読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

2017年1月に読んだ新作おすすめ本

 というわけで2017年1月に読んだ新作おすすめ本19点です。見落としていて少し前のものもあったりしますが、できるだけ気をつけてはいても目配りできる範囲には限界を感じますね(苦笑)でも1月もなかなかいい作品を読めたと思います。

リンドウにさよならを (ファミ通文庫)

リンドウにさよならを (ファミ通文庫)

 

 想いを寄せていた少女・襟仁遥人と共に屋上から落下し死んでしまったらしい神田幸久。二年後地縛霊として目覚めた彼はクラスでいじめに遭う穂積美咲に存在を気づかれ彼女と友達になる青春小説。自分の存在に気づいてくれた少女・美咲の優しい一面を知って現状を変えようとアドバイスをし、美咲が勇気を持って踏み出した一歩から少しずつつ変わってゆくその境遇。繊細な描写を積み重ねて作り上げられた伏線を回収してゆくことで意外な事実も明らかになっていって、爽やかで納得感のある結末まで組み上げたその構成力は今後に期待の作家さんですね。

追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ (ファンタジア文庫)

追伸 ソラゴトに微笑んだ君へ (ファンタジア文庫)

 

 二学期初日。野球部を辞めた篠山マサキが教室で遭遇したのは、自分の記憶にだけ存在しない少女・風間ハルカ。手紙の送り間違いを知らせてくれた女の子との文通をきっかけにその世界が変わってゆくSF系青春小説。うっかり優等生と評判のハルカの意外な一面を知ってしまうマサキ。怪しい文通をやりとりするたびになぜか突如変わってゆくハルカとの関係性。不器用な二人の距離感が微笑ましくて突然の急展開には呆然としましたが、真相を知って彼女のために奔走したマサキの決意と顛末は、荒削りながらも次回作に期待したくなる爽やかな読後感でした。

 西暦二〇三〇年、突如上空に現れた正体不明の飛行物体「衛精」の無差別攻撃で人類が空を奪われた世界。低空飛行に特化させた飛行艇ULFを駆る運び屋タクロウと銀髪犬耳少女チェルシーの物語。チームを組まない訳ありげな青年タクロウと駄犬扱いの相棒チェルシー。彼らに託した想いのため危険と最速の限界を乗り越えようとする二人の物語は、明らかになってゆく彼らの過去や事情によってガラリと印象も変わりますが、メリハリの効いた展開やギリギリを攻め続ける飛行描写、二人を中心とする人間模様がとても良くてぜひ続刊を期待したい作品ですね。

勇者のセガレ (電撃文庫)

勇者のセガレ (電撃文庫)

 

 謎の金髪美少女ディアナが異世界から若い頃異世界を救った父秀雄を召喚すべく剣崎家に現れ、高校生の長男の康雄や妹がそれに巻き込まれてゆく日常ファンタジー。なかなか信じられない康雄たちの反応はある意味とてもリアルで、平和な日常生活にあるものと危機に脅かされる異世界人間というギャップもうまく描かれていると思いました。転機に至るまでがやや冗長な印象もありましたが、父とともに異世界で戦った母のまさかの変身には爆笑しました。様々な経験を経た上での康雄の決意と再会した帯刀さんも気になりますし、今後が楽しみなシリーズです。

 不器用で口が悪く魔術師として人々に恐れられるザガン。そんなサガンが亡き魔王の闇オークションで白い奴隷エルフの少女ネフィに一目惚れして全財産をつぎ込み購入。不器用な二人の共同生活が始まる物語。コミュ障でどう接していいか分からずたびたび言葉選びを間違えるサガンと、最初は怯えながらも彼の不器用な優しさを知り徐々に心を開いて行くネフィ。これまで孤独な境遇を過ごしてきた二人が、戸惑いながらも危機的状況を乗り越えて絆を育んでいく物語は、わりとシンプルな構図でベタな展開ではありましたがなかなか良かったです。続巻も期待。

まるで人だな、ルーシー (角川スニーカー文庫)

まるで人だな、ルーシー (角川スニーカー文庫)

 

 エキセントリックボックスに宿る少女・スクランブルの人身御供となった御剣乃音が願いを叶える代償は人の感情。人間らしさを失いつつも力を行使し人を救う乃音が、正反対の人身御供・氷室に出会う物語。壊れてゆく自覚から抱える矛盾に悩む乃音と、代償に感情を得てどんどん人間に近づいてゆくスクランブル。大切だったものを次々と切り捨ててしまう乃音の選択には絶望的な気分になりましたが、だからこそ彼が育んできたものをきっかけに、どうにか悪くないとも思えるところに落ち着いた結末には救われる思いでした。これは次回作にも期待ですね。

命の後で咲いた花 (メディアワークス文庫)
 

 教師にならなければならない理由を胸に、晴れて第一志望の教育学部に入学した貧乏学生の榛名なずな。そんな彼女が寡黙で突き放すような年上の同級生・羽宮の優しさに触れ惹かれてゆく物語。不器用なアプローチしかできないなずなと、何かを抱えていそうでなずなを容易に近づかせない羽宮。国語教師になった彼女とたまにしか会えない羽宮の、とても一途で絶望的なのにそこに幸せを見出す切ない恋。読み終わってみるとなるほどなあと唸らされる絶妙な構成で、繊細に積み重ねられてゆく羽宮と彼女の距離感がとても好みでした。後日談も良かったです。

 高二の夏に心臓の病が原因で亡くなった彼女・透子のことを未だ引きずっていた成吾。四年ぶりに地元に帰った成吾が再び手にした交換日記の空白に新たな返事が綴られてゆく物語。彼女が亡くなって以来、初めて訪れた彼女の実家で手にした交換日記に起こった不思議な出来事。語られる彼らの出会いと、交換日記を通じて交わされる時を超えた透子とのやりとり。未来を知っているからこそ何とか変えたい成吾と、その時を後悔しないように精一杯生きたい透子の交流はもどかしく切なかったですが、精一杯真摯に向き合った二人のやりとりは心に響きました。

僕が恋したカフカな彼女 (富士見L文庫)

僕が恋したカフカな彼女 (富士見L文庫)

 

 気になる架能風香から誤字脱字だらけの恋文に散々なダメ出しを食らった深海楓が、彼女にふさわしい男になるべく小説家を志すボーイ・ミーツ・ガールミステリ。普段からヘルメットを着用し敬愛するカフカになれと告げる風香と、女好きだった過去を封印する偽装天然な楓。カフカの作品になぞらえた身近な謎を二人で解決するうちに少しずつ変化する距離感と、彼女を本当に好きになっていく楓の想い、彼に対して秘密を抱える風香の逡巡といった心情描写がなかなか良かったです。このレーベルらしい一風変わった、けれどとても自分好みな青春小説でした。

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

Bの戦場 さいたま新都心ブライダル課の攻防 (集英社オレンジ文庫)

 

 物心ついた頃からブスで、結婚式に憧れ自分は無理でもそれを演出する人になろうと、ウェディングプランナーになった北條香澄。そんな彼女が絶世のブスと絶賛されやり手で絶世の美男子・久世課長に求婚される物語。これでもかと香澄のブスっぷりを真正面から突きつけられる展開は少なからずグサグサ突き刺さりましたが、さらに突き抜けている久世課長の存在感(苦笑)そういう決断しちゃうのかーとは少し思いましたが、お仕事小説としても面白かったですし、仕事に真摯に向き合う香澄の姿勢やその人柄が愛されているのが伺えて悪くない読後感でした。

花を追え――仕立屋・琥珀と着物の迷宮 (ハヤカワ文庫JA)

花を追え――仕立屋・琥珀と着物の迷宮 (ハヤカワ文庫JA)

 

 仙台の夏の夕暮れ。篠笛教室に通う着物が苦手な女子高生・八重はふとしたことから着流し姿の仕立屋・宝紀琥珀と出会い、着物にやたらと詳しい琥珀とともに着物にまつわる様々な謎に挑む着物ミステリ。着物を愛する有能な仕立屋・琥珀と女子高生・八重を結んだ5円の縁。モテモテな美青年なのに10歳も違う女子高生相手にその琥珀のプレゼントやアプローチはどうなの?と苦笑いもしましたが、事件を共に解決してゆく中で浮かんでくる琥珀と八重の過去は複雑に絡まっていて、二転三転するドキドキな展開を粋な感じにまとめてくれた素敵な物語でした。

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

 

 金椛帝国の皇帝崩御に伴い、「皇帝に外戚なし」の法のもとに皇后に選ばれた星皇后の一族は全て殉死を命じられ、胡娘の助けにより御曹司の遊圭がひとり生き延びる中華ファンタジー。追われる身だった遊圭が、以前助けた縁で匿ってくれた町娘の明々と一緒に密かに男の身で後宮に出仕するまさかの展開。病弱で世間知らずゆえか義憤に駆られて自らの身を危うくするような状況にはハラハラしましたが、宦官・玄月に正体を疑われながらも知恵を駆使して何とか乗り切った展開はなかなか面白かったです。後宮からの脱出を目指す遊圭たちの今後に期待ですね。

 京都・松老寺で発見された国宝「鳥獣戯画」絵巻の断簡を専門家が本物と判定。オークションにて10億円で落札されるも関係者が次々と不審死を遂げ、天才的な審美眼をもつ安斎洋人も陰謀に巻き込まれてゆくミステリ。断簡を見た洋人が感じた違和感。断簡を巡る関係者たちの思惑、洋人の旧知で関係者でもある玲子との再会とその因縁。洋人が自分のありように迷いながらも事件を通じて過去とも向き合い事件の謎と自らの想いに答えを見い出してゆく展開は、2つのテーマをうまく絡められなかった感はあったもののなかなか面白かったです。次回作も期待。

屋上で縁結び (集英社文庫)

屋上で縁結び (集英社文庫)

 

 勤め先が倒産し再就職活動も連敗中の苑子。面接会場から遠くのビルの屋上に建つ神社を見つけ神頼みをした彼女が、その神社があるビルの受付に採用が決まるお仕事ミステリ。人の顔を覚えるのが得意なことからビルの受付として採用された苑子。文化教室が入っていたり屋上に神社があるビルで起こる事件の謎解きだったり、神社のアラサーバツイチ子持ちイケメン神主・幹人と出会う展開は意外な人間関係の繋がりも明らかになっていってなかなか興味深かったです。恋模様はなかなかビターな状況でしたけど、続刊出るならまた読みたい期待感がありました。

メシマズ狂想曲

メシマズ狂想曲

 

 かなり出世は早いけど、彼氏も料理の作り方もさっぱりわからないまま34歳になってしまった滝田和紗、独身。健康診断でメタボ予備軍とされ一念発起で自炊生活に挑戦?利害が一致した同期の村越と一緒に料理研究を始める物語。仕事では有能な雰囲気が伺えるのになぜかふたりともびっくりな料理音痴ぶりでしたが、事あるごとに対抗心を燃やす同期の腐れ縁な二人の料理に対する切実な戸惑いと、周囲の人間模様を絡めてゆく展開は、ようやく向き合うようになった二人の関係が変化してゆく物語でもあって、随分遠回りしましたけど悪くない読後感でした。

本バスめぐりん。

本バスめぐりん。

 

 定年を迎えて移動図書館、愛称「本バスめぐりん」の新人運転手になったテルさん。図書館司書ウメちゃんの年の差四十のでこぼこコンビで身近に起こる謎や出来事を解決してゆくハートフルミステリ。様々な場所のいろいろな事情を抱える利用者たちとの交流や、利用者のことを考えて載せる3000冊の本の一部を入れ替えたり、移動図書館に対する利用者や地域の人の想いなど、試行錯誤しながらテルさんの奥さんや利用者も一緒に解決の方法を考えてゆく展開はとても良かったですね。コミュニティの中心にあった移動図書館の可能性を改めて実感しました。

 

悪辣執事のなげやり人生 (レジーナブックス)

悪辣執事のなげやり人生 (レジーナブックス)

 

 

悪辣執事のなげやり人生〈2〉 (レジーナブックス)

悪辣執事のなげやり人生〈2〉 (レジーナブックス)

 

 ちょうど完結前に今月追いついたので全2巻ものを紹介。不運もありいったん工場勤務まで落ちぶれた田舎の貴族令嬢・アルベルタ。そんな彼女が過去の縁から家人も使用人も訳ありだらけで問題も多い伯爵家の女執事に採用される物語。いろいろ素直に向き合えない事情を抱えていた伯爵家の人びとでしたけど、良くも悪くも率直で真っ直ぐに切り込んでくるアルベルタの行動に感化されて少しずつ変わってゆく展開がいいですね。予想外の展開があったり思わぬ出会いもあったりで、きちんと筋を通して皆に祝福される幸せな結末はとても良かったですね。