読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2018年下半期注目のオススメ単行本24選

本が読み進められなかったせいで下半期企画が思ったよりも進まなくて、年間まとめの方が先に出てしまいましたが、下半期注目のオススメ企画第四弾単行本編です。本当は積読にある単行本をもう少し読んでから記事を作りたかったのですが、時間切れでここまででまとめることにしました。上半期版とあわせて参考になれば幸いです。

 

 上半期版はこちら↓

 

【 2018年下半期注目のオススメ単行本24選】

1.探偵は教室にいない

探偵は教室にいない

探偵は教室にいない

 

 北海道の中学校に通う14歳の海砂真史を主人公に、英奈、総士、京介ら同級生たちとの日々の中で生まれるちょっとした謎を、真史のちょっと変わった幼馴染・鳥飼歩が解き明かしてゆく連作短編集。差出人不明のラブレター、ピアノに対する京介の複雑な想い、総士が隠していた真相、そして真史の家出と四つの物語が収録されていて、登場人物たちの周囲に対して素直になれない繊細な心情を巧みに描きつつ、相談された謎を解き明かしてゆく一見無頓着な探偵役・歩が見せる細やかな心遣いがなかなか効いていました。この作品の続編をまた読みたいです。

2.青少年のための小説入門

青少年のための小説入門 (単行本)

青少年のための小説入門 (単行本)

 

中学2年だった一真が万引きを強要された現場でヤンキーの登と出会い、幼い頃から自由に読み書きができなかった彼と共に小説家を目指す青春小説。文字を読むのには苦労する登が一真に小説の朗読をしてもらって、彼が頭の中に湧き出すストーリーを一真が小説にする日々。そして一真が出会った少女・かすみとのほのかな恋。二人で多くの印象的な作品を読みながらコンビで小説家を目指すべく試行錯誤を続ける二人が、作家になってから少しずつ歯車が狂ってゆく展開はもどかしくて、けれどそんな彼らのままならない青春にはぐっと来るものがありました。

3.風に恋う

風に恋う

風に恋う

 

 かつての栄光は見る影もなくなってしまっていた名門高校吹奏楽部。そこへ黄金時代の部長だった不破瑛太郎がコーチとして戻ってきて、入部したばかりの一年生の基を部長に任命する青春小説。幼馴染の部長・玲於奈の誘いにも入部に乗り気でなかった基を変えた瑛太郎の存在。部長としてひとりの演奏者として苦悩しながらもひたむきな想いでのめり込んでいく基。複雑な想いが入り交じる部員それぞれの葛藤に、自身もまた悩みを抱える瑛太郎も迷いながらもしっかり向き合って、全国大会目指して一丸となってゆく展開にはぐっと来るものがありました。

4.歪んだ波紋

歪んだ波紋

歪んだ波紋

 

新聞、テレビ、週刊誌、ネットメディアの「誤報」をテーマに、それが生み出される過程や、直面したり振り回される人たちの複雑な想い、それらがもたらした結末が描かる連作短編集。意図せずとも誤報に繋がってしまう構図や、誤報によって人生が歪められたり不安に怯えるようになったり、誤報を弾劾する側の人間もまた一歩間違えばフェイクニュースを掴まされ、容易に糾弾される側に回ってしまう構図に今のマスメディアの難しさと怖さがあって、報じる側の姿勢が問われると同時に、受け取る側にもまた判断が難しい時代になりつつあると痛感しました。

5.ひとつむぎの手

ひとつむぎの手

ひとつむぎの手

 

心臓外科医を目指し大学病院で過酷な勤務に耐えている平良祐介が、医局の最高権力者・赤石教授に見返りの代わりに三人の研修医の指導を指示され、さらに医局内の権力争いに巻き込まれてゆく物語。最初は無難に指導しようとした平良が直面する研修医たちの不信感、そして赤石が論文データを捏造したと告発する怪文書事件。けれど平良の患者と真摯に向き合う姿勢は変わらなくて、多くの人たちの命を救ってきたんですよね。ほろ苦い現実にも直面しましたが、見る人はよく見ていて正しく評価されていたことが分かる結末にはグッと来るものがありました。

関連作品:「祈りのカルテ

6.向日葵のある台所

向日葵のある台所

向日葵のある台所

 

 シングルマザーで中学二年の娘・葵を育ててきた美術館に勤める学芸員・麻有子。極力関わらないようにしていた根深い遺恨がある母が倒れ、その母と突然同居することになってしまう物語。これまで散々母に甘えながらも、いざとなると妹の麻有子に押し付けようとする姉・鈴子。すれ違いばかりだった過去のわだかまりはあまりも重くて、そう簡単には解消できないよなあと感じましたが、それでも母に様々なことを思い起こさせる自分と娘の関係の積み重ねがあって、不器用なりにお互い少しずつ向き合えるようになってゆく結末には救われる思いがしました。

7.君の話

君の話

君の話

 

記憶改変技術「義憶」が普及した世界。二十歳の夏、天谷千尋が一度も出会ったことのない、存在しないはずの幼馴染・夏凪灯火と再会し動き出す物語。何もない過去を消したかったはずが、植え付けられたたった一人の幼馴染の鮮明な記憶。あまりにも運命的な再会から突如目の前に現れた灯花の存在を疑いながらも、どうしようもなく惹かれてゆく千尋。そこにはもうひとつの物語があって、不器用でお互い遠回りせざるをえなかった二人がきちんと向き合って、儚く切ないけれど優しさが感じられる物語の結末に著者さんらしさがよく出ていると思いました。

8.忘られのリメメント

忘られのリメメント

忘られのリメメント

 

擬憶素子「MEM」を額に張るだけで、他者の記憶を擬憶体験できるようになった近未来。「憶え手」である歌手・宵野深菜が、リギウス社CEOの迫間影巌から脱法MEMの調査を依頼されるSFサスペンス。調べてゆく上で浮かび上がる深菜の生い立ちに深く関わる稀代の殺人鬼・朝来野と模倣犯の存在、そして殺されてしまった同居人・三崎真白。記憶を追体験できるという技術を物語のベースに据え、虚実織り交ぜた体験をしながら朝来野の行方を追ううちに特異だった自らのありようとも向き合い、しっかりと決着をつける展開はなかなか良かったですね。

9.世界の終わりと始まりの不完全な処遇

世界の終わりと始まりの不完全な処遇

世界の終わりと始まりの不完全な処遇

 

九年前一度会ったきりの美しい少女を想い続ける大学生の花村遠野。大学にほど近い住宅街で吸血種の仕業とも噂される惨殺事件が発生し、サークル仲間と現場を訪れた遠野が記憶の中の美しい少女にそっくりな姉妹と出会う物語。運命的な再会を果たした少女と繋がりを持ち続けるため、警戒されない言葉や距離感を慎重に選びつつ事件解決に協力を持ちかける遠野。思わぬ方向に向かう事件にもブレない彼には感心しましたが、迎えた皮肉な結末は…本人的に結果オーライとはいえなかなか重いものを背負いましたね。そんな彼らの今後をまた読んでみたいです。

10.「はじめまして」を3000回

「はじめまして」を3000回

「はじめまして」を3000回

 

プログラミングに没頭する高校生・北原恭介。夢に見た予知が外れると不幸が訪れるという人気者の同級生・佑那から告白をされ、そんな彼女に振り回されるようになってゆく青春小説。印象的な出会いから「私と付き合わないとずばり死んじゃう」と告げて、予知夢だという内容を恭介と二人で再現してゆく佑那。最初懐疑だった恭介の想いが徐々に変化する中で直面する急展開と、明かされてゆく彼女の秘密と覚悟は切なくて、彼女の想いを噛みしめるようなタイトルでしたが、諦めなかった恭介がもたらした一つの結末に著者さんらしさがよく出ていました。

11.永遠についての証明

永遠についての証明

永遠についての証明

 

特別推薦生として協和大学の数学科にやってきた瞭司と熊沢、そして佐那。眩いばかりの数学的才能で周囲の人生を変えていった瞭司の運命の出会いと失意、彼の遺した研究ノートから熊沢がその想いに再び向き合う物語。仲間と得た成果に希望を見出す瞭司と、突出した成果がそれぞれが別の道を選ぶきっかけとなってしまう皮肉。瞭司と仲間たちのすれ違いは残念でしたが、彼が遺した研究ノートに見出した可能性が、形は変わっても失われていなかったそれぞれの想いを再び繋げていって、それが新たな希望を紡いでゆく展開にはぐっと来るものがありました。

12.ひゃっか! 全国高校生花いけバトル

ひゃっか!  全国高校生花いけバトル

ひゃっか! 全国高校生花いけバトル

 

 「花いけバトル」決勝を見て出場が目標になった都内の高校二年生・大塚春乃が、転校生のパートナー山城貴音と出会う青春小説。二人一組での出場が義務の花いけバトルに、春乃の勉強を教えてもらう代わりに協力することになった大衆演劇座長の息子・貴音。人集めや練習用の花を用意するところからして大変なんだなと思いつつ読んでいましたが、逆境にも支えてくれる春乃の友人や家族、貴音の家族同然の仕事仲間たちもいて、乗り越えた二人が挑んだ大会にはライバルの存在やほのかな恋模様もあったりで、読みやすく熱い展開はなかなか良かったですね。

13.青い春を数えて

青い春を数えて

青い春を数えて

 

 数えても数えきれない複雑な思い。葛藤を抱える少女たちの逡巡とそれを乗り越えてゆく姿が描かれる5つの連作短編集。親友に対する複雑な想い、ズルイと思われたくないでも損したくない心境、天真爛漫な姉に対する器用貧乏な妹のコンプレックス、メガネにこだわる少女の心境を言い当てた電車の中での出会い、そして優等生が噂の不良少女に振り回されて気づいたこと。登場人物たちがゆるく繋がるひとつの世界観の物語で、繊細で複雑な想いをずっと抱えていた少女たちがきっかけを得てそれを乗り越え、新たな一歩を踏み出す姿はとても心に響きました。

14.夏空白花

夏空白花

夏空白花

 

昨日までの正義が否定され誰もが呆然とした終戦。未来を担う若者のために、戦争で失われた「高校野球大会」を復活させなければいけないと奔走する人々が描かれる物語。戦後の混乱期、GHQ占領下で思うようにままならない状況の中の中で始まった高校野球大会復活の動き。何のために復活させようとするのか、中心となって奔走する神住の複雑な想いや周囲の人たちの様々な想いも綴りながら、容易でない状況でも諦めない彼の熱意から意外な縁も繋がっていって、思わぬところから活路を見出し繋げてゆくてゆく熱い展開にはぐっと来るものがありました。

15.夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)

夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)

夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア)

 

単なる自作自演の家出か悪ふざけと思われた子供たちの連続失踪事件。その真相を追う雑誌編集の猿渡と記者の佐々木が事件を調べるうちに、地域を巡る複雑な因縁と過去の事件との思わぬ繋がりが明らかになってゆくミステリ。失踪を画策する団地内の子たちと傘外の子たちの因縁、火災によって意識不明の子を出してしまったキャンプの事件。複雑に絡み合う事情に加えて子どもたちの真摯な願いから引き起こされた事件の意味合いは、真相が明らかになるたびにどんどん様相を変えていきましたけど、希望の光を垣間見せてくれた結末には救われる思いでした。

16.ドアを開けたら

ドアを開けたら

ドアを開けたら

 

借りた雑誌を返すため隣人の老人・串本を訪ねたところ、事切れている彼を発見しながら逃げ出してしまった鶴川。そんな姿を高校生・佐々木紘人に撮影され、最悪の五日間の幕が開くミステリ。翌朝、通報する覚悟を決めた佑作が紘人とともに部屋を訪れると消えていた遺体。高校生と五十四歳の一人暮らしという少し変わった組み合わせで調べてゆくうちに明らかになってゆく串本の不穏な噂と、徐々に判明してゆく意外な事実。様々な思惑が複雑に絡み合った事件の真相は思わぬ結末に繋がりましたけど、回復された名誉と残された絆はなかなか良かったです。

17.ただし、無音に限り (ミステリ・フロンティア)

ただし、無音に限り (ミステリ・フロンティア)

ただし、無音に限り (ミステリ・フロンティア)

 

探偵事務所を開いたけれど依頼は大抵浮気調査。密かに霊の記憶を読み取る能力を持つ探偵・春近が、能力の不自由さに振り回されつつも友人の弁護士の仲介で心霊絡みの事件を解決してゆくミステリ。遺産相続を巡る孫に感じた違和感を巡る調査と、行方不明になっていた倒産会社社長の行方を追う2つの中編という構成。自分が見える幽霊が体験した情景を断片的に知ることができる何とも中途半端な能力で真相を追う展開で、その結末はほろ苦いけれどそれだけに終わらない読後感があって、意外な助手候補も現れて今後のシリーズ化を期待したい作品ですね。

18.星空の16進数

星空の16進数

星空の16進数

 

高校を中退しウェブデザイナーとして働く17歳の藍葉。ある日、謝罪の100万円を渡すよう依頼された私立探偵・みどりが現れ、心当たりが6歳の頃の誘拐事件しかない藍葉がみどりに当時の誘拐犯・朱里の捜索を依頼する青春ミステリ。仕事で燻っていた状況からの転機に直面する藍葉、そしてみどりが追う朱里の行方とその過去。みどりにはみどりの事情があって、過去を追う過程で明らかになる事件の真相には複雑な気持ちでしたが、一方でもたらされた変化は今の藍葉に繋がっていて、色を通じて語られる繊細な藍葉の心境の変化がとても印象的でした。

19.祭火小夜の後悔

祭火小夜の後悔

祭火小夜の後悔

 

怪異現象に詳しい女子高校生・祭火小夜と、彼女に出会ったひとたちのある夏の連作短編集。床板をひっくり返す謎の存在を目撃する教師・坂口、巨大なムカデのようなものに憑かれて悩む少年、幼い頃に「しげとら」と取引をした少女たちと謎めいた小夜が出会い、彼女のアドバイスで彼らが救われてゆく展開で、消えない後悔を抱える小夜の事情が徐々に明らかになってゆく中、それらの出会いが彼女に心境の変化をもたらしていて、それを読みやすい文章で坂口の悔恨も踏まえて結末へと導いてゆく展開はなかなか良かったです。今後に期待の作家さんですね。

20.鵜頭川村事件

鵜頭川村事件

鵜頭川村事件

 

一九七九年夏。亡き妻・節子の田舎である鵜頭川村へ、三年ぶりに墓参りにやってきた岩森明と娘の愛子。突如、山間の村は豪雨に見舞われ閉じ込められる中で一人の若者の死体が発見され、閉塞した状況で蓄積していた鬱屈が狂気に繋がってゆく物語。村の有力者・矢萩家への鬱屈した想いと、外部と遮断された状況でうやむやにされた犯人探し。大人たちに不信を隠せない若者たちに対する扇動が暴走に繋がってゆくまでの描写には、追い詰められた人の危うさが生々しく描かれていて、ギリギリの状況で何とか娘を守ろうと奔走する岩森がとても印象的でした。

21.この恋は世界でいちばん美しい雨

この恋は世界でいちばん美しい雨 (単行本)

この恋は世界でいちばん美しい雨 (単行本)

 

鎌倉の海辺の街で愛にあふれた同棲生活を送る駆け出しの建築家・誠とカフェで働く日菜。ある雨の日にバイク事故で瀕死の重傷を負ってしまった二人が、二人合わせて二十年の余命を授かり、お互いの命を奪い合う苛酷で切ない日々の物語。幸せを感じたら相手の命を奪ってしまい、悲しむと命を与えてしまう生活に、余裕を失い険悪になってゆく二人。あまりにも過酷な奇跡でしたけど、それでも根底には相手に幸せになって欲しい真摯な気持ちがあって、それぞれの決断には切なさを感じつつも、そんな中でも精一杯生きた二人らしい結末だったと思いました。

22.猫町くんと猫と黒猫

猫町くんと猫と黒猫

猫町くんと猫と黒猫

 

 猫町夫妻に助けられた人間に化けられるという特技を持つ光太郎。猫ゆえの成長の早さで、二歳半ながら高校に通っている彼が密かに同級生の井浦さんに恋心を抱く青春小説。ちょっと変わった猫たちにも理解がある広島・尾道を舞台とした世界観で、転校生の化け猫たちに絡まれたりしながらも、困っている友人のために奔走したり、片想いの相手・井浦さんとの不器用な距離感や甘酸っぱいやりとりだったり、そんな悩み多き青春を精一杯生きる光太郎のありようと、そんな彼の想いにきちんと向き合って応えてくれる井浦さんの関係がなかなか良かったですね。

23.未来職安

未来職安

未来職安

 

国民が99%の働かない消費者と、働く1%のエリート生産者に分類された平成よりちょっと先の未来。運悪く県庁勤めを退職しなければならなくなった目黒が、少し変わった大塚を所長とする職安に転職し、仕事を求めて訪れる様々な人々と出会う近未来小説。財源的な部分をどう解決するのかは気になりましたが、仕事が機械に置き換えられてゆく中であえて人がする仕事とは何か?確かにそんな状況になったら消費者と生産者との間の微妙な距離感とか、仕事に対する本末転倒的な発想とか、いかにも起こりそうな興味深いエピソードがなかなか良かったです。

24.そいねドリーマー

そいねドリーマー

そいねドリーマー

 

不眠症により眠ることができない女子高生・帆影沙耶が出会ったどんな相手でも眠らせられる金春ひつじ。先輩の藍染蘭に適性を見出された沙耶が〈スリープウォーカー〉として人の精神に取り憑く睡獣と戦う添い寝ドリームSFノベル。4人の仲間と睡獣狩りすすめていたはずが、いつの間にか暗雲漂うようになってゆく展開は、夢の中では恋人なのに現実ではぎくしゃくしているひつじとの眠れない/眠らせてしまう二人の不器用な関係性がポイントになっていて、ふわっとした雰囲気の物語はまさにそれを描くために作られたということなんでしょうね(苦笑)

 

思っていた以上にギリギリになってしまいましたが、何とか今年も下半期企画を全て年内に更新できました。 当サイトを訪れてくださってありがとうございます。来年も引き続きいろいろ企画を作っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。