読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2018年おすすめ本40冊(ライトノベル20冊/一般文芸・文庫・ライト文芸20冊)

年末最終日になりましたが、単行本オススメを書くまでに読んでおきたい本がまだ読み終わりません(苦笑)というわけで年末企画を先に作ってしまうことにしました。今回もだいぶ選ぶのに悩みましたが、 ライトノベル部門20冊、一般文芸・文庫本20冊ということで作りました。ご参考になれば幸いです。

 

ライトノベル部門20選】

1.三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

 

過去の苦い経験から「偽りの自分」を演じてしまう高校生・矢野四季が、印象的な出会いを果たした物静かな転校生・水瀬秋玻に惹かれ、彼女ともうひとりの人格・春珂を支えるようになってゆく不思議な恋物語。しっかりものの秋玻と対照的な危なっかしい印象の春珂。状況的に春珂をフォローすることが多い四季と二人を見つめる秋玻の繊細な距離感がまた絶妙で、大切な存在なのにすれ違ってしまうやるせなさだったり、ごまかさずにきちんと想いをぶつけてゆく彼らの青春がとても良かったですね。終盤は挿絵の使い方も効いていて続巻が楽しみです。現在2巻まで刊行。

2.彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

彼女のL ~嘘つきたちの攻防戦~ (ファミ通文庫)

 

嘘がわかる特異体質を持つ遠藤正樹。そんな彼が気になる決して嘘をつかない川端小百合と常に振りまく学校のアイドル佐倉成美、死んだ共通の友人を巡る願いと嘘と恋が交錯する青春ミステリ。「彼女は殺された」という川端と「彼女を追い詰めたのは私」とうそぶく佐倉。ともに過ごす時間が増えてゆく中で正樹にだけ見せる彼女たちの素顔と、正樹と父親の関係。新事実が明らかになってゆくたびにガラリと変わってゆく構図。彼女たちがついた嘘は切なくも優しくて、真実に向き合ったからこそ見えたその想いとはっとするような結末はとても印象的でした。

3.キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

キミの忘れかたを教えて (角川スニーカー文庫)

 

余命半年を宣告されて大学を中退し実家でニートと成り果てた松本修。昔からの悪友・トミさんの誘いで母校の中学校を訪れた修が、かつて突き放した因縁の幼馴染・桐山鞘音と再会する青春小説。人生に絶望して投げやりな日々を送る修の後悔と、シンガーソングライターとして不調に陥り戻ってきた鞘音の覚悟。トミさんを介して昔のような不器用な二人の交流が再開して、鞘音と最後の共演のために覚悟を決めて自らを追い込んでゆく修。その過程で取り戻してゆくお互いの大切な想いと、彼らの決意がもたらしたエピローグにはぐっと来るものがありました。19年2月に2巻刊行予定。

4.ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

 

5年片想いした上司の後藤さんにバッサリ振られたサラリーマンの吉田。ヤケ酒の帰り道に路上で家出女子高生・沙優を発見し、なし崩し的に同居生活が始まる日常ラブコメディ。自分を大切にしないことを叱る吉田の優しさに戸惑う沙優と、彼女の存在が自分の中で少しずつ大きくなってゆくことを自覚する吉田。そんな何事にも真摯に向き合う彼の変化が気になる後藤さんと後輩の三島柚葉。周囲に振り回されてはいても根幹はブレない、相手を大切にしようとする吉田のありようが素敵で、何とも複雑な関係ですが今後の展開がとても楽しみなシリーズですね。現在三巻まで刊行。

5.ファイフステル・サーガ (ファンタジア文庫)

古の魔王が再臨する絶望の未来を変えるため「アレンヘムの聖女」セシリアと婚約し、傭兵団「狂嗤の団」団長となる道を選んだカレル。聖女の加護を受け死の未来を回避する英雄として奮闘するファンタジー戦記。二年後の魔王再臨を限られた人しか知らない中で、代替わりした王国や戦争を仕掛けてきた自治領相手にどう立ち回るのか。腕が立って商才があり現実的な手段を積み重ねるカレルだけでなく、ヒロインのセシリアや仲間たち、王国の登場人物たちもまた魅力的なキャラが多くて、ここから物語がどう動くのか続巻がとても楽しみな新シリーズですね。

6.ピンポンラバー (ガガガ文庫)

ピンポンラバー (ガガガ文庫)

ピンポンラバー (ガガガ文庫)

 

日本全国から集まった卓球エリートがひしめく私立卓越学園。そこにかつて天才卓球少年と呼ばれた飛鳥翔星が入学し、完敗した一年生最強の女子・白鳳院瑠璃と組んで、その姉で自らの因縁の相手でもある学園最強の女子・紅亜に挑む青春小説。膝の重症を乗り越えかつて対戦した少女を探していた翔星と、紅亜を負かすことに執念を燃やす瑠璃の共闘関係。衝突しつつも勝ちたい一心でのめり込んでいく、身を焦がすほどに卓球を愛する二人が挑む熱い勝負はこれまで積み重ねてきた想いもカタルシスに繋がっていて、そんな物語の結末もまた効いていました。現在二巻まで刊行。

7.公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)

 

昔からの幼馴染、瀬川エリカと吾妻千里。そんな二人とその友人たちを中心とした公園でのやりとりや日常が描かれる青春小説。お隣さんな二人の家の近くの公園で繰り広げられる仲間とダベったり野球をしたり、走り回ったり少し喧嘩したりのありふれた日常。でもそんな中にも幼馴染の二人が積み重ねてきた様々なことや、傍から見たら何で付き合っていないの?とついちょっかいを出したくなる二人の確かな絆があって、それでいて相手の知らないことに遭遇すると思わず動揺してしまう関係が微笑ましくて、何かじわじわとこみ上げてくるものがありました。

8.天才王子の赤字国家再生術~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)

病床の国王に代わり摂政として弱小国家を背負うことになった若き王子ウェイン。文武に秀で臣下からの信頼も厚い彼が、絶望的な状況から密かに売国を志す弱小国家運営譚。状況を正しく認識して先を見通せるからこそ絶望を感じるウェイン。上手く終わらせるための手を打つのに、それがなぜか効果的な一手に繋がる皮肉な状況の変化や展開の連続でしたけど、ウェインが彼なりに最善へ真摯に取り組んだ結果だからこそ納得感がありました。補佐官のニニムに対する想いも気になる彼にいつか心境の変化はあるのか、どこまでやれるのか続巻が楽しみですね。現在二巻まで刊行。

9.ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

ゴスロリ卓球 (電撃文庫)

 

突然失踪した卓球部のエースで幼馴染の羽麗。父親の抱える8000万の借金返済のため彼女が裏賭場で戦うことを知った坂井修が、幼馴染を救うため共に命賭けの無謀なギャンブルに挑む物語。ゴスロリ卓球は一見微笑ましいのにレバレッジの変動で勝負と獲得金額が一致しないヤバイ闇卓球で、一歩間違えば奈落の底という緊張感のある状況でしたけど、卓球以外は残念美少女の羽麗とお世話係と化していた修の距離感や、お互いが傍らにいたらどんな境遇でも信じて頑張れると思えてしまう幸せそうな二人の関係にはぐっと来るものがありました。現在2巻まで刊行。

10.七つの魔剣が支配する (電撃文庫)

名門キンバリー魔法学校に入学したオリバーが運命的な出会いを果たしたサムライ少女・ナナオ。魔法生物のパレードから始まるトラブルの連続に巻き込まれつつ出会った仲間たちと乗り越えてゆく学園ファンタジー。器用に魔法を応用しながら使いこなすオリバーと剣に突出した力を持つナナオを中心に、それぞれの想いを抱えながら入学した仲間たちと力を合わせ、危機的状況の連続を乗り越えて絆を育んでゆく展開がなかなか良かったからこそ、深い因縁を感じさせるエピローグが今後の波乱を予感させて、ここからどうなるのか楽しみな新シリーズですね。

11.それでも異能兵器はラブコメがしたい (角川スニーカー文庫)

「異能兵器」が趨勢を左右する世界。転校した初恋の女の子・市ヶ谷すずに再会した辰巳千樫が、引っ込み思案な夢見る彼女が抱える秘密に巻き込まれてゆくラブコメディ。テロに襲われすずの圧倒的な力を知る一方、瀕死の重傷から助けてもらった代償に交換条件を突きつけられた千樫。それでも中国やロシアの驚異的な異能兵器相手だろうが、すずは彼にとって守りたい女の子で、どこまでも献身的な奔走の先にあった噛みしめるような幕切れはあまりにも切なかったです。でもこれで終わりじゃないですよね?諦めない千樫たちの物語を最後まで読みたいです。

12.常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

常敗将軍、また敗れる (HJ文庫)

 

 大国ザルツボルクの侵攻を受けたヘイミナル王国が存亡の危機を救う切り札として起用された傭兵・『常敗将軍』のドゥ・ダーカス。王弟や王の娘など様々な思惑が入り乱れる中、圧倒的不利な状況に立ち向かうファンタジー戦記。全幅の信頼を得られず思うように動けない中、要所要所の危機で最悪の状況を回避すべく動くダーカスの奮闘ぶりと、彼が見出そうとした決着の落とし所とその結末。テンポ良い展開に彼を見極めようとするティナや姫将軍・シャルナといった魅力的なキャラクターたちもよく動いて、これは続巻が楽しみな期待大の新シリーズです。現在二巻まで刊行。

13.継母の連れ子が元カノだった (角川スニーカー文庫)

ぼっちで昼休みに勉強ばかりしているガリ勉の一条純が、いかにもギャル風で噂も多い橘かれんに勉強を教えてほしいと請われ、そこからいろいろ変わってゆく青春ラブコメディ。ぐいぐい来るかれんに何で自分がと思ううちに教室でも話しかけられるようになって、クラスでの立ち位置も変わってゆく一条。最初は戸惑いながらもちゃんと向き合うようになってゆく彼は面倒見のいいやつで、見た目があれなかれんもまた真っすぐで応援したくなる二人ですね。かれんを意識するようになってツンデレ気味だった一条が陥落する日も近い?ということで続刊に期待。

13.君死にたもう流星群 (MF文庫J)

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

君死にたもう流星群 (MF文庫J)

 

ほぼ全ての人工衛星が落下した大流星群から三年。たった一人の犠牲者・天野河星乃を救うため、全てを諦めかけていた平野大地が希望を見出し運命に抗う物語。宇宙飛行士だった両親の夢を追いかけていた星乃。コスパ重視だった人生も彼女を失いやる気をなくしていた大地。希望を見出すものの思うようにうまく行かなくて、それでも大切なものを取り戻すという熱い決意を胸に、危機になりふり構わず奔走して、醒めていた大地自身もまた変わってゆく展開はテンポも良くて、変化したことがこれからどう影響していくのか、非常に楽しみな新シリーズですね。現在二巻まで刊行。

14.僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

僕は何度も生まれ変わる (角川スニーカー文庫)

 

29歳で死んだ社畜が生まれ変わるたびに、18歳で漆黒の髪・赤い眼の帝国皇女に殺される運命。5回目の人生で傭兵暮らしをしていたロワが魔王の隠し子とされ、急転する運命に巻き込まれてゆく物語。容赦なく蹂躙し続ける帝国への対抗で送り込まれた先での王女との結婚と母国滅亡。またもや対峙することになるあの女に、醒めていたロワが大切の人たちを守るため泥臭く奔走するようになり、キーマンとなっていったロワと負けられない皇女・リンゼンカが再び対峙する濃厚な展開とその結末は著者さんらしさに溢れていて、ぐっと来るものがありました。

15.君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)

君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫)
 

数百年続いた「帝国」と「王国」の戦争。その終戦記念日の慰霊祭で皇帝と国王を殺した「災厄の魔女」アンナ・マリアが世界を敵に回して戦うファンタジー。交互に語られる過去と現在、アニーとユージーンの運命的な出会いとその関係、そしてアニーの弟分・アローンとの邂逅による関係の変化。過去が明らかになってゆくたびに見えているものの印象がガラリと変わっていって、因縁に決着をつけた結末にすら皮肉な事実が提示されてしまう展開に思わず唸らされました。そうだったのか…毎回違うジャンルの作品描くのにそのインパクトは相変わらずですね。

16.女衒屋グエン (星海社FICTIONS)

女衒屋グエン (星海社FICTIONS)

女衒屋グエン (星海社FICTIONS)

 

とある花街のとある一角。妓館『太白楼』を舞台に春をひさいで生きている妓女たちそれぞれの人生と、都から届いた一通の文が妓館の運命を揺るがしていく物語。ワケありの冴えない女買いの男・虞淵と下働きの醜い少女・翡を物語の軸に据えて、旦那に売られた女や、兄が科挙を受ける学費のために売られた少女たちのこれまでの人生と葛藤が描かれていて、たくましく生きてきた矜持を失わない彼女たちのありようと、これまでの流れを踏まえて虞淵と複雑な過去に繋がってゆく最後の展開にはぐっと来るものがありますね。一琳のその後の話も印象的でした。

17.スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

 

同級生の八坂幸喜真に触発された女装男子の天野翔が、彼のプロデュースで女装に目覚めたメアリーと共に女装アイドルを目指す青春小説。病院にいる「あの子」のために女装アイドルを目指すことになった天野翔視点と、丸井宴花との出会いから人生が変わってゆく広瀬怜視点の二つの物語が交錯する展開はぐいぐい読ませるだけの勢いがあって、物語を牽引する目をそらせない八坂の圧倒的な存在感と、「あの子」への献身的で不器用な熱い思いがその心を揺さぶって、伏線を回収して収束してゆく物語が見せてくれたその結末にはぐっと来るものがありました。

18.優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

優雅な歌声が最高の復讐である (電撃文庫)

 

怪我でサッカーを辞めて灰色の高校生活を送る隼人と、歌姫として学校で注目される瑠子。近寄り難い存在だったはずなのに、ふとした繋がりからお互い意識するようになってゆくボーイミーツガール。周囲に上手く溶け込めない瑠子をさりげなくフォローする隼人と、そんな彼への評価が変わってゆく瑠子。お互い消化しきれない葛藤を抱えていて、強気なのに不器用で繊細な瑠子との出会いから隼人も少しずつ変化して、もがきながらも一緒に乗り越えようとする二人の関係と、強く心に訴えかけてくる熱い想いはとても真っ直ぐでぐっと来るものがありました。

19.オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

オミサワさんは次元がちがう (ファミ通文庫)

 

無表情・無感情で人と関わろうとせず、そこかしこに絵を書き散らす芸術科の天才・小海澤有紗。変人扱いの彼女を気にかける雪斗が関わってゆくうちに、彼女が抱える秘密に巻き込まれてゆく青春小説。コミュ障なオミサワさんと些細なやり取りを重ね交流を深めてゆく地道な努力が微笑ましくて、文字通り次元が違う秘密を知っても彼女を理解し共にあろうとする雪斗。大切だからこそ苦悩するオミサワさんでしたけど、彼女の想いを垣間見た雪斗と相変わらず難しい境遇でも確実に変わりつつある彼女が迎えた素敵な結末には、ついニヤニヤしてしまいました。

20.青春失格男と、ビタースイートキャット。 (ファンタジア文庫)

桜の木から落ちてきた宮村花恋と運命的な出会いを果たした野田進。なのにそんな幸せを実感できない彼の前に、エキセントリックな孤高の天才児・西條理々が現れる青春小説。進を青春不感症と指摘し、楽園追放計画に誘う西條との恋心とは呼べない背徳的な関係。一方で真っ直ぐないい子だとは思うものの、なぜか心動かない花恋との関係。不器用にしか生きられない彼らの最低の選択が皮肉にもその心境に変化をもたらしたりで、これから三人の関係がどのように変わってゆくのか、読む人を選びそうな作品ですが自分はその結末を読んでみたいと思いました。

 

 

【一般文芸・文庫・ライト文芸20選】

1.私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

 

突如失踪した人気小説家・遥川悠真。調査を進めるうちに彼の小説を愛した少女・幕居梓の存在が明らかになってゆく物語。追い詰められて絶望していた梓を偶然救ってくれた遥川。奇妙な共生関係を結んだ二人のささやかな癒やしと、小説を書けなくなってゆく遥川。何とかしたいという思い、魔が差した行為が二人の関係を決定的に変えていって、何とかしようとすればするほどすれ違って、垣間見えたいくつもの想い、ありえたかもしれない可能性が何とも切なかったですが、それでも真っ直ぐで不器用で優しかった二人らしい結末だったのかなと思いました。

2.後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

 

後宮奥深くにいる夜伽をしない不思議な力を持つ特別な妃「烏妃」。翡翠の耳飾りに取り憑いた女の幽霊の正体を探るべく訪れた皇帝・高峻が、その不思議な力を目の当たりにする中華風ファンタジー。辛い過去を抱え烏妃として孤独に生きようとする寿雪と、少年時代に生母を皇太后に殺され辛酸を舐めた高峻。後宮で起きる幽鬼絡みの事件を解き明かす過程で二人が関わる機会は増えていって、不器用な彼らの距離感や周囲との関係の変化はとても微笑ましくて、秘密を共有した二人がこれからどう変わってゆくのか、この続きを是非読んでみたいと思いました。現在二巻まで刊行。

3.アオハル・ポイント (メディアワークス文庫)

頭を殴られてその人を評価するポイントが頭上に見えるようになってしまった高校生・青木。それをひた隠して無難に生きてきた彼が、クラスで浮いている少女・春日と出会って変わってゆく青春小説。憧れの成瀬との関係に自信を持てずにいる一方で、好きな人と釣り合う存在になるべく変わってゆく春日に対する認識が少しずつ確実に変わってゆく青木。不安で空回りしてしまう彼らの行動は痛々しくて、それでも理不尽な目に遭う大切な人のために一生懸命で、遠回りしながらも素直に向き合えるようになった等身大な彼らのありようはとても心に響きました。

4.また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

 

小学校三年生の頃、遠い未来に時間を超えたことがある仙台の大学生・支倉爽太。未来で出会った年上の五鈴を忘れられずアルバイトに明け暮れる爽太が、過去から来た人にあったことがあるという八宮和希と出会うもうひとつの物語。前作から数年後の世界で、忘れられない人との再会を渇望する爽太と和希の出会いあって、彼と向かった采岐島で再会した面々が懐かしくて。ふとしたきっかけからたどり着いた意外な真実に、それでも覚悟を決めて向き合う爽太のひたむきな想いには心打たれるものがあって、諦めなかった彼らの今後を応援したくなりました。

関連作品:「どこよりも遠い場所にいる君へ」 (集英社オレンジ文庫)

5.名探偵誕生

名探偵誕生

名探偵誕生

 

小学生の頃から様々な冒険をしていたみーくんに不穏の影が差した時、いつも助けてくれた名探偵のお姉ちゃん。そんな千歳お姉ちゃんとの初恋とみーくんの成長を描くミステリ青春小説。ずっとみーくんに寄り添い見守ってくれていた千歳お姉ちゃんへの想いは募ってゆくのに、なかなか姉妹のような関係から抜け出せないもどかしさについ共感してしまいましたが、次々と事件を解決してきた生粋の探偵である彼女を救うため、ほろ苦い複雑な想いを乗り越えて自ら立ち上がるみーくんがとても格好良かったです。どこでまた彼らのその後を読めるといいですね。

6.君を描けば嘘になる

君を描けば嘘になる

君を描けば嘘になる

 

寝食も忘れてアトリエで感情の赴くまま創作に打ち込む毎日だった瀧本灯子が出会った、自分にはない技術を持つ南條遥都という少年の存在。お互いに認め合う二人の若き天才の喜びと絶望の物語。絵を描くこと以外の才能が壊滅的だった灯子と、そんな彼女の指針となったもう一人の天才・遥都。そんな二人のありようを影響を受けた周囲の視点からも浮き彫りにしつつ、良くも悪くも直情的な灯子に対して、断片的にしか描かれない不器用な遥都の積み重ねてきた想いが垣間見える結末は、ほんと素直じゃないなあと苦笑いしつつもとても良かったと思いました。

7.風に恋う

風に恋う

風に恋う

 

 かつての栄光は見る影もなくなってしまっていた名門高校吹奏楽部。そこへ黄金時代の部長だった不破瑛太郎がコーチとして戻ってきて、入部したばかりの一年生の基を部長に任命する青春小説。幼馴染の部長・玲於奈の誘いにも入部に乗り気でなかった基を変えた瑛太郎の存在。部長としてひとりの演奏者として苦悩しながらもひたむきな想いでのめり込んでいく基。複雑な想いが入り交じる部員それぞれの葛藤に、自身もまた悩みを抱える瑛太郎も迷いながらもしっかり向き合って、全国大会目指して一丸となってゆく展開にはぐっと来るものがありました。

8.忘られのリメメント

忘られのリメメント

忘られのリメメント

 

擬憶素子「MEM」を額に張るだけで、他者の記憶を擬憶体験できるようになった近未来。「憶え手」である歌手・宵野深菜が、リギウス社CEOの迫間影巌から脱法MEMの調査を依頼されるSFサスペンス。調べてゆく上で浮かび上がる深菜の生い立ちに深く関わる稀代の殺人鬼・朝来野と模倣犯の存在、そして殺されてしまった同居人・三崎真白。記憶を追体験できるという技術を物語のベースに据え、虚実織り交ぜた体験をしながら朝来野の行方を追ううちに特異だった自らのありようとも向き合い、しっかりと決着をつける展開はなかなか良かったですね。

9.僕と彼女の左手

僕と彼女の左手 (単行本)

僕と彼女の左手 (単行本)

 

幼い頃遭遇した事故のトラウマで、医者になる夢を前に壁にぶつかった医学生の習。そんな彼が左手一本でピアノを引く不思議な女性・さやこに出会い、共に時間を過ごすようになってゆくミステリ。教師を目指すさやこのために家庭教師として共に過ごすようになる二人。彼女にどんどん惹かれてゆき付き合うことになった習が、勉強よりもピアノに意識が向きがちな彼女のありように少しずつ感じるようになってゆく違和感。積み重ねられてゆく不安の先にあった真実は真摯な想いと共にあって、二人が出会えて本当に良かったと思えるとても素敵な物語でした。

10.あの日、恋に落ちなかった君と結婚を (メゾン文庫)

あの日、恋に落ちなかった君と結婚を (メゾン文庫)

あの日、恋に落ちなかった君と結婚を (メゾン文庫)

 

結婚を考えていた恋人に振られ、将来に不安を抱く持田麻衣。地元に帰ることを決めた麻衣が偶然高校のときのクラスメイト今井優人に再会、「恋のない結婚」を現実的に考えはじめる物語。高校時代の30歳になってもお互い独身だったら結婚しようという今井との冗談めいた約束。かつてお互いの恋を協力する関係だった二人の共同生活はしっくり来る部分もイライラする部分もあったりで、そんな二人が一つ一つ乗り越えて迎えたラストにはじんわり来るものがあって、積み重ねていったエピソードが見事に繋がってゆくとても素敵な物語だったと思いました。

11.額を紡ぐひと

額を紡ぐひと

額を紡ぐひと

 

事故で婚約者を喪った額装師・奥野夏樹。少し変わった依頼でも真摯に向き合う夏樹が、彼女の作品の持つ雰囲気に惹かれた表具額縁店の次男坊・久遠純と出会う物語。時には依頼人の想いを暴いてしまう一方で、婚約者との過去にどう向き合うべきか悩む不器用な夏樹と、掴みどころのない純との微妙な距離感。そして二人の重要な過去に繋がる池端の存在。明らかになっていったそれぞれの過去に向き合うことにはほろ苦さも伴いましたけど、そんな自分に寄り添ってくれる存在がいて、新たな一歩を踏み出す姿が描かれる結末にはぐっと来るものがありました。

12.向日葵のある台所

向日葵のある台所

向日葵のある台所

 

シングルマザーで中学二年の娘・葵を育ててきた美術館に勤める学芸員・麻有子。極力関わらないようにしていた根深い遺恨がある母が倒れ、その母と突然同居することになってしまう物語。これまで散々母に甘えながらも、いざとなると妹の麻有子に押し付けようとする姉・鈴子。すれ違いばかりだった過去のわだかまりはあまりも重くて、そう簡単には解消できないよなあと感じましたが、それでも母に様々なことを思い起こさせる自分と娘の関係の積み重ねがあって、不器用なりにお互い少しずつ向き合えるようになってゆく結末には救われる思いがしました。

13.青少年のための小説入門

青少年のための小説入門 (単行本)

青少年のための小説入門 (単行本)

 

中学2年だった一真が万引きを強要された現場でヤンキーの登と出会い、幼い頃から自由に読み書きができなかった彼と共に小説家を目指す青春小説。文字を読むのには苦労する登が一真に小説の朗読をしてもらって、彼が頭の中に湧き出すストーリーを一真が小説にする日々。そして一真が出会った少女・かすみとのほのかな恋。二人で多くの印象的な作品を読みながらコンビで小説家を目指すべく試行錯誤を続ける二人が、作家になってから少しずつ歯車が狂ってゆく展開はもどかしくて、けれどそんな彼らのままならない青春にはぐっと来るものがありました。

14.歪んだ波紋

歪んだ波紋

歪んだ波紋

 

新聞、テレビ、週刊誌、ネットメディアの「誤報」をテーマに、それが生み出される過程や、直面したり振り回される人たちの複雑な想い、それらがもたらした結末が描かる連作短編集。意図せずとも誤報に繋がってしまう構図や、誤報によって人生が歪められたり不安に怯えるようになったり、誤報を弾劾する側の人間もまた一歩間違えばフェイクニュースを掴まされ、容易に糾弾される側に回ってしまう構図に今のマスメディアの難しさと怖さがあって、報じる側の姿勢が問われると同時に、受け取る側にもまた判断が難しい時代になりつつあると痛感しました。

15.雪には雪のなりたい白さがある (創元推理文庫)

公園を舞台にした五つの転機が綴られる連作短編集。港が見える丘公園でのおじいさんとの出会い、ムーミンをきっかけに出会った二人の別離とそれぞれの再出発、石神井公園を舞台にした憧れの人との再会、航空公園を舞台とした中学三年生の冬に別れた同級生の恋人を忘れられずにいた瑞希の決意と、文庫収録の彼の視点短編。いずれも自分が行ったことがある公園で、うまくいかない状況を抱えた登場人物たちが、そこでの出会いをきっかけに新たな一歩を踏み出す展開には心に響くものがある素敵な物語でした。最後の話の後どうなったのか気になりますね。

16.プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

プラネタリウムの外側 (ハヤカワ文庫JA)

 

有機素子コンピュータによる会話プログラムの共同研究者を失い何も手につかなくなった南雲助教と、列車に轢かれて亡くなった元恋人の会話を再現しようとする学部生の佐伯衣理奈。そんな前に進めない二人が巡り合う連作短編集。会話プログラムとのやりとりを交えつつ繰り広げられる、共同研究者、契約社員、元恋人、そして南雲と衣理奈のエピソード。概念自体はやや難解でしたが、理系らしい合理思考と割り切れない情念のせめぎ合いの中で変化してゆく不器用な人間模様はとても優しくて、そんな彼らが迎えた結末はなかなか心に響くものがありました。

17.雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

 

地元の名士の生まれながら、幽霊が見えることで周囲から孤立する澤村千尋の前に現れた赤いマフラーの幽霊少女。協力してくれたクラスメイトの岩木君やリンたちと共に、記憶を失っている彼女の過去を探し始める青春ミステリー。過去のトラウマから逡巡しながらも始まった身元捜索。それぞれ苦い過去が明らかになってゆく岩木とリン、そして本家の魔王的存在・従兄の義孝。その過程で少しずつ広がって変わってゆく周囲との関係と、いろいろ過去や事実が少しずつ繋がってゆく構成はとても上手くて、切ないけれどぐっと来るものがある素敵な物語でした。

18.永遠についての証明

永遠についての証明

永遠についての証明

 

特別推薦生として協和大学の数学科にやってきた瞭司と熊沢、そして佐那。眩いばかりの数学的才能で周囲の人生を変えていった瞭司の運命の出会いと失意、彼の遺した研究ノートから熊沢がその想いに再び向き合う物語。仲間と得た成果に希望を見出す瞭司と、突出した成果がそれぞれが別の道を選ぶきっかけとなってしまう皮肉。瞭司と仲間たちのすれ違いは残念でしたが、彼が遺した研究ノートに見出した可能性が、形は変わっても失われていなかったそれぞれの想いを再び繋げていって、それが新たな希望を紡いでゆく展開にはぐっと来るものがありました。

19.完璧主義男に迫られています (富士見L文庫)

完璧主義男に迫られています (富士見L文庫)

完璧主義男に迫られています (富士見L文庫)

 

イベント会社でバリバリ働く卯月陽菜に告白したのは、営業の堅物なイケメン完璧主義男・長谷川薫。キッパリ断った陽菜が、諦めない長谷川の誠実かつ隙のないアプローチに迫られてゆくラブコメディ。好きになったものの、理想からかけ離れている陽菜を自分好みの女性にしようとする長谷川。小言は多いけれどぞっこんで誠実な長谷川の積極性に、いろいろトラブルもフォローしてくて、きちんと向き合うようになってゆく陽菜の関係がいいですね。長谷川の独占欲も可愛くて、いつの間にか甘々なカップルになっていてごちそうさまという感じでした(苦笑)

20.次回作にご期待下さい (角川文庫)

次回作にご期待下さい (角川文庫)

次回作にご期待下さい (角川文庫)

 

仕事に追われる月刊漫画誌の若き編集長で苦労人の眞坂崇とトンデモ天才漫画編集者・蒔田が、漫画バカの編集者たちや漫画に命をかける漫画家たちとともに日常のお仕事に潜む謎を解き明かしてゆくお仕事小説。落とし物をきっかけに出会ったビルの夜間警備員・夏目の謎、打ち切りに悩む漫画家とのやりとりやヘッドハンティング、そして盗作疑惑の真相など、漫画雑誌はほんと大変な仕事なんだなと実感させる一方で、それでも登場人物たちが面白い漫画を作りたいという想いからぶつかり合うなかなか熱い作品でした。現在二巻まで刊行。

 

以上です。一般部門の方は選んでみたら思ったより単行本が多くなってしまいましたが、どれもオススメの一冊です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。