読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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2016年6月に読んだおすすめ本

というわけで6月に読んだ中からのオススメ本です。今回はラノベ以外が多くなりましたが、面白い作品が目白押しでした。気になるタイトルがあったら是非手にとって読んでみてください。

小説の神様 (講談社タイガ)

小説の神様 (講談社タイガ)

 

 作家としてデビューするも酷評されて書く自信を失っていた高校生・一也が人気作家の転校生・小余綾詩凪と出会い、彼女との小説合作を提案される青春小説。重い病気の妹のためにと思いながら、厳しい評価にネガティブになりがちな一也と、小説の力を信じていて彼に辛辣な詩凪。書く楽しさを思い出してゆく一也に突きつけられた残酷な現実はとても苦しかったですが、そんな彼が完璧に見えていた詩凪の苦しみに気づき、再び向きあおうと決意する姿は応援したくなります。作品を書くことに対するとても繊細で、強い想いを感じられる素晴らしい作品した。

 

同時刊行でどちらから読んでもそれぞれ趣きのある2作品(自分は「君を愛したひとりの僕へ」の方から読みました)

 並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て母親と暮らす高崎暦が、地元の進学校で85番目の世界から移動してきたというクラスメイト・瀧川和音と出会う物語。入学時の因縁をきっかけに運命的な出会いを果たした、暦と和音の一見腐れ縁のようにも思える関係。同時刊行作品の出来事との関連性を織り交ぜつつ、並行世界が実在する世界ならではの問題に悩まされながらも、それを力を合わせて乗り越えてゆく二人はとても幸せだったんだろうなと思わせるものがありました。二つ読んで比べてみるといろいろ思うところが出てきてとても面白かったです。

 並行世界間が実証された世界。両親の離婚を経て父親と暮らす少年・日高暦が、父の勤務する虚質科学研究所で佐藤栞という少女に出会う物語。親同士が離婚した研究者という共通点から、共に過ごすうちにほのかな恋心を育んできた暦と栞。全てを一変させるきっかけとなった親同士の再婚話と二人を襲った悲劇。諦めきれずに彼女を取り戻すために生きることを決意した暦の執念は凄まじいと感じましたが、そんな彼に寄り添うように支え続けた同僚の研究者・和音の献身ぶりにも思うところが多かったです。同時刊行のどちらを先に読むのかは悩ましいですね。

ストライクフォール (ガガガ文庫)

ストライクフォール (ガガガ文庫)

 

 代理戦争として発展した宇宙競技ストライクフォール。そんなストライクフォールに魅せられたひとり鷹森雄星が、ストライクシェルに身をつつみ広大な宇宙のフィールドに挑む物語。はるか先を行く若き天才な弟・英俊と雄星を見守る幼馴染・環という定まらない三角関係。雄星に変化をもたらしたアデーレとの出会い。アデーレや英俊との戦いの中からようやく力の片鱗を見出しつつあった雄星が思わぬ事態に遭遇し、あえて無謀な戦いに挑むことを決意する熱くスピード感溢れる展開はとても面白かったです。今後の困難を予感させる結末でしたが続編に期待。

29とJK ~業務命令で女子高生と付き合うハメになった~ (GA文庫)

29とJK ~業務命令で女子高生と付き合うハメになった~ (GA文庫)

 

 目つきは怖いけれど職場では一目置かれる29歳の社畜・槍羽鋭二。そんな彼が休日のネカフェで説教した女子高生・南里花恋になぜか告白されてしまう物語。運命的な出会いと信じて果敢に攻める花恋。彼女の言動にやきもきして孫との交際を業務命令してしまう社長。そんな状況に戸惑う彼が直面する仕事上での危機的状況。女子高生に社畜が迫られるラノベ的展開ながら、そんな鋭二も周囲の人々に慕われる存在で、仕事や花恋の夢にそれぞれの事情とやや1冊に詰め込み過ぎた感はありましたが、登場人物たちが奮闘する展開は読みやすくて面白かったです。

山内くんの呪禁の夏。 (角川ホラー文庫)

山内くんの呪禁の夏。 (角川ホラー文庫)

 

 生まれもっての災難体質を持つ小学六年生の山内くん。彼の住むアパートが火事で焼け父の実家に戻ったことで、昔彼にお守りをくれた不思議な子・紺と再会する物語。紺によってこの世ならぬものが見える目にされてしまった山内くん。久しぶりに訪れた父の実家がある田舎の特殊な雰囲気と、未解決なままの連続神隠し事件。そして紺や仲間たちと一緒に次々奇妙な事件に遭遇する中で、徐々に明らかになる山内くんを取り巻く因縁。彼らの友情なのか淡い恋心なのかまだ判別がつかない想いは、その因縁とも複雑に絡んでいきそうで、続編がとても楽しみです。

血と霧1 常闇の王子 (ハヤカワ文庫JA)

血と霧1 常闇の王子 (ハヤカワ文庫JA)

 

 血の価値を決める階級制度に支配された巻き貝状の都市国家ライコス。その最下層にある唯一の酒場『霧笛』で探索業を営むロイスのもとに、少年ルークの捜索依頼が持ち込まれる物語。いかにもいわくありげなルークの素性と依頼者たち。自身も複雑な過去を抱え、何だかんだ言いながらもルークのために奔走するロイス。下層特有のハードボイルドっぽい雰囲気ながらロイスを取り巻く人間関係はわりとウエットで、明らかになってゆく複雑な背後関係が面倒と分かっていても関わってゆくロイスの不器用さがとても好みでした。次巻以降の展開も楽しみです。

 十年前、離ればなれになるなんて想像もしていなかった時に交わした将来の約束。躓いている登場人物たちがタイムカプセルをきっかけに昔の想いを思い出してゆく連作短編集。十年後掘り起こすはずが、なぜか連絡網のリレーのような形で順繰りに送られる小学校時代のタイムカプセル。それを受け取ったことで彼らが忘れていたり気づいていなかった自らの想いを自覚し、その遭遇した転機や再会が関わった人たちを確実に変えてゆく。そんな登場人物たちの前を向いて変わってゆこうとする足跡が爽やかな読後感に繋がっていると思いました。

ハルコナ (新潮文庫nex)

ハルコナ (新潮文庫nex)

 

 数十キロにわたり花粉を消滅させるかわりに、自分の身体には猛毒な特異体質の少女・ハルコ。5年前隣の家に引っ越してきてからずっと彼女をサポートする遠夜が、クラスメートとともに事件に巻き込まれてゆく物語。防護スーツを着て介助なしには外出もできないハルコ。そんな彼女とずっと共にいることだけを願う遠夜が巻き込まれてゆく特異体質に対する抗議行動。おかしいと感じながらもヒートアップする構図に不安を煽られましたが、覚悟を決めた遠夜のほろ苦い決断が、本当に大切なものだけは見事守り切ったことにどこか救われた気分になりました。

 人前には一切姿を見せない前衛芸術家・川田無名。唯一繋がりがあったギャラリー経営者永井唯子が殺され、アシスタントの佐和子が犯人や無明の居場所、最後に残された作品の謎を探るべく動き出す物語。唯子の突然の死によってその後始末に奔走する佐和子、事件後も見つからないまま生死すら不明の無名、彼が1959年に描いた作品が今売りに出される意味。殺人事件自体の真相は陳腐でしたが、新しい事実が判明する度にガラリと変わってゆく登場人物たちの印象、作中で語られる芸術家のありようや作品に対する考え方はとても面白かったと思いました。

日曜は憧れの国 (創元推理文庫)

日曜は憧れの国 (創元推理文庫)

 

 内気な千鶴、明るく子供っぽい桃、ちゃっかりして現金な真紀、堅物な優等生公子の四人が四谷のカルチャーセンターの講座で出会い、そこで遭遇する様々な事件の謎に挑む青春ミステリ。ひょんなことから一緒に講座を受けることになった性格も学校もばらばらな四人がそれぞれ主人公役となって連作短編を構成する形式。現状に悩みを抱えていて、他の子に複雑な感情を抱いたり長所も短所もある多感で繊細な女の子たちが、講座を通じた交流や謎解きで協力や衝突しながら、それがきちんと向き合ったり成長に繋がってゆく展開はとても良かったと思いました。

 

ではまた。