読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2017年11月に読んだ新作おすすめ本

 今月の新作オススメはライトノベル4冊、その他文庫11冊、単行本5冊です。数えてみたらライトノベルは今回続刊メインで、買った新作は厳選した分どれもオススメできる作品なんですが、それよりも今回その他文庫の方が粒ぞろいでした。竹宮ゆゆこさんはライト文芸に転身してから一番良かったと思いますし、「ニセモノだけど恋だった」(宝島社文庫)「恋虫」(角川文庫)あたりの不器用な恋心、またアニメの原作小説らしいですが「Just Because!」(メディアワークス文庫)もまた青春小説として自信を持っておすすめできる一冊です。このあたりは是非もっと多くの人に読んでもらいたいですね。なかなか積読消化できなくて長らく積んでしまいましたが、白河三兎さんの「他に好きな人がいるから」もまた、ちょっと変化球ながらも著者さんらしい少し変わった恋愛ものでなかなか良かったと思いました。

 

絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)

絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)

 

 目立たず冴えない自称幽霊の大地は、憧れの生徒会長・獅子神玲花の雑務を手伝うために生徒会室に通う日々。ある日偶然必勝の女神・白星絵馬の秘密に触れ、絵馬が大地の恋愛を全力応援し始める青春ラブコメ。絵馬に巻き込まれた彼女の友人・猪熊みりあと鷹見エレナに指導を受けて始まる大地のモテ改革。天然で暴走気味の絵馬が抱える秘密と、知ってしまった玲花の想い。いかにもありそうな揺れる心情を繊細に描きつつ、テンポが良く進む展開はぐいぐい読ませるパワーもあって、なかなか面白いラブコメになってきたと思いました。これは続巻に期待。 

青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中 (電撃文庫)

青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中 (電撃文庫)

 

 ARの技術が進化したアキバ特区でオタクの歩夢が偶然出くわしたスクールカースト最上位の同級生衣更着アマタ。歩夢がアマタに近づいた時、特区のAR空間に重篤な異変が発生してしまう青春小説。特区のバグ解消のためもあってオタショップバイト仲間の腹黒ロリっ子瑠璃や金髪コスプレ女ノエルの悩みに一緒に向き合ってゆく歩夢に突きつけられた、アマタの意外な正体と自身の過去の苦い思い出。失敗を悔いていたからこそ今があって、特区や歩夢に救われた人たちがいて、悩める不器用な登場人物たちの成長とほのかな想いを応援したくなる物語でした。

 五年前の大災害をきっかけに、不思議生物ニムエが体内に棲んでいる悠太。同じようにニムエを飼っていた同級生恵と出会い、二人で過去の大災厄回避と亡くなった恵の幼馴染・玖瑠美の救出を目指す物語。ニムエをきっかけに急速に距離を縮める二人の微笑ましい関係。ニムエを使い過去に戻る方法を発見して始まった計画の成果と思ってもみなかった大きな代償。それまでの展開を考えると悠太に突きつけられた運命の選択肢はあまりにも絶望的なものでしたけど、それでも諦めなかった彼らの機転と覚悟で乗り越え再構築されてゆく結末はとても良かったです。

 西洋・東洋の魔術師たちが闇に潜みながら生きる現代。陰陽師だった父の後を継いで探偵事務所を経営する女子高生ひよりが、同居人の魔女術使いレイジや女性魔術師・史鳳とともに謎の箱探しと連続殺人件解決に動き出す物語。史鳳が謎の女性から引き受けた詳細が不明な謎の過去探し。ひよりたちが警察から依頼を受けた不審な連続殺人事件の解決。繋がってゆく二つの事件に実力者のレイジと現時点では未熟なひよりのコンビを軸に挑む構図はさすがの安定感で、主人公の成長とレイジとの関係が今後どう変化していくのか、次巻に期待というところですかね。

 

 

応えろ生きてる星 (文春文庫)

応えろ生きてる星 (文春文庫)

 

 結婚直前の廉次の前に現れて突然のキスと謎の予言を残して消えた女。直後に婚約者に目の前で別の男と駆け落ちをされた廉次が、再会した女・朔と婚約者を取り戻すために奔走する物語。新婚旅行に行くはずだった二週間、謎多い朔と一緒に婚約者に見せつけるかのようにデートを満喫するフリをする廉次。彼女のことが気になり始めた頃にうっかり知ってしまうその背景。劇的な展開と爆発的な行動力が物語を動かし、因果応報をしっかり忘れないあたりに著者さんらしさがよく出ていましたが、ほろ苦くも未来を予感させる結末はとても良かったと思いました。

ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)

ニセモノだけど恋だった (宝島社文庫)

 

 俳優だった夢を諦めてレンタル彼氏として働いているカオル。そんな彼が高額な料金にもかかわらず職業を偽って予約を入れ続けるエイコと出会う物語。エイコが職業を偽ってお金を払いデートをする理由。偶然エイコの似たような境遇を知り複雑な想いを抱くカオル。夢を追いかけ続けるべきか現実を思い求めるか、分岐点で心揺れる二人が疑似恋愛のデートを重ねるからこそ育まれ、複雑になってゆくそれぞれの想いにはもどかしくなりましたが、不器用な二人が出会ったことで切り開かれた未来に明るい予感をつい期待したくなる不毛で素敵な恋の物語でした。

恋虫 (角川文庫)

恋虫 (角川文庫)

 

 政府が結婚相手を決めて、恋をした人は「恋虫」に感染したとして他者の感染を防ぐために駆除される世界。念願の『恋虫駆除隊』に入隊した四ノ宮美季が、救世主と呼ばれる上官・冬野花火と出会う物語。同期の首席で誰よりも恋という病に熟知しているはずの四ノ宮が直面する駆除の現実と苦悩する想い。感染した花火の兄・雪尋と婚約者・千春、二人に関わった花火それぞれのエピソード。こんな時代に美しくも儚い恋に向き合った彼らの真っ直ぐな想いにはじわじわと来るものがあって、諦めない孤独な花火が四ノ宮と巡り会えた幸運に救われる思いでした。

Just Because! (メディアワークス文庫)

Just Because! (メディアワークス文庫)

 

 高校三年の冬、残りわずかとなった高校生活。このまま何となく卒業していくのだと誰もが思っていた中、突然中学の頃に親の転勤で引っ越した瑛太が戻ってきて、少しずつ関係が変わってゆくTVアニメ原作小説。瑛太がかつて淡い恋心を抱いていた美緒、美緒が想いを寄せていた親友・陽斗との再会。陽斗の葉月への想いや、写真部存続のために奔走する恵那の思いも絡めて展開されてゆくこの青春群像劇は、止まったままだった過去の想いにきちんと向き合う物語でもあって、ひたむきで不器用なもどかしい想いを応援したくなるとても素敵な青春小説でした。

校舎五階の天才たち (講談社タイガ)

校舎五階の天才たち (講談社タイガ)

 

 「東高三人の天才」の一人篠崎から来光福音のもとへ届いた、僕を殺した犯人を見つけてほしいという手紙。福音は同じく手紙が届いた天才の一人加藤沙耶夏と事件を調べる学園ミステリ。遺書を残し電車に飛び込み自殺をした篠崎は誰かに本当に殺されたのか。天才であるということはどういうことか。傍若無人な加藤に振り回されつつ関係者たちから明かされる篠崎像から真相も掘り下げられてゆきましたが、深い苦悩を抱えていた彼のささやかな願いが、天才に憧れていた福音に伝わったのがこの物語の救いでしたかね。デビュー作ということで今後に期待。

螺旋の手術室 (新潮文庫)

螺旋の手術室 (新潮文庫)

 

 大学病院の教授選候補だった冴木真也准教授が手術中に不可解な死を遂げ、教授の座を争った医師も暴漢に襲われ殺害されるなど相次ぐ不可解な死。父・真也の死に疑惑を見つけた息子の裕也が同じ医師として調査を始める医療ミステリ。教授選が鍵と見据えその繋がりを調べる裕也。父の死がスキャンダルとなり婚約者の母に堕胎を迫られる妹の真奈美。真相を執拗に追う過程で明らかになる意外な真実。たったひとつの秘密を守るために起きた事件の真相は何とも切なくて、これから裕也が抱えながら生きてゆくものの重さについていろいろ考えてしまいました。

もってけ屋敷と僕の読書日記 (新潮文庫nex)

もってけ屋敷と僕の読書日記 (新潮文庫nex)

 

 尾道に暮らす中学2年の鈴川有季が、100円玉を投入すると老人・七曲が大量の本を押し付けてくる奇妙な自動販売機に遭遇して始まる友情と恋と家族の物語。本に埋もれた屋敷を終活整理するため本を手放そうとする七曲、小学校時代の同級生・翔矢、広島から引っ越してきた保育士・ひかり。紹介された本を絡めた4つのエピソードがあって、悩みや複雑な想いを抱えた彼らが本の自販機をきっかけにゆるく繋がるようになってゆく展開でしたけど、傷ついた時に自分のことを心配し奔走してくれる存在の大切さを改めて感じさせてくれた心温まる物語でした。

丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。 (角川文庫)

丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。 (角川文庫)

 

 本命の一流不動産会社の最終面接で大学生の澪が質問されたのは何と面接官の人数。質問した長崎次郎に霊が視えるその素質を買われ事故物件を扱う「第六物件管理部」で働くことになるオカルト仕事小説。これまで長崎一人だった「第六物件管理部」で働く澪が遭遇する数々の憑いている物件。ホラー展開が怖いわりに解決はわりとあっさりめでしたが、小心なのに暴走気味な澪に無愛想なイケメン・上司次郎、友人で霊障に敏感な爽やかイケメンの高木に霊犬・マメも相棒に加えテンポよく読めてシリーズ化もありそうですね。続巻出たらまた読んでみたいです。

今夜、きみは火星にもどる (角川文庫)

今夜、きみは火星にもどる (角川文庫)

 

 自分が火星人だと語る佐伯さんが気になって仕方ない国吉。突如数学で0点を取って留年の危機に陥った彼と、行き場のない想いを抱えた友人たちの青春小説。国吉が夏休みの数学の補修で毎日見る彼女と火星の白昼夢をきっかけに、急速に距離を縮めてゆく二人。彼らが積み重ねてゆくどこか危うい関係性が行き着いた、切ない現実が仄めかされる結末にはほろ苦さも残りましたが、国吉に邪険にされながら関わり続けることを選んだ高見の変化や、面倒見のいい相談相手だった山口先生たちとのやりとりも印象的で、著者さんらしさがよく出ていると思いました。

 同級生の不思議美少女・霧香と付き合い始めたばかりの大学生の凪が訪れた路地裏の珈琲店ブラックスノウ。店を手伝うことになった凪が霧香とともに様々なサイバー犯罪に触れてゆくサイバーサスペンス。凪たちが店に通う過程で明らかになってゆく実はサイバーセキュリティに精通しているマスターと、その彼を恨み大規模な犯罪を企む美青年・凌の因縁。最初に存在が示唆されてたびたび登場する凌と通じる内通者Aの正体が気になっていましたが、丁寧に展開を積み重ねていった末の少しばかりほろ苦い結末に、著者さんらしさがよく出ていたと思いました。

生きている理由 (講談社文庫)

生きている理由 (講談社文庫)

 

 滅び行く清の王女・愛新覚羅顯㺭として生まれて、日本に渡り父を助けた大陸浪人の川島浪速の養女となった川島芳子。国家を巡る思惑の間で翻弄された少女の数奇な運命と若き日の恋を描く激動の青春編。男装の麗人として波乱の人生を送った川島芳子を主人公に、滅びゆく清朝にあって身の危険を感じながらの日々と、日本に渡って人間関係や環境の大きな変化に直面した学生生活、そして恋と政略結婚に揺れる想いと、翻弄されながらも真っ直ぐに生きようとする多感な十代の芳子のありように、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。続巻も楽しみですね。 

 

 

さよなら僕らのスツールハウス

さよなら僕らのスツールハウス

 

 シェアハウス「スツールハウス」同じ屋根の下で笑い、ときめき、時間を共有した人たちがやがて懐かしく思い出す連作短編集。弁護士の直之が元彼女だったあゆみの結婚式の動画用に送った写真の意味、シャワールームの亡霊、フラワーショップで働く白石がかつての同居人で既婚の花織に見せられた写真、主と呼ばれた鶴屋素子がそこを去った理由。一緒に住んでいた思い出は楽しいことばかりでもなく、容赦ない時の流れを感じさせましたけど、ほろ苦さ以外のものも少しだけ垣間見せてくれた結末に、切なくても大切な思い出は変わらないことを感じました。

他に好きな人がいるから

他に好きな人がいるから

 

 寂れてゆく造船の田舎町。目立たないように鬱屈を抱えながら生きている高校生・坂井が、夜のマンション屋上で危険な自撮りを投稿し続ける白兎のマスクを被った少女と出会う青春恋愛ミステリ。苦い過去に縛られる少年と兎人間の秘密の共犯関係。クラスで浮いている少女・峰に巻き込まれてゆく学校生活と、彼女が意識する優等生の少女・鈴木。どこか危うさを感じさせる日々が続いた末に起きた事件とその真相は衝撃的で、いつまでも忘れられない坂井がこれからどうするのか、読み終わるとタイトルの意味がじわじわと効いてくる印象的な物語でした。

誰が死んでも同じこと

誰が死んでも同じこと

 

 日本を代表する一大コンツェルンの中枢・河帝商事の創業者一族が相次いで殺された。警察庁から派遣されたキャリア捜査官・十常寺迅は、河帝商事の内部事情をよく知る秘書の灰原円に無理矢理協力させ一族の暗部に踏み込んでいくミステリ。動機は相続争いと思いきや被害者は一族の中で出来の悪い方。河帝にそれほど思い入れのない円を助手兼ツッコミ役として連続殺人事件の真相を追う展開でしたけど、謎ときそのものよりそれぞれが語る思いに重きが置かれていて、それが著者さんらしさといい感じにブレンドされてこれはこれでわりと面白く読めました。

みさと町立図書館分館

みさと町立図書館分館

 

 田舎の小さな町のみさと町立図書館分館。33歳独身の実家暮らしの職員・遥の視点から、その図書館にある出来事とそこで働く3人のそれぞれのエピソードが綴られてゆく物語。母を亡くして試行錯誤が続いている父との関係。本の貸借トラブル&クレーム対処といった業務のあれこれや、徐々に明らかになってゆく同僚たちの実家事情など、日々移りゆく日常の中で変わってゆくもの変わらないもの、変えたくない大切なものは確かにあって、それぞれ悩みを抱えながらも生きていくありようの描写には、著者さんの優しい想いが詰まっているように思いました。

米澤穂信と古典部

米澤穂信と古典部

 

 書き下ろし新作短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」の他、古典部メンバー四人の本棚、著者の仕事場や執筆資料も初公開の古典部シリーズファンブック。短編で中学時代の読書感想文とそこに込められた秘密をメンバーに暴露された奉太郎はこっ恥ずかしかっただろうなと苦笑いしつつ、北村薫さん、恩田陸さん、綾辻行人さん、大崎梢さんといった方たちとの対談や隠れネタ、著者さんのこれまでの歩みなど、紹介された作品も相当読み込んでいるのが伺えて、著者さんのミステリやこの作品に込めた思いとこだわりが随所に感じられて楽しかったですね。