読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

※弊サイト上の商品紹介にはプロモーションが使用されています。

2017年9月に読んだ新作おすすめ本

 9月は刊行点数が多い分新作も多めですが、現時点でも読みたい本が多過ぎて追いかけるのも追いついてないので、どれを読むか読まないのか、その辺のバランスは考えないといけないところではあります。ラノベ文庫の青春ものは相変わらず突き抜けていますが、ほかのレーベルも少しずつらしい色がある青春小説を出してきていますし、この流れは今後も大事にしてほしいですね。

 

語り部は悪魔と本を編む (ファミ通文庫)

語り部は悪魔と本を編む (ファミ通文庫)

 

 バイト先で素敵な女性絵美瑠と運命的に出会い交際することになった拾い上げ作家の中村雄一。しかも彼女が新担当編集であることが発覚、デビューを目指す二人の前に悪魔のような編集長が立ちはだかる恋と戦いの物語。作家と担当という立場の違いが生まれ、複雑になってゆく二人の関係。お互い乗り越えるべき課題を抱え、編集長に厳しい指摘を突きつけられ選択に苦悩する想像以上にビターな展開でしたが、だからこそすれ違いかけた二人が向き合いぶつかりあったことで見えてきた光明と、初々しさの残る二人の恋の行方にはぐっと来るものがありました。 

ワキヤくんの主役理論 (MF文庫J)

ワキヤくんの主役理論 (MF文庫J)

 

 高校入学を機に「主役理論」を掲げ夢の一人暮らしを勝ち取った我喜屋未那。彼が隣に住むクラスメイトで、バイト先も趣味嗜好も同じなのに真逆の「脇役哲学」を掲げる少女・友利叶と遭遇する青春小説。運命的出会いなのに相容れない天敵な二人が部屋の壁を壊してしまったことで始まる疑似同棲生活。脇役哲学がややしっくり来なかった感はありますけど、暑苦しくてやる気が空回る未那とやる気がないデキる女なのに振り回される叶が繰り広げる、いがみ合いながらも息の合ったやり取りが楽しかったです。接続章がどう今後に繋がるのか気になりますね。  

クラスの立ち位置を気にする真面目系クズの八卜が、性格の悪い黒内に絶対見られたくない場面を見られ、それをネタに八卜の潜在的クズを開花させるべく一緒にクズ活することを強要される青春小説。二人がクズ活を続ける過程で関わってゆく聖人君子のような白庭さんと、幼馴染なのに学校では交流が断絶しているトップカーストの鈴堂。黒内によって次々と本性が暴かれてゆく一方、相反する複雑な想いや距離感に戸惑う心理描写は繊細で、らしさを自覚してゆく八卜と彼女たちの関係が描かれた今回も期待を裏切らない著者さんらしい怪作でした(褒め言葉) 

 成績優秀だがクズを自認する浅井悠馬が偶然クラス演劇主役を演じることになり、幼馴染の明日香とともにクラスの中心に君臨する荒川唯のグループに巻き込まれてゆく青春ラブコメディ。行動をともにする機会が増えてゆく唯の見た目とは全然違う純真さとひたむきさ。少しずつ惹かれてゆく悠馬が知ってしまった唯のらしくない秘密。何ともほろ苦い気持ちを抱えながら、それでも彼女のために奮闘する悠馬の姿は心に響きましたが、だからといって頑張れば報われるとは限らないのが現実で、そんな迷える彼らの行く末を続巻でまた読んでみたいと思いました。 

リア充にもオタクにもなれない俺の青春 (電撃文庫)

リア充にもオタクにもなれない俺の青春 (電撃文庫)

 

 覇権にこだわるオタクたちについていけず、リア充のやりとりもまた面倒くさいと感じてしまう中途半端な荒川亮太が、公園である事件に遭遇しいろいろ巻き込まれてゆく青春小説。いかにもリア充っぽいメグと、自らがかつて決別したオタ仲間の一人だと思っていた奈々子がそれぞれ抱える密かな想い。一見対極に思えるオタクとリア充を突き詰めてゆくと、避けられないのはそのどうにも面倒な窮屈さで、それでも居場所を大切にしたい彼女たちの切実な想いに応えてみせた亮太の解決法には苦笑いでしたが、こういうのもありかなと思えた興味深い物語でした。 

ラノベ作家になりたくて震える。 (電撃文庫)

ラノベ作家になりたくて震える。 (電撃文庫)

 

 ラノベ作家志望の高校生・冬野藍介は自分の作品が何者かに盗作され新人賞を受賞したことを知る。ショックを受ける藍介がクラスメイトの睡蓮から衝撃的な告白を受け二人で続編を書き始める青春小説。元天才子役かつ幼馴染で苦手な存在の睡蓮。そんな彼女から告げられた受賞作の真実から始まった二人の続巻執筆作業。もやもやを抱えたままでは上手くいかないのは当然で、けれど失ってから初めて分かる想いもあって。すれ違う展開がどうにももどかしかったですが、乗り越えた二人がこれからどんな物語を紡いでいくのかまた続きを読みたいと思いました。

嫌われエースの数奇な恋路 (電撃文庫)

嫌われエースの数奇な恋路 (電撃文庫)

 

 前年甲子園予選決勝まで残った結果、爆発的に増加した女子マネ志望者。決勝戦敗北のA級戦犯で今は男子マネとなった「嫌われエース」押井数奇と門前払いされる中で一人だけ残った強者・蓮尾凜が織りなす青春小説。難しい状況であえて男子マネとして部に残った数奇と、彼に因縁があるらしく何かと張り合う凜。少しずつ変わってゆく状況と諦めない不器用な数奇の頑張りがあるからこそ、ままならない現実にはもどかしい気持ちにもなりましたが、そこからの彼の頑張りと葛藤もまた青春の1ページで、これはこれで良かったのかなと思える青春物語でした。 

君との恋は、画面の中で (オーバーラップ文庫)

君との恋は、画面の中で (オーバーラップ文庫)

 

 過去のトラウマを抱える高校生・優弥がSNSだけで繋がりを持つ自称JKタカネさん。彼女とのやり取りを楽しみに日々生きていた優弥が、まさかのリアルで彼女と遭遇してしまう青春小説。コミュ障な優弥が友人の紹介で出会った可愛い高宮さん。タカネさんとリアルな高宮さんを同一視できず大混乱する優弥と、そんな彼相手に粘り強く頑張る高宮さんの間で育まれてゆく何とも複雑な関係。健気な高宮さんのエピソードが明らかになってゆくたびにもどかしさが募る展開でしたけど、遠回りしながらもあるべきところに落ち着いた結末にはホッとしました。  

さくらとともに舞う (講談社ラノベ文庫)

さくらとともに舞う (講談社ラノベ文庫)

 

 人々を殺め苦しめる荒人魂が出没する世界。荒人魂に母を殺された明石めぐるが剪定士をめざして鸞鳳学院に入学し、舞姫候補の桜みらいと10年振りの再会を果たす物語。舞姫が放つ「花力」を借りて荒人魂と戦う剪定士。学院で出会うやちよやゆらといった仲間たち、さくらと因縁がある吉野ととわこ。秘密を抱えるさくらのめぐる大好きっぷりが微笑ましかったですが、それぞれ舞姫や剪定士を目指す背景があり、騒動の元凶・黒胡蝶にも理由があって、そういう心情を丁寧に描きつつ苦しい戦いを力を合わせて乗り越えてゆく姿は心に響くものがありました。

 

 郡上踊りが終わるまでの死と生が入り混じる場所。なぜ死んだのかも忘れた高校生大和と、彼を生き返らせようとする幼馴染凛虎の不器用で真っ直ぐで凛としたひと夏の物語。二年前に死んだ凛虎の兄で親友の雪夜と、雪夜と凛虎の師匠である魔女の存在。理由を明かさないまま愚直に大和を生き返らせると告げる凛虎。終わりに向かう夏を二人で過ごす中で明らかになる事情は過去の謎に繋がっていて、譲らない頑固者の二人が散々ぶつかり合って出した諦めの悪い選択には、よくある切ない終わりの物語とはひと味違う彼ららしい後悔のない充足感がありました。 

R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室 (新潮文庫nex)

R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室 (新潮文庫nex)

 

 東京五輪後、災厄により中京に暫定首都が移転した世界。急速に治安が悪化する中、テロ計画を未然に鎮圧すべく総理直轄・女性 6 名の特殊捜査班R.E.D.が警察庁に設立される警察小説。いかにも著者さんが好きそうな世界観で、敵も多い傑物な女総理の下、ケチな神代を指揮官に個性豊かな異能を持つ少女たちを従え、副総理と警視総監が絡む難しい政官業巨大疑獄を追う展開。一風変わった彼女たちと上司たちの使い使われる関係も気になるところですが、破格な彼女たちの活躍は圧倒的でした。登場人物たちもいろいろありそうで続巻が楽しみです。 

 可憐でドSな女子高生の女流探偵・穴井戸栄子とその下僕で助手の古野まほろが不思議な4つの事件を解決する天帝とセーラー服と黙示録シリーズのクロスオーバーかつホームズパスティーシュな連作短編集。事件を操作するドSな探偵と下僕な助手たちのテンポの良い掛け合い、Zガンダムネタやエヴァネタ満載の思い切り趣味に走った世界観は本格ミステリを楽しむというより著者さんの世界を堪能するようなテイストで、そういうものだと思って読む分にはなかなか面白かったです。どんどん迷走していく栄子の推理を次々にぶった切るまほろには笑いました。 

歯科女探偵 (実業之日本社文庫)

歯科女探偵 (実業之日本社文庫)

 

 スタッフ全員が女性の錦織デンタルオフィス。もの静かな美人歯科医・月城この葉が歯科衛生士の高橋彩女とともに周囲で起こる日常の謎や連続殺人事件に挑む歯科医療ミステリ。文中で歯科医療絡みの描写がやたら詳しいと思ったら、そういえば著者さん歯科医でしたよね。法歯科医だった父を持つこの葉が探偵役で彩女が助手、登場するキャラたちや舞台装置はわかりやすくて、発生する事件に奇想天外さはなかったですが、一見関係なさそうに見えるエピソードの数々が、最終的にはこの葉が追っていた過去の事件に繋がっていく展開は上手いなと思いました。 

捕食 (創元推理文庫)

捕食 (創元推理文庫)

 

 つらい過去があり男性が苦手な真尋と、彼女と知り合い急速に距離を縮めるいづみ。彼女と一緒なら自分は変われると信じていたはずの真尋に不審が芽生え、いづみの謎多き過去を追うサスペンスミステリ。過去を追う過程で明らかになってゆく、似た境遇だった彼女の選択とその周囲で姿を消してしまった人たち。何かあるたびにハナカマキリのように脱皮を繰り返してきた彼女がなり得たものは何だったのか。やや詰め込み過ぎた感もありましたが、ぐいぐい読ませる展開の末に迎えるいろいろ想像できてしまうエピローグは、この物語らしい結末に思えました。 

君を一人にしないための歌 (だいわ文庫 I)

君を一人にしないための歌 (だいわ文庫 I)

 

 中3の夏、吹奏楽コンクールの大失敗をきっかけにドラムをやめたモリソンが、高校入学後七海に強引に誘われ凛も加わりバンドを結成する青春ミステリ。ドラムはもうやらないはずがいつの間にか巻き込まれたモリソン。ただ最後のメンバーとして募集したギタリストが訳ありだらけで、なかなか演奏までいかずにもどかしかったですが、普段はおどおどしがちなモリソンが見せる意外な鋭さのギャップ、一方で過去に苦しい出来事があったのは彼だけでなく、彼女たちのヒミツが明らかになるたびに印象も変わり、絆が育まれてゆく展開は上手いなと思いました。 

 入社式当日に会社が倒産し路頭に迷った朝霧夕霞。失意の中で公園の掲示板にあった国交省臨時職員募集の貼紙を見つけ、特殊能力を買われて採用されるあやかしお仕事小説。夕霞が不可思議な採用試験を乗り越え採用された、国土開発の妨げになる地縛霊などを立ち退かせるのが仕事で実質的に「人」が夕霞しかいない謎の部署「幽冥推進課」。自殺したアイドルや事故死で家に帰れなくなった会社員、百五十年も橋を守り続けてきた少女など、真っ向から向き合い体当たりでその心残りを解消してゆく夕霞の奮闘ぶりはなかなか良かったです。シリーズ化も期待。

放課後、君はさくらのなかで (集英社オレンジ文庫)

放課後、君はさくらのなかで (集英社オレンジ文庫)

 

 通勤途中で事故に遭った市ノ瀬桜。目覚めると女子高生・円城咲良として生活する羽目になった桜は、担任の鹿山に事情を打ち明けて咲良の魂を探す青春小説。あまり報われない人生を送っていたはずの桜が直面するまさかの状況。そんな彼女が遭遇するかつての同級生で因縁もある鹿山の存在。難しい立場を自覚しつつも咲良のためにと一念発起して状況を変えてゆく彼女が、これまで知らなかった真実に直面して切なくもなりましたが、そんな彼女へ提示された少なからず複雑な想いも交じる未来は、やや意外でしたけど頑張って欲しいと応援したくなりました。 

家政婦ですがなにか? 蔵元・和泉家のお手伝い日誌 (集英社オレンジ文庫)

家政婦ですがなにか? 蔵元・和泉家のお手伝い日誌 (集英社オレンジ文庫)

 

 短大卒業後、母の遺言で彼女がかつて働いていた蔵元・和泉家で家政婦として働くことになったみやび。そこで泉家の四兄弟やその母と関わってゆく物語。クールで切実にお金を稼ぎたい事情を抱えるみやびが、和泉家で働きたいもう一つの目的。蔵元ネタ自体はほどほどでしたが、母君にコスプレじみたメイド姿にさせられたり、四兄弟に難癖をつけられたり、彼女役を依頼されたりと、忙しい日々の中でいろいろな出来事に遭遇しながら少しずつ和泉家に馴染んでいく展開はなかなか悪くなかったです。今後が気になる終わり方だったので、続刊期待しています。

魔法使いの願いごと (講談社タイガ)

魔法使いの願いごと (講談社タイガ)

 

目が見えない幼いヒカリに出会った魔法使い・ヒトがくれたのは、「綺麗なものだけが見える」不思議な目。しかし再び目の光を失いつつあった彼女が一人の少年と出会う物語。「綺麗なもの」も慣れるうちにどんどん見えなくなっていくヒカリ。そんな彼女とお手伝いの息子・セカイとの出会いから始まる変化の兆し。童話のような雰囲気があって、幼き日に「綺麗なものだけが見える」不思議な目がヒカリに与えられたのには理由に何とも切ない気持ちになったりしましたが、大切なものをきちんと見誤らなかったヒカリの想いとその後には救われる思いでした。 

八月十五日に吹く風 (講談社文庫)

八月十五日に吹く風 (講談社文庫)

 

 1943年、北の最果て・キスカ島であった忘れられた救出劇。多忙の外務省担当官に上司から渡された太平洋戦争時のアメリカの公文書から、戦後の占領政策を変える鍵となった報告の存在が明らかになってゆく物語。劣勢に陥りつつあった第二世界大戦末期、北の最果てにあるアメリカから奪った日本の占領地。アッツ島が玉成したことでアメリカ軍に包囲され取り残されたキスカ島の軍人五千人。そんな絶望的ともいえる難しい状況の中で知恵を振り絞ってその救出に向かい、見事それを成し遂げた木村少将たちのありようはとても心に響くものがありました。 

 地球人類は国籍の区別なく商連と呼ばれる異星の民の隷属階級に落ちた未来世界。閉塞した日本から抜け出すため、アキラは募兵官の調理師パプキンの誘いで商連の惑星機動歩兵―通称ヤキトリに志願する近未来ファンタジー。国籍も違う癖の強いメンバー四人と実験ユニットK-321に配属され、火星に向かうアキラ。その過程で嫌というほど思い知らされるヤキトリの過酷な待遇。どれだけ屈辱的な扱いを受けたり凹まされても反骨心を失わないアキラたちには凄いなと感心しきりでしたが、だからこそ見出した活路が変革の兆しになるか続巻に期待ですね。

 

宝石鳥

宝石鳥

 

 神の遣いである宝石鳥の子孫が治めるシリーシャ島。新たな女王即位の儀式カーシェ・ルフが近づく中、不思議な力を持つ仮面の次期後継者候補と、百年前の因縁が複雑に絡み合う死と再生のファンタジー。肖像画のモデルである謎の女性を生涯追い続けた天才画家、飛行機事故で舞踏家の妻を亡くした音楽家、学術調査に出かけた島で行方不明になった婚約者を追う美大生。いくつもの因縁が儀式の下に繋がってゆくことで、止まったままだった過去が再び動き出して再生に繋がってゆく壮大な展開はとても読み応えがありました。これはもう次回作も期待ですね。

潮風エスケープ

潮風エスケープ

 

 実家との関係に悩む高校生の深冬が、思いを寄せる大学生の優弥とともに島の伝統「潮祭」が開かれる彼の故郷・潮見島へ向かい、様々な出会いや経験を経て成長してゆく青春小説。実家の農家を継ぐことに抵抗を覚え全寮制の高校に進学した深冬。想いを寄せる優弥の故郷で出会った祭の神女となる少女・柑奈。そして島に現れる優弥の想い人渚。廃れゆく伝統とどう向き合うのかという問題は形は違えどどこにでもあって、ぶつかり合って簡単に出ない答えに対して、きちんと自分で見出そうとするようになった彼女たちの成長がとても眩しい素敵な物語でした。

今日も君は、約束の旅に出る

今日も君は、約束の旅に出る

 

 女優を志し上京して10年。全てを賭けて臨んだオーディションでも落選し夢を諦めかけた国木アオ。一人自室で呆然とする中で突如地震が発生、目の前にかつての思い人・森久太郎が現れる物語。16年前に交わした久太郎とアオの約束。絶対に約束を破ることができない体質になり、約束を果たすべき時間が来るとその場所にワープしてしまう久太郎。出会いからアオと久太郎が再び積み重ねてゆく約束や、交わした約束を果たしてゆく久太郎の姿に人と人が繋がる大切さを実感する展開でしたが、約束があったからこそ迎えられた結末はとても心に響きました。

人魚に嘘はつけない

人魚に嘘はつけない

 

 漁師の親父が溺れている「何か」を助けて行方不明になったあの日、浜辺に打ち上げられ海に帰れなくなった人魚・ユーユ。彼女との出会いが海町に住む高校二年生のアサたちを変えてゆく青春小説。行方不明になった父に反発していたアサ、走れない陸上部の幼馴染・シオ、波にのれないサーファーの親友・ウミ。そして陸上での生活を満喫してはいるけれど、海に帰りたいと願うユーユ。彼女との出会いをきっかけに彼らが自らの悩みに向き合い答えを見出してゆく連作短編的な構成で、それぞれが選んだ未来でも彼らの確かな絆を感じられる素敵な物語でした。

100億人のヨリコさん

100億人のヨリコさん

 

 カネがない苦学生の小磯が入居することになったオンボロの学生寮。先輩やシングルーマザー母娘とともに暮らすうちに、天井に貼り付いた血まみれのヨリコさんに遭遇するようになる物語。著者さんのあとがきにたびたび登場していたヨリコさんが登場。個性の濃い寮生たちに、得体の知れないモノに囲まれた自給自足生活。そんな中、寮内のあちこちで見かけるようになるヨリコさん。そんなヨリコさんを真面目に考察していたと思ったらまさかの超展開で、ヨリコさんを止めるために奔走する寮生たちの逞しさと楽しい掛け合いがとても熱くて楽しかったです。