読書する日々と備忘録

主に読んだ本の紹介や出版関係のことなどについて書いています

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2016上半期注目のオススメ新作恋愛小説 ライトノベル編

 「この恋と、その未来。」の最終巻刊行が厳しい状況にあるというあとがきは、ちょっと苦戦しているかなあと感じつつも続巻が出ないほどではないと思っていただけに、「吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる」と同じくらい衝撃的で残念なお知らせでした。野村美月さんの近年の苦戦や今回の出来事にいろいろ考えたり思うこともなくはないのですが、一読者として好きな作品はやはり最後まで読みたいし続いて欲しいということに尽きます。結局作品を買い支えて、多くの人にその良さを勧めて布教していくしかないわけですよ。
 
 
特に新刊の最初の方はシリーズの行く末を決める上で重要な意味を持っています。自分が新刊を中心にオススメ記事を組むことが多いのは、そういう部分を少しでも何とかしたいという側面もあったりします。今年は特に大きなポテンシャルを秘めた作品がたくさん出てきています。今回オススメするのはこれからも続いて欲しい、作家さんの今後の作品に期待している作品群です。もしまだ読んでいなくて気になる作品があったら、是非手に取って読んでみてもらえたら嬉しいです。
俺を好きなのはお前だけかよ (電撃文庫)
 
 第22回電撃小説大賞<金賞>受賞作。気になるコスモス先輩と幼馴染ひまわりがジョーロをデートに誘った目的は親友への橋渡し。そんな彼を好きなのは地味女パンジーだけというドタバタラブコメ。物語が進むと構図がどんどんややこしくなりますが各々の行動には理由があり、最初打算的に見えていたジョーロが常に周囲の友人のために行動していて、登場人物たちが利己的な理由で変節していく中でも最後までブレず、またそれを知るヒロインがいることに物語の真骨頂がありますね。続きが楽しみなシリーズです。現在2巻まで刊行。
近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係 (ファミ通文庫)

近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係 (ファミ通文庫)

 
 母と二人で暮らす家で、同い年の遠い親戚の女の子和泉里奈と同居することになった高校生の坂本健一。彼女の出現によって様々な変化がもたらされてゆく物語。兄にコンプレックスを抱き他人との距離に悩む健一と、控えめながら女子校育ちで無防備な里奈。近過ぎるのにどこか遠い彼女を意識し友人たちに知られたくないと感じる健一に気づき、心穏やかではいられない幼馴染・由梨子。最近希少のオーソドックスな構成で、著者らしい繊細な心理描写は今回も健在。終盤にもたらされた波紋で今後どのような展開になってゆくのか、次巻がとても楽しみですね。この著者さんの前作「黒崎麻由の瞳に映る美しい世界」(ファミ通文庫 全2巻)もオススメです。
キミもまた、偽恋だとしても。1〈上〉 (オーバーラップ文庫)

キミもまた、偽恋だとしても。1〈上〉 (オーバーラップ文庫)

 
 田舎町の岩下学園に越境入学した村上政樹に、地元旧家の娘で見合いを嫌い偽装恋人を提案してきた薫子。引き受けたら思わぬ繋がりが判明し婚約にまで発展してしまう物語。さすがに結婚までは意識できないものの見合いはしたくない薫子と、美少女の薫子と恋人になりたい政樹の利害が一致してとりあえず三年間偽装恋人として付き合うことになった二人。真っ直ぐに想いを伝えた政樹に好印象を抱く薫子のチョロインぶりや、お互いオタクや腐女子であることを隠す悩ましいドタバタぶりがいろいろ微笑ましくて、二人の今後がとても楽しみなシリーズですね。 
弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

弱キャラ友崎くん Lv.1 (ガガガ文庫)

 
 日本屈指のゲーマーながらリアルでは弱キャラの友崎が、同じくらいゲームを極めリアルでもパーフェクトヒロインの日南葵に炊きつけられ、クソゲーと断じるリアルで自己変革を目指す物語。ゲームに対する同じ想いを抱く葵の言葉を信じ、失敗しながらもチャレンジを諦めない友崎。そんな彼のフォローに奔走する葵が、凄まじいまでの努力家であることを何度も垣間見たこともきっと大きかったんですよね。魅力的なヒロインたちを絡めたテンポよく進む物語の顛末は友崎らしい現時点での精一杯でしたけど、続巻をまた読んでみたくなる期待感がありました。
リア充になれない俺は革命家の同志になりました1 (講談社ラノベ文庫)

リア充になれない俺は革命家の同志になりました1 (講談社ラノベ文庫)

 
 入学した高校でスクールカースト最下層に身を置く白根与一が、担任から廃部にハンストで抵抗する美少女・黒羽瑞穂の監視役として図書部に入るよう命じられる物語。序盤は既視感を感じる設定やキャラ造形ですが、そこから明らかになってゆく少し学べば何でも人並み以上にこなしてしまう天才少女・瑞穂の境遇や、幼馴染である中禅寺さくらとの複雑な関係。一見こじらせた言動ばかりに思える瑞穂のありようは、それでいて白根も目をそらせないほど真っ直ぐでとても印象的でした。わりとスッキリとした結末ですが、続巻あるなら是非読んでみたいですね。この著者さんの既刊「ハロー・ワールド」(講談社ラノベ文庫 全2巻)もオススメです。

 高校生の陵介が挙動不審な美少女・支倉由依と出会い、彼女の昔ながらのではない鮮やかな新しい花火を見たいという願いに応えるべく、幼馴染の澪や友人の諏訪たちと奔走するひと夏の物語。陵介が気になるのにつっけんどんな態度を取る展開的なツンデレの由依。そんな彼女にどんどん惹かれてゆく陵介。仲間とともにかけがえのない時間を過ごす二人に突きつけられた現実がちょっと厳しかったですが、それでも諦めない由依の想いがいつか報われる日が来るといいなと思いました。竹岡志穂さんのイラストも物語の雰囲気に合っていて素晴らしかったです。 

0.2ルクスの魔法の下で (GA文庫)

0.2ルクスの魔法の下で (GA文庫)

 

 異界で魔法使いだった祖母に憧れる女子高生リザと、どんな文字でも読解できる異能を持つ圭輔が出会い、異界に渡る方法を模索する彼女を手伝うことになる物語。お転婆だけれどどこか憎めない性格のリザに圭輔が振り回される構図に変化をもたらした、学校に出没する祖母のペンダントを持つ謎の少女の存在。リザを不幸にすると言われた圭輔と二人で切り開いた異界への扉。運命によって導かれたその顛末は意外なものでしたが、でもきっとこれで良かったんだよねと思える満足感がありました。竹岡美穂さんのイラストも雰囲気によく合っていたと思います。

アルカナ・ナラティブ (ファミ通文庫)

アルカナ・ナラティブ (ファミ通文庫)

 

 天才詐欺師だった過去を悔いる少年・翔馬は高校入学初日に「Ⅰ」の痣が浮かび、同じように痣を持つ少女・周防と出会う物語。『アルカナ使い』と呼ばれる能力者達がいる高校で、過去のトラウマから男性恐怖症の美少女・周防はたびたび危険に晒され、そんな彼女を放っておけなくて自らが傷つくことも厭わずに身体を張って守り通そうとする翔馬。自分が辛くて苦しい時に、不器用だけれど真っ直ぐな大切に想ってくれる気持ちを感じて、癒やされ育まれてゆく二人の関係の緩やかな変化が強く心に響きました。二人の行く末がとても気になるので次巻に期待。

キズナの姫と生徒会騎士団 (角川スニーカー文庫)

キズナの姫と生徒会騎士団 (角川スニーカー文庫)

 

 異世界で姫を守る近衛騎士だったユウリが現代日本に転生。他の仲間や姫と再会し生徒会長になった姫とともに生徒会を結成する物語。再会した仲間たちは姫を意識しながらもこちらでの生活に楽しみを見出し、姫も記憶がない状態。そんな中で姫と幼馴染ポジションのユウリが思った以上に近い位置にいる彼女に恋心を抱いていく初々しさがとてもいいですね。堅物で鈍感なのに中二病扱いの美少年ユウリは格好のいじられキャラでしたが、対する姫の反応がまたとても繊細で、お互いの不器用な心の揺らぎがとてもよく表現されていると思いました。続編に期待。

 

あと今月GA文庫から刊行の「29とJK」もなかなか面白かったです。

29とJK ~業務命令で女子高生と付き合うハメになった~ (GA文庫)

29とJK ~業務命令で女子高生と付き合うハメになった~ (GA文庫)

 

 29歳の社畜とそんな彼に運命を感じて果敢に攻める女子高生の物語、是非読んでみて下さい。

 

最近ブログを更新する時間を作るのが厳しい状況になっていますが、一応ライト文芸ほか編も予定しているので近いうちに公開できるよう努力したいと思います。ではまた。