読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2018年1月に読んだ新作おすすめ本

というわけで1月の新作オススメです。ライトノベルの注目としてはまず時々凄い作品を出してくるスニーカー文庫からおっさんが主人公の「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」、ボーイ・ミーツ・ガール的なところでファミ通文庫「春は冬の夢を見る」、ファンタジーとしてGA文庫「魔人の少女を救うもの」あたりですか。

 

それ以外の文庫ではでは青春ミステリのオレンジ文庫「雪があたたかいなんていままで知らなかった」、近未来SFを絡めたハヤカワ文庫「星を墜とすボクに降る、ましろの雨」中華ファンタジーな宝島社文庫「皇華走狗伝 星無き少年と宿命の覇王」、最後にやられたとなること請け合いの文春文庫「ずっとあなたが好きでした」あたりはインパクトがありました。他にも気になる作品があったら是非読んでみてください。

 

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 (角川スニーカー文庫)

 

 5年片想いした上司の後藤さんにバッサリ振られたサラリーマンの吉田。ヤケ酒の帰り道に路上で家出女子高生・沙優を発見し、なし崩し的に同居生活が始まる日常ラブコメディ。自分を大切にしないことを叱る吉田の優しさに戸惑う沙優と、彼女の存在が自分の中で少しずつ大きくなってゆくことを自覚する吉田。そんな何事にも真摯に向き合う彼の変化が気になる後藤さんと後輩の三島柚葉。周囲に振り回されてはいても根幹はブレない、相手を大切にしようとする吉田のありようが素敵で、何とも複雑な関係ですが今後の展開がとても楽しみなシリーズですね。

春は冬の夢を見る (ファミ通文庫)

春は冬の夢を見る (ファミ通文庫)

 

 一日先を夢で体験できる能力を持ち、危機を回避しながら一人で生きてきた春先孝太郎。そんな彼が同級生・冬芽木実につきまとわれるようになり、回避できない彼女との距離がどんんどん縮まってゆく青春小説。頑なだった孝太郎の傍にいるのが当たり前になっていった木実と共有された秘密。それから不穏な状況に巻き込まれてゆく二人と明らかになってゆく過去の因縁、見えてくる悪意。大切な人と共にあるため、過去の呪縛を解消するために決然と立ち向かう姿はカッコ良かったのに、肝心なところでどこか締まらない二人の関係がとても素敵な物語でした。

魔人の少女を救うもの Goodbye to Fate (GA文庫)

魔人の少女を救うもの Goodbye to Fate (GA文庫)

 

 英雄に選ばれなかった少年・ウィズと運命に振り回される少女・アローン。そんな二人が出会いアローンの護衛役として遠い彼女の故郷を目指すファンタジー。神から英雄として選ばれた幼馴染に力不足でついていけず離脱せざるをえなかったウィズと、秘密を抱え家族のもとに帰ろうとするアローン。お互いへの共感と自分が一緒にいることへのためらいでせめぎ合う不器用な二人が、それぞれ過酷な運命に直面しつつも逃げずに懸命に向き合う姿にはぐっと来るものがありました。覚悟を決めた英雄の裏で二人がどういう物語が紡いでゆくのか続巻に期待ですね。

拝啓、最果ての勇者様へ ~竜王の姫とめぐる旅~ (角川スニーカー文庫)

拝啓、最果ての勇者様へ ~竜王の姫とめぐる旅~ (角川スニーカー文庫)

 

 人と魔族の戦争が終結し四年。勇者になりそこなったポストマンのアルノスと人里で傷ついた竜王の娘エリヤが出会い、共に旅するトラベルファンタジー。くすぶった想いを抱えている最期の勇者候補と平和を夢見る魔族の少女。配達の旅で出会う魔族の孤児院を営む元勇者、エルフの騎士とオークの恋路といった様々な出会いと、絆を深めてお互いの存在が大きくなってゆく二人。人の魔族の融和という理想にすぐには変わらない現実がある一方で、これからの変化を信じたいと思う希望もあって、誰かのために奔走する二人の結末が印象に残る素敵な物語でした。 

ゼロの戦術師 (電撃文庫)

ゼロの戦術師 (電撃文庫)

 

 突然人類に発現した刻印によって才能の優劣が決まる世界。特級戦術師の父の血を引きながら刻印を持たない軍学校の落ちこぼれ・エルヴィンが優秀な幼馴染・アーデルハイトと共に極秘任務に就くファンタジー。輝く白い髪の不思議な力を持つ少女ネージュとの運命的な出会いと、同じく彼女を求めるヴァルハラ帝国の思惑。様々な出会いと想いが交錯する中、追跡から逃れようとする三人の逃避行でエルヴィンの計略が冴え渡って、王都を守るため三人がそれぞれの形で奮闘する展開とその結末はなかなか良かったです。新展開になりそうな続巻にも期待ですね。

電脳格技メガフィストガールズ (ダッシュエックス文庫)

電脳格技メガフィストガールズ (ダッシュエックス文庫)

 

 学校に馴染めず授業をサボってゲーセンに入り浸っていた小野木が迷い込んだ立ち入り禁止の特別棟。学園中のあこがれの的であるお嬢様たちの「電脳格技研究会」で格闘ゲームにのめり込んでいく電脳格技青春小説。ゲーセンへ入り浸って目を付けられた彼の格ゲー好きの美少女たちに振り回される日々の始まり。安心の典型的杉井主人公にヒロイン、そして付き合わされるうちに変わっていく格闘ゲームへの思いと紡がれてゆく絆、そして大切な居場所を賭けた熱い戦いはなかなか良かったです。ヒロインたちとの関係はこれからですし、続巻あるといいですね。

 街を守っている魔光少女が隣の席の庄川さんであることを知ってしまった平地くん。熱烈ファンの彼が超絶うっかりさんの彼女の正体がバレないよう奮闘することを決意するラブコメ。不器用なコミュ障な二人がお互い勘違いしたことから、なぜか始まってしまった二人のお付き合い(?)周囲も勘違いをこじらせながら二人のラブコメ展開を加速させていて、純情一途な庄川さんをフォローすべく奔走する平地くんの奮闘ぶりはカッコ良かったですが、劇的なのに決定的に噛み合っていない二人の関係がどうやって本物になっていくのか、続巻で読みたいですね。

俺もおまえもちょろすぎないか (MF文庫J)

俺もおまえもちょろすぎないか (MF文庫J)

 

 少しでもいいと思ったらすぐに告白してしまう高校生星井出功成。そんな彼がどんなことでも真正面から受け止めてしまう真面目な中学生初鹿野つぶらと出会い、お付き合いすることになるラブコメ。いちいちきちんと向き合ってくれるつぶらにどんどん惚れてゆく功成と、彼の想いに戸惑いながらも応えようとするつぶら。それぞれの行動原理には理由があって、惹かれてゆくがゆえに向き合わざるをえない本質的な問題もあって、少し引っかかるところもありましたが、誠実に向き合う不器用な二人の甘い物語として見るとなかなかぐっと来るものがありました。

恋愛至上都市の双騎士 (ファンタジア文庫)

恋愛至上都市の双騎士 (ファンタジア文庫)

 

 魔王を倒した最強の双騎士・勇也と藍葉が任務で送り込まれた世界は、恋愛感情が生む力が強さに変わる『恋愛至上都市』。魔王討伐を期待される彼らは戦うためにやむなくイチャイチャに挑戦するバトルファンタジー。勇也の心にある魔族に殺された夕日先輩の存在。そんな勇也を知るからこそなかなか素直になれない藍葉の複雑な思い。シリアスな物語がベースにあるのに、イチャイチャを駆使する戦い方や突っ込まれ担当・華恋の存在もあったりででどうにもしまらないなと苦笑いでしたが、テンポ良く進む最後まで諦めない戦いぶりはなかなか良かったです。

 アラサー社畜な日々を送っていた誠治がある朝目覚めると高2の春にタイムリープしていて、当時好きだった先生・柊木ちゃんに告白して見事付き合うことになるラブコメディ。中身はアラサーで意外と冷静な誠治とは対照的に、読んでいる読者の方がおいおい教師がそれで大丈夫なの?とつい心配したくなる、危機感が希薄で天然な柊木ちゃんの愛情表現。それにシスコンの妹らも絡めて次々と甘いエピソードが積み重ねられてゆく展開は糖分過多気味でしたが、タイムリープは確実に未来に影響を与えていて、それが始まった原因あたりも気になるところですね。

 

雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

雪があたたかいなんていままで知らなかった (オレンジ文庫)

 

 地元の名士の生まれながら、幽霊が見えることで周囲から孤立する澤村千尋の前に現れた赤いマフラーの幽霊少女。協力してくれたクラスメイトの岩木君やリンたちと共に、記憶を失っている彼女の過去を探し始める青春ミステリー。過去のトラウマから逡巡しながらも始まった身元捜索。それぞれ苦い過去が明らかになってゆく岩木とリン、そして本家の魔王的存在・従兄の義孝。その過程で少しずつ広がって変わってゆく周囲との関係と、いろいろ過去や事実が少しずつ繋がってゆく構成はとても上手くて、切ないけれどぐっと来るものがある素敵な物語でした。

 就職活動に失敗した夏芽勇作が出会った呪いを招く特殊文化財を専門とする、神祇鑑定人・九鬼隗一郎。相棒となった二人が奇怪な謎を解いてゆく物語。魔術に傾倒した詩人・イェイツの日本刀、キプロスの死の女神像、豊臣秀吉が愛した月の小面。多くを語らない謎めいた九鬼によって明かされてゆく勇作が隠していた秘密と、勇作の力を上手く使って問題を解決してゆく九鬼。魔術や曰くある骨董品を絡めたオカルティックな内容で、登場人物たちもまたミステリアスで存在感がありましたし、彼らの関係がどう変わってゆくのか、続巻に期待のシリーズですね。

算額タイムトンネル (講談社タイガ)

算額タイムトンネル (講談社タイガ)

 

 数学にのめり込む女子高生・真鍋波瑠が手にした神社の宝物殿に眠る絵馬「算額」。幕末の和算を学ぶ者たちが奉納した算額に浮かび上がる和算の定理の謎から、謎の出題者との算法をめぐる往復書簡が始まる物語。算数オリンピック日本代表を目指すも不仲の両親や思わせぶりな先輩に振り回される波瑠と、動乱の幕末に和算を志す実明の算額を通じた交流。その繋がりはお互いの人生に少なからず影響を与えましたけど、波瑠が意外な形で迎えることになった新展開と、彼女に託された伝言を巡るあれこれがどういった意味を持つのか、続巻に期待したいですね。

 

星を墜とすボクに降る、ましろの雨 (ハヤカワ文庫JA)

星を墜とすボクに降る、ましろの雨 (ハヤカワ文庫JA)

 

 人造の眼球と巨砲トニトゥルスで、地球圏に迫る星々を軌道庭園から撃ち墜とす子どもたちの一人である霧原。寡黙な担当整備工の神条の傍らにいることに満足していた彼女が、自らの無慈悲な宿命に直面する小さな恋の物語。突然現れた神条の元妻を名乗るハヤトの存在、そして空前の規模の流星群が飛来する中でようやく不器用な想いを自覚し、自分がどうあるべきか戸惑ってしまう霧原。最期までスナイパーであるべきか、気付いてしまった想いに向き合うべきか、心揺れた先にあった衝撃の結末でしたけど、これもまたひとつの愛の形なのかもしれませんね。

皇華走狗伝 星無き少年と宿命の覇王 (宝島社文庫)

皇華走狗伝 星無き少年と宿命の覇王 (宝島社文庫)

 

 中華平原に名を馳せる強国・禍国。十八年前、「覇王」の宿星を持って生まれた皇子・戰と、人扱いされず書庫に引き篭もる少年・真が出会ったことで運命が変わってゆく中華ファンタジー。兵部尚書である父の側室腹として生まれたがゆえに戸籍を持たなかった真が、皇子・戰と出会ったことで得た転機。生い立ちが影響してか多くを望まず怠惰になりがちな真が、それでも戰のため、訳ありの幼き妻・薔姫のために智謀を活かして自らの奔走し窮地を打開していく展開は、登場人物たちもよく動いてテンポも良くなかなか面白かったです。続巻も期待しています。

 幼馴染の史郎を一方的に恋慕い、彼との結婚を夢見る会社員の咲希。そんな彼女が妹の紹介で結婚資金を稼ぐために副業で結婚式の「サクラ」のバイトとして働く物語。同じサクラの百合香とともに臨む憧れの結婚式場で次々と起こる略奪婚、歳の差婚、毒親といったワケアリ結婚式の数々。長年の片想いでずっと近くにいるのに、なかなか見えてこない史郎ことシロの本音。これでもかとばかりに結婚の現実が突きつけられて、頻発するトラブルからひとつの構図が見えてきて、それでも結婚に憧れる咲希の真っ直ぐな想いとその結末は心に響くものがありました。

ずっとあなたが好きでした (文春文庫)
 

 バイト先の女子高生との淡い恋、転校してきた美少女へのときめき、年上劇団員との溺れるような日々、集団自殺の一歩手前で抱いた恋心、そして人生の夕暮れ時の穏やかな想いが綴られてゆく恋愛小説集。年齢や状況もバラバラな恋の行方と意外な結末。最初は普通の恋愛小説ではあまりない展開で新鮮だなあと思いつつ読んでましたが、途中から読んでいてうん?となって、だんだんその違和感に気づいて、最後でやられた!となりました。一気読みするには分厚いですが、その分手応えを感じた一冊で巻末の解説も必見。それにしても懲りてないな~(苦笑) 

アンティーク弁天堂の内緒話 (幻冬舎文庫)

アンティーク弁天堂の内緒話 (幻冬舎文庫)

 

 進学のため京都・下鴨神社近くの寮で暮らすことになった女子高生・紫乃。琵琶湖の弁財天から哲学の道にある骨董店・弁天堂へ行くよう促され、そこで不思議な力を持つ店長・洸介と出会う物語。弁天堂でアルバイトをすることになった紫乃が遭遇する清水焼の茶碗や茶の木人形、チャームブレスレットといった不思議な謎と、おばあちゃん譲りの力でそれを解くのんびりした風なのにわりと抜け目ない店長の洸介。謎を解き明かして込められた大切な思いを知り、意外に積極的な店長に対する想いも少しずつ変わってゆく紫乃の今後が楽しみですね。続巻に期待。

 京都大学の散歩サークルに加入し、謎解きが大好きな理系女子・青河に惹かれた新入生の遠近。彼女の好む謎を求めるうちに、謎を持つ人しかたどり着けないという不思議なバーのバーテンダー・蒼馬美希と出会う京都不思議ミステリ。四つ葉のクローバータクシー、鴨川の川床、京都水族館祇園祭と京都らしさに絡めた謎と、謎解きを助ける「三号館」とそこで語られるカクテルのうんちく、なかなか進展しない恋の行方。だんだん謎めいた美希さんに比重がシフトしたようにも思えた展開でしたけど、その後どうなったか気になるので続編に期待したいですね。

そして僕等の初恋に会いに行く (角川文庫)

そして僕等の初恋に会いに行く (角川文庫)

 

 社会人生活に疲れていた雄也に、突然かかってきた中学校時代の同級生からの電話。そこから文化祭で所在不明になっていた未完のプライベート映画を探し始め、過去の恋の告白や自身の青春と向き合ってゆく物語。好きな相手へ告白を撮影した甘酸っぱい恋の記憶。離れ離れになった友人たちのその後、そして大好きだったあの子の今…。歳月の経過という残酷な現実にはほろ苦さも伴いましたけど、向き合ったからこそ触れることができた様々な想いもあって、そんな経験を経た雄也が忘れられない大切なものを取り戻しに行く結末は心に響くものがありました。

鳥籠の家 (創元推理文庫)

鳥籠の家 (創元推理文庫)

 

 豪商天鵺家の跡継ぎ・鷹丸の遊び相手として迎え入れられた少女・茜。そこは謎めいたしきたりの数々、鳥女と呼ばれる守り神がいる奇妙な屋敷で、屋敷の背後の黒い森にいる怨霊と対峙することになる物語。鷹丸と仲良くなっていく茜と、天鵺家に固執する家族たちの奇妙な関係。鷹丸の乳母・静江の思惑と天鵺家の事情に巻き込まれてゆく茜。不気味なものや忌まわしい儀式が当たり前な天鵺家の雰囲気が、物語をダークな色合いの濃いものにしていますが、長らく続く一族を縛る負の鎖を断ち切るために茜と鷹丸が黒い森へ向かう展開はなかなか良かったです。

ヒトリコ (小学館文庫)

ヒトリコ (小学館文庫)

 

 小学5年生の時、金魚を殺した濡れ衣を着せられ、みんなには加わらない「ヒトリコ」として生きていく決心をした深作日都子。すっかり変わってしまった彼女の高校に、その事件のきっかけを作った冬希が入学してくる青春小説。好きだった日都子の変貌ぶりに心痛める明仁、そんな二人を見ていろいろ拗らせてゆく大都の関係。当事者たちにはどうにもならなくなっていたところで帰ってきた冬希の存在が少しずつ彼らの関係を変えてゆく展開は、これまで抱えてきたほろ苦い思いは容易には変わらなくても、乗り越えた先の未来を予感させる素敵な物語でした。

スケートボーイズ (実業之日本社文庫)

スケートボーイズ (実業之日本社文庫)

 

 一年ぶりに怪我から復帰し大学四年の全日本選手権を最後の舞台と定め、仲間と切磋琢磨の日々を送る伏見和馬。大学スポーツ新聞記者・井手将人は取材を通じ選手たちやスケートに魅せられていく青春小説。就職を目前にした難しい時期に、トップには届かない選手が決断した出遅れ気味な怪我からの復帰。かつての仲間やコーチ、家族に恋愛といった人間関係を絡めたシビアな現実があって、それでも向き合うべきものやそれを見守る人たちがいて、後悔のないようにやりきろうと奮闘する姿には、スポットライトが当たらなくてもぐっと来るものがありました。

 オリンピックで激変した東京湾岸での連続殺人事件と国を覆す陰謀。定年間近の無気力巡査部長・浦安圭吾に、若き異色のキャリア警視・箱崎ひかりとコンビを組む警察小説。東京湾岸地域の東京メトロ新線が新たな発展をもたらしている近未来のリアルな描写はとても興味深くて、そこに虚構を織り込んだ世界観は緻密であるがゆえにやや冗長な感は否めなかったですが、提示されたその可能性と難事件を解決するコンビの意外な結末はなかなか面白かったです。ここから繋がっているらしい「R.E.D」の世界にどう繋がってゆくのかちょっと気になりますね。

(P[あ]8-4)君の嘘と、やさしい死神 (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[あ]8-4)君の嘘と、やさしい死神 (ポプラ文庫ピュアフル)

 

 幼少期のトラウマで嫌だと言えず周囲にいいように使われていたモモこと百瀬太郎と同級生・美園玲の運命的な出会い。百瀬は強引に文化祭の準備を手伝わされる羽目になり、彼女の計画を実行するため一緒に奔走する青春小説。強情でやりたいことに向けひたすら突き進む不器用な美園の秘めた想い。そんな彼女を手伝ううちに少しずつつ変わってゆくモモのありよう。甘酸っぱい距離感が育まれつつあった二人の過酷な展開には切なくなりましたけど、向き合い続けた二人の思い出は記録に残さなかったからこそ鮮明で、その読後感は心に響くものがありました。

([こ]6-1)おとめの流儀。 (ポプラ文庫)

([こ]6-1)おとめの流儀。 (ポプラ文庫)

 

 中学1年生になったさと子が入部したのは、部員不足で廃部の危機にさらされたなぎなた部。何とか廃部を回避したさと子たちに部長の朝子さんから部の目標が「剣道部を倒す」であることを告げられる青春小説。最初はどうにも掴みどころのない朝子さんを筆頭に、同級生の仲間たちにも振り回されがちだったさと子。そして打倒目標に掲げられた剣道部員たちと朝子さんの因縁。部員たちはそれぞれに戦うための理由があって、思うようにいかないこともたくさんある中で、それでも向き合って何とか乗り越えようと奮闘する姿にはぐっと来るものがありました。

 

RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴
 

 深行視点で描かれる鳳城学園高等部入学前のエピソードなど3つの短編と、宗田真響の視点で描かれる冬休み明けに鈴原泉水子の変化に気付くその後の物語。完結してもう続編が読めないと思っていたのでとても楽しみでしたが、これまで泉水子視点だった物語が深行や真響の視点で描かれる展開は登場人物たちの印象も少し変わってなかなか新鮮でしたね。真響もまた泉水子とは違った意味で存在感のある女の子で、彼女の悩ましい現状に対する思いが繊細に綴られた今回のエピソードを読んで、またこの物語の続きを読んでみたいという思いを新たにしました。 

騙し絵の牙

騙し絵の牙

 

 大手出版社で雑誌編集長を務める速水。上司の相沢から自身の雑誌の廃刊を匂わされたことをきっかけに、組織の思惑に翻弄されながらも懸命に抗う物語。作中では出版業界の厳しい状況が端的に描かれていて、部下や上司に振り回され大規模リストラや社内他誌の廃刊に直面したり、さらには家庭不和まで顕在化して、どんどん追い詰められてゆく速水。一方で出版界の新たな可能性の模索もあって、絶望しか見えなかった先にあった思わぬ展開には驚かされましたが、一見輝ける未来を手にしたかに見えた彼が直面する何とも皮肉な結末がとても効いていました。

ビギナーズ・ドラッグ

ビギナーズ・ドラッグ

 

 中堅製薬会社で事務職を勤める水田恵輔が祖父が入居する老人ホームで出会った車椅子の女性・滝宮千夏。一目惚れした彼女が難病に侵されていることを知り、自らリーダーとなって新規創薬テーマ募集に応募する創薬小説。同期研究員・理沙を巻き込み準備を始めた恵輔の変化とその前に次々と立ちはだかる困難、進行する千夏の病魔。携わる研究員たちそれぞれにも抱える背景があって、前に進むために時には衝突も辞さず悩みながらも、そのひたむきな熱い気持ちが周囲を動かし創薬に向けた流れを作ってゆく展開とその結末にはぐっと来るものがありました。

ツノハズ・ホーム賃貸二課におまかせを
 

 新宿に本社を構える不動産仲介業者ツノハズ・ホームを舞台に、営業成績が伸びない澤村と美人でトップセールスを誇る神崎くららがパートナーを組んで不動産絡みの問題を解決してゆくミステリ。お人好しで仕事を押し付けられてばかりの澤村と、そんな彼をうまく使いつつ二人が関わる物件や顧客のおかしな謎を解決してゆく神崎。ストーリーとしては不動産絡みの人と人との関わりがポイントになっていて、最初は一方的だった二人の関係が、澤村の成長によって少しずついい感じに変化してゆく展開はなかなか良かったです。今後が気になるので続編も期待。