読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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4月に読んだ本 #読書メーターより

4月も額面上の数字は91冊となっていますが、今回もコミックが多分に含まれていて書籍は57冊ということで平常運転な感じの一ヶ月でした。例によってコミックも含めると余裕でブログの文字数制限を超えてしまうので書籍のみの表示です。新作も続刊も収穫が多くて読んでいて楽しい作品が多かった一ヶ月でした。

 

4月の読書メーター
読んだ本の数:91
読んだページ数:23834
ナイス数:6017

まるで人だな、ルーシー2 (角川スニーカー文庫)まるで人だな、ルーシー2 (角川スニーカー文庫)感想
スクランブルの力を使わないと決めた乃音が出会った美術部員・鶴見凛。世間から評価されない彼女の絵に欠落したはずの感情を想起したことで、彼女に興味を持つようになってゆく第二弾。感情が欠落しているがゆえに無自覚な美少女ハンターと化した乃音が重ねる不幸な誤解と、危うい均衡の上に成立していたそれらが迎えた必然の結末には何とも切ない気持ちになりましたが、一方で複雑な想いが錯綜しながらもそれだけでは終わらない辺りに本作らしさが滲み出ていると思いました。この物語が果たしてどこに向かうのか、続刊出たらまた読んでみたいです。
読了日:04月30日 著者:零真似
緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)感想
かつての栄光を失い虚栄と退廃に堕ちた東ローマ帝国。国の危機を憂う生真面目な騎士ベリスが、型破りな書記官プロックスと運命的な出会いを果たす戦記ファンタジー。ブロックスとの邂逅によって窮地を脱し、次期皇帝と目されるユスティンの元で頭角を現してゆくベリス。シリアスな展開続きでも脇を固めるキャラたちがよく動いて、その力が高く評価されることになったベリスとブロックスが、一方で皇妃となったテオドラと相容れない確執もあったりで面白かったです。それがいろいろな形で影響しそうな複雑な関係も絡めた今後の展開に期待大ですね。
読了日:04月29日 著者:高橋 祐一
この素晴らしい世界に祝福を!11 大魔法使いの妹 (角川スニーカー文庫)この素晴らしい世界に祝福を!11 大魔法使いの妹 (角川スニーカー文庫)感想
無事アイリスの護衛任務をやり遂げ、王宮でぐだぐだし始めたカズマ。見かねた王女の側近に追い出されて屋敷に戻ってみると、めぐみんの妹・こめっこが訪ねてくる第十一弾。相変わらずのクズっぷりをダグネスの説得で改心しかかったと思ったら、あっさり前言を翻すカズマさん。しかも戻ってきてからのカズマとアクアたちのやりとりが相変わらず過ぎて苦笑い。ちゃっかりこめっこも恐ろしい子ですが、紅魔族の黒歴史が次々と明らかになってゆきますねw 魔王の娘も関わってきそうですが、ダクネスもそろそろ何か動きありそうかな。続巻も楽しみです。
読了日:04月28日 著者:暁 なつめ
カカノムモノ (新潮文庫)カカノムモノ (新潮文庫)感想
悪夢を見続けるOL、穢れを内に抱える大学生、兄夫婦の子供を預かる花屋。「カカノムモノ」謎の美貌の青年・浪崎碧が、時に人を追い詰めてまで心の闇を暴き解決してゆく物語。昏い想いが育つことで生み出される大禍津日神と、一族の事情から人として生きてゆくためにそれを食らわねばならない碧の宿命。訳ありそうなカメラマン・桐島とともに闇を抱えた人を探し出して穢れを払うシリアスな過程には、ごくありふれたままらない日常の積み重ねがあって、宿業を抱えた碧を取り巻く事情がどのように変わってゆくのか続刊に期待したい新シリーズですね。
読了日:04月28日 著者:浅葉 なつ
最強魔法師の隠遁計画2 (HJ文庫)最強魔法師の隠遁計画2 (HJ文庫)感想
軍部の思惑で外界の課外授業で魔物を狩ることになった魔法学院の生徒たち。アルスがそのフォローに奔走し事態を収集する一方で、テスフィアの親友・アリスの過去も明らかになってゆく第二弾。学内の順位とはまた別物の外界での課外授業。そこで暴走するのがフォローすべき上級生たちだったのが何ともアレですが、それも予想済で実力者のアルスとロキが控えていてしっかり救う万全の体制w でもフィアもアリスも教師と生徒の関係になっていて人間関係的にはなかなか進展しないですね(苦笑)まずはアリスの因縁ということで、変化のきっかけを期待。
読了日:04月27日 著者:イズシロ
あした世界が、 (小学館文庫)あした世界が、 (小学館文庫)感想
音楽会社に勤める吉山朗美と、社長に契約解除され怒り狂う同級生のスーパースター・絹川空哉。十年前の高校時代にタイムスリップした朗美が当時の心残りをやり直す物語。極度のあがり症を抱える冴えない女子高生だった朗美。空哉と蓮に急接近していく一方で、すれ違い続けていた父との関係。無難に生きるしかなかった高校時代の人間関係も十年後の自分には大したことには思えなくて、だからといってままならないこともたくさんあって。それでも逃げずに困難に向き合った朗美の決断が、当時も今も変えてゆく結末は清々しい読後感で面白かったです。
読了日:04月27日 著者:柴崎 竜人
トリア・ルーセントが人間になるまで (ファミ通文庫)トリア・ルーセントが人間になるまで (ファミ通文庫)感想
病の父王を治す秘薬を手に入れるため、兄の特命でサルバドールを訪れた第二王子のランス。自らを薬と名乗る美少女トリアと護衛ロサと共に王都マキシムを目指すファンタジー。浮世離れしたトリアに戸惑いながらも共に旅するうちに惹かれてゆくランス。徐々に明らかになってゆく「ルーセント」の特異性と過酷な運命。宿命と自覚してゆく人間らしい想いに心揺れるトリアと、何とか救おうと奔走するランスに王家を巡る秘密も絡む展開にはハラハラさせられましたが、紆余曲折の末に迎えた二人のこれからを予感させる初々しい結末はなかなか良かったです。
読了日:04月27日 著者:三田 千恵
覇剣の皇姫アルティーナXII (ファミ通文庫)覇剣の皇姫アルティーナXII (ファミ通文庫)感想
ラトレイユによる謀殺を逃れ帝都で暗躍していたレジスが、戦死通知に激怒して軍を率いて帝都に現れたアルティーナとついに再会。新皇帝に即位したラトレイユにより南方戦線へと派兵される第十二弾。レジスの機転によって内戦勃発の危機をからくも切り抜けたアルティーナに下された意外な辞令。方針を転換せざるを得なくなり、戦術の変革期で先を見据えた駆け引きが繰り広げられる難しい状況。そんな中でも修羅場をくぐり抜けてきたレジスの卓越した見識が凄まじいですね。体制の再構築も始まって、今後どのように変わってゆくのか続巻が楽しみです。
読了日:04月26日 著者:むらさき ゆきや
Re:ゼロから始める異世界生活12 (MF文庫J)Re:ゼロから始める異世界生活12 (MF文庫J)感想
四度目の機会を得た『聖域』で『嫉妬の魔女』との邂逅を果たしたスバル。希望に裏切られて真実に絶望しながらも諦められないスバルが魔女との再会を求めて墓所へ挑む第十二弾。リューズさんにまつわる話やロズワールの真実を知っているかのような発言、ペアトリスの過去など、短期間にループを繰り返した上にいろいろあり過ぎて、何を信じたらいいのかわからなくなってゆく展開でしたけど、やっぱり魔女なんだなあと思わされたエキドナの持ちかけた契約に加えて魔女たちの集結もあったりで、続巻でいろいろな話がもう少し整理されることも期待です。
読了日:04月26日 著者:長月 達平
ちどり亭にようこそ2 ~夏の終わりのおくりもの~ (メディアワークス文庫)ちどり亭にようこそ2 ~夏の終わりのおくりもの~ (メディアワークス文庫)感想
花柚が風邪で寝込んでしまって店に手伝いが来ることになり、再び結婚に向け動き出した花柚と永谷の関係もどうも一筋縄にはいかない第二弾。結婚の準備を進める二人にはお互いの家の事情があり、花柚が風邪で寝込んだことで明らかになった「ちどり亭」の不透明な今後。総一郎と花柚も言葉足らずですれ違ったり、周囲の人間関係も少しずつ変わってゆきますが、そのあるべき形に収まった結末に意外性はなかったものの、作中に出てくる美味しそうな料理の描写や、登場人物らしさがよく出た繊細な心理描写の積み重ねがとても自分好みで素敵な物語でした。
読了日:04月25日 著者:十三 湊
終電の神様 (実業之日本社文庫)終電の神様 (実業之日本社文庫)感想
父危篤の報せに病院へ急ぐ会社員、納期が迫ったエンジニア、背後から痴漢の手が忍び寄る美人...。それぞれの場所へ向かう人々を乗せた夜の満員電車が事故で運転を見合わせて、それが転機に繋がってゆく物語。たまたま深夜の満員電車に居合わせたことで同じ時間を共有した人々のエピソードが綴られる連作短編集で、積み重ねられていった思いだったり、秘密にしていた意外な一面だったり、決断を胸に秘めての乗車だったり、それぞれが抱えていたほろ苦い思いやその決断が良かったと思える結末に繋がっていて、なかなか素敵な物語になっていました。
読了日:04月25日 著者:阿川大樹
彼女の色に届くまで彼女の色に届くまで感想
画廊の息子で幼い頃から才能を過信し画家を目指している緑川礼。しかしいつの間にか冴えない高校生活を送っていた礼が、無口で謎めいた同学年の美少女・千坂桜と出会うアートミステリ。礼が衝撃を受けた原石のような彼女の絵の才能。その推理で礼の窮地を救ってみせる桜の意外な一面と、共に過ごすようになってゆく日々。圧倒的な才能を前に平凡な自分を突きつけられる葛藤と少しの打算、生活力皆無な桜が気になって飼育係として世話を焼いてしまう礼の複雑な想いが悩ましいですが、それでも不器用な二人らしい結末はとても素敵なものに思えました。
読了日:04月24日 著者:似鳥 鶏
放課後図書室 (スターツ出版文庫)放課後図書室 (スターツ出版文庫)感想
高2になり掴みどころのない早瀬と一緒に図書委員になった真面目でおとなしい果歩。二人きりの放課後の図書室で再び動き始める恋の物語。実は中学時代に付き合いかけたものの、言葉すら交わしたことがないまま自然消滅してしまった二人。気になりながらも不器用なやりとりしかできなかったり第三者の言動が気になったり、自分の思うことを伝えられない自信のなさがとてももどかしかったですが、実際には意外とこうなりがちですよね。そんな二人が改めてお互い勇気を出して一歩を踏み出し積み重ねられてゆく想いが、繊細に丁寧に描かれていました。
読了日:04月24日 著者:麻沢奏
だいじな本のみつけ方 (光文社文庫)だいじな本のみつけ方 (光文社文庫)感想
中学生の野々香が放課後の校舎でまだ売られていないはずの大好きな作家の新刊をみつけ、同級生たちとともにその持ち主を探し始めるライトミステリ。読みやすい平易な文章で書いてあって、基本的には若い子向けの小説なのかなと思いましたが、スタンスは違うけれど本好きな同級生たちと時折衝突したりもしながら協力して身の回りの本絡みの謎や問題に挑む展開は、好きな本のことに積極的に関わってゆく姿勢が垣間見えて読んでいてとても気持ち良かったです。何となく本を好きになること、本を読むことについて改めていろいろ感じることがありました。
読了日:04月23日 著者:大崎 梢
ウォルテニア戦記VI (HJ NOVELS)ウォルテニア戦記VI (HJ NOVELS)感想
男爵としてウォルテニア半島を与えられた御子柴亮真が横領するザルツベルグ伯爵の腹を探りつつ、魔物だらけで海賊も根城にする半島の掌握に動き出す第六巻。購入した奴隷の少年少女たちを鍛えつつ、法術を学ばせて土木工事に応用するあたりは人手不足解消に繋げてますね(苦笑)伯爵との関係や他国の動きも気になりますが、海賊の始末も終わってここから半島を発展させるためにも、もう少し内政任せられる人材が欲しいところですかね。だんだん面白くなってきていますが、黒エルフの処遇と別行動してる飛鳥も気になるので早めに次巻読みたいです。
読了日:04月23日 著者:保利亮太
ユリア・カエサルの決断 1 ガリア戦記 (オーバーラップ文庫)ユリア・カエサルの決断 1 ガリア戦記 (オーバーラップ文庫)感想
ローマ好きの高校生・糸原聖也が月の女神・ディアナに古代ローマそっくりの異世界へと転送され、ユリアという名の異世界のカエサルを支える異世界ファンタジー。カエサルクラッススキケロも女の子という近似ローマ世界で、女の子だからこその展開もあったりするわけですが、ユリアが女好きなのは変わらないんですね(苦笑)幼馴染も特異な存在だけど主人公自身にもいろいろ因縁がありそうで、今回は登場した主要人物や近似古代ローマの世界観説明もあったりしてテンポにはやや難がありましたけど、これから動きも多くなるでしょうし今後に期待。
読了日:04月22日 著者:遠藤遼
エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 6 (MF文庫J)エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 6 (MF文庫J)感想
雷鳥失脚で氷室義塾は実質的に解体、規格外十番は世界列強に売られ散り散りに。ジンがクイーンを狩り各国と同盟を結ぶ一方で、ヘキサの実験施設や非合法武装組織を潰して回る謎のテロリストが出現する第六弾。何というか状況の激変でヘキサの非人道的扱いが加速していて、規格外十番もまたそれぞれ過酷な状況に置かれていたわけですけど、二つの新しい軸が生まれつつある転機を迎えて、絶望的な状況から再集結する仲間たちという熱い展開があって、前巻の絶望感があるからこそ今後に期待しちゃいますよ、これは。ここから始まる第二部に期待大です。
読了日:04月21日 著者:東 龍乃助
セブンキャストのひきこもり魔術王4 (ファンタジア文庫)セブンキャストのひきこもり魔術王4 (ファンタジア文庫)感想
デュセルが毎日遊びに来て風前の灯火となったブランの快適ひきこもり生活。『七詠唱』を乗っ取ったデュセルが、思いがけずブランの幼馴染・副会長の知られざる秘密と十年前の魔術実験の真相に近づいてしまう第四弾。ぼっちが長過ぎて適度な距離感が分かってない感じのデュセルには苦笑いでしたけど、これまでブランに執拗に絡んでいた幼馴染・副会長の思わぬ事情には驚かされましたね。十年前の実験にも繋がっていた一連の騒動は一気に解決とはいかなかったものの、笑顔で終わることができた今回の結末は良かったなと思えるものでした。続巻も期待。
読了日:04月21日 著者:岬 かつみ
豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい2 (ファンタジア文庫)豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい2 (ファンタジア文庫)感想
傭兵捕縛によって悪評からうって変わり一目置かれはじめたスロウ。王室から守護騎士選定試練の参加要請があり、アリシアと共に選定試練へ向かうことになる第二弾。今回は元婚約者のアリシア回。チャンスを伺いつつもスロウと話す機会を活かせなくてイライラする彼女でしたけど、何だかんだでスロウも気にかけているし、そんな彼に二度もピンチを救われたら自覚もしちゃいますよね(苦笑)スロウが知っている展開といろいろと変わりつつあるようですけど、出番が少ないなりにいろいろ重要な役割があったシャーロットメインの展開も今後期待してます。
読了日:04月20日 著者:合田拍子
ロクでなし魔術講師と追想日誌2 (ファンタジア文庫)ロクでなし魔術講師と追想日誌2 (ファンタジア文庫)感想
教授の実験に付き合わされたり、システィが罠で記憶喪失に陥ったり、アルベルトがグレンの裏切り疑惑を調査したり、グレンの過去話な短編集第二弾。この学院の教師陣は名門校のはずなのにこんなのしかいないの?と思ってしまうような濃いメンツで、バイトに初挑戦のリィエルとか儚げな雰囲気で男子生徒に人気急上昇したりなシスティとか、いろいろ面白かったですがやはりオチは相変わらずでした(苦笑)幼き日のグレンによる「愚者の世界」誕生秘話と、そこでの運命的な出会いが今に繋がっていて、彼女は是非本編にも登場を期待したいところですね。
読了日:04月20日 著者:羊太郎
ファイナルファンタジーXIV 光のお父さんファイナルファンタジーXIV 光のお父さん感想
今まですれ違い続けてきた父が癌で胃を全摘出したことをきっかけに、もう一度やり直したいと考えた息子がオンラインゲームのファイナルファンタジーXIVに父を誘い、正体を隠して父と共に冒険に出るブログ連載の書籍化。齢60を超えるお父さんの光の戦士計画。仲間の協力も得ながら密かにゲームの中での父の成長を見守る展開は、天然の父らしい姿やこれまで知らなかった一面を知ってゆく息子の反応が興味深ったですね。思わぬ展開やほのぼのした場面と、一緒にミッションを乗り越える緊迫感のあるチャレンジもメリハリが効いていて楽しめました。
読了日:04月19日 著者:マイディー
青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。 (ガガガ文庫)青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。 (ガガガ文庫)感想
勝ち組を呪う負け犬高校生の狭山明人と冷血美少女・小野寺薫。放課後に呼び出しを受けた二人が中等部の少女・藤崎小夜子の謎のボランティア活動に巻き込まれてゆく痛青春ラブコメ。藤崎の電波発言にドン引きしつつもいがみ合う二人が、やる気がないなりにメンヘラハンサムやヒキニートといった濃いキャラの相談者たちが抱える問題解決に動いて仲間が増えてゆく展開でしたが、負け犬を自負しひねくれた言動ばかりの狭山だからこそ、誰も気づかなった真意に気づいてしまう皮肉な結末は、続巻があったらまた読んでみたいと思わせるものがありました。
読了日:04月19日 著者:境田 吉孝
月とライカと吸血姫 2 (ガガガ文庫)月とライカと吸血姫 2 (ガガガ文庫)感想
吸血鬼の少女イリナの帰還後、晴れて念願の宇宙飛行士候補生に復帰したレフ。彼女を監視する任務から解かれその様子を気にかけつつも「人類史上初」を賭けた宇宙飛行士選抜試験に挑む第二弾。過酷な選抜試験でもらしさを失わないままのレフと、すれ違いが続くイリナの周囲に漂う不穏な空気。自分の気持ちに素直になれない不器用な二人の想いは切なくて、消化しきれない複雑な葛藤もままならなくて、だからこそ違和感だらけの土壇場で革命を起こしてみせた勇気と、それがもたらした奇跡がとても素敵なものに思えました。続刊また読めたらいいですね。
読了日:04月18日 著者:牧野 圭祐
天空の翼 地上の星 (講談社X文庫)天空の翼 地上の星 (講談社X文庫)感想
徐の王太子・寿白は革命の混乱のさなかに王の証・王玉を得たが庚に取って代わられ、十年後に飛牙と名乗って再び国を訪れる中華風ファンタジー。飛牙から玉を取り戻すべく現れた天令の那兪とともに訪れたかつての王都。天から見放され荒れる庚の治政と、寿白時代の飛牙を知る宦官・裏雲や王太后が抱えていた秘密。明かされた事情と混乱の最中で上手く立ち回った飛牙が、どうにかこうにかうまく取りまとめたなあと思えた結末でしたけど、裏雲との今後も気になりますし、この感じだと天下四国を旅する感じになるんですかね。続巻も楽しみにしています。
読了日:04月18日 著者:中村 ふみ,六七質
ゲームセットにはまだ早い (幻冬舎文庫)ゲームセットにはまだ早い (幻冬舎文庫)感想
様々な事情で集まってきたはみ出し者のメンバーたちが、ど田舎のスーパーなどで働きながら、一緒にクラブチームの野球で社会人全国制覇を目指す物語。かつての過去の栄光だったり、自分の夢と家族との間の葛藤だったり、なかなかうまく行かずに拗らせてしまっている想いにどう向き合って、難しい環境の中でも好きなことをやり抜くのか。社会人野球を扱ったという点でも興味深く、分かりやすくプロを目指すことだけが野球をやる理由ではなくて、不器用にぶつかり合いながらチームとして一つにまとまってゆく彼らの奮闘は心に響くものがありました。
読了日:04月17日 著者:須賀 しのぶ
図書室のピーナッツ図書室のピーナッツ感想
資格を持たない“なんちゃって司書”として直原高校の図書室で働く詩織。契約更新してもらえるのか不安に思いながらも、生徒たちから難問珍問が次々と持ちこまれる第二弾。学校司書さんの不安定な雇用形態や待遇の問題などは最近話題にもなりましたが、それはそれとして周囲に相談しながら、生徒と一緒に前向きに取り組んでいこうとする詩織さんの姿勢は好感。仕事で毎日大量の書誌情報を検索しているので、作中の調べ方の記述には深く頷くところがありました。変わりつつある詩織さんと図書室、素敵な問いかけがあった恋の予感が今後も楽しみです。
読了日:04月16日 著者:竹内 真
霊感検定 春にして君を離れ (講談社文庫)霊感検定 春にして君を離れ (講談社文庫)感想
最愛の兄を突然失い悲嘆に暮れる弟の携帯に届く兄からのあり得ない着信。霊が視えないのに心霊相談を持ち込む母親の苦悩など、人知れず霊に悩む者を心霊現象研究会が救う第三弾。馬渡先生は相変わらずでしたけど、さりげなく人を助けようとする夏目や空だけでなく、登場人物たちの相手を思いやるさりげない優しさが物語のベースになっているのがとてもいいですよね。修司と臣の空をめぐる葛藤とギリギリの攻防にはついニヤニヤしてしまいました。夏目の容赦ない突っ込みも(苦笑)挿入されていた短編もとても良かったですし、続巻も期待しています。
読了日:04月15日 著者:織守 きょうや
落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)12 (GA文庫)落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)12 (GA文庫)感想
ルナアイズの宣言によってクレーデルラントとの戦争は、代表戦によって雌雄を決することに。代表メンバーに選ばれたものの自分の力不足を痛感するステラが、自らの限界を超えるべく世界最強の剣士《比翼》のエーデルワイスに挑戦する第十二弾。力不足だからと言っていきなり最強に挑むとか発想が極端過ぎるだろとか思ったら、エーデルワイスの意外なギャップにビックリしました(苦笑)もはや職人芸的な手法で強さを極めてゆく一輝と対照的なステラの限界突破でしたけど、さりげなく出場メンバーも因縁も明らかになったりで、代表戦が楽しみですね。
読了日:04月15日 著者:海空 りく
最弱無敗の神装機竜《バハムート》12 (GA文庫)最弱無敗の神装機竜《バハムート》12 (GA文庫)感想
ソフィスの離反によって難局を迎えた遺跡攻略。束の間の待機を余儀なくされ、七日後に迫る学園の聖夜祭準備に盛り上がるルクスたち。一方で残された遺跡『月』に現れた不穏な影が策動する第十二弾。一般学生には危機が知らされぬまま、聖夜祭の準備で絆を深めるルクスと少女たち。一方でなかなか埋められないソフィスとの距離。ひとつひとつのエピソードに終盤に向けて物語が整理され、ひとつの方向に向かってゆくのを改めて感じた今回でしたが、ルクスに思いを寄せる少女たちに対する答えがどのようなものになるのかもまたちょっと気になりました。
読了日:04月14日 著者:明月 千里
レーゼンシア帝国繁栄紀 ~通りすがりの賢帝~ (GA文庫)レーゼンシア帝国繁栄紀 ~通りすがりの賢帝~ (GA文庫)感想
謎のアルバイト試験に合格し少女ユーリスと秘密の契約を交わした苦学生シュウが、まさかのレーゼンシア神聖帝国の皇帝に祭り上げられてしまう国家掌握ファンタジー。破格報酬のアルバイトは皇女の身代わりとしての皇帝就任。メイド姿のユーリスに振り回されるシュウの前に現れるお后候補たち。今回は一冊まるごと物語のプロローグといった趣でしたけど、国の難題を次々と解決するシュウの見事な采配や謎めいたユーリスの思惑、エピソードを積み重ねながら深めてゆく魅力的なヒロインたちとの関係が今後楽しみな新シリーズですね。これは続巻に期待。
読了日:04月14日 著者:七条 剛
我が驍勇にふるえよ天地4 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)我が驍勇にふるえよ天地4 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)感想
宿敵アドモフ帝国の軍勢を退けたレオナートたちのもとに吸血皇子の「伝説伝承」に魅せられてさらに人材が集い、ついに故郷・アレクシス州リント奪還作戦が始動する第四弾。いかにもらしい感じだったレオナートの筋金入りの朴念仁ぶりには苦笑いしましたが、ベタだなあとは思いつつ人材が集まってひとつの流れになり機が熟してゆく展開がいいですね。決戦では天才的な頭脳で意外な人物が戦局をリードしましたが、お互いの献策が激突するギリギリの駆け引きが連続した結果、思ってもみなかった形で迎えた新展開が今後どうなるのか、次巻が楽しみです。
読了日:04月14日 著者:あわむら 赤光
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア8 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア8 (GA文庫)感想
人造迷宮撤退での仲間の死にさえ嘲笑を向け派閥から孤立してしまうベート。しかし突如アマゾネスの少女レナとなし崩し的に同居生活が始まってしまい、己の過去と向き合うことになる第八弾。不器用な物言いしかできずに仲間からも誤解され、一時的にファミリアを離脱するベート。そんな彼の過去を思い出させる少女・レナとの出会い。巻き込まれてゆく暗躍する死神との眷属との闘争の中で爆発した本当の力は凄まじいものでしたが、積み重ねられたエピソードに垣間見えるその本性と、思ってもみなかったまさかの結末にはどこか救われる思いでした。
読了日:04月13日 著者:大森 藤ノ
贋作師と声なき依頼-京都寺町三条のホームズ(7) (双葉文庫)贋作師と声なき依頼-京都寺町三条のホームズ(7) (双葉文庫)感想
高校3年生になり大学受験も意識しだした葵。不器用ながらもゆっくりとお互いの距離を縮めていく葵と清貴の前に敵対視する贋作師・円生が再び現れる第七弾。関係が変わっても地に足付いた頑張り屋さんの葵と彼女にベタ惚れの清貴。いろいろあっても着実に関係を育んでいた二人の関係が思わぬ事態を迎えた時は愕然としましたが、周囲に温かく見守られつつそれを乗り越えた二人が一緒に対峙したからこそ、あの結末を迎えられたんですよね。あまりにもキレイにまとまっていて一瞬心配しましたが、ちゃんと第二部もあるそうなので楽しみに待っています。
読了日:04月13日 著者:望月 麻衣
ホームズと歩く京都-京都寺町三条のホームズ(6.5 ) (双葉文庫)ホームズと歩く京都-京都寺町三条のホームズ(6.5 ) (双葉文庫)感想
ヤマウチシズさんのイラスト付きの登場人物紹介&相関図、清貴による舞台案内、葵の誕生日パーティーなど描き下ろし中編や清貴の掌編、4コマや質問コーナーまである公式読本。中編や掌編で葵にベタ惚れ全開状態を隠さない清貴と、それを目の当たりにする周囲の反応には苦笑いでしたが、清貴視点で作中シーンを振り返りがらの舞台案内でもこんなこと思ってたんだとか正直過ぎる解説コメントが楽しかったです。これを読んでいると舞台となった場所を思いながら巡ってみたくなりますね。7巻も同時刊行ですが、これは巻数通りに読んだ方がよさげです。
読了日:04月12日 著者:望月 麻衣
カブキブ! 6 (角川文庫)カブキブ! 6 (角川文庫)感想
文化祭の公演を「毛抜」に選定したカブキ部一同。いよいよ本格的な練習を始めるものの、因縁の演劇部と再び公演場所を奪い合う勝負に発展する第六弾。芳先輩のこともあって未だ遺恨が残る演劇部との関係。不慮の事態から演劇部と観客動員数で勝負する事態に、クロとトンボの信頼関係ゆえのすれ違いもあったりでなかなか大変な状況でしたけど、助けてくれる周囲の人たちの存在もあって光明も見えかけていたのに、最後の事件には不安しかないですね...でもいろいろ頑張っていた遠見先生と生島さんコンビがいい味出していました。早めの続巻を期待。
読了日:04月12日 著者:榎田 ユウリ
東京すみっこごはん 親子丼に愛を込めて (光文社文庫)東京すみっこごはん 親子丼に愛を込めて (光文社文庫)感想
恋愛や結婚をコスパが悪いと考えるOLや誰にも言えぬ想いを抱える高校生、結婚した相手の娘との関係に悩むキャリアウーマンがすみっこごはんを訪れ、柿本と楓親子の出会いも綴られる第三弾。いつの間にか御利益がある存在になっているすみっこごはんですが、訪れた人たちが一緒に料理したり常連さんたちにお話を聞いたりしてもらううちに、自分なりに答えを見出してゆくお話はいいですね。常連さんたちの人間関係も少しずつ変わってきていますし、何より楓親子に出会った若き日の柿本の不器用な感じがとても良かったです。また続巻に期待してます。
読了日:04月12日 著者:成田 名璃子
屋上のテロリスト (光文社文庫)屋上のテロリスト (光文社文庫)感想
ポツダム宣言を受諾せず東西に分断された日本。七十数年後、高校の屋上で出会った不思議な少女・沙希からアルバイトに誘われた彰人が、彼女の壮大なテロ計画に巻き込まれてゆく物語。両親も亡くなって目的もなく死に魅入られていた彰人。彼に協力を求めた沙希が、思惑ある権力者たちをも巻き込んで邁進する真の目的。緊張が高まってゆく状況で大人たちの間を動き回り、ギリギリの駆け引きが続きながらも切り抜ける覚悟を見せた沙希と、彼女と一緒に最後まで走り抜けた彰人が最後に迎えた結末はとても素敵なものだったと思いました。面白かったです。
読了日:04月11日 著者:知念 実希人
横浜元町コレクターズ・カフェ (角川文庫)横浜元町コレクターズ・カフェ (角川文庫)感想
将来の夢が絵本作家ということ以外は平凡な大学生の大崎結人。就職活動を前に夢を諦めるため生まれ育った横浜元町で思い出の場所にあった喫茶店「ブラックバード」を訪れる物語。絵本の充実したレストランの場所にあった喫茶店のミステリアスな店主・佳野。どうにも立ち位置が難しかった結人のありようや佳野が抱えている悩みと、お店の客が抱える謎を住野が説いてゆく展開をどうやって絡めてゆくのかという意味では、設定をうまく活かしきれなかったかなと感じましたが、最後の謎を解き明かしたことでたどり着いた結末は悪くなかったと思いました。
読了日:04月11日 著者:柳瀬 みちる
大正箱娘 怪人カシオペイヤ (講談社タイガ)大正箱娘 怪人カシオペイヤ (講談社タイガ)感想
万病に効くとされる「箱薬」が巷で流行り、新米新聞記者の英田紺は箱娘・うららと調査に乗り出す一方、病に冒された伯爵の館には怪人・カシオペイヤから予告状が届く第二弾。潜入しようとした新薬を披露する伯爵家のパーティーで再会する時村燕也。何かしら事件があるたびに遭遇する、意外と友情に厚い一面を見せた彼と紺の奇妙な関係もまた今後のポイントになりそうですね。帝都のありように大きく関わっていそうな、依然として謎めいたままのうららの一端が垣間見えましたが、それでいて紺を気にかけるそのアンバランスなありようが良かったです。
読了日:04月11日 著者:紅玉 いづき
シマイチ古道具商: 春夏冬(あきない)人情ものがたり (新潮文庫nex)シマイチ古道具商: 春夏冬(あきない)人情ものがたり (新潮文庫nex)感想
生活を立て直すため大阪・堺市にある夫の実家「島市古道具商」へ引越し、義父と同居をすることになった透子一家。古い町家で紡がれるモノと想いの人情物語。両親を早くに亡くして社会経験にも乏しく、家族を取り巻く現状がこのままでいいのか思い悩む透子。お店を通じて義父やお客と一緒に古道具や人間関係に関わるようになったり、子供たちや夫ともなかなか上手くいかない状況になりかけたりな彼女は色々と大変でしたけど、多くの人に見守られていたことに気付いた彼女が、本当に大切なもののために周囲と協力して奔走する姿は強く心に響きました。
読了日:04月10日 著者:蓮見 恭子
いでおろーぐ!6 (電撃文庫)いでおろーぐ!6 (電撃文庫)感想
領家の呼びかけによりGWの遊園地に乗り込んだ反恋愛主義青年同盟部の面々。高砂による女児の観察日記だったり、女児の策略により高砂は未来を見せられ、異世界転生の物語まで書き出す短編集第六弾。トラウマな黒歴史を抱えていたり、怪しい挙動も散見される部員たちでしたけど、宮前会長の鋭いツッコミが全てですね(苦笑)高砂視点は客観性を欠いて実態はあんなだし、某特殊研究家とか業が深過ぎて心配になりましたw 部員が欲望のままに書いたリレー小説をうまくまとめたはずの高砂は報われなかったけど、女児も呆れる二人の今後も楽しみです。
読了日:04月09日 著者:椎田 十三
ゼロから始める魔法の書IX -ゼロの傭兵〈上〉- (電撃文庫)ゼロから始める魔法の書IX -ゼロの傭兵〈上〉- (電撃文庫)感想
北のノックス大聖堂へとたどり着いたゼロと教会騎士団一行たちが知る驚愕の真実。ゼロたちを快く思わない近衛騎士隊長のオルルクスが不穏な動きを見せる中、魔女であることを思い悩むゼロがひとつの決断をする第七弾。驚愕の真実に目的を見失う教会騎士団一行。神父たちがゼロたちの元に合流する状況に、ゼロと傭兵に突きつけられる非情な選択。共通の敵あってこその今の立ち位置はよくよく自覚しているところで、でも二人はうまくやっていけると思い込んでただけに、その決断はわかるけどちょっとなあ...傭兵の諦めの悪さに期待ですね、これは。
読了日:04月09日 著者:虎走 かける
読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)読者と主人公と二人のこれから (電撃文庫)感想
期待もない新学年のホームルーム。高校生・細野亮の前に愛してやまない物語の中にいた「トキコ」そのままの少女・柊時子が現れる出会うはずがなかった読者と主人公の物語。見れば見るほどそのままの時子との出会い。一緒に過ごしてゆくうちに想いが少しずつ積もってゆく一方で、自分の中で湧き上がってくる違和感。主人公の周辺を切り取ったようなクローズな世界観で、あまりにも不器用な二人の距離感にもどかしくもなりましたが、物語をきっかけに知り合った二人が物語で心を通わせて、これからの二人の世界の広がりを予感させる素敵な物語でした。
読了日:04月08日 著者:岬 鷺宮
俺を好きなのはお前だけかよ(5) (電撃文庫)俺を好きなのはお前だけかよ(5) (電撃文庫)感想
因縁のあの場所・高校野球地区大会決勝戦へと移り、ジョーロとホースが決選投票という名のパンジー争奪戦に挑む第五弾。当て馬にしか見えないホースとの勝負自体は困難を極めても結末は残当というか。むしろ一見うまくいってないようにも思えるプロセスの積み重ねをひとつの形にまとめ上げてゆく手腕が素晴らしいですね。最後にそういう回収の仕方してくるかみたいな。どんだけ好きなんだよ(苦笑)ジョーロはやり方が不器用だけれど、それをみんなは分かってるしだからこそ愛される。デビュー作とは思えないクオリティですね。第二部も楽しみです。
読了日:04月08日 著者:駱駝
本を守ろうとする猫の話本を守ろうとする猫の話感想
二人で暮らしていた古書店を営む祖父が突然亡くなり、実感が湧かないままの高校生・夏木林太郎。そんな彼の元に人間の言葉を話すトラネコが現れ本を守るために力を貸して欲しいと頼まれる物語。最初はトラネコと一緒に、そして学級委員長の沙夜も加えて立ち向かう本を救うための冒険。それぞれのエピソードはわりとシンプルな構成を取りつつも、今の本を取り巻くとても難しい状況の本質に鋭く切り込んだなかなか奥が深い内容で、戸惑いながらもきちんと向き合うようになってゆく林太郎の熱い想いに自分も少なからず感化されてしまった一冊でした。
読了日:04月07日 著者:夏川 草介
禁じられたジュリエット禁じられたジュリエット感想
ミステリ小説が退廃文学として禁書扱いな世界観の日本で、それに触れてしまった女子高生6人が囚人として収監され、看守役2名を加えた8名で更正プログラムに参加させられる本格ミステリ。プログラムを早く切り上げられるよう協力するはずだった友人8人。役割に徹するうちに急速に対立を深めてゆく描写はあまりにも過酷で、二転三転してゆく展開には驚かされ、追い詰められた参加者たちの叫びは痛切で心に響くものがありましたが、終わってみるとなぜか清々しさすら感じてしまったその読後感に著者さんの深い本格ミステリ愛を見る思いがしました。
読了日:04月07日 著者:古野 まほろ
長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)感想
長崎の女子大学に入学した東京出身の日高乙女。バイトで不採用続きの乙女がオランダ坂の外れに不思議な洋館カフェを見つけ、そこで不機嫌顔のオーナーと一緒にバイトとして働くようになる物語。東京っぽさがないとある作家の熱烈大ファンな天然の乙女と、本業が不明で雨降る夜にしか開店しない無愛想で謎めいたカフェ・オーナーの向井。長崎の美味しいものがたくさん紹介されつつ、それと少しずつ増えてゆくお客さんとのエピソードや積み重なってゆく向井への想いがとてもいい感じに組み合わさって、不器用な二人を見守りたくなる素敵な物語でした。
読了日:04月06日 著者:江本 マシメサ
キネマ探偵カレイドミステリー (メディアワークス文庫)キネマ探偵カレイドミステリー (メディアワークス文庫)感想
留年の危機に瀕するダメ学生・奈緒崎が教授から救済措置として提示された難題は「休学中の嗄井戸を大学に連れ戻せ」。引きこもりの嗄井戸と奈緒崎が謎を解決する連作短編ミステリ。映画鑑賞に没頭して家から出ない嗄井戸が安楽椅子探偵よろしく事件を見通してみせる役割で、腐れ縁で彼の家を訪れるようになった奈緒崎が動くコンビ。二人を中心とする物語は一方で彼ら二人の不器用な友情の物語でもあり、キッパリサッパリなヒロイン・束ちゃんもいい感じに効いてテンポも良く、なかなか面白かったと思います。続編あるならまた読んでみたいですね。
読了日:04月06日 著者:斜線堂 有紀
中目黒リバーエッジハウス ワケありだらけのシェアオフィス はじまりの春 (集英社オレンジ文庫)中目黒リバーエッジハウス ワケありだらけのシェアオフィス はじまりの春 (集英社オレンジ文庫)感想
青森での田舎生活を厭いクリエイター職に憧れ上京した哲太。しかしブラック企業で限界を迎えて脱落し、人生に行き詰った彼が憧れだったクリエイティブ・ディレクターを捜し始める物語。好きな人も仕事も生きがいも一度に失った哲太が、中目黒のシェアオフィスで出会った仲間と協力し、顧客が始めたいカフェのプロデュースに挑戦する展開。一度は挫折した哲太もこれまでいろんなことに挑戦してきたことが無駄になっていなくて、仲間や顧客ときちんと向き合って頑張ろうと奔走するその思いは熱く心に響きました。続巻あるなら仲間の掘り下げも期待。
読了日:04月05日 著者:岩本 薫
おやつカフェでひとやすみ しあわせの座敷わらし (集英社オレンジ文庫)おやつカフェでひとやすみ しあわせの座敷わらし (集英社オレンジ文庫)感想
鎌倉近くの丘の上の住宅街にひっそり建つ歳の離れた三兄弟が営む古民家カフェ。「そのカフェで座敷わらしを見ると、幸せになれる」噂につられて人生で迷った人びとがお店を訪れる物語。イケメンなお兄さんたちが美味しそうなおやつを提供してくれる訳ありの古民家カフェ。祖父母の借金を返すために意に染まぬ結婚を控えていたり、辛い秘密を抱えての別居状態、リストラされて家族に打ち明けられなかったりと厳しい事情を抱える訪問客たちが、お店の座敷わらしに出会い転機を迎えてゆく優しく温かいお話でした。続巻あるようなら読んでみたいですね。
読了日:04月05日 著者:瀬王 みかる
密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク感想
第一次世界大戦後、極秘で設置された保安局六課でスパイとして国内の防諜活動を行っていた手嶋。ある事件をきっかけに目を付けた陸軍の武器密売疑惑の潜入捜査でカフェで働く落ちぶれた華族の令嬢・悠木志枝と出会うスパイアクション・サスペンス。手嶋が追う武器密売疑惑の鍵を握る少女・志枝が持つ特殊な力。そして手嶋の前に立ちはだかる旧知の陸軍士官・高柳。関東大震災直前の二転三転する状況で陰謀の核心がどこにあるのか駆け引きしつつ、その阻止と彼女を救うために奔走する展開はテンポも良く、余韻の残る結末がとても印象的な物語でした。
読了日:04月04日 著者:三雲 岳斗
麻布ハレー麻布ハレー感想
76年ごとに地球へ接近するハレー彗星。1910年に天文台で出会った不思議で美しい女性・晴海と、売れない小説家志望の国善。ハレー彗星の出現とともに恋が始まる物語。どんどん天文にのめり込んでゆく国善の下宿先の子供・栄。一方で国善の作家としてのありように葛藤する姿や、彼への想いは感じるのに晴海との縮まりそうで縮まらないもどかしい距離感はとても切なくて、ハレー彗星と共に明かされる真実と交わされた約束がプロローグに繋がり果たされる結末は、振り返ると出版社や著者さんらしさを感じられる切なくも素敵な物語だと思えました。
読了日:04月04日 著者:松久 淳,田中 渉
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶の足跡 (角川文庫)櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶の足跡 (角川文庫)感想
行き先も告げず沢さんと旅行に出かけてしまった櫻子さん。不安を抱える正太郎が担任の磯崎先生たちと共に、櫻子さんが向かったと思われる層雲峡を目指す第十一弾。磯崎先生や薔子さんとともに櫻子さんたちを探し始めた過程で謎の自殺者を巡る事件に巻き込まれてゆく今回。事件の背景もいろいろ考えさせられる内容でしたが、今の状況からして将来の櫻子さんを危ういと感じてしまう正太郎の気持ちも分かるんですけど、正太郎もどこか危ういんですよね。お互いを思いやる二人が姉妹のようで微笑ましいというか不穏な感じもあるというか。続巻も期待。
読了日:04月03日 著者:太田 紫織
江の島ねこもり食堂江の島ねこもり食堂感想
島の猫の世話をするとある江ノ島の食堂<半分亭>の隠れた仕事。代々「ねこもりさん」と呼ばれる女たちの生きたそれぞれの人生と、新しい命を結び未来を繋いでいく百年物語。猫とお客さんに助けられて続いてきたねこもりさんの半分亭。ひいおばあちゃんのすみゑ、祖母・筆、母・溶子、そして麻布。時代背景も半分亭を取り巻く事情も様々ながら、江ノ島やねこもりさんという仕事への思いや多くの人に支えられ人生を精一杯生きてゆく姿、紆余曲折はあってもそれが受け継がれ、百年前の約束が果たされてゆくその結末には強く心に響くものがありました。
読了日:04月03日 著者:名取佐和子
押しかけ軍師と獅子の戦乙女2 (HJ文庫)押しかけ軍師と獅子の戦乙女2 (HJ文庫)感想
秋の武芸大会参加中に敵国アッガザールが大侵攻を開始したという情報が飛び込み、王国の他の騎士団たちとともに黄金獅子騎士団も防衛に参加することになる第二弾。ソンブラを雇い諜報を強化したクロウ。敬愛する王子フレスにクロウへ寄せる信頼に疑問を投げかけられ逡巡するクラヴェリーナ。今回は戦略に乏しく騎士団の足並みも揃わない中で、信頼に乏しい立場からどう戦略を組み立てる難しさがよく描写されていましたが、一方で諜報強化で具体的なアプローチもできるようになって、複雑な思惑が絡む状況は依然として厳しいですが続巻が楽しみです。
読了日:04月01日 著者:在原竹広
造られしイノチとキレイなセカイ3 (HJ文庫)造られしイノチとキレイなセカイ3 (HJ文庫)感想
厄災の日を乗り切ったカリアス一家。その際に発覚したリーゼの謎の力や、アリアの記憶に残る旧文明の真相に迫るため一同は遺跡を探索することになる第三弾。リーゼの力やいろいろな謎が明らかになった今回でしたけど、彼女だけでなくそれぞれが特殊な力を持つ子揃いで保護者は国有数の実力者コンビ。ほのぼの展開は遺跡探索になっても変わらなくて、ほんとピクニック状態になってたのは苦笑い。最後に出てきた登場人物も悲しいエピソード絡みなのかと思ったら思わぬ遺産まで一緒に出てきて、何より二人の関係も変わりつつあるようで今後に期待です。
読了日:04月01日 著者:緋月 薙

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