読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

多彩なラインナップが魅力のオレンジ文庫39選

ライトノベルのレーベル別企画を2つほど企画しましたが、同時にライト文芸についてもレーベル別企画をやってみたいと考えていました。特にオレンジ文庫については現時点で刊行している218作品の2/3ほどを読んでいるレーベルで、やるなら第一弾としてオレンジ文庫をという構想はあったのですが、ちょうど11/12までBookWalkerでセールを開催中とのことなので急遽セレクトし企画記事を作りました。

セレクトと言いつつ39作品も選んでいるのはセレクト言えるのか?と言われそうですが、これくらい読んでいると本音を言えばもっとたくさん紹介したいくらいで、泣く泣くできるだけ削りましたがこれ以上は削れません(苦笑)セレクト記事というよりは作品ガイドとして購入検討の参考になれば幸いです。 

 

1.どこよりも遠い場所にいる君へ

どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫)

 

訳ありの過去もあり友人の幹也と采岐島のシマ高に進学した月ヶ瀬和希。そんな彼が初夏に神隠しの入江で倒れていた少女・七緒を発見するボーイミーツガール青春小説。過去からやって来た七緒と少しずつやりとりを重ねてゆく日々。何気なく過ごせていた高校生活の突然の暗転。明かされる過去の真相と、変わらず向き合ってくれる友人たちの存在、そして覚悟を決めた七緒。甘酸っぱく初々しかった出会いの結末には切なくなりましたけど、繋がって行く過去と未来、そして意外な形で届けられた真摯な思いは、かけがえのないとても素敵なものに思えました。

2.また君と出会う未来のために

また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

また君と出会う未来のために (集英社オレンジ文庫)

 

 小学校三年生の頃、遠い未来に時間を超えたことがある仙台の大学生・支倉爽太。未来で出会った年上の五鈴を忘れられずアルバイトに明け暮れる爽太が、過去から来た人にあったことがあるという八宮和希と出会うもうひとつの物語。前作から数年後の世界で、忘れられない人との再会を渇望する爽太と和希の出会いあって、彼と向かった采岐島で再会した面々が懐かしくて。ふとしたきっかけからたどり着いた意外な真実に、それでも覚悟を決めて向き合う爽太のひたむきな想いには心打たれるものがあって、諦めなかった彼らの今後を応援したくなりました。

3.鎌倉香房メモリー

鎌倉香房メモリーズ (集英社オレンジ文庫)

鎌倉香房メモリーズ (集英社オレンジ文庫)

 

人の心の動きを香りで感じる高校生・香乃が、大学生・雪弥とともにゆるりと手伝う鎌倉にある祖母が営む香り専門店『花月香房』を舞台に、やってくるお客さんや身の回りの人たちの事件を解決する物語。ミステリーとしてはあっさりめですが、うっかりな香乃をしっかり者雪弥がフォローする二人の関係は、小さい頃からお互いを大切に思う気持ちをゆっくり着実に育んでいて好感。家族への複雑な思いを抱えながら、家族や親友を大切に思う人たちを救う二人の今後が楽しめるシリーズです。全5巻。

 

4.契約結婚はじめました。 ~椿屋敷の偽夫婦~

契約結婚はじめました。 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)

契約結婚はじめました。 ~椿屋敷の偽夫婦~ (集英社オレンジ文庫)

 

椿屋敷で若くして隠居暮らしの柊一と契約結婚した香澄。町の相談役・柊一の元に近所から相談が持ち込まれるわけありな人々の物語。築六十年の椿屋敷という珍しい視点から綴られる穏やかで物事がよく見えるのになぜか人の機微には少し疎い柊一と、よく働き一緒に過ごすうちに柊一のことが気になってゆく可愛い香澄の関係。二人の穏やかな日常が周囲の関与により詮索しないはずの過去に触れ少しずつ変わってゆく展開は、二人が本当の夫婦に近づいてゆく過程をいろいろと楽しめそうですね。周りのキャラも魅力的でこれは続巻に期待大の新シリーズです。現在3巻まで刊行。

5.下鴨アンティー

下鴨アンティーク 白鳥と紫式部 (集英社オレンジ文庫)

下鴨アンティーク 白鳥と紫式部 (集英社オレンジ文庫)

 

 京都下鴨を舞台に、両親を早くに亡くし古美術商を営む兄と下宿人の慧と三人で古びた洋館に住む高校生・鹿乃と、蔵にあるアンティーク着物をめぐる不思議な物語。亡くなったお祖母ちゃんの大事にしていた着物のコレクションにまつわるお話は、ミステリーというよりはどこかファンタジーな趣でしたが、旧華族である野々宮家を舞台としたどこかおっとりとした物語に垣間見える仄かな想いや、お祖母ちゃんとお祖父ちゃんの馴れ初め話がわりと素敵なお話でした。鹿乃と似た雰囲気を持つ春野の出現で波紋を呼びそうな、慧との関係も気になるところですね。全8巻。

6.後宮の烏

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

 

後宮奥深くにいる夜伽をしない不思議な力を持つ特別な妃「烏妃」。翡翠の耳飾りに取り憑いた女の幽霊の正体を探るべく訪れた皇帝・高峻が、その不思議な力を目の当たりにする中華風ファンタジー。辛い過去を抱え烏妃として孤独に生きようとする寿雪と、少年時代に生母を皇太后に殺され辛酸を舐めた高峻。後宮で起きる幽鬼絡みの事件を解き明かす過程で二人が関わる機会は増えていって、不器用な彼らの距離感や周囲との関係の変化はとても微笑ましくて、秘密を共有した二人がこれからどう変わってゆくのか、この続きを是非読んでみたいと思いました。


7.威風堂々惡女

威風堂々惡女 (集英社オレンジ文庫)

威風堂々惡女 (集英社オレンジ文庫)

 

 その出自から瑞燕国で虐げられる尹族の少女・玉瑛。皇帝が発した「尹族国外追放」の勅命により屋敷を追われ命を失った彼女が、謀反を起こして虐げられる原因となった皇帝の愛妾・柳雪媛として目覚める中華幻想復讐譚。未来を変えるため柳雪媛として過去をやり直すことになった玉瑛と、その護衛役に任命された生真面目な若き武人・王青嘉の因縁の出会い。お互いの真意を知らずに反発し合っていたはずの二人がいつの間にか奇妙な縁で紡がれていって、二人だけにしか分からない何とも複雑な感情を育んでゆくこの主従の絆に期待したい新シリーズですね。

 

8.鍵屋甘味処改

鍵屋甘味処改 天才鍵師と野良猫少女の甘くない日常 (集英社オレンジ文庫)

鍵屋甘味処改 天才鍵師と野良猫少女の甘くない日常 (集英社オレンジ文庫)

 

冬休みに自分の出生の秘密を知って衝動的に家出した女子高生こずえが、鍵師・淀川と知り合い、年齢を偽り助手として彼の家へ居候することになる物語。居付いてしまったこずえをまるで野良猫のようなものと思っている無愛想で職人気質の淀川と、掃除やカメラ撮影といった淀川の苦手な部分を巧みにフォローして居場所を確保していくこずえの、確かに甘いとは言えない非日常。そんな野良猫に接するような二人の距離感がここからどう変わってゆくのかが楽しみなシリーズです。全5巻

9.鍵屋の隣の和菓子屋さん つつじ和菓子本舗のつれづれ

鍵屋の隣の和菓子屋さん つつじ和菓子本舗のつれづれ (集英社オレンジ文庫)

鍵屋の隣の和菓子屋さん つつじ和菓子本舗のつれづれ (集英社オレンジ文庫)

 

高校を卒業し「つつじ和菓子本舗」へ住み込み、専門学校へ通いつつ和菓子職人の修業をスタートさせた淀川多喜次。恋する男子の和菓子な日々が描かれる『鍵屋甘味処改』スピンオフ小説。看板娘・祐雨子にプロポーズするも保留され、修行でも和菓子作りに携われない多喜次のもどかしい日々。お隣のその後の様子も垣間見えたり、一歩先ゆく同年代・柴倉の出現に危機感を募らせながら、周囲で起きる和菓子絡みの事件に体当たりで挑む多喜次の頑張りを祐雨子さんも見てくれていますね。柴倉もいいライバル関係になりそうですね。現在2巻まで刊行。

 

10.宝石商リチャード氏の謎鑑定

宝石商リチャード氏の謎鑑定 (集英社オレンジ文庫)
 

酔っ払いに絡まれた美貌の敏腕宝石商・リチャードを助けた大学生中田正義が、その縁から密かに持っていた指輪の鑑別を依頼する連作短編集。リチャードの顧客や店を訪れる人々の宝石にまつわる問題を二人で解決するストーリーで、宝石を扱う仕事に誇りを持ち優れた観察眼を持つリチャードと、彼に人物を評価されてバイトに誘われ、宝石に興味を持つようになってゆく真っ直ぐな正義のコンビがとても良かったです。正義を気にかけるリチャードの想いと、正義が片思いする少し変わった谷本さんとの恋の行方がとても気になるので続編を期待しています。現在7巻まで刊行。

11.螺旋時空のラビリンス

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

 

 時間遡行機が開発された近未来。過去の美術品を盗み出す泥棒のルフが、至宝とともに19世紀のパリに逃亡した幼馴染のフォースを連れ戻すために過去へ跳ぶ物語。取り戻すまでは簡単に未来に戻れないと知ったルフがループを繰り返す覚悟を決めて試行錯誤していくうちに、不治の病に侵されながらも気丈に振舞う彼女と献身的に向き合うようになっていく姿が印象的でした。彼女が秘めていた想い、そして膨大な時間を乗り越えた二人だからこそ、あのラストシーンを迎えられて良かったです。本作がデビュー作ということで次回作にも期待の作家さんですね。

12.マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年

マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年 (集英社オレンジ文庫)

マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年 (集英社オレンジ文庫)

 

人工海上都市『キヴィタス』のアンドロイド管理局に勤める若きエリート技師エルが、仕事からの帰り道で登録情報のない野良アンドロイドの少年・ワンと出会い不思議な共同生活を始める物語。アンドロイドが貴重な労働力になっている世界で、不器用だけれどアンドロイドには真摯に向き合うエルに、訳ありなアンドロイドのワンは何だかんだ言いながらも振り回されっぱなしで、エルの事情も明らかになってゆく中、二人の関係性がワンの過去を巡る騒動と絡めつつとてもいい感じに描かれていたと思いました。もし続巻あるようならまた読んでみたいですね。


13.時をかける眼鏡

 医学生西條遊馬が母の故郷であるマーキス島に旅行した際にタイムスリップして過去の世界に飛ばされ、皇太子の父王殺害疑惑に挑む法医学ミステリー。牢に繋がれた抗弁しない皇太子、思わせぶりな態度が多い弟王子という構図の下、召喚された遊馬が医学生としての知識を活かして奔走するストーリーは、あっさりめですがテンポもよく分かりやすい展開で、長年の誤解も解消していい感じにまとまる読後感の良い物語でした。姫王子や法医学博物館も気になるところですが、現代には簡単に帰れなくなった遊馬の活躍が楽しみなシリーズです。現在7巻目まで刊行。


14.これは経費で落ちません! ~経理部の森若さん~

入社以来経理一筋、きっちりとした仕事ぶりで評価される森若沙名子27歳。過剰なものも足りないものもないことを理想とする生活を送る彼女が、社内外で次々と起こる経理絡みの問題に巻き込まれてゆく物語。特に噂好きでもなく、社内の複雑な人間関係からどこか一歩引いた位置にいる彼女。怖いと誤解されてしまうこともあるけれど、やや不器用なだけできちんと相手を気遣える優しさを持っていて、幸せになりたくないわけじゃないんですよね。実はみんなに慕われていて、そんな彼女がいいと言ってくれる同僚の存在に気づく結末はとても良かったです。現在4巻まで刊行。
関連シリーズ:風呂ソムリエ 天天コーポレーション入浴剤開発室

15.Bの戦場

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

 

物心ついた頃からブスで、結婚式に憧れ自分は無理でもそれを演出する人になろうと、ウェディングプランナーになった北條香澄。そんな彼女が絶世のブスと絶賛されやり手で絶世の美男子・久世課長に求婚される物語。これでもかと香澄のブスっぷりを真正面から突きつけられる展開は少なからずグサグサ突き刺さりましたが、さらに突き抜けている久世課長の存在感(苦笑)そういう決断しちゃうのかーとは少し思いましたが、お仕事小説としても面白かったですし、仕事に真摯に向き合う香澄の姿勢や人柄に感化されて周囲の人たちも変わってゆく過程は興味深いです。現在5巻まで刊行。

16.ゆきうさぎのお品書き

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

ゆきうさぎのお品書き 6時20分の肉じゃが (集英社オレンジ文庫)

 

 貧血で倒れた大学生の碧が、小料理屋「ゆきうさぎ」を営む青年大樹に助けられ、バイトとしてとして働くことになる物語。母を亡くして食が細くなっていた碧や大樹が女将から跡を継ぐ前は常連だった父、お向かいの洋菓子店の兄妹やお店の常連客など、周囲の身近な人たちとの相手を思いやるような交流だったり、美味しそうな料理とらしさを取り戻した大食漢・碧の食べっぷりとか、猫の武蔵も存在感があって、特に目新しさはなかったですけど、心温まるような雰囲気が読んでいてとてもいいなと思いました。現在6巻目まで刊行。

17.ブラック企業に勤めております。

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

ブラック企業に勤めております。 (集英社オレンジ文庫)

 

イラストの仕事だけでは食べていけず、夢破れて生きるために親に内緒で地元タウン誌を発行する会社の事務員として採用された夏実。その個性的な面々が集うブラック企業ぶりを描くお仕事小説。周囲の同僚がだらしない人たちで振り回されたり、仕事をスムーズに動かすために始発で行って仕事とか考えるあたりが、すでにもう重症だなと思わなくもないですけど、それはそれとして社会人として仕事をしっかりこなす夏実だからこそ周囲から信頼されるのも納得ですね。大変なことに巻き込まれましたが、林さんとの今後が気になるので続刊に期待したいところ。現在3巻まで刊行。

18.エプロン男子

エプロン男子 1 (集英社オレンジ文庫)

エプロン男子 1 (集英社オレンジ文庫)

 

激務の仕事はうまくいかず、恋人にもフラれたデザイナーの夏芽。心身ともにボロボロの彼女がイケメンシェフが自宅に来て料理を作ってくれる「エデン」を紹介される物語。やって来た海斗の作る食事と優しさに触れ立ち直るきっかけを得た夏芽が、次々と出会うメンバーたち。エデンを立ち上げた相馬と参加する男たちが抱える事情と料理に賭ける想い。それぞれのやり方で求められた人たちのために真摯に向き合う彼らの料理には癒されそうで、でも接触禁止で恋愛禁止な契約という縛りがなかなか興味深かったです。現在2巻目まで刊行。

19.法律は嘘とお金の味方です。 京都御所南、吾妻法律事務所の法廷日誌

法律は嘘とお金の味方です。 京都御所南、吾妻法律事務所の法廷日誌 (集英社オレンジ文庫)
 

敏腕だがお金に汚い弁護士・吾妻正義の孫つぐみは、嘘をついている人の顔が歪んで見える特殊能力を持つ女子高生。幼馴染の検察官・汐見草司もたびたび巻き込んで持ち込まれる案件を解決してゆく物語。相続放棄を迫られた後妻、詐欺師扱いされた投資コンサルタントDQNネームを改名したい女子高生、隣人から引っ越しを迫られる犯罪者の息子といった何とも複雑な事件に正義もまた濃い存在で、ワケありの過去を抱えた登場人物たちそれぞれの物語、そして複雑にこじれていたつぐみと草司の今後も気になりますし、またこの続きを読めたらいいですね。

20.要・調査事項です!

要・調査事項です!: ななほし銀行監査部コトリ班の困惑 (集英社オレンジ文庫)

要・調査事項です!: ななほし銀行監査部コトリ班の困惑 (集英社オレンジ文庫)

 

 顧客をクレーマー化させてしまったことを気に病み、辞職を考えていた入行一年目の小林髙。そんな彼が二年目の年度初めに支店から本部の監査部の個人取引担当―通称コトリ班へ異動するお仕事小説。外貨の偽札や通帳のトラブルといった要調査案件に、上司の矢岳に見守られつつ、きれいだが愛想のない多岐川千咲とコンビを組んで調査する構図で、関係なさそうだった事件が繋がっていって、高の着目や人間関係が事件解決のヒントになったり、少しずつ距離感も変わってきた多岐川千咲とのコンビがこれから面白くなりそうですね。これは続巻読みたいです。

21.千早あやかし派遣会社

千早あやかし派遣会社 (集英社オレンジ文庫)

千早あやかし派遣会社 (集英社オレンジ文庫)

 

 大学教授の父が研究にお金を費やすため超貧乏暮らしな女子大生の由莉が、好待遇過ぎる求人に飛びついてあやかしのための人材派遣会社で奮闘する物語。美しく金持ちだけどやや性格の悪い社長千早と、貧乏だけど真っ直ぐでたくましい庶民派な由莉。感覚が違い過ぎて最初は衝突していた二人が、お互いを知るうちに認め合うようになる関係がいいですね。弁天様が井の頭公園で「リア充なんて爆発すればいいのですわ」とか呪っているのはツボに入りました(苦笑)のんびりと和める雰囲気はとても良かったですし、二人の今後も気になりますね。現在3巻まで刊行

 

22.異人館画廊

異人館画廊 盗まれた絵と謎を読む少女  (コバルト文庫)
 

 ※この作品は一巻目だけコバルト文庫から刊行ですが対象にはなっているようです。
英国で図像学を学び祖父の死を機に日本に戻ってきた千景。祖母が経営する画廊には一風変わった仲間たちが集い、そこに図像学の見識を見込まれ千景も巻き込まれてゆく物語。祖父が残した中途半端な遺言。再会した堅物な遠縁の京一と昔から気が合わないと感じている幼馴染の透磨、そして画廊に集まるちょっと胡散臭い仲間たち。依頼解決に巻き込まれてゆく千景が危機を救われたり失われた過去の記憶を少しだけ取り戻したりで、透磨を見る目や印象が変化してゆく描写がとても良かったですね。不器用な二人の今後がどうなってゆくのか続巻が楽しみです。現在4巻目まで刊行。

23.あなたの人生、交換します The Life Trade

あなたの人生、交換します The Life Trade (集英社オレンジ文庫)

あなたの人生、交換します The Life Trade (集英社オレンジ文庫)

 

自分の人生を交換するパーティーの招待状。その招待状を受け取った就職活動や婚活に失敗し続け、病気の母に苦労する山田尚子が、憧れていた国際的美人ピアニスト・桜庭響と人生を交換する物語。今の人生を生きる自分が不幸だと感じていた二人が、お試し期間の二週間付きの入れ替わりができると知って決断し、それぞれ経験してゆくもうひとつの人生。これまでと正反対の新鮮な生き方に刺激を受けたからこそ、見切りをつけようとしていたこれまでの人生で本当に大切だと感じていたことを自覚し、向き合っていこうとする展開はなかなか良かったですね。

24.京都伏見は水神さまのいたはるところ

京都伏見は水神さまのいたはるところ (集英社オレンジ文庫)

京都伏見は水神さまのいたはるところ (集英社オレンジ文庫)

 

 東京のめまぐるしい生活に馴染めず祖母の暮らす京都・伏見の蓮見神社に引っ越してきた女子高生のひろ。幼馴染で造り酒屋の息子・拓己にも再会した彼女に不思議な声が届くあやかし物語。拓己や以前彼女と約束を交わした白蛇「シロ」に見守られながら、少しずつ新しい生活に馴染んでゆくひろ。「水神の加護」「小野小町の恋」「桃亭の恋模様」「雷神の子」と様々なあやかし絡みの事件に関わってゆく展開に、それにひろと拓己の繊細な距離感だったり、ひろを気にかけるシロの存在もいい感じに絡んでいて、続刊あるようなら是非また読んでみたいですね。

25.ガーデン・オブ・フェアリーテイル

花や草木に触れると枯れてしまう呪われた手を持つ撫子。父の死後、19歳になった撫子は知らぬ間に自分が結婚していたことを知り、結婚相手・花織が住む新潟へ赴く幻想ミステリ。妖精に纏わる厄介事を解決している人嫌いの造園家の花織。粘り強く徐々に心を通わせてゆく中で直面する30歳になったら死ぬという花織の呪い。ふんわりとした雰囲気の中で呪いにどう向き合うかという葛藤が描かれますが、それでも真っ直ぐな撫子の想いが花織の孤独な心を揺り動かすようになってゆく展開と、そんな二人が迎えたその結末はなかなか良かったと思いました。

26.カスミとオボロ 大正百鬼夜行物語

カスミとオボロ 大正百鬼夜行物語 (集英社オレンジ文庫)

カスミとオボロ 大正百鬼夜行物語 (集英社オレンジ文庫)

 

大正時代。退屈な日常にうんざりしていた坂之上伯爵家の令嬢・香澄が、代々祀ってきた悪路王に朧という名を与えて主従関係を結んでしまい、二人で集に起こるあやかしがらみの事件を解決する物語。いいところの令嬢なはずの香澄がなかなかいい性格をしていて、そんな彼女と極悪な鬼であるはずの朧が主従関係を組むと、わりとまともに見えてしまう不思議(苦笑)確かに華族の人々を舞台にするといかにも作中の如く魑魅魍魎がうようよしてそうな感じではあります。香澄と朧の二人の関係にも複雑な因縁あるようで独特な雰囲気が魅力のシリーズです。現在2巻まで刊行。

27.とっておきのおやつ。: 5つのおやつアンソロジー

とっておきのおやつ。: 5つのおやつアンソロジー (集英社オレンジ文庫)

とっておきのおやつ。: 5つのおやつアンソロジー (集英社オレンジ文庫)

 

青木祐子「レンタルフレンド」、阿部暁子「たぬきとキツネと恋のたい焼き」、久賀理世「明日のおもひでフレンチトースト」、小湊悠貴「悪友と誓いのアラモード」、椹野道流「おじさんと俺」とおやつをテーマにオレンジ文庫でもお馴染の5人の著者が綴る短編集。いずれも最近の著作は追いかけている作家さんたちですが、読んでみるとそれぞれの著者さんらしさがあって、でも久賀理世さんの現代ものは読んだのもしかして初めてでしたかね?父がいきなり脱サラしてたいやき屋を始めてしまった娘の悲哀と出会いを描いた「たぬきとキツネと恋のたい焼き」が個人的には好きでした。

28.きょうの日はさようなら

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)

 

2025年の夏休み。双子の高校生・明日子と日々人は突然いとことの同居を父から告げられ、やって来た今日子が実は長い眠りから目覚めた三十年前の女子高生だったという物語。時代のギャップに戸惑いながら徐々に双子と打ち解けてゆく今日子の存在は、バラバラになっていた家族を繋ぐきっかけにもなって、過去との繋がりを感じるがゆえにもう取り戻せないことを痛感する彼女と、どうにもならない現実に直面した双子の対照的な選択、昔の想い人の回想がとても印象に残りました。懐かしい気持ちと切ない気持ちが入り混じる素敵なひと夏の物語ですね。

29.雪があたたかいなんていままで知らなかった

雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

 

地元の名士の生まれながら、幽霊が見えることで周囲から孤立する澤村千尋の前に現れた赤いマフラーの幽霊少女。協力してくれたクラスメイトの岩木君やリンたちと共に、記憶を失っている彼女の過去を探し始める青春ミステリー。過去のトラウマから逡巡しながらも始まった身元捜索。それぞれ苦い過去が明らかになってゆく岩木とリン、そして本家の魔王的存在・従兄の義孝。その過程で少しずつ広がって変わってゆく周囲との関係と、いろいろ過去や事実が少しずつ繋がってゆく構成はとても上手くて、切ないけれどぐっと来るものがある素敵な物語でした。

30.少女手帖

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

少女手帖 (集英社オレンジ文庫)

 

周囲に迎合しグループ内で平穏に生きていくことに全力を傾けてきた女子高生の小野ひなた。ある日、憧れの同級生結城さんに誘われグループの約束をドタキャンしたことで周囲から孤立してしまう青春小説。これまで無難に生きることに心を砕いてきたはずが、偶然結城の秘密を知り興味を抱いたことで結果的に失った自分の居場所。息苦しい狭い世界でどう生きるのかというお話でしたけど、焦燥を募らせていた彼女が姉や師匠、結城さんなど、たくさんの人と話し合い悩みながらもこれまでの自分を省みて、大切なことを見出してゆく姿はとても印象的でした。

31.今夜、2つのテレフォンの前。

今夜、2つのテレフォンの前。 (集英社オレンジ文庫)

今夜、2つのテレフォンの前。 (集英社オレンジ文庫)

 

 幼馴染・想史に思いを寄せる女子高校生・志奈子と、初恋の女性の結婚が決まったと聞き動揺する高校教師の直江。不思議な縁で電話をするようになった二人が毎晩相談の電話を積み重ねてゆく物語。いつの間にか上手く行かなかった自分と幼馴染の関係を重ね合わせて、別の高校に通うようになって口を聞いてくれない想史と志奈子の恋を応援する直江。そんな繋がりをもたらしたきっかけには苦笑いでしたけど、きちんと向き合った志奈子だけでなく、自身もまた想いを燻らせていた直江が大切な人に想いを伝えようと奔走する姿には心に響くものがありました。

32.きみを忘れないための5つの思い出

きみを忘れないための5つの思い出 (集英社オレンジ文庫)

きみを忘れないための5つの思い出 (集英社オレンジ文庫)

 

他人の記憶に極端に残りにくい体質の少女、自分に恋する人の視力が下がってしまう少女、教室から出られなくなってしまった少女、事故で意識不明の恋人とメールでやり取りできるようになった少女と、少し変わった性質を持った少女たちと彼女に恋した少年たちの物語を描いた連作短編集。人と違う自分を意識することで周囲と距離を置いていた少女たち。そんな頑なになっていた彼女たちが築いた壁に挑む男の子たち、乗り越えようとしたヒロインには苦難や葛藤が伴いましたけど、それでも諦めずに乗り越え人生が変わってゆく展開はなかなか良かったです。

 

33.号泣

号泣 (集英社オレンジ文庫)

号泣 (集英社オレンジ文庫)

 

春休み、春日井奈々が校舎から転落死したことをきっかけに、筝曲部の春・夏・秋・冬を名前に持つ「四季の会」少女4人が事件に巻き込まれていく危うく儚い青春ミステリー。悪意を持った嫌がらせから始まったすれ違いがどうしようもないところまで積み重なった結果、生まれてしまった復讐劇。軽挙から密かに起きていた知られざる悲劇。文中に彼女たちの告白を挿入しながら進められていく物語は、ひとつの方向に向かうことを予感させますが、まさかの展開に見事に騙されました。少女たちの不安定に揺れる思いを、生々しい描写で描き切った圧巻の一冊。

34.僕は君を殺せない

僕は君を殺せない (集英社オレンジ文庫)

僕は君を殺せない (集英社オレンジ文庫)

 

クラスメイトの代わりにミステリーツアーに参加して、山中にある屋敷での惨劇から必死に逃げ出した『おれ』。クラスメートのレイちゃんと半同棲する『僕』。二人の視点から語られ明らかになってゆく復讐劇。視点が切り替わってゆくストーリーは時系列も前後しやや分かりづらかったですが、淡々と関係者が死んでゆく一方で微笑ましい二人に見えたレイちゃんとの関係には別の側面もあって、復讐を完遂するためにこれまで動いてきた僕が自分の大切なものを守ろうとしたその悩める決断にはどこか救われる思いでした。

同著者作品:どうか、天国に届きませんように」「七不思議のつくりかた

 

35.雲は湧き、光あふれて

最後の甲子園を前に故障した屈指のスラッガー専用代走に指名される話/新人スポーツ記者と強豪校と対戦する弱小校のピッチャーの出会い/戦火が拡大する中で甲子園を目指す少年たちの話と、高校野球を題材とする中編三編。今の自分に自信を持てない主人公たちが野球への熱い想いに感化され、今やるべきことに奮闘する姿には心を動かさずにはいられません。いずれも良かったですが、個人的には新人新聞記者と弱小校ピッチャーの出会いを描いた「甲子園への道」が特に好きでした。読むと高校野球につい思いを馳せてしまう是非オススメしたい一冊です。

36.マスカレード・オン・アイス

マスカレード・オン・アイス (集英社オレンジ文庫)

マスカレード・オン・アイス (集英社オレンジ文庫)

 

若手フィギュアスケーターとして将来を嘱望されながらも行き詰まっていた女子高生・白井愛が、ふとしたきっかけからかつて約束をした友人・ユーリに会いに行く物語。経済的な事情にも直面してスケートを続けることすら難しくなりつつある中、狭い世界から飛び出して初めて分かったこと、これまで知り得なかったユーリの複雑な事情。多くの出会いやユーリとの再会によってスケートへの想いを再確認し、多くの刺激を受け自分の良さに気づき、自信を取り戻していく展開はとても良かったですね。近い将来の再会を予感させるエピローグも自分好みでした。

37.ひっぱたけ! ~茨城県立利根南高校ソフトテニス部~

ひっぱたけ! ~茨城県立利根南高校ソフトテニス部~ (集英社オレンジ文庫)

ひっぱたけ! ~茨城県立利根南高校ソフトテニス部~ (集英社オレンジ文庫)

 

 部活漬けだったソフトテニスの強豪中学から、テニス部がない利根南高に進学した夏希と花綾。彼女たちが密かに存在する部員二人だけの女子ソフトテニス部と巡り合う青春小説。事情あってテニスを辞めた二人が、二人だけの部活を続けてきた先輩たちの想いを知り、新たなアプローチから再びテニスに向き合うようになってゆく物語で、よくあるテニスにガチで取り組むような展開ではなかったですが、人間関係の機微が丁寧に描かれていたり、ソフトテニス独特の制約も描かれていて意外と新鮮な気持ちで楽しめました。

38.バスケの神様 揉めない部活のはじめ方

バスケの神様 揉めない部活のはじめ方 (集英社オレンジ文庫)

バスケの神様 揉めない部活のはじめ方 (集英社オレンジ文庫)

 

中学のバスケ部で一生懸命だったがゆえに空回りし、孤立した苦い過去を持つ郁。バスケは続けないつもりで知り合いのいない高校に進学した彼が、中学時代の彼を知るバスケ部の部長に勧誘される物語。これまでなかった期待に戸惑いながらも、少しずつバスケ部に居場所を見出してゆく郁。因縁を抱えた以前の仲間との対戦があったり、バスケが大好きで熱血だと思っていた部長がバスケ部を立ち上げた理由が思わぬものだったりで、周囲を信じ切れずに心が揺れるものの、それを乗り越えて一丸となってゆく展開はベタながら清々しい青春小説だと思いました。

39.歩のおそはや ふたりぼっちの将棋同好会

歩のおそはや ふたりぼっちの将棋同好会 (集英社オレンジ文庫)

歩のおそはや ふたりぼっちの将棋同好会 (集英社オレンジ文庫)

 

将棋を辞めて無気力な日々を送っていた元天才少女の歩が、将棋同好会を立ち上げたど素人の先輩・涼に感化され、将棋への情熱を取り戻していくガール・ミーツ・ガール。最初は真っ直ぐに自分のやりたいことに突き進もうとする涼に巻き込まれた形でしたが、将棋から離れると劣等感しかなかった歩にしてみれば、自分にとって大切なことを色々と思い出し、向き合うきっかけをくれた大きな出会いだったんですよね。登場人物たちのひたむきに将棋に取り組む姿勢がとても好ましくて、不器用なりに前に一歩踏み出そうと決意した歩の今後の頑張りに期待です。

 

以上です。気になる本があったら是非読んでみて下さい。ほかのライト文芸レーベルも機会があったら紹介していきたいと思います。