読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

夏に読みたいライトノベル/ライト文芸10選

書店で毎年恒例の夏の100冊を眺めていて、当初は夏の文庫セレクト企画的なものを考えていたのですが、学生も夏休み入ったしひと夏の物語企画を作ろうと思いついて今回の企画になりました。しかし基本的に企画を作るときは自分が読んだ本の中から選んでいるのですが、実際に選んでみるとまさかのひと夏の物語でオススメしたい本が思ったより少ないとかいう企画倒れになりかねない展開orz

 

内心ライトノベル単体で案外あるんじゃないかと思ったんですけどね…結局今回はライト文芸と合わせては厳選して文庫に絞って10冊にしました。夏の文庫企画的なものも作りたいんですけどね…今いろいろ忙しいので時間があれば考えたいところです。

 

1.きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

 

2025年の夏休み。双子の高校生・明日子と日々人は突然いとことの同居を父から告げられ、やって来た今日子が実は長い眠りから目覚めた三十年前の女子高生だったという物語。時代のギャップに戸惑いながら徐々に双子と打ち解けてゆく今日子の存在は、バラバラになっていた家族を繋ぐきっかけにもなって、過去との繋がりを感じるがゆえにもう取り戻せないことを痛感する彼女と、どうにもならない現実に直面した双子の対照的な選択、昔の想い人の回想がとても印象に残りました。懐かしい気持ちと切ない気持ちが入り混じる素敵なひと夏の物語ですね。

2.ヴァンパイア・サマータイム (ファミ通文庫)

人と吸血鬼が昼と夜を分け合う世界。両親が営むコンビニを手伝う高校生・山森頼雅と、夕方に紅茶を買っていく自分と同じ蓮大附属に通う少女冴原綾萌と出会いを描く青春小説。頼雅と吸血鬼の少女冴原との出会いは不器用だけれどまっすぐで、容易には越えられない壁を感じながら、それでも惹かれ合う二人の思いにとても切ない気持ちになりました。そんな思い悩む吸血鬼の冴原も、夜の世界では厳しい指導ぶりにバレー部の後輩から「オニハラ」とか呼ばれてしまう存在。ファンタジーな設定が日常に溶け込んでいる、ステキな世界観でした。

3.夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

夏へのトンネル、さよならの出口 (ガガガ文庫)

 

海に面する田舎町・香崎。家族崩壊させた過去を悔やむ高校生・塔野カオルが、クラスで浮いた存在になっていた転校生・花城あんずと互いの欲しいものを手に入れるため協力関係を結ぶ青春小説。夏の日のある朝、塔野カオルが偶然耳にした、中に入れば年を取る代わりに欲しいものが何でも手に入る『ウラシマトンネル』の都市伝説。周囲との関係を拒絶していたあんずの言動はなかなかぶっ飛んでいましたが、彼女との協力関係から始まった二人の不器用なやりとりはとても甘酸っぱくて、大切なものに向き合った二人の結末にはぐっと来るものがありました。

4.かりゆしブルー・ブルー 空と神様の八月 (角川スニーカー文庫)

いなり寿司しか食べられない呪いを祓うため神々の住む島・白結木島を訪れた高校生春秋。そんな彼が神様との縁を切ることで怪異を祓う花人の後継者の少女・空と出会い、怪異解決に挑む沖縄青春ファンタジー。天真爛漫でどこまでもフリーダムだけれど島想いな空たちに翻弄されながら、徐々に変わってゆく春秋の心境。師匠を亡くし未熟を自覚しつつも、事情を知って春秋のために呪いを解こうとする空の決意。のびやかな舞台で繰り広げられる物語の結末はちょっぴり切なくて、けれどそれを乗り越える爽快な読後感は著者さんらしい魅力に溢れていました。

5.黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

 

黒豚の悪神伝説が言い伝えられている宇嘉見島。その古臭い慣習も閉鎖的な環境も大嫌いな中学生ヨナのクラスに、東京から美少女・波多野清子が転校してくるひと夏の異世界譚。清子の美声を聞いて彼女を主演に『オズの魔法使い』の映画を取りたいとアプローチするヨナ。そんな彼だけでなくクラスの皆からも距離を置く清子が隠す秘密。ヨナたちのお陰で本来の姿を見せるようになった清子はとてもいい子で、だからこそ明かされた真相には切ない気持ちにもなりましたけど、彼女が笑って過ごせるようになった結末にはとても心温かい気持ちになりました。

6.終わりの志穂さんは優しすぎるから (メディアワークス文庫)

東京のはるか南に位置する咲留間島。夏の間に画家として納得できる作品を描けなければ、筆を折ってこの島に骨を埋めようと覚悟して絵を描く森公一朗が、ミステリアスな雰囲気を持つ志穂さんと出会うひと夏の物語。なぜこのような場所にいるのか、いかにも訳ありに見える志穂さんと、島にやってきた志穂の妹・紫杏たちと交流しながら絵が完成に近づいていく一方、疑惑を深めていく公一朗が見つけてしまったモノの真実。できることなら二人がもっと違う形で出会うことができれば良かったですが、これはこれでこの物語らしい優しい結末だと思いました。

7.夏の王国で目覚めない (ハヤカワ文庫JA)

夏の王国で目覚めない (ハヤカワ文庫JA)

夏の王国で目覚めない (ハヤカワ文庫JA)

 

再婚の父に新しい母と弟。私だけが家族になりきれていない女子高生の美咲。そんな彼女が熱中する作家・三島加深のミステリツアーに招待され、家を出て三日間のツアーに飛び込むひと夏のクローズドサークル。「謎を解けば加深の未発表作を贈る」と誘われて集まり、不可解な消失や死体でお互い疑心暗鬼になってゆく参加者たち。解き明かされてゆく謎は未発表作に込められた真意にも繋がっていて、彼らと共に過ごしたとても印象的なひと夏の体験が、きちんと今の自分と向き合ってそれぞれの新しい一歩を踏み出す勇気へと繋がってゆく素敵な物語でした。

8.二度めの夏、二度と会えない君 (ガガガ文庫)

二度めの夏、二度と会えない君 (ガガガ文庫)

二度めの夏、二度と会えない君 (ガガガ文庫)

 

転校生・森山燐と意気投合し、念願だった文化祭でのバンド演奏を成功させながら、亡くなる間際の彼女に告白した結果すれ違ったまま失った智。そんな後悔から引きこもってしまった彼が、彼女と出会いからやり直す機会を得る物語。彼女との別れで再び後悔しないため、やり直す日々で奔走する智でしたが、それはやはり燐を大切に思う気持ちがあったからですよね。そう遠くない別れを予感しながらも精一杯生きようとする燐と、そんな彼女の思いをきちんと受け止めて、悲しみを乗り越えて再び歩き出そうとする智の二人を描いた素晴らしい青春小説でした。

9.夏の終わりとリセット彼女 (ガガガ文庫)

夏の終わりとリセット彼女 (ガガガ文庫)

夏の終わりとリセット彼女 (ガガガ文庫)

 

事故で記憶を失った杓子定規の風紀委員桜間さんと、ちょっと臆病で嫌なことがあるとサボる癖のある峰康。ぎこちない彼氏彼女の関係だった二人のリスタート。再会して「私が一番嫌いなタイプの人間だと思います」と本人に突きつける桜間さんからなぜ峰康に告白したのか。つまるところこの物語のテーマはそこに尽きるわけですが、徐々に明らかになっていく桜間さんの不器用な思いに対して、峰康は峰康で考え過ぎで見ていてもどかしくて、でもすれ違ってばかりの二人だからこそ、遠回りながらもいい感じにまとまりそうな結末には救われる思いでした。

10.八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。 (メディアワークス文庫)

高二の夏に心臓の病が原因で亡くなった彼女・透子のことを未だ引きずっていた成吾。四年ぶりに地元に帰った成吾が再び手にした交換日記の空白に新たな返事が綴られてゆく物語。彼女が亡くなって以来、初めて訪れた彼女の実家で手にした交換日記に起こった不思議な出来事。語られる彼らの出会いと、交換日記を通じて交わされる時を超えた透子とのやりとり。未来を知っているからこそ何とか変えたい成吾と、その時を後悔しないように精一杯生きたい透子の交流はもどかしく切なかったですが、精一杯真摯に向き合った二人のやりとりは心に響きました。

 

以上です。気になる本があったらぜひ手にとって読んでみてください。