては直木賞におけるマンガ的表現に対する評価や、キャラクター化される歴史的人物、ライト文芸やウェブ小説にみる出版業界の新しい形、多様で複雑なライトノベルをめぐるメディアミックス、中学・高校図書館とライトノベルライトノベル卒業論文を書く人へ、ラノベ編集者の仕事など、面白いテーマもあったけれど玉石混交で、こういう活動を続ける難しさも感じました。
読了日:06月21日 著者:大橋 崇行,山中 智省
脱自己流の資料作成術 伝わるデザインと図解作成テクニック脱自己流の資料作成術 伝わるデザインと図解作成テクニック感想
正直あまりこういう資料を作成するのが得意でないのに、周囲に説明しないといけない機会が多い状況で、少しでも参考になればと思い手に取った一冊。こういうのを読んでいてポイントだと感じるのはいかに分かりやすくするか、見やすくするか、余計な情報を載せずにシンプルにするかというところで、けれどこういう資料を作っていて一番難しいと感じるのは、何をどう見せればいいのかという情報の取捨選択なんですよね(苦笑)とはいえ見やすくするために意識すべきポイントというのはよくわかる一冊ではあるので、そういう意味では参考になりました。
読了日:06月21日 著者:山橋 美穂
銀色の国銀色の国感想
自殺対策NPO法人の代表として日々奔走する晃佑のもとに届いた友人の自殺という悲報。元相談者の友人が今になって死を選んだ原因を調べるうちに、恐ろしい計画の一端に辿り着くミステリ。逃げたい衝動を抱える詩織が陥った罠、自傷行為を繰り返す浪人生のくるみ、そして自殺者の原因を探るうちに明らかになるVR「銀色の国」の存在。死を願う人々に忍び寄る常軌を逸した悪意と、影響されてありようを変えてしまった人々がいて、それを細い繋がりから活路を見出し、向き合い続けた晃佑の熱い想いが引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:06月22日 著者:逸木 裕
私の彼は腐ってる (中公文庫)私の彼は腐ってる (中公文庫)感想
両親を亡くしてからずっと育ててくれた祖父も亡くした大学生・揚羽。そんな祖父が定めたイケメンで紳士な許嫁の伊織と同居することになった揚羽が、憧れの許婚の意外な一面を知る物語。同居こそ始めたものの共に過ごすことの少ない伊織が抱えていた秘密。彼が腐ってるってそっちかい!とツッコミを入れたくなる展開の中で、吸血鬼やスライムの親子、人魚や猫又といった愉快な人外との日々は意外と楽しそうで、揚羽の順応性の高さには驚かされました。意外と独占欲強めな伊織ともお似合いっぽい感じでしたけど、でもほんとに彼でいいのかな…(苦笑)
読了日:06月22日 著者:九条 菜月
忘却城 炎龍の宝玉 (創元推理文庫)忘却城 炎龍の宝玉 (創元推理文庫)感想
死者を蘇らせる術で発展した亀珈王国。儒艮が塾を開くために買ったのは怪奇現象が多発する幽霊屋敷。そんな折、瀕死の炎龍が飛来し、王都を大混乱に陥れる第三弾。瀕死の炎龍の通訳に堺人の儒艮が指名され、大切な家族である金魚小僧のために引き受けたことで動き始めた彼と金魚小僧の時間。複雑な想いに揺れる儒艮や金魚小僧の家族の事情も明らかになっていって、若干説明が冗長な感がありましたけど、そんな中で苦悩しながら成長する金魚小僧や、何とも複雑な二人の関係はなかなか良かったですね。自分の目指すべき道を見出した彼らの今後に期待。
読了日:06月22日 著者:鈴森 琴
甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
卓越した薬の知識を持ち、薬にまつわる不思議な出来事を解決する薬剤師・毒島に想いを寄せるホテルマン爽太。そんな二人が周囲の事件を解決する第二弾。管理しているのになくなってしまう認知症の薬、筋トレに目覚めた友達が抱える悩み、ホテルからいなくなった外国人といった問題ではためになる薬の知識が紹介されて、毒島に興味を持つ男まで現れてもなかなか進展しない鈍い二人でしたけど、生温かく見守る周囲の見立てや初デートの様子を見ていると、信頼関係は築かれつつあるのかな…あまり描写されない毒島の心境が気になるところではあります。
読了日:06月23日 著者:塔山 郁
ケーキ王子の名推理5 (新潮文庫)ケーキ王子の名推理5 (新潮文庫)感想
ついに恋人同士になった未羽と颯人。イケメン王子と夢の手つなぎ登校で学校中が大騒ぎ。週末には横浜中華街で初デート…神展開に幸せ絶頂の未羽だけど、嬉しいだけ不安も募る第五弾。恋が成就を知った未羽の家族たちの反応が微笑ましかったですけど、表参道を舞台にしたスイーツ事件、ハロウィンパーティーで垣間見えたもうひとつのカップルのエピソード、未羽のケーキ大好きっぷりや久しぶりに謎解きもあって、一見疎そうに見える颯人もちゃんと未羽との関係をしっかり考えていたんですね。颯人の新たな目標も定まって二人のこれからが楽しみです。
読了日:06月23日 著者:七月 隆文
異世界迷宮の最深部を目指そう 14 (オーバーラップ文庫)異世界迷宮の最深部を目指そう 14 (オーバーラップ文庫)感想
『告白』の末、晴れてラスティアラと恋人同士となったカナミ。マリアとリーパーの二人と合流し、ノスフィーとの決着をつけるべく、一行は『本土』大聖都フーズヤーズへと向かう第十四弾。さすがに前回の壮絶な告白ほどのインパクトはなかったですけど、ヒロインたちへの寛容な態度だったり、思ってもみなかった初デートだったり、相変わらずラスティアラの壊れっぷりと、それに振り回されるカナミの関係が突き抜けてましたね…(苦笑)元老院の思惑も絡む中で、過去が明らかになっていったカナミとノスフィーとの決着が気になるところではあります。
読了日:06月23日 著者:割内タリサ
弱小ソシャゲ部の僕らが神ゲーを作るまで 2 (オーバーラップ文庫)弱小ソシャゲ部の僕らが神ゲーを作るまで 2 (オーバーラップ文庫)感想
廃部の危機を乗り越え、夏休みを迎えた命薫高校ソシャゲ部。四人は茜の推薦によって、優秀な学生が集い開発したゲームの出来を競うサミットへ参加する第二弾。解たちの活躍を知った声優志望の新入部員・夜桜藍奈と絵瑠の過去の確執。新キャラ藍奈もなかなかクセのあるタイプだったり、また絵瑠とのトラブルか...とかちらりと思いましたが、彼女たちに振り回されながらも協力して向き合って過去を乗り越え、絆を深めた仲間とともに勝負に挑む展開はなかなか良かったですね。次巻は恋愛面ではどうにもヘタレな解の頑張りにも期待したいところです。
読了日:06月24日 著者:紙木織々
星降る夜になったら (MF文庫J)星降る夜になったら (MF文庫J)感想
省エネで適当な日々を過ごす花菱准汰。彼が卒業に必要な補習のために向かった美術室で、ただひとりの美術部員・渡良瀬佳乃と運命の出会いを果たす青春小説。准汰が目をそらせなかった絵に真っすぐに向き合う佳乃の姿。不器用な佳乃がずっと抱いてきた悔恨とずっと忘れなかった幼き日の約束があって、一見正反対な二人が育んでゆく不器用な想いは何とも儚くて、彼女を大切に想う人たちの優しい願いはひとつの未来を垣間見せてくれましたけど、何よりも大切な人のために祈ってしまう人たちのがもたらした結末が、何とも切なくて印象に残る物語でした。
読了日:06月24日 著者:あまさきみりと
今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。2 先輩、ふたりで楽しい思い出つくりましょう! (MF文庫J)今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。2 先輩、ふたりで楽しい思い出つくりましょう! (MF文庫J)感想
困難を乗り越えて灯火と一緒に登校する伊織の前に突如現れた、恋人で灯火のクラスメイト・天ヶ瀬まなつ。突如現れた彼女の存在に困惑を隠せない灯火を差し置いて、まなつの真意に迫る第二弾。冒頭から何が起こったのかよく分からない衝撃の展開でしたけど、徐々に素の表情を見せて過去も明らかになってゆくまなつもまた強烈なインパクトがあって、なんかいろいろ裏がありそうですけど、気が付くと無自覚なまま女の子を助けてフラグを立てまくっている伊織の業の深さを思うと、灯火の心穏やかならぬ日々はまだまだ続きそうですね…またですか(苦笑)
読了日:06月24日 著者:涼暮 皐
ぼくたちのリメイク Ver.β 2 (MF文庫J)ぼくたちのリメイク Ver.β 2 (MF文庫J)感想
進めていた企画が発端となって常務と対立し、栄転とは名ばかりの異動で第2開発部の副部長に就任し、13部のメンバーと分断された橋場恭也。そんな彼があのプラチナ世代との超大型企画に関わる第二弾。異動しても自らの熱い想いや的確な視点で、周囲を認めさせてゆく橋場はほんと流石だなと思いましたけど、伊知川さんも絡めながらの河瀬川とのデートもなかなか楽しかったですね。後に尾を引きそうな常務との確執も気になるところでしたけど、それ以上に伊知川さんは一体何者なんですか?(苦笑)これから彼女がどう関わってくるのか気になります。
読了日:06月24日 著者:木緒 なち
探偵はもう、死んでいる。3 (MF文庫J)探偵はもう、死んでいる。3 (MF文庫J)感想
ある日、夏凪、斎川、シャルと共に誘拐された君塚君彦。生前のシエスタそっくりの謎の少女が現れ、今の過去映像にはとある間違いが含まれていると語り出す第三弾。完全無欠のシエスタが犯したミスとは何か。名探偵であるが故に見つけられなかった微かな想い。スキャンダルに巻き込まれた斎川が命を狙われる展開の中、また新たな過去の真実が明らかになっていって、ギリギリの状況が続く中でも熱い想いで迷えるヒロインたちの心を揺さぶった彼が、それでもまだ諦めていなかったことに驚きましたよ(苦笑)いろいろな意味で前途多難だけど続巻に期待。
読了日:06月25日 著者:二語十
明けない夜のフラグメンツ あの日言えなかったさよならを、君に (メディアワークス文庫)明けない夜のフラグメンツ あの日言えなかったさよならを、君に (メディアワークス文庫)感想
高校入学の直前、恋人を目の前の事故で失った燈。心の傷が癒えないまま高校生となった彼女が、唯一の居場所となった図書室にあった共用の「読書ノート」で顔も知らない生徒と文章を介した交流を始める物語。保健室登校を続ける燈に心境の変化をもたらした読書ノートでの交流。不思議に気が合う相手とのやりとりから再び時が動き出して、事故から険悪な関係に陥っていた友人とも向き合えて、新たな一歩を踏み出すきっかけに繋がってゆく二人のやりとりは切なかったですけれど、お互いを大切に想う気持ちが感じられた結末がとても印象的な物語でした。
読了日:06月25日 著者:青海野 灰
真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました7 (角川スニーカー文庫)真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました7 (角川スニーカー文庫)感想
大国ヴェロニア王国からの宣戦布告。思ってもみなかった形で最大の危機を迎えたゾルタンと愛する人々を守るため、レッドたちが再び剣を取り立ち向かう第七弾。リリンララと話し合ったことをきっかけに明らかにされてゆくヴェロニア王国を巡る過去の真実。決着をつけるべくやってきたレオノールたちヴェロニア王国相手にどうすべきか、葛藤するレッドたちと戦うことを決断したゾルタンの人々。大切な人たちや居場所を守るため立ち上がった彼らの奮闘とその結末には良かったなと思えましたけど、ここからまた物語がどう展開するか続巻も期待ですね。
読了日:06月26日 著者:ざっぽん
むすぶと本。 『外科室』の一途 (ファミ通文庫)むすぶと本。 『外科室』の一途 (ファミ通文庫)感想
本の声が聞こえる少年榎木むすぶ。やきもち焼きの恋人の夜長姫(=本)に激しく嫉妬されながら、本の味方を自認する彼が様々な人と本の問題を解決する学園ビブリオミステリー。学園の王子様・姫倉悠人先輩の協力も得ながら取り組むハナちゃんとの再会を望む「長くつしたのヒッピ」、書店で出会ったとあるラノベの願い、ある本に罹患した少年の苦悩、「十五少年漂流記」と無人島生活といった事件の中で仲良くなった人たちがいて、何より最後の「外科室」の朗読会が迎えた結末が劇的で印象に残りました。彼の物語をまた読んでみたい新シリーズですね。
読了日:06月26日 著者:野村 美月
むすぶと本。 『さいごの本やさん』の長い長い終わりむすぶと本。 『さいごの本やさん』の長い長い終わり感想
店主の急死により閉店することになった幸本書店。残り少ない時間で閉店フェアを行い様々な人が訪れる中、故人の遺言で書店の全ての本を任されたという高校生・榎木むすぶが現れるもう一つの物語。少年時代、図鑑の立ち読みを楽しみにしていた獣医、「野菊の墓」で時を超えて再び巡り合った二人、「かいけつゾロリ」に救われた少年、地元出身の作家が抱えていた悔恨、そして店員・水海や店主だった笑門さんの想い。本の声が聞こえるむすぶが、店を訪れる人々を思い出の本たちと再会させてゆくエピソードはどれも印象的でぐっと来るものがありました。
読了日:06月26日 著者:野村 美月
青雲を駆ける 6 (ヒーロー文庫)青雲を駆ける 6 (ヒーロー文庫)感想
タニアが妊娠したことがわかって、大喜びのエイジ。だが、文明レベルの低い異世界では、母子ともに健康に生まれる可能性は低いと聞き、環境を整えるべく奮闘する第六弾。産院を作ってもらったり薬師に協力を要請したり、いやまあエイジはタニアのためなら頑張っちゃうよなあと苦笑いでしたけど、一方で弟子たちも試験を通してそれぞれの目指すところが垣間見える中で、カターリナはこれからどうするんでしょうね…。最後においおい…と思う場面もありましたけど、無事出産を喜んだのもつかの間、気になる話が持ち込まれて次巻の展開が気になります。
読了日:06月27日 著者:肥前 文俊
隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた(2) (モンスター文庫)隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた(2) (モンスター文庫)感想
相変わらず勘違いから唯李からのアタックを悠己が返り討ちにする日々を送る二人の前に、一年前に唯李の隣の席だった女の子・花城凛央が現れる第二弾。いいなり券を賭けたテスト勝負で唯李が秘密兵器として召喚した凛央。悠己に敵意を向ける凛央が、実は唯李と仲良くなりたいのを知り協力する展開に、二人の関係を疑い始め空回りして迷走しまくる唯李がアホ可愛かったですけど、不器用で訳分からなくなった彼女にきちんと向き合えるのもまた唯李のいいところなんですよね。テンポのいい掛け合いとメリハリのある展開がとてもいい感じで続巻も期待。
読了日:06月27日 著者:荒三水
湯けむり食事処 ヒソップ亭湯けむり食事処 ヒソップ亭感想
名料亭の料理人をある事情から辞めた章が、幼馴染夫婦の素泊まり温泉旅館「猫柳苑」の食事処「ヒソップ亭」の主人となり、店を訪れるワケありの客たちにこだわりの料理を提供する料理小説。お節介な幼馴染夫婦に誘われ、旅館の元料理人の娘・桃子と始めた食事処。両親が出かける時の妻の表情を気にする中年男性、史跡めぐりの定年退職者のピンバッジ、酒を知るひとり旅の女性のリベンジ、そして桃子の気がかりや、旅館が抱える苦悩にも向き合いつつ、美味しい料理を食べてもらうこと、周囲の人たちを大切にする章の生き方がなかなか良かったですね。
読了日:06月28日 著者:秋川 滝美
あなたに会えて困ったあなたに会えて困った感想
空き巣で捕まった刑期を終えた前科二犯の善人。出所して空き巣の先輩スーさんの家に転がり込み、家賃代わりに絶好の仕事場として紹介された家が初恋の人だったマリアの住んでいた家と知るミステリ。幼馴染だったタケシ・ヨッシー・マリアの三角関係。その再会したマリアが結婚したタケシとあまり上手く行っていないことを察して、巻き込まれてゆくヨッシーが彼女のために決意を固めてゆく展開でしたけど、最後は見事にええ?と騙されました(苦笑)何とも切なくほろ苦くはありましたけど、でも未来への希望を感じさせる結末はなかなか良かったです。
読了日:06月29日 著者:藤崎 翔
どうぞ愛をお叫びくださいどうぞ愛をお叫びください感想
引っ込み思案で帰宅部の松尾が幼馴染の織田に「ユーチューバーやろうぜ」と誘われ、戸惑いつつも織田と同じバスケ部の面白担当・坂上、軽音部で一つ年上の個性派イケメン・夏目も誘ってゲーム実況に挑戦する青春小説。普段なら接点のないタイプの仲間たちと、気軽に始めたゲーム実況動画配信の思っていた以上に大変な現実。人気が出てきたからこその楽しいだけではない葛藤もあって、窮地にもきちんと向き合える彼らの育んできた友情があって、それを乗り越えてずっと見守っていくれていた大切なものを取り戻す結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:06月29日 著者:武田 綾乃
まだ温かい鍋を抱いておやすみまだ温かい鍋を抱いておやすみ感想
手伝っている叔父の店を訪れる女性の苦悩、一緒に住むようになった相手が時折頼んでくる悲しい思い出のパン、うっかり不倫してしまった妻の複雑な想い、仕事と家事の日々に疲れた妻と保育園仲間の逃避行、子供に先立たれたのに周囲に気を遣わねばならない友人、娘も構ってくれた趣味仲間の入院など6つの連作短編集でしたが、登場人物たちが辛く苦しい時に寄り添ってくれる人たち、そして物語の中に出てくる料理の存在が彼ら彼女らを優しく温かく癒してくれるものとして効いていて、救いが垣間見えるそれぞれの結末はなかなか印象的な物語でした。
読了日:06月29日 著者:彩瀬まる
語らいサンドイッチ語らいサンドイッチ感想
大阪の小さなサンドイッチ店『ピクニック・バスケット』を営む仲の良い姉妹・笹子と蕗子。そんな二人の前に笹子の元カレが現れる第二弾。きゅうりを巡る複雑な思い、子供の好き嫌いとフィッシュソーセージ、昔あったクラブサンドイッチの思い出、おじいちゃんが覚えていたジャムサンド、そして元同僚の結婚と笹子の元カレ。過去の思い出が詰まった各話のエピソードにサンドイッチを絡めてゆく構成で、笹子と久しぶりに再会した元カレの話はちょっぴり切なかったですけど、これはもう仕方なかったかな。蕗子と川崎の関係も今後が気になるところです。
読了日:06月30日 著者:谷 瑞恵
新潮文庫の100冊 2020新潮文庫の100冊 2020感想
既読55冊。ここは古典多めなのでそんなもんですね。
読了日:06月30日 著者:新潮文庫編集部
【無料小冊子】ナツイチGuide2020<通常版> (集英社文庫)【無料小冊子】ナツイチGuide2020<通常版> (集英社文庫)感想
既読27冊。ここはわりと入れ替わりが多い感じですね。
読了日:06月30日 著者:集英社文庫編集部
カドフェス2020小冊子 (角川文庫)カドフェス2020小冊子 (角川文庫)感想
既読45冊。ここも読みたい本中心に選んではいますがわりと読んでる方。
読了日:06月30日 著者:角川文庫編集部
マージナル・オペレーション改 09 (星海社FICTIONS)マージナル・オペレーション改 09 (星海社FICTIONS)感想
中国の人民解放軍相手に完勝したアラタたち。しかし制空権を喪い格好の空爆目標となる中、孤立した海兵隊についに本国より撤退命令が下り、アラタたちの撤退戦が始まる新章第九弾。国境を超え怒濤の追撃を開始する人民解放軍、中立を決め込んでいたタイ王国の造反と、ますます状況が厳しくなり二転三転してゆく中で、アラタの判断も冴えていましたけど、立ち位置が難しいイトウさんの交渉力も地味に効いていましたかね。物語の結末も近づいて子どもたち最優先のアラタたちが乗り切って未来を切り開けるのか、正妻争いの行方含めて続刊が楽しみです。
読了日:06月30日 著者:芝村 裕吏,しずま よしのり


読書メーター

2020年上半期注目のオススメ新作ライト文芸30選

2020年上半期注目のオススメ新作企画、「ライトノベル」に続く第二弾は「ライト文芸」レーベル編です。今年はコロナなかったらもう少し読めたのかも…という思いもなくはないですが、とりあえず自分が読んだ中から新作のオススメを30作品紹介したいと思います。

 

1.処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな (新潮文庫nex)

 

2.恋に至る病 (メディアワークス文庫)

 

3.流転の貴妃 或いは塞外の女王 (集英社オレンジ文庫)

 

4.青ノ果テ :花巻農芸高校地学部の夏 (新潮文庫nex)

 

5.さよなら世界の終わり (新潮文庫nex)

 

6.父親を名乗るおっさん2人と私が暮らした3ヶ月について (メディアワークス文庫)

 

7.香港シェヘラザード (富士見L文庫)

 

8.王妃ベルタの肖像 (富士見L文庫)

 

9.さようなら、君の贖罪 (集英社オレンジ文庫)

 

10.水曜日が消えた (講談社タイガ)

 

11.愛を綴る (集英社オレンジ文庫)

12.明けない夜のフラグメンツ (メディアワークス文庫)

 

13.呪殺島の殺人 (新潮文庫nex)

 

14.今夜、世界からこの恋が消えても (メディアワークス文庫)